【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる   作:琉土

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第六話

シアングッズ

 

 今僕の部屋でデイトナと「ある共通した話題」で盛り上がっていた。以前、シアンがモルフォの妹ポジとしてタッグを組んだ結果、世間ではモルフォと同じように大変な人気となっていた。それに伴い関連グッズの販売も始まっており、当然僕自身も新しいグッズが出る度に購入を続けている。

 

「見ろよ、このシアンちゃん人形。絶妙なデフォルメ具合が最高に可愛いと思わねぇか?」

「このモルフォ人形と合わせれば可愛さが倍増するよ? ほら、こんな風に配置すれば…」

「おぉ! 姉ポジのモルフォと合わせると可愛さが引き立つぜ!」

 

 そうなって来ると当然デイトナが放っておくはずも無い。本人曰く、「まさか大手を振るってシアンちゃんグッズを購入できる日が来るなんて思わなかった」との事。彼も僕と同じように新作が販売される度に購入を続けているようだ。

 

「…なあガンヴォルト」

「どうした、デイトナ」

「まさかテメェと共通の話題が出来る何て思わなかったぜ」

「それは僕も同感だけどね」

 

 以前僕達は敵同士であった。それがこうして同じ話題で盛り上がっているのだから彼の言いたい事は良く分かる。

 

「しかし、あの時の台詞*1をシアンちゃんに聞かれてたのは正直恥ずかしいし、情けないぜ。だからシアンちゃん、俺から微妙に距離を取ってたんだなぁ…」

「…戦いが一段落してデータベースから得た宝剣の詳細情報を見て気がついたけど、あの状態(変身した状態)で居ると第七波動を増幅する際の副作用として潜在的な感情が表に出てくるみたいだね。今にして思えば、あれは仕方のない事だと僕は思う。誰だってそう言った潜在的な想いに意図して気がつくのは難しいし」

「でもよぉ…」

「それについてはもうシアンに謝ったんだし、大丈夫さ。寧ろそんな状態でも僕に対して正論を説けるんだから、僕はデイトナの事を逆に見直したくらいだけど」

「…本当に、分からねぇもんだな。こうやってテメェに慰められる日が来るなんてよ」

 

 そう言った会話を続けている内に、シアン達がオウカと一緒に茶菓子を用意して僕達のいる部屋に入ってきた。その後のシアン達を交えた会話では少しギクシャクしていたけど、デイトナは無事普通の会話を交わせるくらいに関係が改善されたのだった。

 

 

――――

 

 

機能強化

 

「カゲロウに新たな機能だって?」

 

 僕はモニカさんからフェザー開発部から新たなペンダントの開発に成功し、カゲロウに新たな機能を備える事に成功したのだと言う事を知らされた。

 

『ええ、「カゲロウの対象を触れている人物も含める」と言う機能よ。アシモフが言うにはEPの消費も触れている人数分倍加するって話だから、今のGVの環境だと使い所は難しそうだけど』

「僕としてはかなり助かります。…とはいえ、この機能はもっと早くから欲しかったですけどね。護衛ミッションをしていた時は体を張る機会も多かったですし」

 

 以前、最初にシアンを救出し、抱えていた時に遠距離から狙撃された事があった。この際、抱えていたシアンがすり抜けない様にカゲロウの機能を意図的にカットしていた。だからあの時不覚を取ってしまったのだが…

 

『ネームレスに化けている以上、表立っては使えないと思うけど…』

「とは言え、今はシアン達の護衛をしている以上、護衛手段が増えるのは助かります。いざと言う時にとっさに使える手段が増えるのは大歓迎ですから」

『それとこっちで預かってたダートリーダーなんだけど、この際にオーバーホールさせてもらったわ。基本的な機能は変わっていないけど…出力や冷却性能の安定度を図る方向での細部調整を施してあるから、一度試運転をする事を勧めるわ。…この装備も、もう使う機会は殆ど無いかもしれないけれど』

「了解。…そんな事はありませんよ、モニカさん。使う機会は()()()()()()()()()ので」

『…最近、アキュラとシャオ、それにパンテーラ達も巻き込んで何かしてるみたいだけど、それと関係しているのよね? …GV、貴方の事は信じているけれど、あまり無茶な事はしないようにね?』

「……善処するよ」

『…それと一緒に、新型のダートシューターも送っておくわね。GVがその内無茶な事するの、今の台詞で良く分かったから』

 

 ダートシューター…これはネームレスの時に使用している銃の威力や取り回しの良さを重視したダートリーダーやE.A.T.R.との共通規格を持った黒を基調とした兄弟銃。今の僕のメインウェポンとも言える武器だ。…確かに()()()()()()()()は無茶な事だと僕も自覚してるけども。

 

「新型ですか?」

『ええ、以前、アキュラとの戦いの時に使った「ディヤウスプラグ」があったでしょう? あれと「ナーガ」の組み合わせで発生したあの機能、実は偶然の産物だったのだけれど…あの時のデータのお陰で意図的にその機能を落としこむ事が出来たのよ』

「「ナーガ」のチャージショットの威力が跳ね上がる、あの機能をですか」

『ええ。とは言え、電力消費は激しいから取り扱いには気を付けてね。一応貴方のEPエネルギーを直接供給出来る様にはしてあるけど、下手をすると正体の露見に繋がってしまうでしょうし』

「予備のマガジンを用意しながら誤魔化して使っていきますよ」

『そうしてちょうだいね。それと、今回のシアンちゃん達のライブでの護衛について何だけど…』

 

 一通りの機能の説明を終え、僕とモニカさんはもうすっかり何時もの事となったシアン達のライブの護衛についての段取りを進める事となった。…僕が再び「蒼き雷霆ガンヴォルト」としての装備を使う機会は後に必ずやって来る。七つの海を越えた、その先で。

 

 

――――

 

 

一人じゃない

 

「どうかな、GV? 私達の中では前よりもずっと美味しくなってると思うんだけど…」

「私達三人で調味料の配合を変えてみたのですが、お口に合うでしょうか?」

「……うん、以前の時よりもずっと美味しいよ」

「やったわね! アタシ達も頑張った甲斐があったわ!」

 

 僕とシアン達、そしてオウカの四人が揃った夕食の一時。今の会話は少し前に頂いたから揚げの味付けを、今日の夕食の調理の際に三人で調味料の吟味をしながら話し合って味付けを決めていた。そして見事、以前出された時よりも美味しく仕上げる事が出来たのである。

 

「やっぱり皆で調理して出来たご飯を一緒に食べるのは最高よね」

「ええ、本当に…」

「オウカ、どうしたの?」

「…一人で暮らしていた時の事を、思い出していたんです」

 

 オウカはまだ僕達と出会う前、一人暮らしをしていた時の事を僕達に話してくれた。あの時は今みたいにまだ桜咲の性を名乗る事も許されておらず、僕達があの時襲われていた彼女を助けるまでの間の事だ。

 

「…やっぱり、寂しかったんだね」

「ええ…私の事を我が子の様に可愛がってくれたお婆様が居なくなって、それを切欠に私が言い出した事だったのですが…三ヵ月だけでしたけれど、それでもこの広い屋敷に一人で居ると言うのは、本当に、寂しかったです」

「オウカ…」

「だからあの時…GV、シアンさん、モルフォさんに助けて貰って…最初は護衛と言う形でしたが…皆さんが一緒に居てくれた事は私にとって、本当に心強かったし、嬉しかったんですよ? …それだけではありません。あの後、私は両親と再会して、再び桜咲の性を名乗る事を、許されたのだって…」

 

 そう言いながら、オウカは言葉を詰まらせ、感極まって涙を零していた。

 

「…大丈夫よ、もうオウカは一人じゃないわ」

「僕もシアンもモルフォも居る。だから大丈夫さ」

「よしよし…あの時*2とは立場が逆になったね。オウカ」

「…ふふ、そうですね。…シアンさんの手、温かいです。暫く、こうさせて下さい…」

 

 シアンに抱きしめられ、頭を撫でられているオウカは涙を零しつつも、その腕の中で今感じている幸せを噛み締めている。僕とモルフォはその光景を微笑ましく、温かな気持ちを感じながら見つめていたのであった。

*1
機械に繋がれたシアンちゃんはなッ! サイコーに胸キュンなんだよッ!

*2
前作の第六十一話にて




シアンとの心の繋がりを感じた

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