【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる   作:琉土

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第二十一話

 時間はまだソレイルの動力…アルノサージュ管を停止する前にさかのぼる。俺達は動力の切替に、一度完全に動力を落とす必要がある事をイオン経由でサーリから聞かされ、その為に必要なコンソールが存在する星読台へと足を運んでいた。

 

「うわぁ…すごい!! デルタ、早く早く! ここの眺め、すっごい綺麗よ!!」

 

 その途中、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()俺の幼馴染の銀色の長い髪で赤い瞳を持った活発な彼女、キャスティ…キャスがそう言いながら俺の事を誘っていた。そんな彼女に対して、俺の()()()()()()()()()()意味も込めてこう返答した。

 

「おいおい…こんな所で油売ってる暇はねぇだろ」

「ちょっと位いいでしょ? ただでさえ過酷なんだから、たまには休憩も必要よ」

 

 実際、この場所まで来るのに相当歩き詰めであったのは確かだ。道中でも俺はキャスに対して「休んでもいい」と言っていたので、彼女の言葉に賛同する形となった。

 

「……確かに、すげぇな」

「綺麗…フェリオンに住んでた頃は、こんな世界があるなんて思ってもみなかった」

「移民船の中だったんだから、仕方ねえよ」

「それもそうね…こうやって外に出られる日がまた来るなんて、思ってなかった」

 

 そう、今のキャスが言っていた通り、俺達は移民船の中に形成されていた街である「フェリオン」に住んでいる。それがこうして外に出られたのはつい最近の事なのだ。それ以前は何度も冷凍睡眠(コールドスリープ)をしては定期的に目覚めを繰り返しながら移民船の中で何千年と生活をして来た…()()()

 

「あ、ほら、デルタ! シャラノイアが端から端まで見えるわ! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 シャラノイアとは、この移民船の周囲に形成された大地の事で、ほのかの村はそんな大地に形成されたのどかな村の事だ。その村に指さしているであろうキャスの話に合わせる為に、俺は言葉を紡ぐ。

 

「お、本当だな。タットリア、元気にしてるといいけど」

 

 それがキャスの()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……ねえ、デルタ。ちょっとだけ、聞きたい事があるんだけど、いい?」

「ん、何だよ?」

「あんたに…何が起きているの?」

「…え?」

「……最近、変よ」

 

 キャスのこの言葉に、俺は内心驚いた。そんな俺の動揺を隠す為に素知らぬふりをして言葉を紡ぐ。

 

「別に、いつもと変わんないぜ…」

「嘘」

「嘘じゃ…」

「嘘!!」

 

 キャスは確信を持って俺が嘘を付いている事を告げた。

 

「…ど、どうしたんだよ。なんかおかしぞキャス」

「…デルタ、ほのかの村を指で指してみて」

 

 このキャスの台詞に、俺は内心焦った。

 

「なんでだよ?」

「いいから」

「今、そんな事してる場合じゃ…」

「出来ないんでしょ? ううん…出来る訳無いわ。だって、ここからほのかの村は…()()()()()()

 

 感情を押し殺すように言ったキャスの言葉に、漸く俺は彼女にカマを掛けられた事を悟った。

 

「……」

「もう一回聞くわ。あなたに、何が起こってるの?」

「…何でもないって言ってるだろ。今はとにかく、移民船の動力を落とさないと…」

「お願い。誤魔化さないで、話して…」

「……」

 

 俺は、キャスの問いに何も答えられなかった。そんな俺に対して、彼女の言葉は続く。

 

「二年半前、あなたはフェリオンの隔壁を内側から開けた。隔壁は直ぐに閉じられたけど、隙間から沢山のシャールが入って来て、街は大混乱になったわ。隔壁を開けた理由を聞かれたあなたは、街の為にやったって言い続けてた。そんなあなたを、みんなは凄く冷たい目で見てたわよね」

「そんな事…今更掘り返してどうすんだよ」

「最近のデルタ、あの時と同じ顔をしてる。何か…関係があるんじゃないの?」

「…さぁな」

 

 俺は、キャスから顔を逸らして誤魔化す事しか出来なかった。

 

「…何も、教えてくれないんだ」

「キャス、今はそんな事言ってる場合じゃ無いって分かってるだろ? さっさと母胎想観を止めないと、本当に手遅れになっちまうんだぞ!」

 

 母胎想観とは、ウンドゥ宰相やサーリから聞いた簡単な説明によると、七次元の俯瞰…つまり、あらゆる時間や可能性、そして人間のドラマを何時でも自由に鑑賞できる、簡単に言えば「アカシックレコード」を何時でも()()()閲覧できる「八次元人」と呼ばれる存在が、十万人もの人間の魂を取り込んだ事で、本当の意味で「それ」を…「この世界の森羅万象」を見ることが出来るようになった存在…らしい。

 

 俺には難しい事はさっぱり分からないが、実際に相対してみて、何となくこいつはヤバイって確信を持って言えた。何しろ今までに至るまでの様々な事件を引き起こした張本人であるジリリウム・リモナイト…ジルが母胎想観となっているのだから。

 

「そんな事、どうでもいいの!」

「ど、どうでもいいってお前…」

 

 それに対してどうでもいいと一蹴するキャス。

 

「デルタ」

「な、なんだよ」

 

 その次に放たれたキャスの言葉に、俺は大いに狼狽える事となった。

 

「私、あなたが好き。大好き。子供の頃からずっと好き! あんたが覚えて無くたって、ずっと好きだったんだから!!」

「お前、急に何を…!」

「お願い、教えて。デルタに何が起きているのかを、私に。もし、デルタが辛い想いをしているなら…その気持ちも、一緒に分かち合いたいから」

「キャス…」

「お願い…デルタ。本当の事を打ち明けて…私もう、心配で心配で…頭が変になりそうなの…いつもと変わりない筈なのに、でもやっぱり変で…でも誰に聞いても分かってもらえなくて。だけど! だけど私には分かるの! だって、私はずっとあんたと…!!」

「キャス…!!」

「ちょ…デルタ!?」

 

 涙目になりながら必死に言葉を紡ぐキャスに対して、俺は遂に堪え切れずに彼女を抱きしめ、こう尋ねた。

 

「…何時から、気づいてた? 俺がおかしいって」

「…ずっと」

「嘘だろ?」

 

 どうやら、最初から俺の事はキャスにはお見通しだったらしい。

 

「ホントよ…」

「凄いな、お前」

「当り前じゃない。何年一緒に居ると思ってるのよ」

「そうだな…」

「「……」」

「キャス」

「何よ」

 

 なら、俺もキャスの告白とその勇気に応えなきゃいけない。

 

「…俺も、お前の事好きだよ」

「……」

「だから、これから話す事、信じて欲しいんだ」

「うん…」

「俺はもう、()()()()()()()()()()()

「…え?」

「目だけじゃないんだ。身体の感覚が、ほとんどなくなってる」

「…嘘よ。そんな状態で、ここまで登ってこれる訳無いでしょ」

 

 この俺の言葉は事実だ。今こうして俺はキャスを抱きしめている筈だが、その感触も、体温も、殆ど感じることが出来ていない。そんな俺の体だけど、それでもここまで来れたのには訳がある。

 

「今、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()意識はあるけど…なんだか夢の中を漂っている様な、不思議な感覚なんだよな」

「何…それ」

「俺には、「インターディメンド」ってプログラムが施されてる。それは、ここじゃない、別の世界の存在が、俺の身体を操るプログラムらしい」

「別の世界…身体を操る?」

「ああ、しかもこの状態が長く続くと…どんどん俺の身体の制御権は、外の世界の奴に移っていくんだと」

「冗談でしょ?」

「冗談じゃない。母胎想観と戦った後、ネロから聞いた。最初は信じられなかったけど…もう、最近は確信を持ち始めてる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そう、思い返してみれば記憶を失ってからずっとそうであったと俺は確信していた。何しろ自分で言うのもアレだが、俺は大雑把であると自覚している。そんな俺が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()何て事を毎回必ず忘れる事無く行うなんて出来るはずも無いのだから。

 

 そう思い返して見ると…俺の身体を操っていた存在は、かなり俺達に気を使っていたのだろうか? 何しろ戦闘中でも俺がダメージが受けたと自覚した途端、即座に俺は回復アイテムを使用していたし、キャスに対しての守りも、鉄壁と言える程だった。だけど、それでも体を操られると言うのはいい気分では無いのは確かだ。

 

「どうして…今まで黙ってたのよ」

「キャスは心配するだろ?」

「するに、決まっているじゃない…バカ」

「でも、星読台に行けば、この身体から違う世界の存在を追い出せるかもしれない」

「どう言う事?」

「ネロから、鍵を預かったんだ。それは、星読台にある装置を使う為の物らしい。うまくいけば、俺のインターディメンドを解除出来るって言ってた」

「それで、デルタは元に戻れるの!?」

「多分…な。だから、キャスも協力して欲しいんだ。俺を、星読台まで連れてってくれ」

「うん……うん! 絶対、うまくいくわ。星読台で動力を落として、母胎想観を倒して…それからデルタを元に戻して…それで、二人で一緒に…!」

「二人で…?」

「……な、なんでもない」

 

 キャスは照れ臭そうにそう答えた。

 

「なんだよ。最後まで言えよ」

「なんでもないって言ってるでしょ!」

「こんな状態で怒るなよ……」

「あんたが余計な事言うからよ……」

 

 そう言ったやり取りをする俺達だが、その互いの言葉に互いを気遣う想いが込められているのを感じる事が出来た。俺だって感じる事が出来たんだ。キャスだってきっと…同じはずだ。

 

「はぁ……あ、そうだキャス。最後に一個、頼みがあるんだけど」

「なぁに?」

「同調しようぜ」

「同調?」

「同調すれば、お前の目とか耳の感覚を共有出来る。こっからの景色、俺もみたいんだよ」

「何それ…しょうがないわねぇ、ほら……」

 

 嬉しそうにそう答えたキャスと俺は同調し、今いる場所の景色を俺は見ることが出来るようになった。その景色はキャスがはしゃぐのも分かる程、綺麗な物であった。だけど…

 

「うわっ! すげぇ! こんな高い所まで来てたのかよ! まるで昔どっかで見た映像みたいだな! ん…でも、なんかちょっとぼやけて…」

「何よ、急にはしゃいじゃって…バカ」

 

 その景色は、少しぼやけていた。そんなこんなで互いの気持ちを確かめ、本当の事を打ち明け、景色を楽しみながら休憩を済ませることが出来た。

 

「デルタ、ありがとう。本当の事、打ち明けてくれて」

「いや、こっちこそ悪かった。キャスの為だと思って隠してたけど、逆に追い詰めちまってたんだな」

「ううん、いいの。もう、いいのよ」

「そっか…さあ、あともう少しで頂上だ。気合入れて行こうぜ」

「ええ……」

 

 休憩を済ませ、俺達は先へと昇っていき…そして遂に星読台へとたどり着いた。しかし、ここはどれだけ高いのだろうか? 気分は五百階建てのビルを踏破したと言ってもいい位であった。そして驚いた事に、キャスはこの場所の事を知っていた。

 

 曰く、もうずっと昔の話…まだ惑星「ラシェーラ」があって、この移民船が別の用途…遊園地として使われていた頃の話だと言う。キャスはその遊園地でネロと出合い、この場所…星読台にも一緒に来たのだと言う。俺も覚えてはいないけど、二人がここに逃げる為の囮になったりしたのだそうだ。

 

 その序に、ネロの事も少し知ることが出来た。何でも当時の帝国政府はネロの力を利用して、彼女をポッドに閉じ込めて力を利用していた。それによって誰でも詩魔法が使えるサービスを受けることが出来たけど、そのせいで彼女はずっと辛い思いをしていたのだと言う。そうやって利用されていた以前も合わせると、もう何千年も…

 

 そんな会話をしつつ、俺達は星読台をくまなく調べた。そして遂に、俺達は星読台の更に天辺にあった制御端末を…アルノサージュ管を発見することが出来た。キャスはサーリに連絡を取り、その方法を尋ね、実行する事で、動力を落とす事に成功した。それによって、アナウンスによる警告音声が鳴り響いた。

 

《SOREIL a-z mou-qwei-du tey-yan-i;a-z ih=gee-fan gee-gu-ju-re re-fa-i ri-yan-ryan;》

 

 そうして後はイオンに任せるだけとなった俺達は一息付こうとしたのだが…今いる俺達の真下辺りから、爆発音みたいな音が鳴り響いた。俺達は嫌な予感を感じつつ下へと降りた。そこで待っていたのは…

 

「ど、どうしてここに、こいつが!?」

 

 ジル…母胎想観だった。その見た目は人が白いロボットの鎧を全身に纏ったかのような外見をしており、その背面には翼の様にエネルギー砲の砲身を背負いながら空中に浮かんでいた。俺達がその姿をハッキリと認識したと同時に、動力を切り替える為のイオンの詩も聞こえて来た。

 

「大丈夫だ、キャス。聞こえるだろ? イオンの詩だ! 後もう少しで、終わる。後少しだけ、コイツを止めておけばいい」

「でも、こいつはほぼ不死身なのよ!?」

 

 そう、十万人もの人間の魂を取り込んだ母胎想観は、ほぼ不死身と言ってもいい程の耐久力を有していた。まともに戦えば勝ち目何て無いだろう。だけど、先も言った通り、こいつと戦って勝つことが目的じゃない。イオンの詩が終わるまで足止めすればいい。

 

「心配すんな。何があっても俺が護ってやる。だから、俺達も謳うんだ。一緒にさ」

「デルタ…? うん、分かった。謳いましょう。一緒に!!」

 

 そうして俺達と母胎想観との戦いが始まった。俺は何時も扱っている武装であるエネルギートンファーを出現させ、身構えた。キャスは現段階で最高の威力を持つ詩魔法「ジゾイドロフィア」の詠唱を開始した。この詩魔法はネロのジュノメトリクスで習得した詩魔法。純粋な心をずっと大切にして欲しいネロの想いと、打算的で大人の対応に憧れていたキャスの想いが衝突して出来た詩魔法だ。

 

 今回の戦いは勝つことが目的じゃないだけ、気は少し楽だ。それに…俺の身体を操っている奴の事も、この時だけは頼りになる。何しろ今の俺は五感がほぼ死んでいるのだから…そういえば、さっきの俺達の会話も、操っている奴は聞いてる筈。

 

 だったら、接続を断とうとしている事も知ってるだろうし、寧ろ俺の身体を操って妨害したっておかしくは無いよな? なのに、どうして…これまでの道中やこの戦闘でそういった妨害を起こさないのだろうか? 向こうも俺のこの状況は本意では無いと言うのだろうか?

 

 そんな俺の思考は当然キャスにも伝わっている。何しろ戦闘中は同調するのは当たり前なのだから。同調は五感だけでは無い。想いだって共有出来る。戦闘中にこんな事を考えている余裕があったのは、俺の身体を操ってるのが俺自身では無く異世界の存在だからである事と、動力を落とした事で、母胎想観が弱体化しているからだ。

 

「はぁ! 遅い! おら止まって見えるぞ!!」

「くぅ…」

 

 そう、明らかに弱体化していた。それこそ、俺の攻撃だけで如何にかできてしまう程に。だけど、こいつがヤバいのはそう言った事では無い。先にも言った通り、十万人もの魂を取り込んだ事で得た()()()()()()が不味いのだ。

 

「さあ喰らいやがれ!!」

「……!!」

 

 俺のビームトンファーを合体させて出来た大剣の一撃で、母胎想観の背面にあった翼の機能も兼ねたエネルギー砲の砲身を破壊し、沈黙させる事が出来たかのように思えた。しかし、沈黙したはずの母胎想観から光が溢れ出し…

 

「無駄よ。フラスコの海がある限り、私は消えないの。貴方達の安寧は母胎想観と共にある。この世界には無いのよ」

「言ってろ。自分の住むところ位、自分の手で創り出してやるよ……よし、キャス、今だ! ぶちかませ!!」

「分かったわ、デルタ!! 見せてあげる…全力全開よ!!」

《貴方達の運命を、七次元の力で…解体》

 

 キャスの詩魔法ジゾイドロフィアによって復活した母胎想観は再び地に落ちた。だが、やはりと言うべきか、再び光が溢れ出し、無傷の姿で俺達の前に立ち塞がった。だけど、これでいい。俺達の目的はあくまで時間稼ぎ…詩が完成するまで、足止めできればいいのだ。

 

「そろそろあんたの負けだぜ? イオンの詩はもうすぐ完成する。システムが書き換えられるんだ」

「そうね……でも、ここで貴方達が倒れればシステムは起動しない。永久に」

 

 ……っ! こいつ、最初からそれが狙いか!!

 

「……そんな事、させるかよ!」

「貴方達がどんなに強くても、限界はある。体力が減れば、必ず疲弊する。時間の問題なのよ」

 

 悔しいが、こいつの…母胎想観の言う通りだ。今は俺達が圧倒出来ている。アイテムも装備も充実している。準備はこれでもかと整えられている。だけど、それらを全て放出しても母胎想観を倒すには至らない。その莫大な耐久力を、ほんの少しだけ削る程度で終わってしまうだろう。だけど…

 

「……だからと言って、それが諦める理由にはならねぇ。最後まで足掻いて、キャスを護って、必ずシステムを起動させてやる! 俺の全部を賭けてでも!!」

「デルタ…」

「ごめんな、キャス。こんな事に付き合わせちまって…」

「…らしくないわよ、デルタ。あなたが弱気になってどうするのよ…私も最後まで謳うわ! だから…」

「そうだったな…こんなの、俺らしくなかったぜ…!」

 

 そう言いながら俺はビームトンファーを構え直し、キャスは再び詩魔法の詠唱を開始しようとした時、それは起こった。母胎想観の真横から()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

「カハッ…!」

「……っ! 今の爆発は、一体…」

「デルタ見て、あそこに誰かいるわ!」

 

 俺はキャスが指さした方向…光の弾が飛来した方向へ目を向けた。そこには…

 

『わぉ! すっごい勢いで吹っ飛んでったねぇ~』

「第七波動「起爆(デトネーション)」を解析したEXウェポン「ルミナリーマイン」…事前にテストは済ませていたが、予想以上の効果を発揮しているみたいだな」

 

 右手に拳銃の様な物を持ちながら油断なく構えている白い鎧の様な物を装備した白髪の短髪の男の姿と、そんな男を守る様に展開されている複数の小さい球と、何やら妙な喋る玉っころの姿があった。

 

「…お前ら、何者だ?」

 

 俺はそんな男と玉っころに対して会話を試みた。何しろその男が装備している鎧みたいな物と言い、玉っころといい、俺が今まで見た事の無い装備や機械だったからだ。少なくとも、ぱっと見で真空管らしきものが無いと言うのが俺にとっては異常だと思った。そんな俺の質問に対し、彼と玉っころはその不愛想な表情とは裏腹に、素直に答えてくれた。

 

「……俺はアキュラだ」

『僕はロロ! 君達の事をガンヴォルトに…って言っても分からないか。えっと…』

「ロロ、ここからは俺が話す…そう言うお前達は、デルタ、そしてキャスで合っているな?」

「あ、あぁ…そうだけど」

 

 こいつ…いや、名乗ってくれた以上、こいつじゃあ失礼だよな。アキュラはどうして()()()()()()()()()()()()()() そんな俺の心の内の疑問を見透かしているかのように、キャスが警戒をしながら口を開いた。

 

「…まだ私達は名乗ってないのに、どうして名前を知っているの?」

「お前達の事を見て来たからだ。()()()()()()()()()()でな」

「……っ! それってつまり…お前が…俺の身体を、操っていたって事なのか?」

 

 俺はそうアキュラに尋ねた。その答えは…

 

「違うな。俺はデルタ、お前のその体を操っていた本人に協力を求められてここまで来た」

『因みにその本人…僕達の世界では「ガンヴォルト」って呼ばれてるんだけど、彼は今イオンって女の人を助けに向かってるんだ。彼は君の身体だけじゃなくて、あの金色のロボット…アーシェスも操作しているんだけど、そのアーシェスがプリムって子の攻撃で壊されちゃったんだ』

「なんだって!!」

「嘘…あのアーシェスが!」

 

 あのアーシェスが…プリムに壊された!? そんな俺達の驚きを後目に、話は続いていく。

 

「奴はそういう訳でイオンの事を優先している。だが、こちらも母胎想観とやらで苦戦しているのをデルタ、お前の視点を経由して奴は把握している。その為に()()が世界の壁を越えてここまで来たという訳だ」

 

 そうアキュラは俺達に話をしてくれた。

 

『それと、デルタ、本人は後で直接言うつもりではあるみたいだけど、君を操っていたガンヴォルトから伝言と、()()()()()()()()()()を預かってるんだ』

「え?」

「デルタの身体を…治す…?」

 

 そんな俺達の驚きとは裏腹に、あの玉っころ…ロロの会話は続いていく。

 

『「イオンを救う為とは言え、君の身体を操ってしまってすまない」…要約すると伝言はこんな感じだったよ』

「そっか…」

 

 少なくとも、俺の身体を操っていた本人…確か、ガンヴォルトだっけか。そいつは俺を操っていた事に罪悪感を持っていたんだな…だからか。あんなにも過剰にアイテムや装備が常に整えられていたのは。せめて俺達の安全を精一杯確保しようと向こうは向こうなりに足掻いていたんだな。

 

「そして、コレがお前の身体を治す手段だ……ロロ、OD(オーバードライブ)コード「リフレッシュヴォルト」を使用する。モード「P(フェニック)-ドール」だ」

『了解! ABドライブ、USドライブ、オーバーブースト!!』

 

 その瞬間、あの玉っころの姿だったロロの外見が緑色の短髪、紫色の瞳を持ち、背中に燃えるような、漫画か何かで見た炎の不死鳥の翼を展開した姿となった。

 

「うお…! 玉っころが女の子になっちまった!!」

『玉っころって言うなーー! 僕は由緒正しいバトルポットだぞ!』

「……バトルポットって、何だ?」

「……さぁ? サーリなら分かるんじゃない?」

『えぇ…? そこからなの……』

「(ロロ…別世界の人間にバトルポットと言っても分からないだろうに…)……ロロ、頼む」

『あ、うん…全く、後でちゃんと僕の事、アキュラ君に教えてもらうんだぜ? じゃあ行くよ! ODコード「リフレッシュヴォルト」、起動!』

 

 そう女の子の姿になったロロが言った途端、アキュラの周囲を展開していた小さな玉が俺の周囲に集まり…

 

「あばばばばばばばば」

「ちょ…デルタ! ねぇ、アキュラって言ったわよね? これ大丈夫なの!?」

「問題無い。実際に俺も何度も世話になっている…主に徹夜をした時にな。このビットから放たれている雷撃には身体機能を正常に戻す作用がある。つまり、デルタの身体を蝕んでいるインターディメンドやその後遺症も解除出来るはずだ」

「後遺症…? それって、記憶も含まれるの?」

「それは俺にも分からんが…少なくとも、デルタの劣化した五感は確実に治るはずだ」

 

 そんな会話がしびれている俺の耳に届いていた。事実、俺の身体の五感が急速に戻っていくのを感じた。それだけでは無い。俺の失っていた記憶もだ。惑星ラシェーラがまだあった頃にキャス達と過ごしていたあの日々を…二年半前に忘れていた事も、全て思い出すことが出来た。

 

『ふぅ…施術完了! …なんてね。とりあえずもうデルタは健康体そのものだぜ? もっとも、これの副作用でお腹が空いてると思うから、後でがっつりと食事をとる事を勧めるけど』

「…………」

「…デルタ?」

「キャス…今まで心配かけて、ごめんな?」

 

 今、俺の頭は霧が晴れたかのように清々しい気分で満たされていた。キャスの事を全て思い出すことが出来たからだ。だから、俺はキャスを抱きしめようとしたのだが…母胎想観が吹き飛ばされた方向から、ミサイルが大量にこちらへと向かって来たのだ。

 

「…奴の耐久力の事はガンヴォルトから聞いてはいたが…あの直撃を受けても平然としているか…ロロ!」

『分かってるよ、アキュラ君! 「フラッシュフィールド」起動!!』

 

 そんな大量のミサイルがあの小さな複数の玉による結界の様な物で全て迎撃された。

 

「なんだこりゃ! すっげぇ!! かっけぇ!!」

「凄いわ! バトルポットって、こんな事も出来るのね!」

『へへん♪ 二人共、僕の事、もっと褒めてもいいんだぜ?』

「お前達…調子に乗っている場合では無さそうだぞ」

 

 そう、既に戦闘態勢を取っていたアキュラ言う通りだった。何故ならミサイルが飛んできた先には無傷の母胎想観の姿があったからだ。

 

「貴方達、一体何者?」

「…貴様の様なバケモノに、応える義理は無い」

「バケモノ? いいえ、私は生命の終着点となる存在。即ち、「神」とも言える存在よ。この世界の全ての生命体は、私の一部になる事で、魂のレベルが引き上がり、初めて幸せを得ることが出来るわ。母胎想観とは、その為の存在よ」

「「神」? デルタを経由して貴様の事も把握していたが…ここまで(おぞ)ましい妄言を語るバケモノだったとは…せめて「神」を名乗るならば、()()()()()()()()位言って欲しいものだ…貴様のその(おご)り、俺が…()()が討滅する! 行くぞ、ロロ、()()()()()()()()()!」

 

 うわぁ…アキュラってすげぇ辛辣なのな…って、パンテーラ? アリス? 誰だそりゃ? と俺が思ったその時だった。どこからともなく出現した大量のカードが剣へと姿を変え、母胎想観へと降り注いだ。それだけでは無い。雷が、炎が、氷が、水が、木が、それ以外の俺が把握出来ない様々な現象が母胎想観を襲った。

 

「くぅ……これは!」

 

 これらの現象によって母胎想観は大きく怯んだ。しかし、再び母胎想観は光を発し、また無傷の姿へと戻った。

 

「GVの話の通り、彼女の耐久力はほぼ不死身と言える程の物で間違いありませんわね」

「ええ……貴女の愛の形もまた素晴らしいと私個人は思います…ですが、大勢の人達がそれを受け入れてくれなければ、それは唯の独りよがりに過ぎません」

「「故に、貴女を止めさせて頂きます」」

 

 いつの間にか、アキュラの左右に()()()()()()()()()()()の姿があった。見た目は二人共金色の長い髪をして頭に大きなリボンを付けた唯の女の子なんだけど、どうにもその…なんだ、雰囲気がただ者じゃないって俺に訴えてるんだよな。それにキャスも、俺と同じような反応してるしな。そんな俺達にアキュラは油断なく構えながら話しかけて来た。

 

「…デルタ、キャス、今の内にこの移民船の動力のシステムを起動させろ。この場でそれが出来るのはお前達だけだからな。俺達はこいつをここに釘付けにする」

「……っ! いいのかよ?」

「その為の俺達だ…この世界を救うのだろう? 早く行け!」

「デルタ、ここはこの人達に任せましょう。私達は…!」

「……ああ、分かった! アキュラもロロも、そこの双子の女の子達…アリスにパンテーラも気を付けるんだぞ! そいつは弱体化してるけど、油断していい相手じゃないからな!!」

「どのような相手であろうと、俺に油断は無い」

『もう、アキュラ君は素直じゃ無いんだから…分かってるよ、デルタ! ここは僕達に任せて、君達は安心してコンソールのある場所に向って!!』

「ええ、その心使い、感謝しますわ」

「ですが、心配は不要です。何故ならば私は…私達は、私達の世界の同志達の愛によって支えられているのですから」

 

 こうして俺とキャスは動力を操作する為のコンソールのある場所へと急ぐのであった。異世界から来た見ず知らずの協力者達に、心からの感謝を告げながら。

 

「ありがとう、俺達の事を、助けに来てくれて…」




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。




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