【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる   作:琉土

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第十六話

 エデンとの一連の騒動、及びアキュラと完全に和解してから一年が経った。能力者と無能力者の溝は黄昏の女神の流出の影響が出て来たのだろうか? ほんの少しだけ埋まった様な空気を僕は感じ取っていた。勿論それだけが原因では無いだろう。皇神グループでの能力者代表とも言える紫電達の奮戦や、桜咲財団と言う後ろ盾を得て新たな活動を始めたフェザー、そして皇神グループ…正確には紫電達と水面下で同盟を組んだエデンの活躍も当然あるだろう。

 そしてこの三つの組織によって、少なくとも望まぬ形で能力者となった者、及び能力者になりたいと望む無能力者の救済が可能となっていた。

 

 まず、望まぬ形で能力者となった者達の保護はエデンが担当し、能力者になりたいと望む無能力者の勧誘は皇神グループが担当し、双方の組織から来た人達の救済をフェザーが担当すると言う一連の流れをこの一年の間に構築することが出来た。そして救済後の人達の立場を皇神グループが保証し、宣伝する事で日本の治安は勿論、日本周辺の国の治安もほんの少しづつではあるが改善の兆しが見えているのだ。

 そうなってくると問題になってくる事が出てくる。その問題と言うのが能力者を無能力者に、無能力者を能力者にする手段が大幅に不足している事だ。何しろ、一年前の段階ではそれが出来るのが僕とアシモフだけだったからだ。この問題は既に試験的にこの一連の流れを試そうとした時から分かっていた事であった。

 

 だからフェザーの技術者は勿論、皇神グループやエデン、そしてアキュラも含めて僕達の波動の力の再現をする為に試行錯誤をしていた。その結果、半年かけてアキュラがその技術の原型の装置を構築し、三組織の技術者達が協力してコスト削減及び簡略化を成し遂げ、そして遂にこの一連の流れの構築の実現が確定したのだ。

 この流れが構築する前は、それはもう僕とアシモフは凄まじく忙しかった。お陰でこの一年間はシアン達とプライベートで一緒に過ごす時間があまり取れなかった。アシモフの方もモニカさんとの時間が取れない事を僕によく話していた。まあ、アシモフも僕もそんな状況であっても常にお互いの恋人との会話は何時でも出来たため、仲が拗れるという事は無かったけども。

 

 勿論、この一年の間で変わったのはそれだけでは無い。あの皇神未来技術研究所跡地が皇神グループによって巨大リゾート施設へと変貌していたのだ。以前ニムロドとの戦いの後でこの周辺の海の浄化を行った事があった。間違いなくその澄んだ海に目を付けてこのような施設を建造したのだろう。ご丁寧に砂浜まで用意してあったのだ。

 そして今僕達フェザー組はこの巨大リゾート施設に集められていた。それだけでは無く、紫電達やパンテーラ達やアキュラ達も同様であった。その目的はこのリゾート施設の本格営業前に僕達による貸し切りであった。

 

 なお、この貸し切りの手配や予定の調整は紫電が行ってくれていた。持参した荷物を各自の部屋へと置いた僕達はリゾート施設で用意されていた水着を着た後、海へと繰り出した。今の季節は夏真っ盛り。皆、この浜辺で思い思いに過ごしていた。

 

「カレラ! そのビーチボールは俺んだぞ!」

「デイトナ、この水球は某の物で候!」

「はぁ…この暑い中でよくそんな動き回る元気があるなぁ…持ってきたゲームでもやってよ…」

(メラクったら、こんな所でもゲームをやってるだなんて…それにしても、アシモフ達、スイカ割楽しそうね)

「GV! もっと右だぜ!」

「えっと…こっちかな?」

「GV、行き過ぎだ。後二歩ほど左に行くんだ」

「ミチル様、オレンジジュースをご用意しました」

「ありがとう、ノワ。 ロロ~、シアン~、モルフォ~、オウカさん~、ノワがオレンジジュース用意してくれたからこっち来て~」

「分かったよ! 今行くから待っててね、ミチルちゃん!」

「シアン、オウカ、アタシ達も行きましょ?」

「はい! シアンさん、そろそろ休憩を挟みましょう」

「うん! 一緒に行こう、オウカ」

「紫電殿、皆の昼食の手配を済ませました」

「ありがとう、イオタ。 …あぁテンジアン、僕はもうかき氷は食べたからそれはパンテーラに渡したらどうだい?」

「そうさせてもらおうか、紫電。 …パンテーラ、かき氷を用意したんだけど、どうだい?」

「ふふ…私はもう頂いていますわ、お兄様。…それはアリスに渡したらどうでしょう? アリスはまだ食べてなかったでしょう?」

「ええ、そろそろかき氷を頼もうとしていたのですが…丁度いいタイミングでした。頂きますわね、お兄様」

「テセオさん、そうやってカメラを向けられると、ちょっと恥ずかしいです…」

「なんだよエリーゼ! アタシよりもいい体してる癖に縮こまるなよな!」

「ジブリール…彼女ハあまリそう言ウ事に慣れテいなイのですかラ…」

「いいじゃないっスかニケー! …うんうん、僕の生放送の視聴率がうなぎ上りでテラウレシスww」

「スイカ割が終わった様だな、ガンヴォルト…こいつ(特性の水鉄砲)を使って勝負してみないか?」

「アキュラ…僕は構わないけど、いつの間にそんな物を…」

「…ミチルとノワに頼まれてな。 まあ勝負はあくまで序で、メインは安全に扱えるかどうか確かめる事だ。付き合ってもらうぞ、ガンヴォルト」

「GV、アキュラ、何だか楽しそうな事してるね? 僕もまぜてよ!」

「シャオ…僕は構わないけど」

「俺も問題は無い。むしろ好都合だ。人数が多い方が多くデータが取れるからな」

 

 このような調子で、僕達はこのリゾート施設で思い思いに過ごすことが出来た。…今こうして楽しんでいる僕自身、今でも信じられない光景だ。嘗て敵対していた組織の人達が、こうして集まって楽しそうに過ごしているのだから。

 …下手をすれば、この場に居る大半の人達は居なかったかもしれない。シャオはあの戦いが終わった後、僕に以前シャオが居た世界の僕の事を教えて貰った事があった。それによると、向こうの世界の僕はパンテーラを除く紫電達、G7、そして…アシモフを殺害したのだと言う。

 

 それを聞いた時、紫電達やG7もそうだが…特にあの時の僕はアシモフを殺害したと言うのは何かの間違いだと思わずシャオに強い口調で言い返してしまったのだ。だけどシャオ曰く、シアンの力を利用して無能力者の殲滅を提案したアシモフを拒絶した後、僕は瀕死の重傷を負い、シアンはアシモフに殺され、シアンの仇を取る形でアシモフを殺害したのだと言う。

 その情報のお陰でアシモフのその提案も含め、シャオの世界に居た僕のアシモフ殺害の動機も納得が出来た。

 

 アシモフの過去を僕はデータバンク施設におけるハッキングによって知っている。その世界のアシモフは恐らく波動の力を知らなかったのだろう。だから寿命や能力の暴走の問題も解決しておらず、実験の経緯で無能力者に対して憎しみを募らせていたのだろう。誰にもそれを悟らせる事も無く…

 そう考えればアシモフの動機は納得出来る。そしてシャオの世界に居た僕自身の事も。シアンが関わっている以上、アシモフの提案を拒むのは当然だろう。

 

 そして、瀕死の重傷を負った僕が助かった理由も分かり切っている。この世界の時と同様に、殺された際にモルフォと一つになったシアンに身を挺して助けられたのだろう。シアンと一体化した僕ならば、アシモフに対して十分勝機はある。この事はシャオの話からも裏が取れている。

 …こうして考えると、最初のターニングポイントは僕がアシモフに「ラムダドライバ」と言う形で波動の力を開示した事にあったのだろう。このお陰でアシモフは寿命や能力の暴走の問題を解決出来たのだから。

 

 …こうしてシャオの話を思い出した僕は思った。今見ているこの光景…エデン、フェザー、皇神グループの枠を超えて笑い合い、思い思いの時を過ごしている皆の事を決して忘れない様にしようと。そう考えていたら、いつの間にかシアンとモルフォがどこか不安そうな表情で僕の腕に自身の腕を絡めながら傍に寄り添っていた。

 どうやら僕が嫌な事を考えている事が顔に出てしまったのだろう。その事に気がついて、こうして傍に寄り添ってくれているのだろう。

 

 水着姿の二人の体温が僕の心を癒してくれている。とても暖かく、柔らかく、僕を包み込んでくれている。それだけでは無い。今こちらを見ているアシモフやジーノにモニカさん、それにオウカやアキュラまで何処か心配している表情をしながらこちらを見ていたのだ。…僕は幸せ者だ。こうやって、僕の事を心配してくれる人達がこんなにも沢山いるのだから。

 その幸せを噛み締めながら、僕は皆に笑顔を向けながら「問題は解決した」と表情で答えたのだった。

 

 その後、この事が切欠で様々な節目で皆が集まる機会が出来るようになった。お花見の時も、ハロウィンの時も、クリスマスの時も、元旦の日の時も…そして、あの戦いが終わった日を「感謝祭」と言う形で集まったりもした。お花見の時は、男の姿をしたパンテーラとモルフォがデュエットしたり、紫電がアキュラと将棋をしながら冷や汗を掻いたり、桜が舞い散る光景を笑顔で見るアリスとそれを見守るテンジアンと言う珍しい光景を見ることが出来た。

 ハロウィンの時はアスロックがカボチャを主軸としたお菓子を用意したり、皆が気合の入った衣装を用意していた。特にシアンの黒猫姿や、モルフォの小悪魔の姿が印象に残っていた。

 

 クリスマスの時はサンタの恰好をしたシアン、モルフォ、エリーゼ、ニケー、ロロ、オウカ、シャオ、そして僕が参加者にプレゼントを配ったりした。元旦の時のシアン、モルフォ、オウカ、ロロ、ミチルの着物姿は実に印象に残った。ただ、アキュラが気合を入れて書初めをしていた時、墨を足に付けた可愛らしい犬に足跡を付けられててんやわんやしていたのが、どこか可笑しかった。

 

「感謝祭」の時なんか、カレラとストラトスが食べ物の取り合いをしていたり、そんな彼らを見て呆れているアキュラとデイトナ、そしてびっくりしているエリーゼ、そんな事等お構いなしに僕とジーノは話が盛り上がり、モルフォは空を飛びながらメラクの横から料理を摘まんだりと凄まじく混沌としていた。

 対照的にエデン組が中心のもう一つのテーブルはそれに比べて大人しかったのが、僕にとっては無性に可笑しかった。

 

 そうして皆が手を取り合いながら歩む日々が過ぎ往くその最中、日本でとあるニュースが歓喜の波紋を広げていた。そのニュースの内容は「電子の謡精復活ライブ」と言う物であった。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。




※皆が集まる機会について
これはオコワにあるアートギャラリーの絵が元ネタです。それぞれ「お花見」「ハロウィン」「クリスマス」「謹賀新年」「感謝祭」の画像を参考にしています。グーグルで「ガンヴォルト お花見」とかググって画像検索すればその画像が出てくると思います。因みに、巨大リゾート施設云々は「残暑見舞い」を、次の話でする予定の「電子の謡精復活ライブ」は「MORPHO SUPER LIVE」の絵を参考にしています。本編でこう言った画像みたいな展開にならなかったので、何時か必ずこの画像で和気藹々としている場面をこの小説内で書いてやると思っていました。
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