【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる   作:琉土

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第二十話

 僕達の転移直後、僕の視界に飛び込んで来たのは大量のロボットの群れに、ピンク色の長い髪に、尻尾を持った女の子…プリムと銀色の長い髪を持った女の子…ネロだった。そして、ロボットの内の一体が既にこちらに銃を向けて、その弾丸は放たれていた。

 

 最初は何度もこの世界をゲームの様にやり直せるインターディメンドを受けたプリムによる僕達の転移直後を狙った攻撃であると思ったのだが、転移した直後に僕の背後の気配を感じ、それは違うと判断した。だけど、目的は違えど転移直後に攻撃を受けた事に変わりは無い。

 

 だから、そう言った事態を想定して戦闘態勢を整えてから僕達は転移したのだ。転移直後、どんな状況でも対処出来るように。そして、僕が何時も身に付けている改良されたペンダントも、その対処方の一つだ。

 

 このペンダントは電磁結界「カゲロウ」を発動させるのに必要な装備なのだが、簡単に言うと、「僕が触れた対象もカゲロウの恩恵を受ける」と言う機能が追加されているのだ。これは以前、一度シアンを救出した時の失態が切欠で追加された機能だ。つまり、背後に居るであろう()()も、その恩恵に(あずか)ることが出来る。故に…

 

「電磁結界「カゲロウ」…どんな攻撃も僕には…僕達には通用しない」

 

 この様に、僕と背後に居る彼女を、放たれていた弾丸はすり抜けたのだ…向こうは突然の事態に凍り付いているみたいだった。今なら、彼女に…イオンに少し話すくらいの時間も撮れる筈。僕は振り返り、その姿を見た。

 

 今の僕よりも少し背が低く、金色の長い髪に、水色の綺麗な瞳をし、近未来的な巫女と言ったイメージと言ってもいい服装をしていた。そんな彼女の状態は、息を切らしており、その細い腕にアーシェスの頭を大事に抱えていた。僕は、そんな彼女に話しかけた。

 

「…イオンの事、ずっと見ていたよ。万寿沙羅で一人放り出されていた時からね」

「え?」

 

 そんな僕の言葉に、イオンは茫然とした様子で固まった。恐らく、僕の言った事で頭が真っ白になっているのだろう。そんな彼女に対して、シアン達も姿を現し、それぞれ話しかけた。

 

『イオン、貴女はここまでずっと頑張って来たわ』

 

 モルフォの言葉に、彼女の瞳は揺れる。

 

『私達は、それを今までずっと見ている事しか出来なかった』

 

 シアンの言葉に、彼女の瞳に力が戻り始める。

 

「だけど、僕の世界の多くの人達に助けられて、僕達は今、ここに居る」

 

 そして、僕の言葉で遂にその両目から涙を溢れさせた。そんな僕達に、突然の事態で思考がフリーズしていたネロが話しかける。そんな彼女に、シアン達は答える。

 

「…貴方達、何者?」

『彼はGV…通称ガンヴォルト。私達の居た世界では雷を操る能力、蒼き雷霆(アームドブルー)の能力者』

『そして、精神感応能力である素粒子の謡精女王(クロスホエンティターニア)の能力を持つ私、シアンと』

『アタシ、モルフォを封印する為の宝剣…存在』

「……?? 何を、言っているの?」

(二人共、その説明は僕達の居た世界で無いと通用しないよ…)

 

 そう、彼女達に分かりやすく伝えるならば、この様に言えばいい筈だ。僕はネロに背を向けたまま、こう答えた。

 

「…こう言えば分かるかな? …デルタとアーシェスを別次元の世界から操っていた張本人。それが僕達だ」

「…………!!!」

 

 僕の背後から、凄まじい驚きの気配を感じた。そして、僕の目の前に居たイオンの両目から溢れそうだった涙が、遂に決壊し、彼女は僕の胸に飛び込み、大きな声で泣きはらした。

 

「ひっく…うああぁぁぁぁぁ………」

 

 …彼女は今までずっと、頑張って来た。始まりはこの世界に連れてこられての人体実験から、彼女から見れば突然の王位継承の儀、惑星ラシェーラの崩壊、そして、今までに至るまで、ずっと。それを僕達は、ただ見ている事しか出来なかった。

 

「会いたかった…! ずっと、ずっと会いたかった!! 「あなた」ぁ!!!」

 

 それが理由で、こうして僕の胸の中でその辛さを爆発させ、涙を流し続けている彼女を…イオンを助けたかった。この想いは、転生してイオンの事を思い出してから、僕達三人の中で共有されていた。

 

『私達も、こうやってイオンと顔を合わせて会いたかった。直接この世界に来て、力になりたかった』

『でも、アタシ達に出来たのは歌を送る事や、端末やアーシェスを経由して間接的に助ける事だけだった』

 

 だからこそ、普段なら間違いなくこう言った事があれば嫉妬で狂うシアン達も、イオンに対して二人で頭を撫でる位に優しいのである。それに、人体実験の辛さを知っているのも大きいだろう。僕だってこの事に関しては他人事では無い。

 

「何これ…こんな展開、私知らないよ!」

 

 インターディメンドされたプリムから、彼女を別次元から嘗ての僕達の様に干渉していると思われる人物の感想と思わしき言葉が飛び出す…そろそろ、背中の敵に対処するべきだろう。

 

「だけど、もう大丈夫。僕達がここに居る以上…」

 

 そう言葉を紡ぎながら、僕達は名残惜しくイオンから離れ…

 

「イオンの事を、直接護る事が出来るのだから!!」

 

 僕の内に眠る蒼き雷霆の力を本格的に発現させ、右腕にダートリーダーを構え、何時もの構えを取った。そんな時だった。

 

「まっ待って! 私も謳う! 「あなた」の…GVの為に、この詩を!」

 

 そうイオンは詩魔法を行使しようとしたのだけれど…彼女の居るこの世界の詩魔法はアーシェスやシャール等とチェインする事で初めて成立する物だ。今の彼女単独で詩魔法を紡ぐのは不可能に近いだろう。だけど、その想いを無下には出来ない。

 

『今のイオンはアーシェスが大破しちゃってるから、今のままじゃ謳えないと思うよ…』

「あ…そういえば…」

『だから、一緒に謳いましょう? アタシ達と協力強制…チェインしてね』

 

 そう言いながら、イオンは僕達と手早くチェインを済ませ、イオンを中心にシアン達が左右に、僕はアーシェスの居た前面に展開した。

 

「シアンちゃん…モルフォちゃん…一緒に謳おう!」

『うん!』

『謳う詩はイオンに任せるわ! 思いっきりやっちゃって!!』

「じゃあ…折角だから、ねりこさんに来てもらう!」

 

 そう言いながら、イオン達は詩魔法を行使する。その詩魔法の名前は「灯台守の夜」。イオンの言うねりこさんとは、イオンを眠らせて、その生命力でシャールを生み出す役割を担っていた存在であった。だけど、彼女の奔放な性格は、イオンの癒しになっていた。

 

 この詩魔法は、そんな遊び心満載の彼女をイオンなりに表現した物なのだ。確か、四つほど攻撃パターンがあった筈だ。そう考えている内に、イオン達は詩魔法を紡ぎ始め…彼女は持っていたカードを両手で一度展開し、その手に収めながら姿を現した。褐色の肌に、うさみみのフードで隠れているが、銀色の長髪をし、琥珀色に近い瞳をしている。そう、ねりこさんだ。

 

「さあ、いくよ!!」

 

 そして、イオン達の詩魔法によってねりこさんが出現したのを合図に、この戦いは始まった。僕達のやり取りの間に、どうやらプリム達は戦力を増強していたらしく、更にロボットの数が増えていた。その上…

 

「冷静に考えれば、()()()()()()()()()()()()と、()()()()()()()、私の方がずっと有利! それに…まだコレだって使えるんだからね! それ!!」

 

 プリムはアーシェスを破壊した衛星砲を僕に目掛けて発射して来た。それも、手加減の無い出力で。僕はそれを波動の力で打ち消しながらダートを近くの銃撃を放ってくるロボット達に当てて行く。

 

「驚いた…あれを正面から打ち消せるのね…」

「でも、攻撃面は大した事無いみたい! 持ってる武装はアーシェスよりもずっと貧弱みたいだし、このまま押し込めば!」

 

 そう言いながら、ロボット達はミサイルや弾丸を無数に放ってくる。このまま防ぎ続けても僕だけならば問題は無いけど、背後に居るイオン達の事を考えれば、何とかするべきだろう。対処法は決まっている。それは蒼き雷霆による基本にして奥義。

 

「生憎だけど、仕込みはもう終わっているんだ」

 

 そう言いながら、僕は雷撃麟を発動させる。迫って来ていたミサイルや弾丸などの実体弾も、全てこの雷の結界で打ち消されていく。そして、予めダートを撃ち込んでいたロボットにはダートによって誘導された雷が襲い掛かり、瞬く間に破壊された。

 

「なにそれ! そんなのアリなの!? チートよチート!!」

「……凄い。(この人達の事を信じるならば、()()()()()()()()()()()()()()()()()になる…もしかしたら…この人達にお願いすれば…)」

 

 プリムからは干渉者らしい言葉を、ネロからは感嘆の言葉が紡がれていた…と言うか、ネロは先ほどから攻撃を仕掛けておらず、僕達を見ながら何か考え事をしている様だ。

 

「わぁ…ねぇシアンちゃん、モルフォちゃん、GVって凄いんだね!」

『それは当然だよ!』

『だってGVはアタシ達の世界では無敵の雷の能力、蒼き雷霆の能力者なんだから!!』

 

 そしてダートを撃ち込んだロボットが破壊されたのを確認しつつ、雷撃麟を展開しながら次のロボットを相手にダートを撃ち込み、誘導された雷で撃破すると言う流れを攻撃が途切れるまで繰り返した。それにしても…

 

(EPエネルギーの消耗は僕達の居た世界とは変わらず…いや、想像よりもずっと軽減されている。てっきり過剰に消耗するとかそう言った事は覚悟していたのだけれど…これもきっと、イオン達の詩魔法の効果なのだろう)

 

 お陰で想定よりもずっと長く雷撃麟を持たせる事が出来そうだ。そうしている内に、詩魔法詠唱中のイオン達がアクションを起こした。

 

『『「いっけぇー!!」』』

《しっかり受け取れよっ!!》

 

 それは詩魔法における余波と表現すればいいのだろうか? 詩魔法で呼び出されたねりこさんが指を鳴らすような仕草をした途端、その力がまだ攻撃していないロボット達の足元へと飛び出し、着弾した場所から魔法陣と思わしき陣が展開され、ロボット達を薙ぎ払った。

 

 これによって銃撃等が一時的に止んだので、僕は雷撃麟を解除し、EPエネルギーの補充を済ませ、再び雷撃麟を展開し、ダートでロボット達を狙っていった。だけど、この僕の一連の行動によって、雷撃麟は永続展開が出来ない事が向こうに把握されてしまっただろう。

 

「ふぅん…ソレってずっとは展開出来ないみたいだね! それに…」

 

 そう言いながら、プリムは雷撃麟展開中の僕に対して衛星砲を撃ち込んで来た。僕は雷撃麟の展開を止め、波動防壁によって受け止めた。

 

「実体弾はその膜で防がれちゃうけど、高エネルギーによる攻撃は防げない…攻略法、見えて来た!」

 

 まあ、そう考えるだろうね。()()()()()()()()()()()()()()()。そう考えている内に、ロボット達の攻撃方法もエネルギー兵器主体に切り替わっていく。今の僕は為すすべなく攻撃を防ぐのに専念している様に向こう側からは見えている筈だ。

 

「GV…」

『大丈夫よイオン、GVはああやって相手の攻撃手段を誘導しているだけだから』

『私達はGVの事を信じて、詩を謳おう?』

「…! うん!」

 

 絶え間なく、衛星砲による高エネルギーによる攻撃と、ロボット達の攻撃が続き、その精度も加速度的に上昇していく…これがインターディメンドを敵に回した時の脅威か。恐らく、向こうの視点ではもう何回も何回もやり直しているのだろう。

 

 そろそろ、頃合いか。流石にこれだけ上空から攻撃されれば、()()()()()()()()()()()()。詩魔法もこの場の敵を全滅させるくらいには溜まり切っている為、動き出すならば、今だろう。段取りは――

 

「イオン、シアン、モルフォ、詩魔法の発動を!」

『『了解!!』』

「分かったよ! …お願い、届いて!!」

Ladies and gentlemen(レディースエーンジェントルメーン) It's a show time(イッツアショウタイム)じゃあ~~》

 

 ――と、考えていた僕の前に四つのカードが現れた。突然起こったあまりの出来事に一瞬戦闘行動が止まりそうになった。そう言えば、画面の向こう側でもこんな演出があったな…

 

《ほれ、早く選ばぬかぁ!》

 

 詩魔法になってもねりこさんは容赦がない…僕は素早く右から二番目のカードを引き…その絵柄は、ねりこさん自身がイオンの夢世界で経営していた「雑貨屋ねりこ」を持ち上げていた絵柄で、「一等 ねりこ賞」と書かれていた。

 

《おっめでとぅ~! ねりこ賞じゃあ~~!!》

 

 その発言と共に上空から文字通り「雑貨屋ねりこ」がこの場に居る全ての敵をなぎ倒しながらミサイルの様に飛んできて、着弾し、大爆発を起こした…画面越しでは何度か見た光景だったけど、こうして直接見ると…何ともシュールであると言わざるを得ない。

 

《せんきゅ~ぅ》

 

 そんな気の抜けた声と共に、ねりこさんは姿を消した…色々と予想外な所もあったけど、先ずは段取りの一つは終わった。次の段取りは――

 

――掲げし威信が集うは切先 夜天を拓く雷刃極点 齎す栄光 聖剣を超えて

 

「迸れ! 蒼き雷霆よ(アームドブルー)! 天空の脅威を叩き落す、一筋の蒼き雷光(ヒカリ)となれ!! グロリアスストライザー!!」

 

 位置を特定した衛星砲を、嘗てアキュラとの一騎打ちで使用した真なる力を開放した聖剣を波動の力で増幅し、その際に出現した蒼き巨大な柱で叩き落そうと言うのだ。そしてそれは見事に成功しこの段取りを終えた。最後に――

 

「うぅ…ケホケホ…まさか衛星砲まで叩き落されちゃうなんて…ここはもう撤退するしか――」

 

 プリムを、()()()()()()()()()()だけだ!! 僕はイオン達の詩魔法で体勢を崩しているプリムに「雷縛鎖」…ヴォルティックチェーンの劣化版とも言える鎖によるノーマルスキルで拘束し、その鎖を経由して()()()()()()()()()()()()()()()()ヒーリングヴォルトを元に作り出したスキル、「リフレッシュヴォルト」を流し込んだ。

 

「な…せ…接…ぞ…くが……」

 

 そう言いながら、プリムは倒れた。倒れ際の発言から察するに、どうやら上手くいったみたいであった。つまり、これで最後の段取りも終え、上手くプリムをインターディメンドから開放する事が出来た。これは長く続けていると今のデルタみたいに悪影響を齎してしまう物だ。出来るなら解除するにこした事は無い。

 

「GV…最後にプリムちゃんに何かしてたみたいだけど…」

『あの雷ははリフレッシュヴォルトっていうスキルで…体の状態を正常に戻す効果があるの。プリムちゃんは私達がアーシェスを操っていたみたいに、別次元の存在に操られていたの』

『それを何とかする為に、GVはああしたって訳ね』

「…プリムちゃんの言ってた中身は平気って、そう言う事だったんだ…」

 

 シアン達の説明で僕の行動に納得がいったイオン、そして…

 

「…………」

 

 結局戦闘に参加していなかったネロは僕達を見つめていた。その視線は、明確な希望を見つけたような、何所か熱を孕んだような、そんな感じであった。恐らく、僕達に自身が還る為の希望を見出したのだと考えられる。実際、イオンの事を還す方法はこの世界に来る前に確立させた為、ネロの願いも叶う事となる。

 

 取り合えず、これでイオンを守り切る事は出来た。後は…デルタ側が如何なっているかだ。僕はイオンを守る為と言う理由でこちら側に飛んだのだが、デルタ側も母胎想観と言う厄介な存在に襲われている筈。だからこそ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 僕は「星詠台」と呼ばれる所で母胎想観と戦っているであろう、そんなデルタ達や僕の仲間達の無事を祈るのであった。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。




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