【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる 作:琉土
これはとある目的の為の
異なる世界の蒼き雷霆と電子の謡精
彼等の行く末を見守るは
第一話
並行世界。それは所謂パラレルワールドと呼ばれる物であり、ある世界から分岐し、それに並行して存在する別の世界の事だ。転生前の世界の物理学の世界でも理論的な可能性が語られており、量子力学の多世界解釈や宇宙論の「ベビーユニバース」仮説等が上げられる。
何故突然このような事を解説したのか? それは僕達の世界から見て異世界とも言える「エクサピーコ宇宙」に存在している「イオナサル・ククルル・プリシェール*1」、彼女を助け出す為である。彼女は転生前の世界で「シェルノサージュ*2」「アルノサージュ*3」と呼ばれる
とは言え、僕自身がカムフラージュされていた事に本当の意味で気が付いたのはアスロックと戦っていた時に波動の力で呼び出したアーシェス。このロボットから流れて来た想いと未知の波動を感じて漸く僕は確信したのである。とは言え、だからと言って転生前の時にゲーム感覚でシェルノサージュをしていたのかと聞かれたら、否であると答えるが。
何しろ転生前の段階でシアン達はこれがゲームでは無く、現実で起こっている事だと把握していたからだ。シアン達曰く、切欠はシェルノサージュを起動したゲーム端末から、今まで感じた事の無い波動を感じた事であり、自身の歌を聞かせたらイオンの疲れが無くなっていた事が決定打となったのだと言う。
そういう訳でシェルノサージュにおいては無事彼女をアルノサージュへと続く所まで導く事が出来たのだが、問題はここからであった。
彼女を助けたいと思う理由も当然存在する。それはシアン達が助けたいと願っているから。決定打であったのは、人体実験で苦しんでいる彼女の音声データの記録を聞いたからだとシアン達は語っていた。…転生前なら分からなかったけど、人体実験は今の僕にとっても他人事で無い。実際に僕自身、その最中にアシモフに救出されたのだから。
そんなイオンが人体実験をされていた理由がある。それは彼女は元々エクサピーコ宇宙出身では無く、寧ろ僕達の世界に近い地球が存在する並行世界から呼び出された存在「結城 寧」と呼ばれる女性が魂だけでこの世界へと移動した際に得た能力「俯瞰視点*5」が主な理由である。
話を戻すが、異世界移動と並行世界移動は厳密に言うと別物だ。そもそも、世界移動をすると言うのは難易度が高すぎると言えるだろう。そこで僕は協力者を集める事にした。何しろ何も知らなければあまりにも馬鹿げた話なのである。先ずはアキュラに、そして世界移動経験者であるシャオに話を持ち掛ける事にした。
「……ふむ、確かに、これまで観測された物とは異なる波動が検知されているな。最初に聞いた時は全くもって信じられん話ではあったが、こうして証拠を突きつけられると素直に認めざるを得ん」
『僕のセンサーでも観測出来ちゃってるよ…コレ、傍から見れば骨董品のゲーム端末その物だって言うのにさ』
「私も何となく分かるよ。シアンの言う今まで感じた事の無い波動、伝わってくる」
「とは言え、異世界移動は現段階では無茶だよ、GV。そもそも世界移動その物の経験が多く無いんだから」
「となると、先ずは移動手段の確立から…という事か」
「そう言う事だな。先ずは移動に関わるデータが無ければ俺でもどうしようもない。とは言え、悪い話ばかりでは無い。この端末に向こうの世界の座標らしき物がある事は分かっているからな。後は移動手段と、
『存在を確立する方法?』
「…向こうの世界はこことは異なる法則で出来ている世界なのだろう? もしこのまま何の対策も無く俺達が向こうの世界に行けば何が起こるか分からないぞ。それこそ、先の説明であった時空の歪みとやらを発生させる要因にもなりかねん。それは避けねば不味いだろう」
『確かにそうね…』
「とはいえ、いきなり異世界へと飛ぶ事はしないから、それはまだ後回しでいいだろう。先ずは並行世界移動のデータを蓄積する事からだ」
そう言う訳で、並行世界移動のデータを蓄積する為にアキュラから専用の計器を受け取り、シャオによる並行世界移動が行われた。その先で待っていた物は…結果を先に言えば、
まず僕がここに来る前に行ったのは正体を隠す為の女体化、そしてシアン達も、自身の体を電子のサイズへと縮小してもらっていた。何しろ
「…ここが並行世界、か。シャオ、再度戻るのにはしばらく時間が必要なのよね?」
「うん。最低半年は必要かな。とは言え、G…ネームレスも僕も寿命の問題は無いから実質死ななければ大丈夫なんだけどさ。…じゃあネームレス、連絡をする時はこの専用の通信機で頼むよ」
「ありがとう、シャオ。…私はこの後情報収集をする予定だけど、シャオはその間どうしてるの?」
「僕もちょっとこの世界の情報を漁って見るよ。並行世界移動自体は出来ても、まだ多少の時差は生じてる筈だからね」
「時差…ね。アキュラが世界移動のデータを求める理由が分かった気がするわ」
このやり取りを終えた後、僕とシャオは二手に分かれ、それぞれの手段で情報収集を行った。その結果、この並行世界はまだ電子の謡精モルフォが国民の希望として健在であり、フェザーがそれに対しての破壊ミッションを行う前の状態…具体的に言うと、ジーノとモニカさんが日本国内に侵入する前である事が判明した。
『…GV』
「分かっているわ。…この世界の私達の行く末が知りたいのでしょう?」
『ええ…並行世界とは言え、GVやアタシ達自身の事だから。どうしても気になっちゃって』
『シャオから一応話だけは聞いては居るんだけど…ね』
僕達の本来の目的その物は既に殆ど達成している。転移時のデータも既にシャオに渡してある為、その辺りの問題は解決していると言ってもいいだろう。…シャオに相談してみよう。帰還するには現段階では彼の能力が必須なのだから。
「シアン達の行く末かぁ…僕は余り見たいとは思わないかな。下手したら僕の居た世界みたいに二人が撃たれる場面を直接見る事になるかもしれないんだからさ。それにネームレス…君がその場面にもし遭遇したら多分介入しちゃうと思うんだけど、その収拾出来る? …助けられるかって意味じゃないよ? 当然
「…………」
「僕は直接参加はしないけど、サポートならしてもいいよ。何しろネームレスには借りがあるからね。でも行動に移すなら、せめて助けた後はどうするのかを決めた方がいいと思う」
「そうね。…助けた後で放り出すのは無責任だと私も思うわ」
『相談に乗ってくれてありがとう。シャオ』
『それとゴメンね、シャオ。アタシ達、そこまで頭が回らなかったわ』
「他の世界の事とは言え、自分達の行く末が気になるのは当然だと僕は思うから、僕自身は後始末さえ気にしてくれれば問題は無いって思ってるよ」
僕達はシャオが言っていた様に彼の居た世界の僕達の事の顛末は既に聞いている。この世界も必ずそうなるとは限らないけど、少なくとも僕達が何もしなければシャオの言っていた結末になる可能性は高いと睨んでいる。何しろこの世界のデータバンク施設の情報と僕の居た世界にある同施設の情報の差異が無かったからだ。
僕はシャオの言うような場面に遭遇したら、まず手を出してしまうのは確実だ。何しろ別世界とは言えシアンが撃たれてしまうのだから。そして、ここで問題になってくるのがシャオの言う「助けた後はどうするのか」だ。
何しろこの世界の二人から見れば見知らぬ信用も信頼も無い他人に助けられるような物だ。そんな奴の言う事を簡単に信じられるだろうか? 信用を得たいのなら最低でもそれなりの付き合いを持たないとダメだ。
…まだジーノ達はこの国に来ては居ない。この後起こるであろう「皇神とエデンの抗争」の際、アシモフが大電波塔アマテラスをシステムダウンさせた隙を突いてジーノ達は侵入している。…僕が接点を持つのならば、この辺りだろう。
――――
「ターゲットは「
「電子の謡精モルフォちゃんと言えば、誰もが知ってる国民的バーチャルアイドルだぜ? そんな子を、どうしてまた?」
電子の謡精モルフォと言えばジーノ所か僕も知っている。人々の希望とされている国民的バーチャルアイドル。それが彼女だ。そんな疑問を内心持ちながら、僕はアシモフの話を聞いていた。
「彼女の歌は、我々能力者の精神…具体的には
「つまりモルフォは能力者を炙り出すソナーだったという訳ね。…アシモフ、この情報はやっぱり
「うむ。諜報班、そして
「あの凄腕の美人ちゃんが参加してくれるのかよ。こいつは頼もしいぜ!…あれで恋人が居なければ文句無いんだけどなぁ…」
「もし私に恋人が居なかったらジーノが私を口説いていたのかしら?」
「当然…っていつの間に居たんだよ。ビックリしたじゃねぇか」
「彼女は最初からここに居たよ。ジーノ」
そう、気配を消したまま最初からここに居たのである。サポートをしてもらう以上一緒にミッションの詳細を確認するのは当然なのだから。…相変わらず気配を消すのが上手い。僕も彼女との訓練の際、陽炎の如く神出鬼没な彼女の戦い方には手を焼く程だ。
「訓練が足りないな、ジーノ。…ともあれ、能力者の自由のためにも、そんなものは破壊せねばならない。 ターゲットのプログラムコアは皇神の施設である皇神第一ビルに保管されている。我々とネームレスが別々に陽動を行う。GVはそのスキに施設に侵入しターゲットを破壊してくれ」
「了解」
これでミッションの詳細確認を終えようとした時、ネームレスから待ったが掛かった。
「…ちょっと待って貰えるかしら?」
「どうしたのネームレス。何か問題があったかしら?」
「ええ…少し私達諜報班が集めた情報で気になる事があって。今回の情報、如何にも情報の出所が怪しいのよ」
「…続けてくれ」
「ええ。何と言うか、今回の情報は意図的に
ネームレスのこの言い方…今回のミッションも一筋縄ではいかないって事だろう。彼女がこんな風にミッションギリギリまで僕を引き留める場合、まず厄介な事になるのはお約束と言ってもいい。そして彼女の忠告を無視すると、余計に酷い事になる。これは僕達チームシープスだけでは無く、フェザー全体にも言える事だ。
「…これは厄介な事になりそうね」
「モニカ、何時もの事じゃねぇか。それにその事が事前に分かるだけでも上等だぜ。なあGV?」
「そうだね、ジーノ。彼女の情報には僕達はいつも助けられてるし」
「いいだろう。君の
「了解よ、アシモフ。必ず裏は取ってくるから」
そうしてミッションの詳細が終えたその直後に彼女は姿を消した。早速裏を取りに向かったのだろう。そして案の定、この情報は掴まされた物であると判明し、モルフォのプログラムコアは近くの輸送列車に輸送される手筈となっている事が判明したのだ。相変わらず仕事が早くて助かる。
こうして僕は電子の謡精の破壊ミッションに挑む事となった。この先待ち受ける運命も、未来も、分からないままに。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。