【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる 作:琉土
「このマシン…ビークルか? 皇神のデザインでは無い様だが…
アシモフは小型宇宙艇のコックピットに銃口を突きつけ、破壊しようとトリガーを引こうとした。その瞬間、満身創痍の姿のアキュラが注意を逸らすように声を上げ、アシモフに
「焼き尽くせ!
「ッ! …その攻撃と
「…お互いの情報は伝わっているという事か」
そうして戦いは進んでいく…アキュラが手早くウェポン・カートリッジを変更し、
「くっ!」
「貴様の言った通りだ、無能力者。お互いデータは伝わっている!」
その瞬間、アシモフは左腕で能力を抑える機能を持った色眼鏡を外すと、彼の瞳が白く濁った。そして、エクスギアを掴んだ拳から
「貴様、その
「我等が第七波動をコピーできる無能力者等…なんて
アシモフの体から青白い雷撃が迸った。それを見たアキュラは即座に体制を立て直し、エクスギアを反転させ、まだ無事であった砲身をアシモフへと向けた。
「食らい尽くせ!
エクスギアの砲門から羽虫を模した光の群体がアシモフを取り囲み、食らい尽くそうとしていたが…アシモフの体が残像となってブレた。そう、あれは
「
「だろうな。だが、目くらましにはなる」
そうしてエクスギアを持っていない手にあった銃のトリガーを引いた。そこから飛び出したのは黒いエネルギー球。そう、
「これは……ぐぅっ……!」
「それが
そうして膝を付いたアシモフに狙いを定め、僕はここまでだと思い飛び出そうと思っていたが、アシモフは起死回生の一手を繰り出した。
――滾る雷火は信念の導 轟く雷音は因果の証 裂く雷電こそは万象の理
「くそッ! ヴォルティックチェーン!」
アシモフの足元の空間から雷撃を帯びた鎖が伸び、アキュラの銃を弾き飛ばした。そして、そのまま伸びた鎖がエクスギアを、アキュラの体を絡め取っていく。
「うおおおおおおッ!!!」
「ぐああああああッ!!」
アシモフの咆哮に呼応するように鎖の帯びた雷撃は勢いを増し、強烈な稲光と共にアキュラを締め上げていく。そしてアシモフはゆっくりと立ち上がり、転がったアキュラの銃を拾い上げる。
「無能力者風情が、こんな…こんな物を……!」
「やめ……ろ…穢れた手で、その銃に触れるな……!」
「そんなにこの銃が好きならば、この銃で死をくれてやろう……デッドエンドだ!」
…何となく、分かった。何故アシモフがシャオの言う通りの事を仕出かしたのかを。アシモフの過去、この「アメノウキハシ」の施設、憎むべき無能力者、能力者の天敵とも言えるグリードスナッチャー、そしてこの施設を生かす為の
アシモフは過去の経験から、無能力者を憎んでいる。だけど、全てを憎んでいるのかと言われたら、そんな事は無いだろう。何しろ同じチームシープスのメンバーのモニカさんは無能力者だ。本当にそこまで憎悪していたのであれば、彼女をチームに引き入れるなんて事はしないはずだ。
だけど、今回の出来事でアシモフは明確な危機感を得た。そう、グリードスナッチャーだ。あれは無能力者でも安易に扱える。実際に僕だって渡されて直ぐに扱う事が出来たのだから。アレが量産されれば、能力者達はどうしようもないと言える程に不利を強いられる。ならばそうなる前に無能力者達を殲滅する必要がある。
だけどどうやって? そうだ、方法はあるじゃ無いか。ここにある施設と電子の謡精を使えばいい。そう考えても不思議では無い。そして、そんなアシモフの誘いをこの世界の僕が乗るとは思えない。何故ならば、皆を苦しめる歌を歌いたく無いと言ったシアンがそれを望む事は無いからだ。…そう考えている内に、アシモフは銃をアキュラに突きつけ、トリガーを…
「アキュラ様!!」
引く寸前に、小型宇宙艇内部に潜んでいたであろうノワが飛び出し、アシモフに飛び蹴りを放った。
「アホ
「チィッ!」
まだグリードスナッチャーの影響が残っているであろうアシモフは回避せざるを得ず、その予期せぬ乱入によって集中力を乱した為、ヴォルティックチェーンの
「今は引きましょう。緊急時につきご無礼をお許しください」
アキュラを軽く持ち上げ、小型宇宙艇に乱暴に放り投げた後、ノワも操縦席へと乗り込んだ。アシモフも逃がすまいとハンドガンを放ったが、小型宇宙艇の外壁を傷つけるだけで、最終的に内側からアメノウキハシの外壁をぶち破り、宇宙空間へと飛び出した。
(やっぱり、天使も本当に居るみたいね。…そんな事を考えている場合じゃ無かった。とりあえず、事の顛末は把握したわ。先ずは…GVの所へ急ぎましょう。あの施設を破壊しなければ)
そうして紫電が居るであろう場所へと向かった。その道のりではこの世界の僕が急いでいた為相手にしなかったのであろう忍者兵が居たが、帰りの事も考え始末しながら先へと進んでいき…その先の部屋には、生き返っていたであろうカレラが立ち塞がった。
「…ここで貴方が立ち塞がるのね」
「ふむ…貴殿が噂に聞くネームレスなる女で候か…貴殿の噂は紫電殿から聞いているで候。何でも、ガンヴォルトと並び立つ程の
「…だったらどうするの?」
「戦うに決まっているでござる! そう! 死してなお、小生の渇望は埋まっておらぬ! 小生が欲するは更なる力ッ!! あのガンヴォルトを屠る程の力よ!! ネームレスよ! 貴殿も小生の力の礎となるがよい!」
カレラが相手である以上、今の姿の戦い方でもまともにやり合えば勝てはするが時間を多く取られてしまう。…あの手で行こう。僕は波動の力で偽装したダートリーダーを取り出し、カートリッジを「ナーガ」にセット。こうする事で同じく髪飾りとして偽装済みの「ディヤウスプラグ」と合わせ、ナーガのチャージショットの威力を爆発的に跳ね上げることが出来る。そして予め装備していた「底力のレンズ」×2と組み合わせ…
(後は、チャージ完了後に意図的にオーバーヒートを引き起こす! ディスチャージングダウン*1!)
「ぬぅ…? 貴殿のその第七波動の気配…!」
「生憎だけど、今は貴方の相手をしている時間は無いの!」
そう叫びながらカレラへと接近し、ゼロ距離からあらゆる方法で威力を増幅させたナーガのチャージショットを浴びせ、カレラを沈黙させた。
「…ごめんなさいね」
彼からすれば、生き返ってもまともに戦う事も出来ずに再び死んでしまったのだから、正しく残念無念な結果だろう。だけど先に言った通り、僕には時間が無い。早くこの世界の僕と合流しなければ。そうしてその先へと進み、奥の部屋へと突入し待っていたのは、ズタボロになっていたこの世界の僕と、助け出されたシアンの姿と、倒れ伏した紫電の姿があった。
「GV! シアン!」
「ネームレス…無事でよかった」
「優奈さん!」
「ネームレス、無事でよかったわ」
「あの三人のエリーゼ相手によく無事だったな!」
僕が貸した通信機からモニカさんとジーノの声が聞こえてくる。外の二人も健在な様で何よりだ。だけど、それよりも先ずは…
「大分消耗してしまっているみたいね、GV、それとシアンも」
「ええ…流石に紫電を相手に出し惜しみは出来ませんでしたから」
「モルフォが最後に助けてくれたから…」
「となると、此処の施設の破壊は私が担当するべきね」
「…施設の破壊?」
「シアンちゃんを救出したんだから、さっさと引き上げた方がいいんじゃねぇか? 長居は無用って言うだろ?」
「…施設を残してしまったら、
「了解」
「後は応急処置を済ませて……これでよし。撃ち漏らしがあるとは思えないけど、万が一って事があって思わぬ伏兵相手にシアンを守れませんでしたでは恰好が付かないわ。それと通信機、返してもらうわね」
そうして僕は通信機を返してもらい、この世界の僕に対して応急処置を済ませた後、貸していた通信機を返却して貰ってから二人を送り出した。
「…ははーん。ネームレス、
「GVの安全を考えるとまだ通信機は渡したままの方がいいと思ったけど…気を聞かせて二人きりにしてあげたかったのね」
「…まあ、そんな所よ。先にも言った通り露払いは済ませてあるから、
「そうだな。あん時の消耗しきったGVなら兎も角、今なら大丈夫だろ。こう言った状況下の訓練だって受けてるし」
「とは言え、施設の破壊に時間をかける理由にはならないわ。…二人がどんな会話をしてるのか、興味無い?」
「興味はあるけどネームレス…」
「うひひ、そりゃあいい! じゃあこんな施設さっさと壊して出歯亀と洒落込もうか。「陽炎」の二つ名、期待してるぜ!」
「もう、ジーノったら…」
そうして私は波動の力による不可視の力でここにある施設の全てをデータのサルベージも出来ない程に破壊した後、即座に姿を消してこの世界の僕の後を追いかけ、その姿を捉えた…まだアシモフと遭遇してい無い様だ。二人の会話が聞こえてくる。
「GV、その首のペンダント…付けてくれてたんだ。何も効果、無い筈なのに」
「…確かに明確な効果はシアンの言う通り無いのかもしれないけど…このペンダントを付けていると、何処からか力が湧いてくる気がしたんだ。それに、紫電との戦いで一度倒れた後、普段よりも明確に君の歌が聞こえた。だから僕はこのペンダントを選んで良かったって思っているよ。ありがとう、シアン」
「GV…」
(…いい雰囲気になっているわね)
(何だか、見ているこっちがお腹いっぱいになりそう…)
(…俺も彼女欲しいなぁ)
そんな風に二人の会話を聞きつつこっそりと護衛をする形で後を追い…そして、遂に来るべき時が来た。そう、アシモフとの遭遇だ。
(おいおい、居なくなったと思ったらこんな所に…やっぱりGVの事が心配だったんじゃねぇか)
(…でもアシモフ、何処か様子がおかしい様な)
「何で、貴方がここに…」
「ご苦労だったGV…それにシアン。 紫電を倒すとは…お前たちこそ、新たなる時代の
「何を…言っているの…?」
「この騒動で皇神は混乱している…今が絶好のチャンスなのだ」
「アシモフ…?」
突然のアシモフの出現とその予想外の言葉に、二人は、それ所かモニカさんとジーノも理解が追い付いて無い様だ。
「GV、お前はフェザーを離れ私が想像した以上に成長したようだ。フェザーに戻って来い、GV。今ならその
「!?」
(おいおい…冗談キツイぜ)
(嘘でしょ…アシモフ…)
「私はフェザーを設立し、この日が来るのをずっと待ち望んできた…今こそ、我ら能力者が「自由」の名の元に立ち上がる時が来たのだ。さあ来い、GV、シアン。共に自由ある世界を勝ち取ろう」
「GV……私は…」
怯えた瞳で、シアンがこの世界の僕を見つめている。そして、このアシモフの発言にジーノ達もショックを隠し切れ無い様だ。特にモニカさんは完全に顔色が真っ青だ…だけど、アシモフが言う様にこの世界の僕は成長しており、シアンの
「大丈夫だよ、シアン…心配しないで…アシモフ…あなたには返しきれない恩がある。僕を皇神の研究所から救い出し、育ててくれた――その恩を忘れるつもりはない…だけど! それが…そんな物が、貴方の野望だと言うのなら…あの紫電や、アキュラと同じだ! シアンを利用するつもりなら、僕が止める…!」
「そうか残念だよ…GV…デッドエンドだ」
「それは…アキュラの銃!」
「ここに来る途中に居た無能力者から奪っておいた。奴と争った際に私も一発かすってしまったが…驚いたよ。どうやら、こいつの弾丸には我々能力者の第七波動を阻害する効果があるらしいな…いかにお前といえど、無事では済むまい」
「…仮に僕がここで倒れても、貴方の野望はもう叶わない!」
「…何?」
「何故なら、もうここの施設は今頃ネームレスに破壊されているからだ! 彼女は言っていた。「施設を残してしまったら、他の誰かが利用する可能性がある」と! …今ならまだ間に合います。そんな馬鹿な事はやめて、一緒にモニカさん達の所へ戻りましょう!」
アシモフは施設を破壊された事もあるだろうけど、それ以上にモニカさんの名前を出された時、僕やジーノ達でも分かる程に少し狼狽える素振りを見せた…やはり、この世界でも彼は無能力者は憎くても、彼女は憎からず想っているのだろう。
「……ネームレスめ、余計な事を…とは言え、GVとシアンの協力が得られない以上、プランの
そう言いながら、この世界の僕に向けて銃を突きつける…やはり、施設の破壊程度では彼の暴走を止める事は出来無い様だ。
「……
(やめて、アシモフ!)
(GV! …畜生、あれじゃ避けられねぇ!)
そう、アシモフが呟きながらアキュラの銃のトリガーを引き、その銃から放たれた黒いエネルギー球は真っ直ぐにこの世界の僕の胸元へと吸い込まれていった…この世界の僕は避ける素振りをしなかった。いや、
「そこまでよ」
アシモフの暴走を止める為に、黒いエネルギー球を波動の力で弾き飛ばしながら姿を現したのであった。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。