【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる 作:琉土
タシケントにそびえ立つ敵の城「ベラデン」
そこは、偽りの楽園か
あるいは人類進化の中心地か
突き進むのは楽園の名を冠せし地獄変――
傀儡の王者が地に伏した時、
鋼の群獣が少年達に牙を剥く
「ここが連中の本拠地、タシケント要塞ベラデン――害虫どもの巣か。人知れずこんな物を作るとは、まさに害虫だな…」
《アキュラ様…どんな罠が待っているか判りません。くれぐれもお気をつけて》
《ミラーピースを持った残りの能力者もここに集まっているはずだよ。勿論、連中の親玉パンテーラも…GV、優奈、気をつけて…》
「ああ、判ってるよ」
「ええ、勿論よ」
僕達はアキュラと共にエデンの本拠地であるベラデンへと潜入した。僕達の目的はミラーピースの奪還、そしてミチルの救出だ。途中までは僕達は問題無く潜入する事は出来たのだが…
「防衛シャッターね…アレは皇神であった物と同じ型みたいだけど…」
「これなら、閉じる前にダッシュで駆け抜けられる!」
「こんな物、ブリッツダッシュなら閉じる前に突破できる!」
そう言いながら僕達は余裕を持ってシャッターを突破することが出来たのだが…シャッターが下りた影響で優奈さんが置き去りになってしまった。
「…あのねぇ、二人共突出し過ぎよ。ここは仮にも敵の本拠地なのだから、もっと慎重にいかないとダメよ」
そう言いながら拳に波動の力を込めているのだろう。シャッターを拳一つで破壊しながら僕達と合流する。
「優奈、貴様はのんびりし過ぎだ。ミチルが攫われている以上、一刻も早く助け出さねば…」
「エデンにとって、ミチルはまだ必要な存在よ。私達がミラーピースを奪われない限りはね」
「僕達がやられてミラーピースを奪われない限り、大丈夫という訳ですか…」
『最悪、私よりもミチルの事を優先してあげてね…その子は私と違って、まだ生きているんでしょう?』
「シアン…そうだね。助けられるなら、その方がいい」
シアンも彼女の事が心配な様だ。まだ会話もした事も無いけれど…そんな風に思ってくれているシアンの事が、僕には嬉しい。
『…今サラッとやってたけど、拳一つでシャッターを破壊してた優奈に思う所は無いのかなぁ…僕、地味にドン引きしてるんだけど』
「…あの女なら、その位出来て当然だろう…ロロも分かっていると思うが、優奈から解析不能な力が検出されている。このデータ、取り逃すなよ?」
『分かってるよ、アキュラ君。今も順調にデータを集めてるからさ』
『…GV、いいのかな? アキュラってば、優奈さんの力を勝手に調べてるみたいだけど…』
「僕が使うときは弱点を補う時くらいしか使い道は無いから大丈夫だとは思うけど…優奈さん?」
「私は別に気にしてはいないわ。遅かれ早かれアキュラなら解析するはずだもの」
現段階では僕達とアキュラは共闘をする間柄だ。だけど、それが終われば再び敵同士になる可能性は決して低くは無い。だからこうした情報収集に余念が無いのだろう。そう思っている内に、僕達は大部屋へと入り込んだ。そうしたら、部屋の出入り口が封鎖され、大量の光学迷彩で隠れていたエデンの兵士、そして戦闘メカ達が一斉に襲い掛かって来た。
「これは…!」
「罠か…!」
「全ては同志パンテーラの御心のままに…お前達はいずれ楽園へと至る我らの姿を、指をくわえて眺めていろ!」
「生憎、そういう訳にはいかないわ! ハァッ!」
僕はダートを的確に打ち込みながらの雷撃麟で、アキュラは「スパークステラー」と呼ばれる特殊武器で、優奈さんは飛天でのミッションで持ち出していた対戦車用レールライフル「
「本拠地だから、少しは手ごたえがあるかと思ったが…いくら群れようと、所詮ザコはザコか…口ほどにもないヤツらだ」
「消耗は…見た感じ、無さそうね」
《ともあれ、体力の消費が激しかった場合はヒーリングの使用をお勧めします》
《敵の本拠地である以上、倒れられたら助ける事は出来ないんだから、ピンチの時は回復スキルを忘れないようにね、GV、優奈も》
「了解」
「ええ、ありがとうね、シャオ」
二人の警告を受けながら、私達は先へと進んで行く…流石は敵の本拠地と言うだけはある。敵の強さは兎も角、警備も慎重であり、その地形も複雑怪奇と言えるだろう。
『なにあれ。あんな地形、見たことないよ…』
「今の地形は…」
「この要塞をデザインしたヤツの「悪意」が見えるようだな」
《さすが敵の本拠地…警備も厳重なようだね》
「普通に考えたらえげつないのでしょうけど…」
そう言いながら僕達と《表向きでは》機動力に劣る優奈さんが罠を破壊しながら僕達合流している。優奈さんの前では、ベラデンの罠も形無しと言える。とは言え…
《ねぇ優奈、どうして罠を破壊しながら進んでるの? 正直、優奈は最後尾なんだから無視してもいいと思うんだけど》
「…脱出経路の確保も考えているのよ。私達が目的を達成しても、その時もし相手がこちらを道連れに本拠地を爆破だなんてしだしたら大変でしょう?」
《…そんな事を考えていたのですか》
「…確かに、あの害虫共がやりそうな事だ」
「とは言え、これは気休め程度の効果でしょうけどね…ないよりかはマシな対策だと思って頂戴」
どうやら優奈さんは退路の確保を考えて罠を破壊しながら進んでいたみたいだった。言われてみれば確かに、此処の罠は帰りも厄介な作りになっているように見える。何しろ、どこもかしこもトゲや罠だらけなのだから。
「またこの仕掛けか…莫迦の一つ覚えのように」
《だけどのこの罠の量、見ているだけの僕も眩暈がしそうなくらいだよ…》
『平気だよ。これくらいの罠、GVと私の力があれば!』
「シアン、気持ちは分かるけど、今は抑えて頂戴。貴女の力はここぞと言う時に取っておきたいし…ここは、私が先行するわ。私が罠を破壊しながら突破すれば、二人の消耗も抑えられるはずでしょうし」
そう言いながら優奈さんは辺り一面の罠やトゲを波動の力で粉々にしていく。そんな力技ばっかりな優奈さんにアキュラもロロも何処か呆れた様子さえ見せている。
「おい、ガンヴォルト。優奈はいつもこうなのか?」
『流石の僕も、ちょっと力技が多すぎて呆れてるんだけど…アレで消耗、してないの?』
「……僕も正直、驚いているよ。普段の優奈さんは僕と行動を共にしている時は寧ろ光学迷彩で姿を消しながら遊撃を担当していたからね…それだけ、僕達を消耗させたくないんだと思ってくれてるんだろうけど」
「アレで光学迷彩までするのか…」
最初は寧ろ気持ち的に威圧感すら感じる程のトゲも、今ではすっかり丸裸となっている。僕達は優奈さんの言葉とは裏腹に何処か過保護な一面を見る事が出来たような気がした。そうしてしばらく先へと進んでいると…
『GV…この建物…さっきから、すごくイヤな感じがしてる…』
シアンの持つ精神感応能力は、時おりそんな「気配」を感じ取ることがある。生前はあの皇神の起動エレベーターからも、そんな意思を感じ取っていた。その力は、精神体となった事で生前よりもより強くなっている。
『それに、何だか…不思議な気配…私がもう一人いるような…多分、この気配がミチルなんだろうけど…』
正直、このまま進めばまたシアンが引きはがされるのではと、僕は危惧している。それに対抗する術の一つとして優奈さんに波動の力を教わっているけど、今の僕では付け焼刃もいい所だ…一応、ここに来るまでにやり方その物は僕とシアンは聞いている。
但し、優奈さんは事前に説明してはくれたけど、そのやり方は僕の心情に反する行為であったのだが…その方法とは、シアンを波動の力で僕の体に「拘束する」と言う物であった。この方法を聞いた時、優奈さんに対して如何してという思いが強かった。シアンは拘束されるべきでは無い、自由であるべきだと僕は考えていたからだ。
だけど、この方法の性質を聞いて、僕の考えは少し改まった。これは僕だけでは無く、シアンの意思も重要なのだと言う。仮に僕が実行しようとしても、シアンがそうされたいと思わない限り、発動する事は無いのだそうだ。これは優奈さん曰く、「協力強制」と呼ばれている技術で、簡単に言うと柔道でいう所の背負い投げみたいな性質を能力に当てはめ、利用しているのだそうだ。
優奈さんのシアン達はこの性質を利用してミチルによる引き剝がしに対処していたのだ。つまり、優奈さんのシアン達は、拘束されたい…いや、純粋に考えれば、離れたくないと思っているからこそこの方法が成立しているのだろう。
(僕のシアンは、如何思っているのだろう…)
出来れば、シアンもそう思っていてくれたら…正直に言う、僕はシアンと離れたくない。出来る事なら一緒に居たい。優奈さんのこの方法に文句を言っているのは、唯の建前だ。本音は、シアンに拒絶されるのが怖いだけだ。
この方法は互いの心の本音が重要になって来る方法だ。だからこそ、拒絶されるのが、怖いのだ。今までのオウカの屋敷での生活から見て大丈夫だと思っていても、僕の心の何処かでもし違ったらと言う考えがどうしても過ってしまう。
『GV…?』
「ん…シアン?」
『大丈夫? 何か考え事、してたみたいだけど』
「…大丈夫、ちょっとこの先をどう攻略しようか考えていた所だから…それにしても…エデンはシアンの力を奪って、一体何を企んでいるんだ…?」
《どうせヤツらの事だから、ろくでもないことに決まっているよ》
「そうね…」
『うーん…しかし、なんでまたエデンの連中はこの国にこんな要塞を立てたんだろう?』
《エデンは宗教的側面が強い組織です。このタシケントという土地に、何か未知の――彼らが求めるような価値があったのかもしれませんね…》
「
そうアキュラが言いかけた時、優奈さんが口を開いた。
「ふふ…それが、居たりするのよね。抱きしめたがりな優しい女神様が…ね」
「何…? 優奈、何か言ったか?」
「…ここから先にある大穴とベルトコンベア…どう突破しようかって思っていた事が口に出てしまったみたいね」
アキュラには聞こえてはいなかったけど、僕には聞こえていた。「抱きしめたがりな優しい女神様」とは、どの様な人物なのだろうか? それはまあ置いておくとして、この大穴…落ちたら這い上がるのはシアンに謡精の歌を発動して貰わないと不可能だろう。
《次から次へと、よくもまあ思いつくものです》
《足を取られて、穴底に落とされないよう気をつけてよ? 一発アウトなんだからね?》
『この穴、どこに繋がっているんだろう?』
《アキュラ様、判っているとは思いますが落ちれば即アウトです。くれぐれも、落ちてみよう等と考えないよう…》
「…考える訳が無いだろう」
そう言ったやり取り取りをしながらベルトコンベア地帯を突破して直ぐに…エデン兵や戦闘ロボ達が待ち構えていた。
「ガンヴォルト…能力者でありながら我らに仇なす背教の徒! 同志から奪ったミラーピース …返してもらおうか!」
「あれは、シアンの物だ! 決して、お前たちのものでは無い!」
『GV…』
「あの玉コロの中にもミラーピースはあるぞ! 総攻撃で奪い取れ!」
「ザコが…ロロには指一本触れさせはせん…!」
『アキュラ君…』
「ミラーピースはミチルのためにも必要な物だ…貴様らには渡さん」
『って、僕の為じゃないのー! そりゃあミチルちゃんは大事だけどさー』
そうアキュラに対して不満をぶつけるロロだったけど…
「ふん…ミチルの次位には、大事にしているつもりだ」
『もう、シスコンお兄ちゃんなんだから…ミチルちゃん助けて戻ったら、ぼくのメンテ、ばっちりたのんだよ?』
ここは敵地で、囲まれていると言うのにその状況に合わない会話に何処か可笑しいと僕とシアンは思ってしまっていた。そうして彼らを蹴散らしながら先へと進んで行くと…そこには、あの時ジブリールと同じように倒した筈のニムロドが待ち構えていた。
「待ってたぜ、
「…G7のメンバーか。いかにも俺は科学者だがそれがどうした?」
「いやあ、なんだ。別にそれがどうだって訳じゃあねぇが、そうだとすれば、これからお前さんを倒すのにも、気合が入ると思ってな?」
そんな事を言いながらも戦闘態勢へと移行し、その殺意がアキュラへと集中している。ここは僕達も…
「ガンヴォルト、優奈、ここは俺一人で構わん。どうやら奴は、俺に用があるらしいからな。特に優奈、お前はここに来るまでに力を多く使っているのだから、少しは休んでいるんだな」
『…アキュラ君、珍しく、本当に珍しく優しいね』
《その様ですね……アキュラ様の好みの女性はやはり御父上に似ているみたいですね。これは朗報と取るべきか、それとも悲報と取るべきなのでしょうか?》
「お前達、何か勘違いをしてないか?」
そう言いながらアキュラはニムロドの前へと立ち、僕達は後ろへと下がった。そうしてアキュラとニムロドとの戦いが始まった。
「科学の発展ってのは、いつも海を汚し自然を犠牲にしてきた。俺はそれが我慢ならねぇのさ。俺は、俺に宿った
「行き過ぎた
「そうか? 能力者は日々増え続けている…それは、神さんの意志だとは思わねぇか?」
「そんな事、あの女神様は考えていないみたいだけど…寧ろ能力に振り回されている能力者、無能力者がかわいそうだって思ってるくらいだし…しかし、目眩がする会話をしてるわね…」
優奈さんの言う通り、アキュラはニムロドの水流を利用した攻撃を躱しながら反撃をし、それこそ僕等からすれば卒倒しそうな程の会話と言う名の罵倒を浴びせていた。
「思わんな…仮にそうだとしても、そんな神ならば、俺には要らない。俺は俺の神のみを信じ…貴様らを駆逐する!」
「はぁ、やっぱアンタとは話が合いそうもねぇ。まるで
戦闘だけでは無く、会話と言う殴り合いをしつつ、アキュラはニムロドを追いつめて行く。
「フン…そこだけは意見が合うようだ。背理の獣…その蛮考、俺が討滅する! 天魔覆滅! ストライクソウ!!」
複数のビットによる「爪」を描く斬撃は見事にニムロドを捕え、断末魔を上げる事も無くその身は鏡が割れたかのように砕け、アキュラはその破片を回収し、ロロにニムロドの能力を解析させていた。
「G7の一人を討滅完了。だが、奴はどうやらパンテーラのコピーだったらしい…このまま奥へ進む」
《承知しました。どうかお気をつけて、アキュラ様》
「ああ、了解だ、ノワ…ガンヴォルト、優奈、何時まで休んでいるつもりだ? 先へ急ぐぞ」
「ええ、分かっているわ…アキュラ、貴方は一旦後方支援に回って頂戴、此処から先の先方は私とGVが引き受けるから」
「何…そうだな、精々俺の為の露払いを頼むとしよう」
『………』
「どうしたんだ? ロロ」
『怪しい…』
「え?」
『アキュラ君が、あんな風に他人に対して、特に能力者に対してあんなに打ち解けるなんて、怪し過ぎる! そう思わない、ノワ?』
《確かに…ですがロロ、今はミチル様の救出が掛かっているのです。この会話の続きは終わってからミチル様と一緒に致しましょう》
僕には関係無いけれど、何やらアキュラにとって不穏な会話が今ここで繰り広げられた気がするのは、きっと気のせいでは無いはずだ。そう思いながら、僕達は先へと急いだ。
この先のエリアはどうやら上のルートと下のルートの二カ所が存在しているらしい。上の通路は僕の
その先は飛天でもあった今となっては懐かしい仕掛けであった。
「懐かしい仕掛けだな…」
「だけどここは敵の本拠地。あの時の飛天での時とは違って、素直に付き合う必要は無いわ」
そう言いながら優奈さんは罠を破壊した時と同じ様に波動の力で防壁を無理矢理こじ開け、先へと進んで行く。
《優奈って、案外こういった所で力技に頼るよね…》
「帰り道を考えると、これが一番効率がいいのよ」
「…ジーノなら間違いなく大笑いしていただろうな」
《誰、それ?》
「…いや、なんでもないよ」
「………」
そうして先へと進んで行くのだが…そこには
その先も、そのまた先も、同じような光景が続いていた。そして、立ち去ろうとした時、エデンの兵士の一人が断末魔の声を上げながら息絶えた。
「…全ては、我らが理想郷の為…」
「…何故、彼らはアキュラに挑んだんだ。勝ち目など、全く無いのは分かっているだろうに…!」
「…GV、あのコピーされたG7を見たでしょう? それが答えだと、私は思うわ」
仮に死んでも、パンテーラに複製して貰えば大丈夫だと、そう思っていたのか…エデンの宗教的側面が強かった訳が、これで分かったような気がした。そうして一つの答えを見つけつつ先へと進むと…
「そ…そんな… テセオさんが…負ける…? 現実すら書き換えるワールドハックの…この…テセオさんが…?」
「直視しろ。貴様ごときに書き換えられるほど、現実は甘くも軟くもない」
「認めない…認めないぞ…! テセオさんの…ワールドハックは…こんな所で…終わらない…最後の力で…「アレ」を…動かして…おいたんス…ケド…つっ…て…」
そう言いながらテセオは消滅し、本が出現し、その中から飛び出したシアンの力がロロへと収まった。
「ヤツめ、最期の瞬間に何をしでかした? ふん…遅かったな」
「ええ、随分と先行させてしまったみたいね」
「ここから先は僕達が向かうよ。アキュラは休んでいてくれ」
「ふん…貴様に心配を掛けられるほど、俺は消耗などしていない」
「…こういう時は、素直に休んでおく物よ?」
「……いいだろう。だが、もう分っていると思うが、どうやら奴は倒れた最後に何か仕出かしたらしい、精々気を付けるんだな」
『怪しい…やっぱり怪しいよ!』
ロロは何を怪しいと思っているのだろうか? それは兎も角、アキュラには休んでもらって、僕達は先へと急いだ。その先には…
「これは、プラズマレギオン!? アキュラの言っていたテセオの仕出かした事は、これの事だったのか…!」
《プラズマレギオン――飛天の中にあった物より強化されているようだ…いや、これが完成型?》
「奴の第七波動…ワールドハックとか言ったか…死してなお、これだけの機動兵器を動かす力…これも、シアンの力――ミラーピースで強化された第七波動のパワーか…!」
『GV…』
「GV、シアン、いくら第七波動で強化されているとは言え…」
「ええ、所詮は意思の無い機械。僕の雷で壊せない道理など無い!」
《油断は禁物だよ、気を付けて、GV!》
確かにシャオの言う通り、油断は出来ない。実際に前回と戦った時と比べて武装の種類が変化しており、唯のミサイルが雷撃麟でも破壊不能なドリルミサイルに、弱点の頭部にシールドを張る機能、そしてその頭部からだ出力のレーザーを発射する等、明らかに機能が強化されている。いや、これがシャオの言う様に、本来の性能なのかもしれないが…その中でも極めつけだったのがあった。
[DG
「戦車がSPスキルを使うか!」
「これは…避ける事に専念するわよ、GV!」
「了解!」
分離した上半身が浮かびながらレーザーを発射しながら突撃し、下半身はその死角を補う為に、地上を縦横無尽に駆け巡った。僕はカゲロウで、そして優奈さんはカゲロウに似た「何か」で回避し…
「これで止め…! 迸れ、
僕が放った雷の聖剣は奴の張っていた頭部を守るバリア諸共貫通し、その機能を完全に停止させた。
《エデンのヤツら、こんな物を持ち出してくるなんて…》
「それだけエデンの連中は本気だったのでしょうね」
「ともあれ、撃破完了。アキュラを呼んで、先へと急ごう」
そう僕が言ったと同時に…
「その必要は無い」
アキュラは姿を現した。
「…ふむ、思ったよりも早く討滅出来たみたいだな」
『…そんな事言って、実は心配だった癖に』
「…何か言ったか、ロロ?」
『べっつにぃ~? 僕は何にも言って無いよー?』
「…ともあれ、これで手間は省けたわね。先へと急ぎましょうか」
『…! この感じは… 僕の中にあるミラーピースが反応してる…パンテーラとミチルちゃんはすぐ近くに居るはずだ!』
「ミラーピースか…パンテーラに反応するのは当然だが、ミチルにまで反応するとは…やはり、優奈の言っていた事は…」
そう言ったやり取りをしながら、僕達はパンテーラが待ち構えているであろうこの先へと急ぐのであった。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。