【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる   作:琉土

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第四話

「では、ミッションの再確認だ。GVはその人工島を正面突破し。敵の陽動を頼む。その隙に我々が軌道エレベーターのコントロール施設をジャック…コントロールを奪い次第、軌道エレベーターを使ってGVを宇宙へと送り届ける。作戦名は電子の謡精(サイバーディ-ヴァ)救出ミッションとする」

「ニヒヒッ! そりゃあいいや! あの時抹殺しようとしたターゲットを今度は救出ってか?」

「…あの日から始まった電子の謡精を巡る戦い、我々の手で決着をつけよう。グッドラック!」

 

 そうして始まったこのミッション…この日の天気は吹き付ける雨風で――僕の心を映したかの様に、人工島の空は大きく荒れていた。シアンが攫われた。その事実だけで僕の心もこんな有様だ。…何時の間にか、彼女はこんなにも僕の心を占めていたのか。

 

「正面突破だけあって…流石に敵の数が多い…!」

「この風雨の影響で貴方の機動力は落ちているわ。ジャンプすると、風の影響をもろに受けてしまう…焦る気持ちもわかるけど…敵は無理して跳び越えずに、落ち着いて各個撃破した方がいいわ」

「しっかりしなさい。そんな有様ではシアンを助けられないわよ」

「GV…熱くなるなよ、負けるぜ? クールになれ、GV。お前ならこんなミッション1500秒以内に遂行できるはずだ…ってこりゃフラグか…失敬失敬。兎に角、普段通りのお前なら楽勝だってことだ」

「ネームレス…ジーノ…」

「善処するよ、ってか?」

「いや…ありがとう」

「GV…へっ…そういうのもフラグって言うんだぜ?」

 

 そう言った僕の心を反映してか、風がいつの間にか追い風に変わった。これならば…! そう思いながら僕は雷撃麟のホバーを有効活用しながらより遠くへと飛翔する。

 

「GV、助走もつければより遠くへとジャンプする事が出来るはずよ」

「まあ風向きが変わっただけだから、それはそれで、動きづらそうだけどな…っと、うわっ!?」

「シープス2!!」

「ジーノ!!」

「どうしたの、三人共!?」

「…ヒュゥー。危機一髪だったぜ。いやぁ、ちょっくら敵さんに見つかってよ。二人のおかげで助かったぜ」

「GVが心配なのはわかるが、注意は怠るな?」

「まあ、ミッションが終わったら追加の訓練は確定だけどね」

「悪かったよ…気をつけるぜ。それと、追加の訓練は勘弁してくれ…」

 

 ジーノ、無事だったか…僕はホッと胸を撫でおろし、先へと進んだ。その先には第九世代戦車の改良型…マンティスレギオンが二機立ち塞がったが、複数とは言え、今更こんな玩具に後れを取る事等あり得ない。

 

「僕を阻む者は…塵と返す…までだ!」

 

 コアを露出させ、そこにダートを撃ち込み雷撃麟による雷撃で致命傷を与え、撃破した。…これで二機目。

 

「よっし! やったようだな、GV! こっちも朗報だぜ? コントロール施設の制圧が完了した。いつでもお前を送り出してやれるぜ! 後はGVが軌道エレベーターに乗り込むだけだな!」

「了解、このまま突破する!」

 

 そうして先へと進んでいくと三機目のマンティスレギオンが姿を現す。

 

「二度あることは三度ある…確か、この国のことわざだったな…何度来ても同じだ…! こんな玩具、僕の蒼き雷霆が打ち砕く!」

 

 そうして僕の言葉通り、三機目のコアを露出させ、打ち砕いた。

 

「撃破完了」

「よっしゃ! あと少しで起動エレベーターだな!」

「ああ…皆の厚意、無駄にはしない! 待っていてくれ…シアン!」

「…………」

「…アシモフ、どうかした?」

「…! ネームレス、周囲を警戒していただけだ。問題は無い」

「…そう。まあここは敵の拠点。いつも以上に警戒するのは当たり前よね」

 

 そうして僕は遂に起動エレベーターへとたどり着いたのだが…

 

「あぁ~、君、やっぱり来ちゃったかぁ」

「…メラク! シアンをどうした?」

「…そんなの、もう軌道衛星(アメノウキハシ)に運んだに決まってるじゃん…はぁ…やれやれ、君がここに来たら邪魔するように紫電から言われてるんだよね。めんどくさいけど…生き返らせてもらった恩義は返さないとね…?」

「生き返らせて貰った…だと?」

「そうだよ? っていうかさー、君が殺したんじゃん。あー、でも深くは詮索しないでね? どうせ答えられないし。ま、企業秘密ってやつ? 大企業だからねー、皇神はさぁ。その辺もけっこーめんどくさいんだよねー」

「相変わらず…ふざけた奴め…シアンを連れ去ったお前を僕はゆるさない!」

「おー、こわこわ…! やだなぁ、僕はただ真面目にお仕事してるだけなのに…ま、いいや。こっちもキミとこれ以上お喋りするつもりはないし…疲れるしさぁ」

 

 ここは足場が悪い…とはいえ、相手は一度下したメラクだ。どういう原理で蘇ったのかは分からないが、既に行動も見切っており、動きも大差が無い様だ。負ける道理など、有りはしない!

 

「なら、再び眠っていろ…永久に…! 迸れ! 蒼き雷霆よ(アームドブルー)! 蘇りし悪夢を討ち払え!!」

 

 そうして僕は順当に、特に消耗も無くメラクを倒すことが出来た。既にデータも揃っており、一度戦って勝利している以上、当然の勝利と言えた。

 

「GV! 無事なのね!」

「問題ありません…このまま軌道エレベータに乗り込みます」

「よかったわ…でも、あいつ…「生き返らせてもらった」って言っていたわね…」

「復活怪人とくりゃあ特撮ヒーローのお約束だが…そりゃぁ、いくらなんでも…なあ、リーダー…ん? って、あれ? リーダー…どこに行ったんだ…? ネームレスは知らないか?」

「…そういえば、いつの間にか居なくなっていたわね。とは言えジーノ、多分だけどその復活怪人と言う例え、当たりかもしれないわ。GVも聞いておきなさい」

「…どういうことだ、ネームレス?」

「以前、地下施設に居た「エリーゼ」って子を覚えているかしら?」

「地下施設…あの時の子か」

 

 エリーゼは確か生命輪廻(アンリミテッドアニムス)…自身限定とは言え、完全な蘇生を可能としている能力者の一人だ。

 

「あの時、二人に分かれて襲って来たってGVは言っていたわよね?」

「ええ、その通りですが…」

「実はあの後この地下施設をくまなく調べてみたのだけれど…()()()とも言える人格が存在している事が分かったのよ」

「…! 三人目、ですか」

「おいおい…ってことぁまさか」

「その三人目の人格が、メラクを蘇らせたって事なのね?」

「そう言う事よ。でも、この三人目は人格に問題があってとても危険な存在なのよね…だから恐らくだけど、この三人目の制御を皇神は可能とした可能性が高いわ」

 

 ネームレスの推測は多分合っているだろう。現にこうしてメラクが復活しているのだから。という事は、エリーゼを止めない限り彼らは何度でも復活する。

 

「元々そのつもりではあったけど、これは私も向かう必要があるわね…」

「…ネームレス?」

「私もGVと共に行くわ。 こうなった以上、GVには力を温存して貰わないといけない。それに、私も一緒に行けば()()()()()()でGVとの通信を維持出来るわ」

「ネームレス…そんな物を持っていたの?」

「虎の子の切り札だけどね…モニカ、これを渡しておくわ。これを普段使っている通信機に接続してくれれば、私が持っている通信機限定だけど、高度限界を超えての通信が可能となるわ」

「ありがとう、ネームレス」

 

 ここから先もモニカさん達の通信を受けられるのか…これは正直助かる。それに、ネームレスも付いて来てくれる様だ。ジーノは…流石に起動エレベータとモニカさんの守りもあるだろうから、残らないとダメだろうけど…そうして僕とネームレスは起動エレベータへと乗り込み、天空高く宇宙(ソラ)聳える施設「アメノウキハシ」へと向かう事となったのであった。

 

 

――――

 

 

 この世界の僕は恵まれている。何しろ七宝剣の能力者達と真っ向から再び戦う事となったとはいえ、僕とは違って各個撃破出来ていた上に、二人で一緒に対処する事が出来たからだ。最初に出て来たのは「ストラトス」…その次は「イオタ」…そして「デイトナ」。戦力の逐次投入と言う愚策をあえてしなければならなかったのは、僕の時とは違って連携する為の訓練をする時間が無かったからだろう。そして…

 

「キシャシャシャシャッ!!」

「誰だ!」

「シャシャシャ!! アンタガ、がんヴぉるとぉ? ソレニ…アタシのシラナイオモチャがいるぅゥ!」

「こりゃあ…やっぱりあの時の子かよ…それにしては随分と雰囲気が違うみたいだけどよ…」

「やっぱり…ネームレスの予想通り、今までの能力者はお前が蘇らせていたのか…エリーゼ!」

「ソウだヨォ~! アタシガァ…コウやってェ…」

 

 三人目の人格のエリーゼが力を行使したのだろう。紫色の力の柱が2柱出現し、その中から、オリジナルの弱気なエリーゼと、強気なエリーゼが現れた。

 

「はうぅ…生き返ってすみませぇん…」

「同じ顔の子が増えやがった! 本当に特撮の世界じゃねぇか!」

「…その姿、やはりまだ別の人格が居たのか」

「ウフフ…大正解。前に戦った時、死ぬ瞬間に「そいつ」の魂を逃がしておいたの…もっとも危険な人格(エリーゼ)…その魂の封印を解いたのよ。正直、一か八かの賭けだったわ…そいつはアタシも皇神も制御できない(ケダモノ)…でも、賭けはアタシの勝ち。だってアタシ達は、こうして蘇ったわ!」

「キシャシャシャシャ!! サァ、五人でアそボッカァ?」

「本当にジーノの言った通り、復活怪人だったわね…」

「改めて自己紹介といこうかしら。アタシはエリーゼ3」

「わっ…私は…オリジナル…エリーゼ1…です…はい…」

「そしてそいつがエリーゼ2…」

 

 エリーゼ3を名乗る彼女が、新しく増えた分身に目配せする。だが、エリーゼ2は獣じみた笑い声を上げるだけで、話を聞いている様子はない…この世界でも同様にこのエリーゼの人格は壊れている様だ。

 

「はぁ…そうね。こういうヤツだったわ。そいつ、アタシより先に造られたんだけど…コントロールできないからって暗示で封印されてたのよねェ…でも、ココにいるってことは…皇神の連中も、そいつの制御法見つけたのかもねぇ」

「シシッ! アタシはァ…シィ~ラなぁイィッ! キシシシシッ!!」

「…ふぅん…まあ、いいわ。本当の生命輪廻の力、とくと御覧なさい!」

「何であろうと、お前たちが僕の行く手を阻むのなら…葬り去るだけだ…!」

「フフフ…いいわぁその目…ゾクゾクしちゃう。それでも、きっと坊や達は、アタシ達…いいえ「そいつ」には勝てない…」

 

 このエリーゼ3の言っている事は残念ながらごく一部の方法を除いて正しい。エリーゼ2は一番能力の扱いに長けている。つまり、攻撃を当てても瞬く間に傷を直してしまうのだ。故に、この世界の僕では攻略する手段が無い。可能性があるとすれば、アキュラが持っているであろう疑似第七波動「対能力者用特殊弾頭(グリードスナッチャー)」。これ位だろう。

 

「GV…」

「何ですか、ネームレス」

「貴方は先へと向かいなさい。ここは私が何とかするわ」

「おいおいネームレス。大丈夫なのか? ただでさえ人数的に不利なのによ」

「大丈夫よ。対抗できる手段が複数あるから」

「本当に? でもネームレス、今までの攻撃は全て当たった瞬間に回復されてしまっているけど…」

「GVが居ると巻き込まれてしまう可能性があるのよ…貴方の役目はシアンを助ける事よ。手遅れになる前に急いで頂戴。私の方は大丈夫だから…それとこの通信機を預けるわ。後で返してもらうから、壊しちゃダメよ」

「ネームレス…分かりました」

「…分かったわ。気を付けてね、ネームレス」

「…気を付けろよ、ネームレス」

 

 そうして僕はこの世界の僕を先へと送り出し、彼女達の前へと立ち塞がった。…さて、実際に何とか出来る方法はある。それはダメージに関係無く「即死」させる事。…今ならば僕の世界のシアン達を表に出せるはずだ。ならば…

 

「ふふ…エリーゼ2の力はアタシたち以上…完全な蘇生を可能としているの。坊やでも無理だったのに、貴女一人で何が出来るのかしら?」

「生憎、私は一人では無いわ。…今まで表に出せなくてごめんなさいね。出番よ! ()()()()()()()()!!」

『いよいよアタシ達の出番ね! 待ってたわよ、G…ネームレス!!』

『即死攻撃なら…モルフォ、合わせて!』

『『()()()()…「アリス」!!』』

 

 姿を現した二人が呼び出したのはペルソナ4におけるアルカナの「死神」に属する上位のペルソナ「アリス」だ。そしてペルソナシリーズのアリスと言えば、()()()()()()()が余りにも有名だ。…それにしても、このアリスは僕の知っているアリスと瓜二つだ。そう、僕の世界に居たパンテーラから生まれた彼女に。

 

「呼んでくれてありがとう、()()()。ふぅん…この子達がターゲットね? 何か要望はあるかしら?」

『…呼んだのはアタシ達なんだけど…』

『それよりも、どうして貴女が出てくるの!?』

「ふふふ…細かい事を気にしてはダメよ、二人共」

 

 …どういった原理なのかは不明だけど、この場に居る彼女は間違いなく僕の世界のパンテーラから生まれた「アリス」だ。後から聞いた話なのだが、二人が呼び出す際のイメージによってペルソナはその在り様が変わるとの事。つまり、二人にとっての「アリス」は彼女なのだろう。記憶も彼女を送還した後にアリス本人に残るらしい。本当に、どういった原理なのだろうか? まあそれは兎も角…

 

「可能ならば、オリジナルのエリーゼ…あの弱気の彼女は生かしておいて欲しいのだけれど…出来るかしら?」

「ええ、十分に出来るわ。それに、他ならぬお姉様のお願いですから…じゃあ貴女達二人共…」

 

 アリスの行おうとしている行為に対して、エリーゼ2とエリーゼ3は自身を取り巻く悪寒を感じたのだろう。迷わずモルフォの呼び出したアリスに飛びつき彼女の行おうとしている事を阻止しようとしたのだが、アリスを呼び出してからずっと足止めに専念していた僕を突破する事は出来なかった。故に…

 

()()()()()()()

「キシャ…」

「ぁ…」

「……え?」

 

 こうなるのは分かり切った結末であった。そう、これがペルソナ「アリス」が得意とする高確率の即死効果を持った魔法攻撃スキル、「死んでくれる?」だ。その無垢なる呪言により二人は命を終え、姿も崩れ落ちた。その事実にオリジナルのエリーゼは理解が追い付いていない。その隙に僕はこのエリーゼを当て身で気絶させ、記憶の処理を済ませた後に壁によりかからせる形で()()()()()()()()

 

「じゃあお姉様、また会いましょう?」

「ええ、また今度ね。シアンもモルフォもありがとう。彼女を呼び出してくれて」

『いいのよ。アタシはネームレスの役に立てればそれでいいし…でも、良かったの? エリーゼの事、見逃しても』

「ええ。そうしないと()()()()()()()事が出来ないでしょう?」

『…紫電が居ないと、この国の国防が成り立たないから…だよね?』

 

 この世界の僕は順当にいけば紫電と戦い、勝利を収めることが出来るだろう。だけど、そうなるとこの国の収拾が付かなくなってしまう。彼のそのやり方は性急に過ぎるが、シアンを犠牲にしている事以外は決して間違ってはいないのだから。そうして僕はこの世界の僕と合流しようと先へと進んだのだが…

 

「この辺り一面…戦闘痕が多いわね…」

『この抉れ方…アキュラの使ってた「ミリオンイーター」みたい』

『こっちは「ブレイジングバリスタ」っぽいわね』

「これは…ダート。つまり、ここでこの世界の私とアキュラと戦闘があったという訳ね」

 

 という事は…今からアキュラの行方を追えば、何故アシモフがシャオの言った通りの事を仕出かしてしまったのかが分かるかもしれない。何故なら、アシモフはアキュラから銃を奪い取っていたからだ。幸い、この世界の「アメノウキハシ」の構造の変化は無い。だとすれば、アキュラの侵入経路であり得るのはこの施設の資材搬入口。確か彼は小型宇宙艇を所有していた筈。十分あり得る話だろう。

 

「急ぎましょう。それとシアン、モルフォ、また姿を眩ませてくれないかしら? アシモフと鉢合わせする可能性があるから」

『うん…頑張ってね、ネームレス』

『ええ、さっきは頼ってくれてありがと。ネームレス』

 

 そしてシアン達は姿を電子のサイズへと戻り、僕は姿を消しながら資材搬入口を目指した。そして僕がそこにたどり着いた時、アシモフがアキュラの小型宇宙艇のコックピットをのぞき込んでいた処であったのだった。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。




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