【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる   作:琉土

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祈歌(プレイヤー)

龍の(アギト)、虎の絶爪(ツメ) 力を合わせる少年達
楽園の最奥に響くのは少女の歌声
それは自分だけの英雄(ヒーロー)の為に歌われる、祈りの歌



第十七話

 GV達はパンテーラの待つ部屋へと足を運んだ。そこにはやっぱり、あの小さなパンテーラの姿が、そして、私達の頭上よりもずっと高く浮いているミチルの姿があった。

 

「ミチルッ!!」

「やはり、あなた達をお相手するのに、転写体(コピー)では不十分でしたか」

 

 この空間に満ちる異様な空気――嫌な感じが、GVから私が引きはがされる感覚がハッキリと伝わってくる…!

 

『嫌…』

「…シアン?」

「飛天の時と同じです。ミチル――彼女が居るこの場所なら、貴方から、電子の謡精(サイバーディーヴァ)を引き剥がす事が出来る。そのための彼女です。そして、この場に全てのミラーピースが揃いました。今、証明しましょう。貴女の妹の力を…」

『嫌…! くっ…うぅっ…!!』

「シアン!!」

『ううっ…これは…!?』

「ロロッ!」

『うわぁっ!』

 

 その瞬間、ロロから私の魂の欠片であるミラーピースが飛び出し、ミチルの周囲へと集まった。そして…私からも力が抜けて行く感覚がする。そう、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「これは…予定よりも力が多く集まっている? まあ、構いません。力は多いにこしたことは無いのですから」

 

 嫌…嫌だよ…でも、私はGVを守らなきゃ…いけないのに…そう思っている内に、私の内側からミラーピースと言う形で一つ、また一つと力が奪われていく。私はGVを見た。その表情は私が苦しんでいる姿を見て明らかに焦っている様子であった。このままでは、GVは戦えなくなってしまうかもしれない。だから、GVを私が居なくても戦えるようにする言葉が……

 

――GV…! 躊躇わないで…! 今のあなたなら、きっと一人で…

 

 必要、なのだけれど。私はこの時、GV達と共にパンテーラの居るであろう部屋へと突入しようとしていた時の優奈さんとの会話を思い出していた。

 

「この先の戦いで、もしかしたらGVに歌を届ける事が出来ない状況になるかもしれないわ。だからね…()()()()()を教えようと思うの」

『魔法の呪文?』

「ええ…もうどうしようも無くなってしまった時に、「助けて」って一言を言えばいいの」

『優奈さん、私は…GVにそんな事言う資格なんて…無いよ。私が生きていた頃は、ずっとGVに守られてばっかりだったんだもの』

「そう言う事は置いといて、素直になっておきなさい。いい? GVもそうだけど、男は馬鹿で単純なの。大好きな女の子がその言葉を唱えるだけで、どんな人だって無敵の英雄(ヒーロー)になれるんだから」

『……本当に?』

「ええ…そもそも、貴方達は一人ではないでしょう? シアン、貴女だけで…たった一人でGVを守ると言う強がりはもう辞めるべきなのよ。まあこれは、GVにも言える事なんだけどね…つまり、GVが貴女を守って、シアンが彼を守ればいいの」

『私が、GVを…GVが、私を…』

「…私達も、振り返ってみればこう言った事に覚えがあったの。私達はそうやって大勢の人達に助けられて、そんな大勢の人達に私達は手を差し出したわ。だから私達は大丈夫だけど…本当は、怖いのでしょう? またGVから引き剝がされてしまうんじゃないかって…」

『……』

 

 私は優奈さんのこの言葉に首を縦に振る事しか出来なかった。そう、私は怖かった。GVからまた引き剝がされてしまう事が…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そう願っていた。だけど、このベラデンの奥へ進めば進むほど、嫌な感じが、そして予感がするのだ。

 

「本当は、GVに引き剝がされない術を教えてからここに来たかったわ。でも、エデンはその方法を完璧にこなせるようにするその時間を与えてはくれなかった。でも…方法自体はGVに教えてあるわ」

『…本当に?』

「ええ…その条件はシアンと会話する前は不安だったけど…大丈夫だって確信が持てたわ。後はGV…彼自身の問題ね」

『そっか…ねぇ、優奈さん』

「何?」

『もしそれがダメだったら、GVの事、お願いね』

「そんな事を言わないの…大丈夫よ。だって彼は…」

 

「貴女の英雄(ヒーロー)なんだから」と、そう優奈さんは私に言っていた。今にして思えば、優奈さんはこう言いたかったのだろう。「素直になってGVに助けを呼べ」と。そして遂に、私自身がミラーピースへと姿を変えようとしたその時だった。

 

「シアン!!」

 

 GVから、あの例の力で出来たのであろう鎖が、私の所へと真っすぐに向かって来た。その鎖には、GVのありったけの気持ちが籠っていた。「離れたくない」と…「ずっと一緒に居たい」と…「これからも共に歩もう」と。

 

「シアンも()()思ってくれるのならば、それに手を伸ばしてくれ!! 僕は…僕は…! 君の意思で、この鎖にその手を伸ばして欲しい!!」

『……っ!! GV…GVぃ…お願い…!』

 

 それを見た私は、GVに対して素直な気持ちで「魔法の呪文」を唱え…

 

「助けてぇっ…!!!」

 

 その手を、今あるありったけの力を籠め、伸ばし…

 

「……っ!! 任せろ、シアン!!!」

 

 GV(私だけのヒーロー)から延ばされた(救いの手)を、確かにその手で掴んだのであった。

 

 

――――

 

 

「シアン!!」

 

 シアンは意思諸共力を全てミラーピースとして奪われる寸前、僕が放った鎖に手を伸ばし、掴み取った。その瞬間、シアンとの繋がりが復活し、より深いつながりを僕は感じた。

 

『……G…V…』

 

 だけど、力の大半を奪われてしまったせいなのだろう。シアンは遂にモルフォとしての姿も維持できなくなってしまい…生前の、僕の隠れ家に来た時の姿に、それでいて、僕の掌のサイズとなってしまっていた…その瞬間、ミチルからあの力が無くなり、その身を落下させ…

 

「ミチル!!」

「させないわ!!」

 

 自由落下して床に衝突する寸前、優奈さんはミチルをお姫様抱っこと言う形でギリギリ抱きかかえる事に成功していた。

 

「感じる…これが私の新たなる力…」

 

 アキュラは優奈さんが抱え込んだミチルに、僕は小さくなったシアンに気を取られている間に、パンテーラはシアンから奪った力を取り込み、変身現象(アームドフェノメン)を引き起こし、この部屋の空間を歪ませながら、その姿を現した。

 

電子の謡精(サイバーディーヴァ)との完全融合は残念ながら果たされませんでしたが、想定以上の力を得た事で私の第七波動(セブンス)は新たなる段階へと至りました。大いなる愛で世界を満たす「夢想境(ワンダーランド)」の第七波動。まずは貴方達を誘いましょう」

 

 そう言いながらパンテーラはまだ態勢の整っていない僕達に襲い掛かって来た。

 

「GV! アキュラ! ミチルはまだ脈はあるわ! でも、容体はあまり良くないみたいだから、私はこの場を動けないわ! 私はこの子を守りながら治癒する事に専念するから、シアンとロロの状態を確認して!! シアン、モルフォ、見ての通り私は動けないから、パンテーラに気取られない様に詩魔法の詠唱、お願いね

 

 そう言いながら優奈さんはミチルを両腕に抱えながらパンテーラから放たれるカードの攻撃を波動の力で受け止めていた。普段の彼女ならばあの攻撃を避ける事は出来たのだろうが、両腕を容態が良くないミチルで塞がれている為、防ぐことに専念しているのだろう。

 

「優奈! ミチルは何が何でも、死んでも守り通せ!! ロロ、大丈夫か!?」

『う、うん…ミラーピースは取られたけどデータのバックアップは万全だよ。EXウェポンも使えるし、システムに影響は無いみたい。人型形態(P-ドール)には、なれそうにもないけど…』

「十分だ、ロロ!」

「シアンッ! 大丈夫か!?」

『…私、GVのお陰で何とか意識だけは残せたけど、もう力の大半は、パンテーラに奪われちゃった…今の私じゃあ、もう貴方に歌ってあげることも出来ないよ…』

「それでも構わない。シアンが無事でいてくれれば…僕にしっかり掴まっていてくれ。僕が…僕達が、シアンを守るから」

「感じます…取り込んだミラーピースと共に同志たちの力が、この身に息づいている。夢幻鏡(ミラー)の虚像では無い…夢想境(ワンダーランド)が生み出すのは真なる実像。全てを創造する力」

「創造だと? 貴様は…神にでもなったつもりか!」

『とりあえず、EXウェポン総当たりだ! 先ずはこれ、ハイドロザッパー!』

 

 そう言いながらアキュラはロロのビットからニムロドから得たEXウェポンをパンテーラに当てるが…効いている様子が無い。どうやら無力化されている様だ。

 

「同志たちが望むのであれば、そう名乗ることも考えましょう。私は、同志――能力者達を、理想郷(エデン)へと導く巫女にして先導者」

「危険な思想家め…! 今ここで断罪する!」

『次! プリズムブレイク、最大チャージ! って、これもダメなの!?』

「能力者が勝つか、無能力者が勝つか――これは、互いの繁栄をかけた生存競争…ですが、貴方達に勝ち目はありません」

「どう言う事だ…!」

「貴方達を救う歌はもう存在しないからです。謡精の意識を残した事は見事でしたが…彼女はもう力を奪われつくし、歌う力すら残されていない意識を持っただけの残滓に過ぎない…分かりますか? もはや貴方達の愛は私には届かないのです。ご都合主義(キセキ)等、決して起き得ません」

『そんな歌なんか無くったって…! テイルバンカー!!』

『…私もロロみたいに戦えたら…』

 

 確かに、もうシアンの()()()()()()()はその通りだろう。

 

「故に、諦めなさい。今の貴方達に届くのは、貴方達を手折る絶望(わたし)の歌…」

 

――謡精の歌を奏でよう 寄る辺なき孤独の戦士達に せめて死という安らぎを

 

「これでチェックメイトです。さようなら…楽園幻奏(らくえんげんそう)!」

 

 パンテーラによる絶望の歌がこの戦場全体に響き渡った。

 

『これ…パンテーラの歌…うぅ……』

「ぐ…なんだ、これは…!? く…苦しい…体力が削り取られる様だ…シアン! 僕の背中へ! …優奈さんに教わった、波動防壁で!」

『何…これ…ABドライブの出力が低下して…』

「…ロロ! 俺の背中に退避しろ! …ミチルは、大丈夫なのか!」

「防壁を展開してるから、私達は大丈夫よ! 今は自分を守る事に専念しなさい!」

 

 パンテーラから定期的に歌の波動が部屋全体に響き渡り、僕達の体力を確実に削っていく。特にアキュラは身を守る術の無い状態でロロを庇っているので、僕はアキュラの前に立ちながらとっさに波動防壁を展開したが、まだ付け焼刃なのが災いし、完全には防ぎきれていない。この中で唯一戦えそうな優奈さんは、ミチルを守る事に専念している為、攻勢に出ることが出来ない。だけど…

 

「シアン…こんな時だけど、頼みがある」

『GV…?』

「君の歌を、聞かせてくれないか?」

『GV…私には…』

「そっちの事じゃないよ、シアン」

 

 そう、僕がシアンに歌って欲しいのは、謡精の歌では無い。

 

『え…』

「謡精の歌じゃない。君の…()()()()()を聞かせて欲しい。そうすれば僕は、いくらでも立ち上がることが出来る」

『でも…』

「シアン、僕を信じて欲しい」

『…分かった。私、GVの事、信じる。あの時、私の事を助けてくれた時の様に』

 

 そうして歌が響き渡った。謡精の力の無い、ただのシアンの歌が。

 

――音を立てて崩れてく 色の無い世界が 鮮やかに光放つ あなたが来てくれた…

 

 そんなシアンの歌が、僕に力を与えてくれる。理屈なんてありはしない。だけど、この胸の中からどこまでも溢れてくる想いに偽りはない。嘗てシアンの力を取り込んだ紫電との戦いの時と同じ…いや、それ以上に、僕の内に眠る第七波動因子――「蒼き雷霆(アームドブルー)」がこれでもかと熱を帯び、今も尚際限無く燃え上がり、全身の細胞が騒めき立つ。

 

 そして、この僕の力がシアンにも流れ出し、彼女の歌に「力」が帯び始めた。そんな彼女の歌は、パンテーラの絶望の歌に抗い…拮抗し…そして、遂に押し返し始めた。そのお陰で、アレだけ苦しく、鉛の様に重かったこの体がどんどん軽くなっていく。

 

「パンテーラ…もうお前の歌は、僕には…僕達には通用しない!!」

「うぅっ…! 何が…起こっているというの!? 彼女の歌には、謡精の力は無い筈なのに…! 如何して、押し返されているの!?」 

「これは…繋がりが深くなったGVの力がシアンの歌に流れ出している…? ふふ…そうよ。そうやってお互いに助け合い、支え合えば、貴方達は比翼の鳥となって何処までも飛んでいけるわ」

「体が軽くなった…ロロ、まだ動けるな?」

『何とか大丈夫、アキュラ君が、体を張って守ってくれてたから…!』

「ならば、行くぞ…! 俺達もガンヴォルトに負けてはいられん!」

『了解! ハイドロザッパー、プリズムブレイク、テイルバンカーはもう試した…次はこいつだ! アイアンファング!!』

 

 ロロのビットから放たれた赤い弾丸がパンテーラを捕えた。その一撃は、今まで無力化されていた攻撃とは違い、明確にパンテーラにダメージを与えた。

 

「くぅ…! 何故、攻撃が…!!」

「どうやら、これが弱点の様だな…!!」

『ビンゴ! このまま続けて行くよ!!』

「こうなったら…!」

 

――心からの愛を込めて 仲間たちよ、家族たちよ 今再びこの地へと戻れ

 

「皆さん…私に力を…レジデントオブエデン!」

 

 パンテーラのSPスキルによって僕達が倒したG7が全員この場に姿を…いや、それだけでは無い。これまで倒してきたエデン兵の全てと言っていい程の人数も含め、パンテーラを中心に姿を現した。

 

「これで形勢逆転です。私には同士が…仲間が…家族がこんなにも多くいるのです。その様な歌があろうと、私の…私達の勝利に揺らぎはありません」

 

 そう言うパンテーラであるのだが…彼女は気が付いているのだろうか? 自身が呼び出した彼ら全てが何処か虚ろな表情をしている事に…だが、そのような事実はこの状況の逆転となりうる鍵にはなり得ない。実際、その数の差は歴然なのは事実なのだ。そんな時だった。優奈さんが…いや、今まで温存されていた優奈さんのシアン達が遂に動き出したのだ。

 

「果たして…そうかしら? …二人共、準備はいいわね?」

『OKだよ! 優奈!』

『アタシの方も、謡い終わっているわ!』

「電子の謡精が…二人? いえ、彼女達は電子の謡精に限りなく近い何か…ですが…今更何が出来ると言うのです?」

 

 優奈さん達のシアン達が姿を現したと同時に、そんな二人の頭上に彼女達が呼び出しているのであろう()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が寄り添い合っていた。僕は優奈さんの近くに居た為、彼女達の力の隠蔽に気が付く事が出来た。その力はあの時の、僕のシアンを大きくしてもらった時の力が霞んで見える程であり、僕の目にはその二人は力の開放を今か今かと待っている様にも見えた。

 

「それは、これを受けても同じ事を言えるかしら? パンテーラ…GV、アキュラ、大きいの、行くわよ!! 取り巻きは如何にかするから、彼女に止めを!」

「了解!」

『これが…優奈さんの私の歌…話に聞いていた、詩魔法…なの?』

『正体不明、詳細不明、計測不能! 兎に角大きいのが来るよ!』

「後で説明してもらうからな、優奈! ガンヴォルト! このチャンス、無駄にするなよ!!」

「分かっている…これで終わりだ、パンテーラ!!」

 

――舞い踊るのは我が所従 討滅せしは異類異形 鎖断ち切る無尽の絶爪

 

――掲げし威信が集うは切先 夜天を拓く雷刃極点 齎す栄光 聖剣を超えて

 

『『hymmne ee hymme jam murfanare infel presia messe tes yor.――これが(アタシ)達の…ううん、(ミオ)の御子と(ホムラ)の御子の詩魔法…いくよ! 「インバートブリッド」、起動!!!』』

 

 その瞬間、パンテーラ達が瞬く間に氷の塊に閉ざされたと同時に、凄まじい爆炎でその大半が姿を消し…

 

「天魔覆滅! ストライクソウ!!」

 

 残ったG7も含めたメンバーも、アキュラの絶爪によって切り裂かれ…

 

「迸れ! 蒼き雷霆よ(アームドブルー)! 響け! 謡精(シアン)の歌声よ! 絶望の歌を奏でる悲しき聖女に、夢の終わりを告げる雷道(しるべ)となれ!! グロリアスストライザー!!」

 

 パンテーラ本人は真の力を解き放った雷剣による究極の一撃(スペシャルスキル)によって貫かれた。

 

「そんな…何が起きたというの? 電子の謡精の力は…私に…適合していた…はず…」

「適合はしていたのかもしれないな…だけど、電子の謡精は――シアンは物じゃない。彼女と心を通わせていないお前に、扱える力じゃないんだ」

「…貴様が呼び出していた連中は皆、虚ろな表情をしていた…皮肉な物だな。虚像の方が感情が豊かだとは」

「嫌…私達の理想…楽園が…」

 

 彼女は…パンテーラは変身現象が解除され、既に虫の息であった。

 

「アキュラ、ちょっとパンテーラに用があるから、ミチルの事、よろしくね」

「…一応、礼は言っておく。ミチルを守ってくれて、感謝する」

『僕も、一応礼を言っておくよ。ミチルちゃんの事、守ってくれてありがとう!』

 

 そんな彼女に、優奈さんはミチルをアキュラに預け、彼女に近づいていく。

 

「…パンテーラ」

「…優奈…お姉様…」

「能力者に楽園を作りたいと言う気持ちは分かるわ。だけど、そのやり方は間違っているの。実際に、力を行使してみて分かったでしょう? 自身が創り出した存在は実体はあっても、まやかしであった事に」

「貴女とは…もっと違った…出逢い方を…したかった……一目で…心を奪われた…貴女とは…」

「…………」

「『『え…』』」

能力者(バケモノ)の感性は、やはり理解できん…」

 

 思わぬパンテーラのカミングアウトに僕達は驚いてしまっていたが、優奈さんはただただ悲しそうにパンテーラを見つめていた。そして…

 

「そうね…「来世」に期待して頂戴」

「それは…どう言う…」

「どうやらこの世界にも()()()()()が流れ出しているみたいだから…まあ、()()()()()()()()分かるわよ…その先に、きっと貴女の()想が()られた(らくえん)がある筈だから」

「お姉様…」

 

 そう言いながら、パンテーラは涙を流し…

 

「あぁ…見える…私達の…楽園が…こう言う事…だったのですね…お姉様…」

 

 そう言い残し、息を引き取った。

 

 

――――

 

 

「あ…」

「どうしたのです、()()()? またお姉様に呼び出された記憶が流れて来たのですか?」

「ふふ…何でもありませんわ。ちょっと…()()()()()()()()()()ですから」

 

 とある日、聖女(パンテーラ)の影武者である彼女は()()()を思い出し、この運命と女神の導きに改めて感謝したのであった。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。





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