【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる 作:琉土
第十八話
「電子の謡精復活ライブ」から十年程が経過した。この間、様々な事があった。例えば、紫電が遂に皇神の副社長へと昇りつめ、遂に社長へと王手を掛けたり、どこから嗅ぎ付けたのか、電子の謡精の力を欲したテロ組織がエデンに壊滅させられ、メンバー全員がパンテーラの信者になったり、日本だけでは無く、世界規模でモルフォ達が大人気になったり、アシモフとモニカさんに子供が出来たり、ニムロドに頼まれていた海を綺麗にする作業が終わりを迎えたりと色々だ。
僕…
そんな今の俺はこの十年の間にオウカと結婚していた。ただし、表向きでの話であるが。シアン達曰く、実際はオウカがお妾さん*2で、シアン達と共に俺を支える為にこの結婚について事前に話を済ませていたのだとか。因みに、この結婚の話は俺の知らない所でシアン達三人とその協力者で外堀が埋められていた。俺の本音はシアン達の事を考えて前世と同じように結婚をするつもりなど無かったのだが、気がついた時にはもう拒むに拒めない状況となっていた。
その際の結婚式は、それはもう盛大に執り行われた。オウカの花嫁衣裳姿はそれはもう美しく、俺もシアン達も見惚れる程であった。
子供も男の子と女の子の合わせて二人授かり、俺やオウカは勿論、シアン達も当然この二人の子供を可愛がった。…最初はこの男の子がシアン達に好意を抱いてしまうのではと内心危機感を持っていたのだが、この十年で姿形が変わっていないアリスに好意を抱いている様で、内心ホッとしていた。流石に自分の息子相手にシアン達を巡って争うのは…と思っていたからだ。
アリスの方も満更ではないらしく、「将来が楽しみです」と嬉しそうな表情をしていた。なお、女の子の方は特に気になる様な事も無くすくすくと育ってくれた。とはいえ、桜咲家の御令嬢としての厳しい教育を受けているので、その分愛情を持って育てていきたいと俺達は思っているのだが。
そして、この十年の間で最も大きな出来事があった。それは、
だからこの計画は見直され、この浮遊島を軸に宇宙開発を進め、最終的に火星をテラフォーミングすると言う一回りも、二回りも壮大な話へと広がっていった。
この十年で地球から月、そして火星までの道のりが複数の浮遊島で繋がるようになっており、それぞれの浮遊島で能力者も無能力者も関係無く、力を合わせて宇宙開発を進めている。いくら安定した生存圏を形成できる浮遊島でもやはり宇宙その物は現段階の人類にとって厳しい環境である事には変わりは無い。そう言った厳しい環境がそう言った溝を埋めているのだろう。
そして、人類は火星へと到達し、パンテーラとアリスを中心にシアン達から託された詩魔法「EXEC_with.METHOD_METAFALICA/.」を僕達も含めた全能力者達…いや、ほぼ全ての人類によるの協力強制により、火星その物をメタファリカのコアであるインフェルピラに見立てて発動させる事で、火星を人の住める環境へと再構築したのだ。
これにより、遂に能力者達は本当の意味で居場所を手に入れる事が出来た。現段階では、この生まれ変わった火星の開発は凄まじいスピートで進んでおり、もう次の惑星のテラフォーミングの計画も練り始めている。…この世界の人類はこの事を切欠に本当の意味で宇宙へと羽ばたいて行くのだろう。どこまでも広く、遠くへと。
争う暇なんてありはしない。何しろ今は宇宙の大開拓時代の幕開けとも言える状況だ。そんな事をしている暇があるのなら、先ずは開拓を進めなければならない。何故ならば、広い土地は人類史に置いてとても重要だからだ。
――――――
「…どうやらタイムリミットの様だ。モニカもジーノも先に逝ってしまっている。これ以上待たせるのも、忍びないだろう。…お別れだ、シアン、モルフォ、GV。お前達のお陰で能力者達の未来は救われ、宇宙へと羽ばたいた。最後まで私の我儘に付き合ってくれて、心から感謝する。…グッドラック」
時間は流れていく。
「GV、僕はもう十分この幸せに満ちた世界を満喫出来たよ。…でも、そろそろ行かなくちゃ。僕はそもそもこの世界じゃあ部外者だからね。…ねぇGV? もしまた再会して、その時僕が何か可笑しな事をしていたら…君に僕を止めて欲しいんだ」
時間は流れていく。
「GV…シアン…モルフォ…私はお役に立つ事が出来たでしょうか? …………良かったです。私は先に逝ってしまいますが…如何か、これからもお元気で居て下さい。それが私の…桜咲桜花としての、最期のお願いです」
時間は流れていく。
「お久しぶりです、
時間は流れていく。
「ガンヴォルト…どうやら俺もここまでの様だ。とは言え、十分長生きする事が出来た。そう、能力者を恨んでいた頃の俺からは今みたいな寿命による最期を迎えるとは想像も出来なかったはずだ。…昔、お前に案内された
時間は残酷になまでに、そして穏やかに流れていく。一部を除く人達を除いて、俺の…
例えば、テンジアンはこの長い年月で極まった
パンテーラも当然の様に健在であるし、紫電も遂に社長へと昇りつめ、サイコキネシスを応用して年齢を二十歳に固定して、今でも精力的に活動を続けている。アリスは僕の息子と共にパンテーラと共に活動を続けている。そして、当然この能力による不老は新たな争いの火種になりうる物であったが…この百五十年後の現在、この能力による不老が遂に科学的に実現可能となった事で、人類は不老を手に入れたのだ。
とは言え、肉体的に不老になっても精神的な問題もあり、実質好きなタイミングで人生を終えることが出来るようになったと言い換えるべきかもしれないが…
この時の僕は桜咲家とは既に縁を断っている。もうオウカも来世へと旅立ってしまったし、息子たちも一人立ちし、孫、ひ孫、
シアン達についてはこの百五十年の年月の間でバーチャルアイドルとしての殿堂入りを果たしてから引退する事を決め、後続のバーチャルアイドルに道を譲っている。
「…………」
「どうしたの、GV?」
「シアン…いや、この百五十年の間で色々あったなと思い返していたんだ」
「そうだね…本当に色々あったなぁ…」
「
「向こうの世界のGVと私を助ける為にネームレスの姿で暗躍したり…」
「別の可能性の世界ではGVとアキュラが衝突しようとしてる所を止めたりしたわね」
「モルフォ…いつの間に」
「アタシがお風呂に入ってる間に面白そうな話をしてるからつい…ね」
シアンと話をしている間に、モルフォが僕の後ろから抱き着きながら話に参加して来た。この日はこの百五十年の間の思い出で盛り上がり、それは日を跨いで続く事となった。…これからも
――――――
そして更に時は穏やかに、人類にとって地球が忘却の彼方に追いやられ伝説の存在となる程に時が過ぎた。この地球にはもう人類は存在していない。それどころか、この地上はもう人類による文明の痕跡は私達の居るごく一部を除いて存在していない。皆、宇宙の彼方へと旅立ち、宇宙に光輝く星々の更に先で人類史を刻んでいるのだろう。
私達とGVは、それほどまでに長い年月をこの地球で過ごしている。もうこの地球上の人類は…人類に相当する知的生命体は私とモルフォとGV以外に存在しない。
GVのセーフハウスとその周辺のわずかに残った文明の利器はGVの波動の力によって未だに維持されており、私達三人で使う分には十分すぎる程の設備が未だに残っている。星々の向こう側の情報も、この時代に相応しい原理を口では説明できない程の超技術のネットワークによって収集する事が可能となっている。そのネットワーク上の情報を読み取って見ると、人類は未だに足を止めずに歴史を刻んでいるのが分かる。
既にこの世界の人類は数多の銀河を開拓し、私達では想像もつかない程に発展し、存続している。
…今だから白状するけど、私とモルフォはこの時をずっと待っていたのだ。GVと親しい人達が寿命で居なくなり、人類が地球を忘れてGVとの関りがほぼ完全に断たれる、その時を。GVを本当の意味で私達で独占できる、この時を。だからオウカがお妾さんになっても私達からすれば全く問題は無かった。この長い長い年月から考えれば、そんな物は誤差なのだから。
これが実現した当日は、それはもう私とモルフォは喜びで一杯だった。何しろ、GVを本当の意味で私達で独占出来るようになったからだ。
それが実現した記念すべき日、GVは私達にある提案をした。それは、私達三人だけで結婚式を挙げると言う物だ。…GVには私達の考えが当然の様にお見通しだった。だから今の今まで結婚式の話題を一切出さずに、このタイミングで切り出してきたのだ。そうして私達はGVの波動の力で維持されている施設の一部にある結婚式場で、私達三人だけの結婚式を挙げた。
――私達は、病める時も、健やかなる時も、
ねぇGV? 私達はもう絶対に離さないからね。何があっても、永遠に。前世の時みたいに、私達を置いて逝かせる事何て絶対にさせないし、許さない。ずっと…ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと…
「「GV…
「シアン…モルフォ…僕もずっと、二人の傍に居るよ。今までの様に、何があっても、絶対に」
一糸纏わぬ私達は、ベッドの上で寄り添いながらそうGVへと渾身の
これにて後日談、「輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる」は完結しました。
ここまで時間を掛けて読んで頂き、誠にありがとうございました。