【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる 作:琉土
フェザー
フェザー…それは海外のとある人権団体のメンバーが中核となり組織されたレジスタンスグループで能力者の自由を掲げ、
そんなフェザーであるがとある事を切欠にテロ組織を辞め、新たな組織として生まれ変わった。
『能力を欲する無能力者を能力者に、能力を拒む能力者を無能力者にする…か。一時期はアシモフさんとGVだけでそれをしていて大変だったけど…』
「今ではアキュラ達が開発したそれを可能にした機械が出来たからね。僕もアシモフもようやく肩の荷が下りたって所だよ」
その代わり、元の海外からのスポンサーから支援を打ち切られてしまったのだが…その代わりに桜咲家と言う新たな後ろ盾を得て、寧ろ以前よりも多くの資金や人員を運用出来るようになった。何しろもうフェザーはテロ組織では無いからだ。
『うーん…テロをしていた事実もあるし、フェザーに対する風当たりはもっと激しい物だと思っていたけれど…』
『テレビを見てると思ったよりも好意的に解釈されているわね。どうしてかしら?』
「…桜咲家の情報操作とそれに乗っかった皇神グループのお陰だろうね。それに、
『
今この時代、火星でのテラフォーミングが大成功した事も有り、未曽有の宇宙を股に掛けた大開拓時代へと突入しようとしている。だから宇宙での生存率を少しでも高める為に、開拓者は能力を得る事が推進されているのだ。
最近では第七波動の研究も大幅に進み、リキッド等のメジャーな能力であれば誰にでも素質に関係無く安定した力を与えることが出来るようになった。
『「人類進化推進機構」なんて紫電から聞いた時、凄く大げさな言い方するなぁって思ってたけど…』
「誰でも気軽に素質に関係無くある程度の好きな能力をリスク無く得られる…そう考えればこの名前は大袈裟では無い…と僕は思う」
それでも能力者を嫌う人や能力その物を拒む人たちは多い。だからと言って、この組織は
そう言った事が可能になった影響からか、今僕達が見ているテレビに映る専門家は、「無能力者と能力者の人口差は逆転し、近い将来無能力者は居なくなるのでは」と言う発言をしていた。
(アシモフは以前僕に話してくれていた。嘗て自身が持っていた無能力者に対する恨みの事を…もしこの専門家の言う通りになれば…)
アシモフ本人はもう既に過去の事に捕らわれてなどいない。それはあの時のアキュラとの決闘の時に解消出来たからだ。だけどそう遠くない未来、嘗てアシモフが抱いた「無能力者の殲滅」が争いも無く穏やかに、誰にも気が付かれる事も無く実現する事となる。
エデン
『GV、見て見て』
「これは…エデン公式チャンネルか」
『うん、前にパンテーラがここを訪ねた時にここのホームページのアドレスを貰ったの』
「そういえば、あの時アドレスの書かれた紙を渡されてたっけ」
あの時はG7を含めたエデンの現状についての話題で盛り上がっていた。恐らくあの時はあまり時間が取れなかったのもあり、「続きはここで見て欲しい」と言う理由でこの紙を渡されたのだろう。
『…丁度G7の最近の活躍が動画配信されてるみたいね』
『これは海が綺麗になってる動画…これは最近やっと終わった海の浄化の時の映像みたい。ニムロドさん、嬉しそう』
「こっちはガウリ達がシアン達とコラボした時の映像だね。…あの時は、嘗て解散した彼のダンスチームの皆を集めての物だったから、盛り上がりも凄かったな」
『うんうん! あれが切欠でガウリ達のダンスチームは本格的に再結成されたんだよね!』
『こっちは…アスロックのお菓子作りを動画にした物のようね。…アスロックのお菓子の味、思い出したら食べたくなってきちゃったわ』
どうやらこの三人については問題は無いようだ。他にもニケーの占いや、パンテーラの演説で護衛をしているテンジアンとジブリールの様子も動画化されており、皆が健在である事を確認することが出来た。
『うーん、テセオの様子の動画が無いみたいだけど…』
『ワールドハックがあるとは言っても今の時期は忙しいみたいだから動画配信する余裕、無いんじゃないかしら? 確かテラフォーミングを済ませた火星のネットのインフラ整備を引き受けているみたいだし』
「テセオの健在はエデン公式チャンネルの存在が証明してるから大丈夫だろう。…それよりも、ジブリールがまともになっている様で一安心と言った所だよ…」
『一時期のジブリールは隙あらばGVにくっ付こうとしてたよね…』
『結局、アタシ達が「躾」をして漸く大人しくなったんだから…大変だったわよ…』
…シアン達がジブリールにどんな「躾」をしたのかは聞かないでおこう。藪蛇になりそうだ。まあ、こうしてこれからもエデンは存続していくのだろう。能力者の「
皇神
僕の部屋にとあるデータの入ったディスク、そして手紙が送り届けられていた。
「これは皇神…紫電から送られてきたものか」
同封された手紙にはこう書かれていた。「このデータディスクには君やアキュラの意見やデータを参考に開発された記念すべき「アーム・スレイブ*1」第一号のデータと試験運用時の動画が収められている。見終わったら破棄する様に」と。
『…GVとアキュラの意見やデータを参考にしたって言うからもしかしてって思ったけど』
『本当に
「しかも「ラムダ・ドライバ」搭載機を…ね。こうやって自信満々に僕に送り付けたという事は…上手く出来たと考えるべきなのだろうな」
そうして僕達は試験運用時の動画を見る事となった。
「…僕は確かに核兵器が無意味になりうる兵器だと説明はしたけれど」
『本当に核兵器を用意して直接打ち込んでいるとは思わなかったわ…』
救いなのは試験運用の際の場所が月面であった事だろう。ここならば地球上での影響は無いだろうし…だけどこの内容は、恐らく世界中を震撼させる事になるだろう。実際に核爆発に対して
「人々のヘイトをこのASへと向けて、徐々に能力者の脅威を矮小化するのが狙いだと紫電は話していたな」
『とはいえ、これはあくまで攻撃を防いだだけでしょ? それだけじゃ、まだ脅威と言えないと思うわ』
『待ってモルフォ。まだ続きがあるみたい』
動画はまだ続いていた。核爆発を凌いだASの周りにターゲッティングらしき柱が投下され、その柱に対してアサルトライフルらしき銃での砲撃が行われた。
『ラムダドライバの攻撃運用も問題無く出来るのね…』
そして次に持ち出された武装は人間でいう所の対戦車ライフルとも呼べる銃。普通に考えれば強度的な問題で、この銃の反動に耐えられない筈であるのだが…
「ASが反動に耐えられるのは想定通りだけど…砲撃の威力が想像以上に凄いな」
『着弾地点の抉れ方が凄い…』
…仮に僕がこの機体と敵対したと想定した場合、
『月面である事を差し引いても、動きが凄く軽快よね』
(紫電、上手く行きすぎなんじゃ無いのか? …アキュラにも色々と相談をした方がいいかもしれないな)
そんな僕の心配をよそに、後に皇神は能力者、無能力者の区別なく運用できるこのASの量産を成功させ、見事に能力者に対するヘイトをASへと移す事に成功し、結果的に能力者と無能力者の対立が沈静化する切欠の一つとなった。
そしてこのAS…意外な事なのだが、この世界における宇宙開拓で正しくその力を大いに振るう事となり、皇神とASの開発責任者である紫電の名を後世に轟かせる事となるのであった。
シアンとの心の繋がりを感じた