【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる   作:琉土

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第二話

 僕は実体化したシアンとモルフォを抱きしめた後、改めて紫電達と向き合い、オノゴロフロートでのエデンが率いる機械群相手に、どう対処するか話し合っていた。

 僕らがそうやって話し合っている際、どうやらシアンとミチルが互いに能力(テレパシー)を利用して話しをしているようだ。

 僕も同じ能力を持っているので、その会話の内容を傍受したり、割って入ることが出来る。

 僕はまだミチルがアキュラに好意を抱いている事をシアンに話していない為、彼女が暴走しない様に横から耳を澄ませるように能力を行使する。

 その内容は、お互い最初は自己紹介を済ませ、互いの境遇について話しているようだった。

 

(こんにちは、私はシアン。……貴方の名前は?)

(こんにちは、私はミチル。……何だか、他人のような気がしないね、シアン)

(そうだね。私は貴女が持っていた能力の隔離先だったから、そう思うんじゃないかな?)

(……ごめんなさい。私の体がもっと強ければ、貴女にこんな迷惑を掛けなくても済んだのに……)

(……私は電子の謡精(サイバーディーヴァ)を移植させられて、GVと出合うまでずっと無理矢理歌を歌わされてきた……でも、そのお陰で私は、私の…私達の大好きなGVに出会えたの。想いを添い遂げて、この身を全部捧げることが出来たの。だから、ミチルは気にしなくてもいいの)

(……いいなぁ、私も、私の……私達の大好きなアキュラ君にそうできたらいいのに。私とアキュラ君は血の繋がった兄妹だから、どうしてもこの想いを伝えられないの)

 

 シアンの警戒の想いがこの一言で完全に四散した。

 良かった、これでアキュラを敵に回す事は無くなった。

 それに、僕の危惧していた事は起こっていないみたいだ。

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 僕の張った枷が、波動の力で構築した協力強制の枷が無事機能しているようだ。

 この事が確認出来て、僕は表情に出すのを堪えるのに必死な程に嬉しかった。

 何しろ、シアン達は僕と永遠を生きる事を望んでいる事が分かったからだ。

 あの時、頑張って(記憶)の世界を構築した甲斐があったと言う物だ。

 

(え? ミチルはアキュラが好きなの?)

(うん、アキュラ君の事、私は大好きなの…兄妹としてじゃない…ロロと同じように、一人の女の子として、アキュラ君が大好きなの。だって、ノワと一緒に私の病気と声を治す方法をずっと探してくれていたの。お医者様が匙を投げて諦めていたのに、アキュラ君は諦めて無かった。日に日に弱っていく私の手を握って、優しく語り掛けてくれた。勉強だって教えてくれたし、私の他愛の無いお話を聞いてくれてたの。そして、アキュラ君は遂に見つけてくれたの。私の病気を治す方法を。ロロと一緒に持ち込んで来た、正体不明の能力者の力が込められたガラス片を。あの時の出来事のお陰で私は健康を、声を取り戻すことが出来たの。……私がアキュラ君に恋心を抱いたのは、この時の出来事が決定的だったんだろうなぁ)

(……ミチル、正体不明の能力者の事なんだけど)

(大丈夫、私はもう知ってる。……シアンがそうなんだよね? こうやって直接顔を合わせて見て分かったの。貴女の持つ第七波動は正体不明の能力者と全く同じな事が。……ありがとう、シアン…貴方のお陰で私は声を取り戻せて、アキュラ君もあの憎悪に満ちた悲しい目をしなくなって、温かくて、優しくて、魅力的なアキュラ君になってくれたの。私ね、こうやって貴女にお礼を言いたかった。その機会が得られて、私はとっても嬉しい)

(ミチル…)

(ねぇ、シアン。……今から私達、友達にならない? 私、ロロとノワみたいな身内の関係者以外だと、友達は居ないの。だから……もし良かったら、私と友達になって欲しいの)

(……うん、今日から私達は友達だよ、ミチル!)

(うん! 今日から私達は友達だね、シアン!)

(……もういいかしら、シアン? アタシの事も紹介して欲しいのだけれど)

(うん、待たせてゴメンね、モルフォ)

(わぁ……本物のモルフォだぁ!)

(ミチル、もう知ってると思うけど、アタシはモルフォ……貴女からシアンに移植された電子の謡精(サイバーディーヴァ)が意思を持った存在よ。アタシも、ミチルと友達になってもいいかしら?)

(うん! よろしくね、モルフォ!! ……あの、モルフォ、お願いがあるんだけど……もし良かったら、後でサイン書いてもらってもいい? 私、モルフォの歌の大ファンなの)

(ふふ…ありがとう、でも、後とは言わずに今貰ってもいいのよ?)

(え…でも今私、サイン用色紙が手元に無いの…)

(大丈夫、そのくらいアタシが用意するわ)

(だから遠慮なくモルフォのサインを受け取ってね、ミチル)

 

 モルフォは波動の力を用いて手元にサイン用色紙とペンを創造し、慣れた手付きでサインを書き上げ、ミチルに手渡した。

 モルフォが波動の力が使えるのは、今は実体化している上に、彼女の能力に蒼き雷霆(アームドブルー)が内包されているからだ。

 そして、僕が何時も波動の力を使っている所を見ているのもあるし、夢の世界に居た時も第四から第六波動の観測の際に僕が使い方を教えていたからだ。

 モルフォのサインを貰ったミチルはとても嬉しそうだった。

 そしてこの事に感激して、シアンからもサインを貰う流れになったのは微笑ましかった。

 どうやら、ミチルはシアン達と無事友達になれたようだ。

 

 どうしてだろうか?

 この三人の楽しそうな会話を聞いていると、何故か涙が零れそうになる。

 今まで焦がれていた光景を見せつけられているかの様な感覚がするのだ。

 もし僕の前世など存在せずに、今の十四歳の子供のままだったら、この光景は見れなかったかもしれない。

 もっと悲惨で残酷な未来が待ち構えていたのかもしれない。

 シアンを守れなかった事実に、僕は押し潰されていたのかもしれない。

 シアンを守れなかった事実は、転生前の記憶があってもとても辛い物だった。

 ではそれが無かったとしたら…?

 とてもではないが、僕は一人で耐えきれる自信が無い。

 それこそ、オウカや仲間達に縋りつかなければ耐えきれるものでは無いだろう。

 

 そう僕が思い、シアン達の楽しそうなテレパシーを聞きつつ、アシモフ達と紫電達とのモニカさんの能力経由での会話を聞いていた。

 やはり、連戦に次ぐ連戦によりアシモフ達の消耗が激しいようで、今「チームシープス」の皆とフェザーの精鋭達は「アメノサカホコ」へと合流しており、そこで籠城戦をしている様だ。

 一応、弾丸や装備の消耗や肉体的な疲れは「波動の力」で補えはするけど、精神的な疲れはどうしようもない。

 まだアキュラ、アリス、アシモフ、ジーノが中心になって持ちこたえているけど、他のメンバーの消耗が限界に達しつつある。

 モニカさんも常に能力を行使している事もあり、消耗が激しいみたいだ。

 時折、通信にノイズが走る事が出て来ていた。

 それに、モニカさんからの情報で、皇神の保有している大型自律飛空艇「飛天」がジャックされ、此方に向かって来ているのだとか。

 流石にこの更なる増援が送られたら、いくらアシモフ達でも厳しいと言わざるを得ない。

 

 僕は紫電達との話し合いを進めた。

 そして最終的に、僕が飛天に突入し、増援を食い止め、紫電達はアシモフ達を掩護し、アシモフ達は一旦休憩目的で下がる事で話が纏まった。

 僕が単独なのはシアン達も込みである事と、僕とシアン達で紫電達の戦力に匹敵すると判断されたからである。

 まあ、紫電達はシアン達のあの詩魔法をその身に受けている以上、その事を身に染みて分かるのだろう。

 そうして僕はジャックされた「飛天」へと向かう事となった。

 紫電達も「アメノサカホコ」へと向かい、アシモフ達と合流する様だ。

 その際、紫電は衛星「星辰(せいしん)」のレーザー攻撃で既に援護を開始している。

 こうして見ると、紫電達と共闘出来るようになったのは大きい。

 そしてノワとミチルも、アキュラ達と合流する事を選んだようだ。

 そしてミチルは何やらシアンとモルフォから記憶共有をして貰っていた。

 アキュラに聞いてはいたし、実際に能力を行使しているから把握しているけど、ミチルはロロのUSドライブ経由で能力が復活してるのだとか。

 

(シアン、モルフォ、ミチルに何か記憶共有してたみたいだけど……)

(GV、ミチルに今までの私達が得た能力の事や詩魔法の事を教えてたの)

(ミチルもアタシ達と同じように、アキュラの…大好きな人の足手纏いになりたく無いって言ってたから、だから力になれる様に教えたのよ。アタシ達もGVの足手纏いだった時の事があったから……)

(だけど、詩魔法はシアン達の能力が成長したからこそ扱えるはずの物だろう?

それをミチルに教えても扱えるとは思えないけど……)

(大丈夫だよ、GV)

(一人では確かに厳しいかもしれないけど、ミチルにはロロがいるわ。二人で力を合わせれば……協力強制すれば詩魔法を扱える筈よ。この事もミチルに教えておいたから、きっと大丈夫)

 

 ミチルもやはりそういった所が…シアン達と同じ様に、足手纏いは嫌だと言う想いがあったのかと僕は思った。

 この事をアキュラに伝えつつ、僕は「アメノウキハシ」から「飛天」へと向かうのだった。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。

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