【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる   作:琉土

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第二十三話

 どこで私は間違ってしまったのだろうか? 私は何もない空間で今までを振り返っていた。まだ惑星ラシェーラが存在していた時に起こった事件、「ジェノム恐慌*1」が切欠で発生したジェノムを対象とした人々による『ジェノム狩り』が切欠で、私は人間達の魂のレベルの余りの低さに絶望していた。だからこそ、私は上位の存在、「母胎想観」となって人々を導こうとしたのだ。

 

 その為の準備は万全を喫していた筈であった。実際に一度、イオナサルとネロを取り込んで完全な母胎想観となることが出来ていた。だが、それらは結果的にデルタを、そしてあのロボットを操っていた別次元の存在により頓挫してしまった。しかも、その別次元の存在が直接この世界へと乗り込んで来たのは完全に計算外であった。

 

 計算外であった理由。それは『トロンの父』と呼ばれ、四軸以上の次元論を確立した今は亡きクラケット博士ですら精々間接的に魂のみを呼び出したり、インターディメンドで間接的に対象者を操作させるくらいしか出来なかったからだ。そして実際に対峙して見て分かった事なのだが、彼らは別次元の存在であるが故、私が母胎想観であっても彼らの情報を俯瞰する事が出来なかった。

 

 母胎想観が俯瞰できるのはあくまで私の居たこの世界そのもの。つまりこの世界の存在。だが、彼らは完全に別世界の存在である以上、俯瞰できる対象外であったのだ。まあ彼らの姿や、魂の輝き等は見る事は出来たのだが。それ以外にも、彼ら一人一人があの小娘の詩魔法で支援を受けたインターディメンドを施したデルタとほぼ同等、或いは上回る程の戦闘力を有していた。

 

 それもあり、彼らとの戦いではほぼ一方的になすが儘であった。それでも、母胎想観が持つ耐久力を削り切る事は叶わなかったのは幸いであったが。だからこそ、彼らが疲弊して出来た隙を突いて撤退しようとしたのだが…彼らの内の一人である少女が放った詩魔法に近い何かの攻撃により怯んでいたその時、蒼き雷と舞い散る天使の羽を展開していた彼を見た。

 

 直観的に、彼は私に対する死神なのだと、デルタを、そしてあのロボットを操っていた張本人であると理解した。理由なんて無かった。彼は合流した仲間たちと少しの会話をしたのち、即座にこちらに切り込んで来た。思わず見惚れてしまった程の刃を腕から出現させながら。そしてその刃は、明確に私の命のみを刈り取り、今に至る。そう振り返っていた時であった。

 

「一杯、頑張ったんだね」

 

 声が、聞こえた。

 

「一杯傷ついて、間違ってても現状を必死に何とかしようとして…」

 

 私は声のした方を振り向いた。そこには…「神」が存在していた。

 

「だからこそ、私はこう思うの。貴女にも、何時か絶対に幸せになって欲しいと」

「あ…あぁ…あぁぁぁぁ……!」

 

 気が付いたら、私は「神」に縋りついていた。そんな私を、「神」は優しく抱きしめた。

 

「私が見ている。傍に居る。見捨てたりしない。抱きしめる。ううん、お願い。抱きしめさせて…」

 

 私の髪を優しく撫でながら、「神」はそう囁く。あぁ、そうか…最初に対峙した白い髪をした彼は、この「神」の事を言っていたのか。

 

「愛しい全て、私は、永遠に見守りたい…」

 

 彼がこの「神」を知っているならば…母胎想観ですら比べてはならない程に遥かに上回る魂の輝きを個人で有しているこの「神」を知っているならば…彼の言い分は、正しい。

 

「次の貴女の人生、私は応援するし、見守るよ。だから、頑張って来世を生きて」

 

「神」のこの言葉を聞いた後、私は心からの安らぎを得ながら意識を失ったのであった。

 

 

――――

 

 

 僕達が母胎想観を撃破し、一息ついた後、僕は改めてデルタとキャスに正式に謝罪をする事となった。その際、どの様に自分達の事を知り、操っていたのかを僕の記憶をシアン達の力で映像化し、ダイジェストと言った形で閲覧する事となった。そう、僕達が「シェルノサージュ」と「アルノサージュ」を介して閲覧したり、操作している所を見せたのだ。

 

 その際、僕達がどういった心境でこの世界を知り、デルタとアーシェスを操っていたのかをこの場に居た全員が見る事となった。とは言え、アキュラ達は既に一度見ているのだが。まあそれは置いといて、この場に居た三人にとっては――イオンはジュノメトリクスで疑似体験と言う形で知ってはいたけれど――衝撃的だったらしい。

 

 その理由は、誰が見ても明らかに「ゲーム」と言った形であったからだ。だけど、三人共最初は驚いていたけれど、途中から昔を懐かしむような反応に変化していった。その際、「記憶を失ってもイオンはイオンのまま」と言う感想をデルタ達から貰うことが出来た。イオンはその事を物凄く恥ずかしがっていたけれど…

 

「シェルノサージュ」での僕達は出て来た選択肢を慎重に選んでいた。シアン達と相談しながら、半ば何かあるのではと当時の僕は想いながら。そこまで慎重に、自分達の事を真剣に見守っていた事にイオン達は驚いていた。何しろ、記憶の中の映像の視点ではだれがどう見ても「ゲーム」だ。自分達だったら、まずここまで真剣になる事などできない。

 

 何しろ、別の世界で起こっている事である上に、巧妙に「ゲーム」としてカムフラージュされていたのだ。騙されていたっておかしくはない。この際僕は、記憶の中のシアン達はゲーム端末から異なる波動を感じていた為気が付くことが出来た事を説明し、イオン達は納得した。そして、その反応が改めて変化したのは僕達が「アルノサージュ」をプレイし始めてからだ。

 

 何しろ、キャスにとって肝心のデルタがフェリオンの隔壁を開けた場面が無く、既にそれは過去の話となっていたからである。が、それは「アルノサージュ」において、アーシェスが破壊された後で先に進めなくなった更に後で判明する事となった。それは、その事に記憶の中の僕達が気になって先に進めなくなった事も含めて色々とネットで調べた結果、「Class Arnosurge-Proto*2」と呼ばれるコンテンツが存在している事が分かったからだ。

 

 記憶の中の僕達は早速そのコンテンツをプレイする事となった。それは画面など存在せず、緑色の文字の羅列だけで出来た物と言ってもよい。それでも、デルタ、キャス、サーリ、ネイさんと思われる人物の会話を察する事が当時の僕達は出来ていた。そして遂に、隔壁を開ける場面へと遭遇した。

 

 その時のデルタの会話と言うか心情はあの時のプリムを彷彿とさせるような支離滅裂と言っても良い物であった。だからこそ、記憶の中の僕達はその後に出て来た選択肢で、迷わず隔壁を開けない選択肢を取ったのだ。その事にデルタ達は驚いていた。何しろこの世界は隔壁が空いている前提の上での世界だ。だからこそ、僕達が迷わずこの選択肢を取ったのが意外だったのだろう。

 

 だけど、その後の結末は今の世界と違う状態となっていた。それは、フェリオン内部の物資が無くなっていき、最終的にもう一度コールドスリープすると言う結末になってしまっていたのだ。この結末に、記憶の中の僕達は憤りを感じていた。何しろ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事が確定したからである。

 

 記憶の中の僕達はもう一度やり直した。未来を繋ぐために。「アルノサージュ」へつなげる為に。本当にこれで良いのかと僕達三人で相談しながら。実際、隔壁を開ける際のデルタは選択肢を「隔壁を開ける」を選ぶたびに迷っていた。そして、三回目の「隔壁を開ける」の選択肢で、遂にデルタは隔壁を開ける決断をした。街を守ろう、皆を守ろうと言いながら。

 

 記憶の中の僕達、そしてその記憶の映像を見ている三人、特にキャスは悲痛な表情で見守っていた。彼女はこの時どう思っていたかを話している。デルタがこんなにも辛い想いをしていた事をあの時分かってあげられなかった事を、そして、僕達にこの様な選択肢をさせざるを得なかった当時の自分達の不甲斐なさを。

 

 そんなやり取りをした後、デルタ達から逆に謝られる事態となり、一時互いに謝罪合戦が繰り広げられる事となった。とまあそう言った事があり、デルタ達もイオンと同様、極めて好意的な態度で僕達と接してくれるようになった。この事もあり、「天領沙羅」で合流したサーリとネイさんにもインターディメンドの事を知っててデルタを利用した事を百歩譲ってキャスは許した*3

 

 その後、僕達は「天領沙羅」から長い階段で登った場所にあった「天領伽藍」の謁見の間にて色々と話し合ったり、僕達の視点の光景をその場に居た全員に見せる事となった。そのお陰もあり、シャール達との誤解も明確に溶け、この世界から直接的な脅威と呼ばれる存在が居なくなった事を確認する事が出来たのだ。

 

 その後、フラスコの海へと向かい母胎想観に取り込まれたほぼ全ての人達を助け出す事に成功し、シャールも含めた脅威が存在しなくなった事も含め、僕達が来る前に壊滅状態となっていたフェリオン全土で「天統姫」となったネイさんによって、その事が発表されている。その結果、民衆から笑顔が、そして失墜したはずのの権威も復活した。

 

 この発表をする前、僕達はその序にネイさんに「天統姫」の正体をカミングアウトしてみたらどうだろうと提案していた。今ならば、多くの人々も受け入れてくれるはずだと。最初はかなり渋っていたが、ダメだったら僕達の世界に来ればいいと言う言葉でそれを了承してくれた。

 

 その結果なのだが…元々ネイさんは「疾風のおネイさん」として多くの人達に慕われていた事に加え、今回の件でこのソレイルにおける脅威の排除、そして決定的な決め手となったのは母胎想観に取り込まれていた人達の救出と、シャールとの和解もあり、多くの人達からますます支持を得る事となった。

 

 とは言え、今のフェリオンは隔壁も含めた一部の施設を除いた他の施設は壊されたままであり、このままでは復旧するのにかなりの時間が掛かる。そこで、僕達の力がこの復旧の役に立つことが出来た。特に、アリスの「夢想境(ワンダーランド)」が大活躍であった。何故ならこの能力は「すべてを創造する力を持つ第七波動(セブンス)」だからだ。

 

 それはこの世界特有の僕達からすれば未知の物質も生成可能であった。他にも、損傷が軽微な施設の場合は「波動の力」で復旧する事も出来たので、一から如何にかしないといけない場合は「夢想境」を。それ以外は「波動の力」をと使い分ける事で、僕達もフェリオンの復旧の力となる事が出来た。

 

 そのお陰で、僕達の存在はフェリオンの人達に受け入れてもらえている。それに、この復旧は僕達にも…正確にはアキュラにも利点があった。何故なら未知の技術に触れる絶好の機会であったからだ。復旧の間のアキュラは普段とあまり変わらなかったように見えたが、明らかに生き生きとしていた。

 

 それが終わった後、廃棄されたと思われる巨大なジェットエンジン内に作られた街、「クオンターヴ」に存在しているサーリの隠れ家、「ノエリア・ラボラトリーズ」にて、サーリからドクター・レオルムを紹介された。されたのだが…このレオルムの名前、僕には覚えがあった。

 

「ドクター・レオルム、もうこの世界には脅威と呼ばれる物は存在しないと言ってもいい。だから、もう正体を隠さなくてもいいんじゃないかな?」

《……何のことだい? GV君》

「僕は別次元から来た存在なのはもう話したと思いますが…貴方の「レオルム」と言う名前、何処かで聞いた覚えがあったのを思い出したんだ…改めて言いますが、もうこの世界には脅威は存在しません。母胎想観も倒しましたし、シャールとも和解出来ました。ネロももう帰還出来る事が確定している以上、妨害される事も無いでしょう…それとも、僕の方から明かしましょうか?」

《…………そうだね。別世界から来た君達のお陰で、この世界は一気に平和になった。もう私も正体を明かしてもいいだろう》

「ドクター…」

《と言いたい処だが…今、私はとある事情で身動きが取れない状態なんだ。だから、出来れば君達が私の所へと来て欲しい》

「…身動きが取れない?」

《そうだ、場所の事も話そう。今私が居るのは「謳う丘」に存在する、「コントロールルーム」と呼ばれる場所に居る》

「「謳う丘」だって!? ドクター、それは本当かい?」

《ああ、間違いない。そして、同じ場所の「ヒュムネスフィア」と呼ばれている場所には、「レナルル」と呼ばれる女性が居るはずだ》

「レナルルさん!? レナルルさんがそこに居るの!?」

 

「謳う丘」、それはかつて惑星ラシェーラで「グランフェニックス計画」と呼ばれる計画が実行された場所。そこでイオンは「ラシェール・フューザー」を謳い、何万光年も離れた場所にある移住可能な惑星へと接続した場所である。所謂、一種の「コロン」…浮遊都市の様な場所だ。

 

 イオンが反応したレナルルさんとは、「レナルル・タータルカ」と呼ばれる金色の短髪が特徴的な、ラシェーラが存在していた時の天文の組織「PLASMA」の幹部として活動していた女性だ。ドクター・レオルムが言うには、記憶を破壊され、ネロとジルの傀儡となった彼女に拘束されたのだと言う。

 

 当然、今すぐ「謳う丘」へと向かおうと言う話になる訳なのだが、そこで問題があった。それは、現在この船の座標が分からない事だ。だけど、その問題の解決方法には当然僕達は覚えがあった為、即座に解決する事となったのだが…幸い、「ソレイル」は惑星ラシェーラのあった位置から全く動いていない事が分かった。

 

 これならアーシェスのアバターコアを使えばエアポートから「スペースバス」で直接向かうことが出来る。そうして僕達はイオン、サーリ、デルタ、キャス、ネロを連れて、「謳う丘」へと向かう事となった。そうして僕達は無事「謳う丘」へと到着し、先へと進むと…そこには、ドクター・レオルムの言った通り、記憶の破壊されたレナルルさんの姿があった。

 

 その姿を見たイオンは真っ先に向かい、レナルルさんに呼びかけたのだが、やはり記憶が破壊されていた為、呼びかけには応じなかった。そこで僕は、レナルルさんに「リフレッシュヴォルト」を用いて記憶の修復を試みた。これは、アキュラがデルタの記憶修復が可能だったからこそ試した方法であった。

 

「……イオン?」

「あぁ……! レナルルさん…レナルルさん!! …良かった。無事で、本当に良かった」

「…ごめんなさいね。貴女には随分と心配をかけてしまって…」

 

 その結果、彼女は記憶を取り戻し、イオン達と数千年ぶりの再会を果たした。その後、僕達はレナルルさんにこれまでの経緯を説明し、同行者となって貰った。この調子で、次はドクター・レオルムを探し出して、拘束を解こうと「コントロールルーム」へと足を踏み込んだのだが…

 

「なんだ、この部屋は…」

『『「「「「「うわぁ……」」」」」』』

『何この部屋…新手のヘンタイさんの巣窟?』

「相変わらず、良く分からない部屋…」

「……やっぱり貴方でしたか、()()()()

「え……白…鷹…?」

「いやぁ…一部の人は初めまして、そして…お久しぶりッス、イオンちゃん、サーリちゃん、デルタ、キャスちゃん。レナルルさんも、記憶が戻った様で何よりっス」

「ええ、お陰様で。記憶を破壊されていたとは言え、貴方には迷惑をかけてしまったわね」

 

 その部屋は、「プリティーベリー*4」のグッズで埋め尽くされていた。ポスターがいたる所に貼られ、床には本が散乱し、人形を収めているであろう箱が山の様になっている光景は、正しく「オタクの部屋」と表現してもいいだろう。その部屋に居る人物であるドクター・レオルムの正体、それはやっぱり僕の予想通り、白鷹であった。

 

 何故僕は彼の事を見破ることが出来たのか、それは、「シェルノサージュ」で彼の本名が、「レオルム・セオジウム」である事を把握していたからだ。皆の反応を後目に、僕は蒼き雷霆(アームドブルー)のハッキング能力を用いて拘束を解き、彼を開放した。その直後、真っ先にサーリが白鷹へと飛び込んでいくのを見て、僕はサーリに良かったねと心の中で囁くのであった。

*1
旧ジェノミライ研究所の最深部で発生した力場の暴走。それはラシェーラの地殻を抉り、全土に大地震を引き起こした。この地震の直前、多くの人々が縦貫坑道に向かう無数のジェノムを目撃したため、大地震を引き起こした原因がジェノムであると考える者が多発した。それは天文派だけでなく、一部の地文派にすら疑問を抱かせ、この疑いと大地震による不安は『ジェノム狩り』という暴動にまで発展した。この一連の流れが『ジェノム恐慌』である。

*2
簡単に言うと、ブラウザで出来るノベルゲー。ここではデルタが最初にインターディメンドされてからフェリオンの隔壁を開ける所までをプレイできる。

*3
原作では自分達に黙ってインターディメンドされていたデルタを放置していた事を物凄く根に持っており、簡単に許す事は無かった。

*4
ラシェーラが存在していた頃、ネイさんが「コロン」の「夢の珠」で踊り子として活動していた頃の名前




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。




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