【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる   作:琉土

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第五話

女神とのお茶会

 

 今日僕のセーフハウスでパンテーラが珍しい客を連れて訪れていた。その客の外見は金色の髪にパンテーラが用意したのであろう黒を基調としたドレスを身に纏っており…僕の見間違えで無ければ、あの時呼び出した黄昏の女神「マルグリット・ブルイユ」本人では…いや、流石に本体では無く、あの場に居る彼女は所謂「触覚」と呼ばれる存在の筈で…

 そう僕が半ば現実逃避をしている内に、シアン達も含めた五人でお茶会をする流れとなってしまった。この時の話題で彼女が本当に神座が存在する世界の黄昏の女神である事が判明し、僕はその驚きを表情に出さないようにするのに必死であった。…まあ、シェルノサージュ、アルノサージュが現実であった事を考えれば神座が本当に存在する世界もあって当然なのだろうと最終的に自己解決を済ませた。

 

「私はただ、やりたい事をやっているだけだよ?」

「それでも、世界を愛で支えていると言う事実は変わらないでしょう? 何度も言いますけど、それはとても素晴らしい事なのです。もっと誇るべきだと私は思うのですよ、()()()

『そうそう、皆を抱きしめて永遠に見守ろうだなんて簡単に出来る事じゃないよ』

『アタシもそう思う。って言うか、蓮にラインハルト、カリオストロはいないの?』

「うん…連達はね…」

 

 この時の話により「Dies irae」における所謂「三つ巴ルート」後から暫く経った後のマリィがここに居る彼女である事が判明した。どうやらあの後も彼女は変わらずに世界の全てを見守り、抱きしめているのだそうだ。そうやって見守っていた時にとてもか細い声によるSOSが…パンテーラの声が聞こえたのだと言う。

 そしてその声の発信源である僕達の居る神座の無い異世界に自身の触覚を送り込み、最終的にパンテーラに終段で呼ばれる形で僕達の世界に顕現する事となった。

 

「この世界は…とても悲しい世界だって私は思ったの。次の機会も与えられずに大勢の人が第七波動の有無で苦しんでいる事が。だからあの時、私はああしたんだよ? …抱きしめていいかどうかは事前に確認はしたよ? 下手しちゃうとこの世界を壊しちゃうかもしれなかったから…」

「でも、マリィの流出のお陰で少しづつ能力者に対していい方向に変化の兆しが出ています。だから私はこの事にとても感謝をしていますの。正直な話、別世界の私を救ってくださるだけで十分でしたのに、まさかこの世界に対してここまでして下さるだなんて…」

「ううん、私は背中をそっと押して応援しながら見守っているだけ。そう言った変化を起こしたのは紛れも無くこの世界に生きている全ての人達の力だよ」

『私達の歌も、そう言う事の役に立ってるのかなぁ…』

『だとしたら、それはとても有難い事ね…マリィも歌に興味ってあるかしら?』

「うん! シアン達の歌を聞いてたら私も歌いたくなっちゃったくらいだよ」

『じゃあ…次のライブ、飛び入り参加してみない?』

「え? 突然そんな事していいの?」

『むしろ飛び入り参加者を探してた所なの。前回のライブでロロが飛び入り参加した時、すっごく好評だったから』

「そう言えば、紫電に頼まれていたな。マリィが良ければ是非参加して欲しいんだけど…どうだろうか?」

 

 こうしてこのお茶会でモルフォライブにマリィの飛び入り参加が決定したのだった。なお、このライブは大成功を齎し、後に度々彼女は何度もライブに誘われる事となる。因みにその時歌われた歌が「sanctus*1」であり、「血のリフレイン*2」で無かった事に僕は内心安堵したのであった。

 

 

――――

 

 

七つの海を越えた後

 

 アキュラとシャオの協力を得て、僕達は七つの海を越えた先…エクサピーコと呼ばれる宇宙に存在する移民船「ソレイル」に突入する手段を得ることが出来た。向こうの時間軸や可能性軸等の座標が僕が持つ携帯ゲーム機に送り込まれていた事、そしてシャオや僕自身が並行世界や異世界への転移経験もあったお陰でこの辺りはスムーズに事を進める事が出来ていた。だけど…

 

「向こうに行く手段はアキュラとシャオの協力のおかげで確保できた」

『でも問題はクラケット博士*3も言ってた事だけど…』

『向こうの空間が歪む事よね?』

「魂だけでも送ると太陽が膨張する程の影響を起こすからな…」

「肉体も込みだと正直目も当てられない状況になりそう」

 

 そう、問題は転移後の事だ。元々、向こうの世界に存在する惑星ラシェーラが滅びた根本的な原因は異世界人であるネロとイオンの魂が送られてきた事によって発生した空間の歪み…それと五千年の月日による時間によって引き起こされた太陽の膨張なのだ。要するに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それもイオン達みたいに魂だけ行くのではなく、肉体も込みなのだ。更に僕達は第七波動(セブンス)能力者…向こうの世界に存在しない第七波動を持ち込む事となる。これでは最悪、僕達が向こうに行く事がソレイルに対して凄まじい悪影響を及ぼす事など安易に想像出来る。

 そんな時、シアン達が解決の糸口となりうる発言をしてくれた。

 

『ねぇGV…ひょっとして、向こうの世界その物が意思を持ってるからじゃないかな?』

「向こうの世界の原初の核「エクサピーコ」の事だね」

『そう、()()()()()()()()()()()()()()()…ね』

「モルフォ、シアン、その口ぶりだと何かに気がついた様子だけど…」

『似てると思わない?』

『己の願った法則を永劫展開し、外界に流れ出させる存在である覇道神に』

「言われてみれば確かに…」

「つまり、空間が歪む原因は異なる世界のイオン達の魂とエクサピーコによる異なる世界の法則のせめぎ合いが理由であの付近の宇宙のウェイトバランスが崩れていると言いたいのだな?」

「仮にそれが原因だったとしても、それでも僕達にはどうしようも無いよ」

「そうだね、シャオ…いや、ちょっと待った。ひょっとしたら問題を解決できるかもしれない」

 

 そう、解決できる可能性があるのだ。この世界で流出した()()()()()()()()を利用すれば。…これにより、彼女を呼び出せるパンテーラもこの計画に巻き込まれる事が決定し、更にイオン達の帰還の問題も芋づる式に解決する事となったのであった。

 

 

――――

 

 

端末から聞こえる歌声

 

 ソレを初めて聞いたのは端末を経由して「あなた」とお話しするようになってから一週間後くらいだったかな。その日もねりこさんからの指導のお陰で上手く端末先の相手である「あなた」とお話したりする事が出来てホッとしていた時だった。

 

『君と 僕の 果てなき光…』

「え!? 端末から…歌が聞こえてくる。わぁ…綺麗な声…それに心なしか疲れが…」

 

 初めて聞いた時はこんな風に物凄く驚いたっけ。それでこの事を「あなた」に聞こうとしたけれど…歌に関する話題の時に限って「あなた」の反応が一切無かったんだよね。それ以外の話題なら大体反応してくれるのに…それに、体の疲れが取れるのも不思議だよね? まるで私の事を応援してくれてるみたいで…

 

「うーん…端末からのデータだと「あなた」は男の人ってなってるのに…それにこの事をねりこさんに聞いてもさっぱり分からないみたいだし…この歌を歌っている人はどんな人なんだろう? …会って見たいなぁ」

 

 会って見たい。その気持ちは本当。だけどそれは無理な事。何故なら私と「あなた」の間には大きな溝が…世界の壁と言う名の溝が存在しているからである。それに、クラケット博士も言っていた。ラシェーラが今にも滅びそうなのは私とネロが存在しているからであると。仮に「あなた」がラシェーラに来れたとしても…滅びを加速させるだけの行為に過ぎない。

 その事実が私にとって耐えがたい苦痛なのだ。例えあり得ない仮定だとしても。来てくれるなんて絶対にあり得ないと内心思っていたとしても。

 

『解けないココロ 溶かして 二度と離さない…』

「あ…」

 

 この歌は私の大好きな歌。私が記憶の中で死んでしまい、心の底から落ち込んでいた時に初めて聞いた歌。私が立ち直る切欠をくれた、タイトルも分からない、あの歌だ。…この歌は厳密には私を対象にした歌ではない事は分かっている。多分この歌は「あなた」に対しての歌。

 

「それでも、私にとってあの時この歌を歌ってくれた事、とても感謝してるんだよ? …この言葉も向こうには届いていないんだろうなぁ」

 

 届くはずの無い私の言葉を、それでも届いてくれると信じて私は端末へと話しかける。

 

「会いたい…会いたいよ…」

 

「あなた」に…ううん、「あなた達」に会いたい。叶う筈の無い願いを、今日も私は端末に願う。この生活が、もう長く続かない事を予感しながら。

*1
Dies irae ~Amantes amentes~のED曲

*2
序盤、蓮が夢の中で黄昏の砂浜に佇むマリィと出会った際、口にしていた呪いの歌

*3
『トロンの父』と呼ばれ、4軸(時間軸)以上の次元論を確立したシェルノサージュに登場する人物




シアンとの心の繋がりを感じた
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