【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる   作:琉土

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月下(ビースト)

月下の洋館は来る者拒まず、去る者許さず
出迎えるのは仮面の召使いと残忍な罠
恐怖はない…ただおぞましい予感に心が逸る


第十一話

 シアンが元に戻ってから少しの時間が過ぎた。この間、僕やシャオ、そして優奈さんはエデンの情報を集めつつ日々を過ごしていた。そんなある日、オウカからとある奇妙な情報を聞く事となった。

 

「GVは、最近街で起こっている神隠し事件をご存知ですか?」

「神隠し事件…そう言えば優奈さんも最近そんな事件がこの街で立て続けに起こっている事を話していたな…オウカ、何かあったの?」

「…実は、私のクラスのお友達も行方不明なんです…例の神隠しじゃないかと噂されていて…」

 

 そんな事を僕達が話していた時、優奈さんが帰宅し、その例の神隠しの情報を持ち帰っていた。

 

「GV、例の神隠し事件の情報なんだけど…」

「あ、優奈さん。丁度良かった。実は…」

 

 僕は優奈さんにオウカのクラスの友達が行方不明になっている事を話した。その事を聞いた優奈さんは…

 

「…そう言う事なら、急いだ方が良さそうね。GV、この神隠し事件なんだけど、シャオと一緒に調査した結果、とある洋館の存在が浮かび上がったの」

「とある洋館…ですか」

「ええ…一応、写真も撮っといてあるけど…」

 

 そう言いながら優奈さんはその洋館が移された写真を見せてくれた。

 

「この洋館は…」

「オウカ、知ってるの?」

「はい。この地域では大分前から誰も住んでいない事で有名な洋館なんです」

「つまり、何者かがここを拠点にしていても可笑しくは無い…か」

 

 その様なやり取りの後、僕達はシャオにも協力を要請しつつ、急いでこの洋館へと向かい、内部へと突入した。

 

「協力してくれてありがとう、シャオ」

「気にしないで。丁度優奈と調査して怪しかった場所だったからね。それに、オウカのクラスメイトも被害にあってるんでしょ?  僕も放っておけないよ」

「ここはそこまで広い場所でもないから…私は姿を消して遊撃に回るわね」

「了解」

 

 優奈さんが姿を消し、本格的に洋館内へと突入した僕達を先ず迎えたのは、赤い丸い球の様な物…所謂、浮遊機雷だった。僕はダートを三発当て、これを破壊した。

 

「…入って早々に浮遊機雷の歓迎か」

「もう殆ど黒と判断しても良さそうだね、GV、優奈」

「ええ……シャオ、完全に黒なのが確定したわ…はぁ!」

 

 優奈さんがそう言いながら倒した相手…この特徴的な強化服(パワードスーツ)…こいつは…! 

 

「エデンの兵士…!?」

「予想はしてたけど、神隠しはエデンの仕業だったみたいだね。でも何のために…」

「それは先に進めば分かるはず…急ぎましょう」

 

 道中にはエデンの兵士、浮遊機雷、爆弾を発射して来るロボット等が立ち塞がっていたが、僕と優奈さんの敵では無い。そうして先へと進んで行くと…

 

「うわ! こいつ、なに?」

 

 例えるならば、仮面をかぶったミイラと呼ぶべき存在と遭遇した。僕は三発ダートを当ててからの雷撃で撃破したが…この存在は最終的に血溜りと成り果てた。これは…人? いや、これは…姿は全く似ていないが、僕の脳裏に、かつて戦ったゾンビの姿がよぎる――嫌な予感がする。

 

「…優奈さん」

「…分かっているわ」

 

 優奈さんも僕と同じ事を考えている様だ…最悪、生存者は諦めなければならないのかもしれない。そう思いながら先へと進むと、今度は警備システムが僕達を出迎えた。

 

「持ち主不在のはずの洋館に警備システムなんて…奴ら、ここで一体何を…?」

「さっきのミイラみたいな存在の事を考えると、此処で何かの実験でもしていると考えるのが自然でしょうね」

 

 そんなやり取りをしながら、警備システムを無力化しつつ先へと進んで行く。その先の壁に、大きな爪痕が残っていた。

 

「この爪痕…今まで出て来た敵が付けられる代物では無いわね」

「ここの壁、結構頑丈に出来てる筈なのに…」

 

 シャオのそんなつぶやきを聞きつつ先へと進むと、妙な物体が姿を現した。あれは…見た目通りならば確か鉄の処女(アイアンメイデン)と呼ばれる拷問具だったはず。

 

「どうも前を通った人間を捕縛する罠みたいだね…」

「ただの悪趣味なインテリアじゃないってことか」

「念のため、破壊しながら進みましょう」

 

 道中の罠を破壊しながら、僕達は奥へと進んで行く。

 

「連れ去られた人達…どこにも見当たらないな」

「…GV、私達はもう、その人達を見ていると思うわ」

「前に見たゾンビの事を考えれば確かに…そういえば、アレも第七波動によって作り出された物だった」

「えっ!? GV! ゾンビを見たことあるの? …その話、後で詳しくね」

「シャオ、ゾンビ物が好きなのか…っと、この血溜りは…」

「これまた趣味の悪いトラップだね」

「何も知らずに踏み抜けば…なる程、串刺しになるって訳ね」

 

 優奈さんがこの血溜りへと足を踏み入れた瞬間、それは槍へと変化し、優奈さんを襲った。だけど、彼女はそれを透過する形で回避した。あれは…カゲロウと似てはいるけど、少し性質が異なる様だ。

 

「血溜りの段階…トラップ発動前ならば、雷撃麟で破壊できるみたいだ」

 

 僕はそう言いながら天井にあった血溜りを除去した。そうして先へと進んで行くと、鉄の処女が大量に設置されている場所に出た。

 

「薄気味悪い場所だね…」

『うぅ…もうやだ…なんなのここ…』

「シアン?」

「…怖くて口がきけなかったみたいね…私の方のシアン達も、一緒みたい。所で、ここまで進んでみたけど…ここにはG7が居るとみて間違いないわ」

「優奈、如何して分かるの?」

「道中の罠とか、他にも色々と()()()()()()経由での情報ね」

 

 優奈さんは並行世界から来た蒼き雷霆()だ。つまり、この能力者と戦った経験がある。独自のルートの情報とは、そういう事なのだろう。

 

「どんな相手なの? 優奈」

「確か金属を操る能力者だった筈よ。名前はジブリール。見た目は確か、()()()女の子だった筈」

 

 この時、優奈さんはやけに「小さな」と言う部分を強調しており、この時点で消していた姿も表に出していた。それがどう言う事なのか…それは後程把握する事となる。

 

「あの血溜りからああいった罠を出す原理って、金属を操ってやってたんだね」

「そう言う事よ。そして、此処に出てくるゾンビも恐らく、人間の血液を構成する鉄分を利用して操っているのでしょう」

 

 そうして先へと進んで行くと、なにやら見慣れない、蒼く輝く浮いた光玉を発見した。

 

「あれは…」

「GV、何か見つけたの?」

「…あの光る玉から、蒼き雷霆の力を感じるわ」

「蒼き雷霆の力…言われてみれば、確かに」

「…恐らくだけど、あの力の波動はアシモフの物ね」

「…!」

 

 言われてみれば、確かにあの光玉からアシモフの気配がする。しかし、何故こんな所に…

 

「…GV、能力者が亡くなった後、どうなるか知ってるかしら?」

「…いえ」

「それはね…魂だけの存在となって彷徨うの。生前の能力因子を乗せてね*1

「な…!! じゃあこの光玉は…アシモフの…!」

「この力の波動を考えると、間違いなくそうだと思うわ…この話には続きがあって、この魂に同じ能力者が触れる事で能力の強化が…そして、無能力者が触れる事でその能力に目覚めるの…これの厄介な所はね、死亡した際に能力因子を乗せた魂が複数に拡散してしまう所なのよ」

「………」

「…後に、ここにはこの国の軍関係者とかの能力を持たない人達が調査に来ると思うの。そして、その人達がこの光玉…アシモフの魂の欠片に触れてしまうと…」

「新たな蒼き雷霆の能力者が誕生してしまうんですね…本人の意思とは関係無く…」

「そう言う事よ…私が触れましょうか? 貴方にはまだあの時の心の傷が…」

「…いえ、此処は僕が触れます。僕は優奈さん達のお陰でアシモフのあの出来事によるトラウマを乗り越える事が出来ましたから」

 

 そう言いながら、僕はこの光玉へと触れる…この懐かしい感じ、やはりこれはアシモフの魂なのだろう。そしてこの事により、僕の中で新しい力が覚醒(めざ)める──その新たな力は、この奥に控えていた相手へと向けられる事となった。そう、G7の一人、ジブリールに対して。

 

「この子がG7…ジブリールか。こんな所で何をしている?」

「ふぅん…テメェがガンヴォルトか…ここは(パク)ってきた無能力者(ゴミ)共から生命力(ライフエナジー)を抜き取って、この俺、ジブリール様の第七波動(セブンス)に変える実験場…これも、パンテーラが持ち帰った皇神(スメラギ)の技術ってヤツの一つだ…それよりも、そこの女! ここに来るまでの間に俺の事、「小さな」女の子だって馬鹿にしやがったな!」

「…さて、何の事かしら?」

「しらばっくれるんじゃねぇ! …ニケーからはガンヴォルトやテメェと遭遇したら()()()()退()()()()()言われてたけどよぉ…俺の身長を馬鹿にされた以上、絶対に許さねぇ…ガンヴォルトも当然だが…テメェは特別に極刑だッ! むごたらしくかっさばいてやるッ!」

 

 そう言いながらジブリールは本の様な物を取り出した。その本は一人でにパラパラと動き出し…その本から大量の黒い蝶が溢れ出した。

 

「この力は…!」

「シアンの力の気配がする…」

「行くぜ…!」

 

 その黒い蝶達はジブリールへと集まり、そこには宝剣による変身現象(アームドフェノメン)を引き越したのと同等…いや、それ以上の力を持った彼女の姿があった。その姿はあえて言うならば、童話に出てくる「赤ずきん」を連想させるような姿であった。そして、ジブリールとの戦いが始まった。

 

 彼女の主な攻撃方法は鉄の処女を頭上に出現させて相手を閉じ込めようとしたり、空中に血液の玉を複数展開し、それを道中のトラップの丸ノコに変化させこちらに誘導したり、トラップ化する血液の玉を周囲にばら撒いたりと様々だった。

 

「…やはり、洋館内に居た「彼等」は…!」

生命力(エナジー)を抜き取った抜け殻を、金属を操るオレの第七波動──「メタリカ」で(シモベ)にしてやったのさ! 脈に流れる「鉄分」を操ってな? 能力者(オレ)らをコケにしてきたゴミ共が傅くザマは痛快だったぜ! …そう言えば、つい最近攫ったゴミ共も居たなぁ。テメェらを始末した後、たっぷりといたぶって、抜き取って、始末したテメェらと同様に新しい僕にしてやるよ!」

「やって見なさい! 出来るものならばね! 最も、「小さな」貴女には無理な話でしょうけど…! GV、ここからは出し惜しみは無しよ! 全力で行きましょう!」

「テメェ…また俺の身長の事を馬鹿に…!!」

 

 優奈さんがジブリールを挑発する事で攻撃が彼女に集中した。この間に僕はシアンに謡精の歌(ソングオブディーヴァ)の発動を要請した。

 

「シアン…頼めるかい?」

『ええ、任せて! もうあの怖いのが無くなったから、遠慮なく唄えるわ! いくよ、GV!』

 

――私の歌が、必ず、大好きな貴方を守るから…

 

 シアンの歌の旋律が僕の体を駆け巡る。あの時小さくされてしまった前の時以上に、力が溢れるのを感じる。これならば…!

 

「負ける気が…しない!」

 

 僕の強化が終えると同時に、複数のエデンの兵士がジブリールを掩護する為に僕の周囲に突然出現し、その手に持つ短剣で同時に僕に対して切りつけて来た。恐らく、あの強化服による光学迷彩で忍び寄っていたのだろう。だけど…

 

「お前達が僕を囲んでいるのは分かっていた! 行くぞ、吼雷降(こうらいこう)!」

「「「うわぁっ!!」」」

「ぐ…テメェ! 誘導しやがったな!」

「引っ掛かる貴女が悪いのよ」

 

 いつの間にか優奈さんは僕が新たに得た新スキル「吼雷降」の射程範囲にジブリールを誘導していた様だ。謡精の歌による強化も加わった雷により、僕を囲っていたエデンの兵士たちは全滅し、ジブリールにも打撃を与えることが出来た。

 

「チッ…! ヤルじゃねぇか! だったら…!!」

 

 そう言いながら、ジブリールは赤ずきんの姿から、狼を思わせる姿へと変化させた。これも恐らく、皇神から奪った技術の成果なのだろう。

 

「姿が変わった…!?」

「変態野郎め! 何イヤらしい眼でジロジロ見てんだ!」

 

 そう言いながらジブリ-ルは優奈さんを巻き込む様に切り上げながら巨大な衝撃波を発生させた。それを僕はカゲロウで…優奈さんはカゲロウに似た何かで回避し、僕はダートを三発当ててからの雷撃麟で…優奈さんはその手に持った片手銃(ハンドガン)による攻撃で反撃を試みた。

 

「ぐぅ…こんな奴等に痛めつけられるなんて…! 俺こそが痛めつける側なんだッ! それを思い知らせてやる!!」

「こいつ…正体を失っている?」

「…変身現象特有の状態ね。あの姿だと自身の潜在意識が表に出るのよ。恐らく、自身の能力をより深く引き出す為にね。GVにもああやって変身した相手がおかしくなる所を見た事があるはずよ…デイトナとか」

「そう言えば…確かに…」

 

 この会話の間にも、ジブリールは正気を失いながらも僕達を切り刻もうとこの戦場を跳ねまわったり、時にはフェイントを仕掛けて真上から攻撃を試みたり、増援のエデンの兵士による光学迷彩からの不意打ち等もあったのだが…それでもそれらすべてを跳ねのけ、ジブリールを確実に追い詰めていった。

 

「やるじゃねぇか…俺をここまで痛めつけたのは、お前達が初めてだ! いいぜ、見せてやる! 全身で全霊の! 全力の、全快をッ!! この体、もう、どうなっても知りやしねェッ!!! …行くぜぇ、とっておきだぁ!!!」

 

――疾走を始めた獣の本能 その身貫く無数の鋼刃 痛みを越えて至る楽土

 

「始めるぜ…! アイアンメイデン!!!」

 

 ジブリールは自身を鉄の処女に閉じ込め…その内部から力を開放し、彼女の第七波動が可視化する程の力を纏って姿を現した。そして、そのまま凄まじい速度で僕達に突撃を開始した。この凄まじい連続した突撃に、僕は一度掠ってしまった。

 

「ぐ…オーバーヒートしたか!?」

『嘘…!? GV!!』

「急いでチャージングアップを済ませなさい! …来るわよ!」

 

 優奈さんの警告と同時に、ジブリールの跳ね回った痕に付いた血液から巨大な大剣が出現し、僕を貫こうとしたが…チャージングアップを間に合わせ、何とかカゲロウで回避することが出来た。

 

『良かったぁ…』

「シアン、安心するのはまだ早いみたいだ」

「その通りだぜ! まだまだこれからなんだからなぁ!!」

「あの攻撃…どうやら体に相当な負担が掛かっているみたいね」

「自滅を狙う事も出来そうだけど…それを待つにはリスクがデカイか」

「ここは…範囲の広い攻撃で足を止めてから仕留めるべきね…GV、頼めるかしら?」

「了解!」

 

――閃く雷光は反逆の導 轟く雷吼は血潮の証 貫く雷撃こそは万物の理

 

「迸れ、蒼き雷霆よ(アームドブルー)! 血に狂う(ケダモノ)、その狂気を鎮める雷光(ヒカリ)となれ! ヴォルティックチェーン!!」

 

 僕はヴォルティックチェーンによって発生させた鎖を全域に展開し、ジブリールを捕え、その身に雷撃を浴びせかけた。

 

「あああああああああああ!!!」

「これで終わりだ、ジブリール!」

「トドメの一撃…受けなさい!! Λ・ストライク…シュート!!」

 

 優奈さんは、持っていた片手銃に波動の力を籠め、ジブリールに向けて放った。不可視の力によって強化され、放たれた弾丸は間違いなく彼女を撃ち抜いた。

 

「あぁ…!! この…痛み………しゅごぃ

 

 この僕の雷撃と優奈さんの一撃によってジブリールはその身を散らし、彼女の持っていた本からシアンの力が飛び出し、彼女の元へと戻っていった。そして、本は力を失った為か、青白い炎を発生させ、何も残さずに燃え尽きた。最期に優奈さんに撃ち抜かれた時のジブリール…心なしか、悦んでいたような気がするが…気のせいだったのだろうか? まあ何はともあれ…

 

「撃破完了ね」

「お疲れ様、二人共…GV、優奈、連れ去られた人達は…」

「ジブリール…彼女の口ぶりからして、連れ攫われたオウカのクラスメイトとそれ以外の一部の人達は無事みたいだ」

「この奥に更に通路が続いているわね…先に進みましょう。多分、生存者がいるはずよ」

 

 そうして先へと進み…気絶していたオウカのクラスメイトを含めた生存者達を発見し、僕達はオウカにいい報告が出来ると心から安堵したのであった。

*1
前作第六十四話にて




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。




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