【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる   作:琉土

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第二十四話

 白鷹さんと再会した僕達は、一度コントロールルームから出た後、レナルルさんから、惑星移住計画の…当時の「グランフェニックス計画」の話を聞くことが出きた。

 何故この話を聞く事になったのか? それはアキュラがこの施設が創られた目的を尋ねたからだ。

 その話は要約すると、イオンは「謳う丘」にて惑星ラシェーラ本人からの承認を得て、その惑星その物をエネルギーに変換して、「マイクロクェーサー」とし、それをエネルギー源に「ラシェール・フューザー」を謳う事で、その移住可能な惑星へと接続することが出来た。

 そして、その接続された惑星が移住可能なのかを確認する為の先発隊も送り出され、あと一歩で移住可能な所まで迫っていた。

 だけど、そこでネロがイオンの記憶を破壊しつつ、「マイクロクェーサー」を用いてその時から数千年後の未来に飛ぶ事で惑星移住計画を阻止されてしまった。

 そこでレナルルさんや白鷹さんはネロを追う為に、コールドスリープをこの時代に設定していた。

 が、ネロとジルに返り討ちに合ってしまい、レナルルさんは記憶を壊され「イグジット」と言う名前を与えられ傀儡にされ、白鷹さんはコントロールルームで身動きの取れない状態に捕縛されてしまったのだと言う。

 

 事情を聞き終わったアキュラは、今度はネロにこう尋ねた。

 何故惑星移住計画を阻止してしまったのかを。

 その疑問は恐らくこの場に居る僕とシアンとモルフォ以外の全員が思っている事だろう。

 その疑問にネロは諦めたような表情で沈黙を持って答えた。

 だから僕は、「シェルノサージュ」をプレイしていた当時の僕の記憶を経由して把握してもらう事とした。

 当然、ネロ本人にそれをしてよいのか尋ねつつ。

 ネロが沈黙していたのは、自身が話しても信じて貰えないかもしれないと思っていたからだ。

 だけど、第三者である僕達の持つ情報経由なら信憑性も増すだろう。

 そうして僕の記憶の映像から映し出されていた物……それはネロが「リーヴェルト*1」に捕えられ、余りにも酷すぎる罵声を浴びながら装置に組み込まれると言う衝撃の光景であった。

 この光景を前に、この場に居た全員がどうしてネロがあんな事をしてしまったのかを痛い程に把握した。

 特にレナルルさんは、肉親とは言えやはりリーヴェルトを生かしておくべきでは無かったと心から悔やんでいた。

 因みにだが、この話が切欠でネロは皆との関係がある程度修復され、少なくとも普通に話が出来る位にはこの場に居た全員との関係が大幅に改善された。

 

 この時、僕はふと思った事があったので、レナルルさんに尋ねた。

 それは、今もこの惑星に行く事は可能なのかと。

 レナルルさん曰く、それは時空間移動を可能とする詩、「ディストリスタ」と呼ばれる皇帝にしか謳えない詩をかつての惑星ラシェーラのあった場所の中心点である「センターオブザラシェーラ」で謳う必要があるとの事。

 疑問が晴れた僕はもう一つ、レナルルさんにその惑星の座標を把握しているのかを尋ねた。

 

「座標ですか? 当然把握しています」

「なら、その座標の情報を僕達に提供して貰えませんか?」

「そうすれば俺達がここまで来るのに使った転移装置にその座標を打ち込めば、比較的安全にその惑星に行く事も可能だろう」

「……宜しいのですか? 既に貴方達にはこの世界を救ってもらったと言うのに」

『確かにこの世界はもう脅威と呼べる存在は居なくなったかもしれないけど』

『だけど、このまま放ってイオン達を故郷に送り返しておしまいって言うのは後味悪いって思わないかしら? 私達もそうだけど、イオンも反対みたいよ?』

 

 モルフォの指摘に、レナルルさんはイオンに視線を向けた。

 

「レナルルさん、私はもう「七支」の皆を見つける事も出来たし、ネロを止める事も出来た。それに、GV達のお陰で故郷に帰る事が出来る。……だからって、皆をこのままには出来ないよ」

「イオン……本当に、いいのね?」

「うん」

「ちょ~と待った! 私達の事、忘れないでよね!!」

「そうだぜ! 俺もキャスも協力させてくれ!!」

「僕もだよ。って言うか、元々惑星移住計画はこの世界の人間である僕達も参加しないと話にならない。無責任にGV達やイオナサルにだけに任せる訳にはいかないよ」

 

 そう言った事もあり、僕達はその惑星のある座標を手に入れることが出来た。

 ……今はまだこの謳う丘も、ソレイルも老朽化と言う問題が表面化している訳では無い。

 だけど、その問題はいつか必ず噴出するはずだ。

 だから僕は、まだ余裕のある今の内にその惑星へと向かい、あわよくば協力してもらおうと言う目論見があった。

 仮にこの惑星移住が可能ならばそれで良し。

 だけど、もしダメならば……僕達の世界にソレイルや謳う丘も含めて丸ごと移住するのも手だろう。

 とは言え、僕達の世界に移住すると言うのは最終手段としたい。

 何故ならば、最近やっと僕達の世界の情勢が落ち着きつつある状況で、大勢の人達、特にシャール達が僕達の世界に来る事となったら、下手をすればまた前の混沌とした状況に逆戻りする可能性があったからだ。

 

 そう言う訳で僕達は一度フェリオンへと戻って準備を進め、転移装置に教えて貰った座標を入力し、僕、シアン、モルフォ、アキュラ、デルタ、キャス、イオンの七人でその惑星へと向かう事となった。

 パンテーラ達やレナルルさん達は未だ続いているフェリオンの復旧に力を入れて貰いたい為、残ってもらう事となった。

 そして、この事をシャールの王であるコーザルにも報告を済ませた際、とあるアイテムを託された。

 そう、「大地の心臓」を。

 僕達はこれを見た時、驚いたと同時に、ある意味納得もした。

 詩魔法が存在する以上、大地の心臓もあって当然であると。

 だけど、コーザルが何故このアイテムを持っていたのか。

 それは彼なりに色々と試行錯誤した結果できた代物だったからだ。

 だけど、これの活用法を見つける事が出来なかった為、コーザルは僕達にこれを託した。

 そのお陰で、()()()()()()が浮上し、更にこの先の惑星で得た情報によってそれが実現する事となる。

 

 そうして僕達七人は転移装置を用いてその惑星へと転移したのだが……そこは()()()()()()()()()()()()であり、更にそこに偶然いた人に、物凄く身に覚えがあった。

 先ずこの施設の内部なのだが……ここは見間違いでなければ、「アルトネリコ」の舞台である、「第一増幅塔」の中枢とも言える場所である「原初のオルゴール」が存在する区画だ。

 そして目の前に居る人物は……僕の予想が正しければ、この塔の管理者であるレーヴァテイル・オリジンの一人である「シュレリア」で間違いない筈。

 つまり……移住先の惑星は「アルトネリコシリーズ」の舞台である「アルシエル」だったという事である。

 まさかこんな形でアルシエルに来る事になるとは……

 とは言え、彼女にとって僕達は突然出て来た不審者である事に変わりは無い。

 だから如何しようかと内心頭を抱えていたのだが、僕達の存在が彼女の興味を引いたのが幸いし、これを利用して事情を説明した。

 そのお陰で一緒に出た際に僕達が不審者として警備員に囲まれた際も何とかなったし、その後に僕達の事情を説明する事もスムーズに行うことが出来た。

 

 その時に出会ったのが、「アヤタネ」の称号を持つ香陵霧浪(かりょうきりなみ)と呼ばれる男性の「テル族」の長だ。

 彼は僕達の話をとても興味深そうに聞いており、特に僕の記憶の中の映像を見て、並々ならぬ関心も抱いていた。

 その理由は、テル族の伝承と共通する部分が余りにも多かったからだ。

 特に、()()()()()()()()()()事が共通していたのがほぼ決定打と言ってもよいだろう。

 彼個人としては賛成らしかったのだが、結局移住その物は断られてしまった。

 その理由は今のこの惑星の情勢は芳しく無く、文明も進んでいる上に、人口も飽和している為、テル族は兎も角、この星の人類がラシェーラの人達を受け入れるのは難しいのだと言う。

 その事実にデルタ達は落ち込んでしまったが、まだ希望は残されていた。

 アヤタネは移住は難しいが、その代わりにこの星の神々……惑星の意思との対話による相談を持ち掛けてくれると言う。

 その場所の名前は「シェスティネ」と呼ばれるテル族発祥の地。そこに存在する「シャラノワールの森」の更に奥の「神々の食卓」と呼ばれる場所で惑星の意思と対話出来るのだとか。

 僕達よりもずっと長く生きている惑星の意思ならば、何か知恵を授けてくれるかもしれないと、僕達はアヤタネの提案を受け入れ、現在地である第一増幅塔にある街である「クルト・フェーナ」からこの星の反対側にあると言うシャラノワールの森の奥へと足を運んだ。

 

 その場所にはとても大きく、デルタが威圧感や、人が簡単に踏み入れていい場所じゃないと感じたりするほどの巨大な大木が存在した。

 そして、その場所の元には小さな一軒家が存在しており、その中には惑星の意思の声を伝え、交信する「声聴き」と言われる巫女の流派を扱う「ソンウェ」と呼ばれる女性が住んでいた。

 そんな彼女にアヤタネが事情を説明する事で、惑星の意思の声を聞く協力を得る事が出来た。

 彼女曰く、「彼らは全てを見通している。だから、最も適切と思われる神が降臨する」のだとか。

 そんな彼女が呪文の様な言葉を発したと同時に、彼女の雰囲気が一変した。

 惑星の意思との交信が始まったのだろう。

 その惑星の意思は「ホルス」と名乗った。

 そんなホルスによって、テル族のルーツはデルタ達ラシェーラにある事が確定した。

 だからこそデルタは懇願した。

「俺達をこの星に移住させて欲しい」と。

 だけど、それはアヤタネが語ってくれた事と同じ理由を突きつけられ、断られてしまった。

 が、その代わり、僕がコーザルから託された大地の心臓の波動をホルスが感じた事で新たな可能性が浮上したのだ。

 そう、「惑星創造」の可能性が。

 

「惑星の創造ですか」

「……浮遊する大陸を作ることが出来るのは目の前で見ていたが……そんな事が本当に可能なのか?」

「ええ。この大地の心臓は不完全ではありますが……もし、完全な状態の大地の心臓を作り出せる力があるのならば、可能でしょう。もし宜しければ、これを作りだした優れた魂を持った存在と対話をさせて貰えないでしょうか?」

「了解しました。必ず連れて行きます」

 

 そう言う訳で、僕達は一度アルシエルから帰還し、コーザルにその事を話して同行者となって貰い、再びシャラノワールの森へと足を運んだ。

 そして、話し合いの末、コーザルはアルシエルの惑星の意思達と共に過ごし、魂の成長に励む事となった。

 だけど、その為には二つの要素が必要不可欠なのだと言う。

 一つ目は巫女の存在。

 何故ならば、惑星の意思ともなると、大地その物となる為、他の生命に意思伝達が出来なくなる。

 その時に、声を伝える巫女が必要になるのだそうだ。

 この際、一から星を紡ぐ場合、まず巫女的な役割を持つ生命を創造するのが普通なのだが、今回の場合は、既に存在している生命の中から、その役割に相応しい者を選ぶのが良いとの事。

 この存在には覚えがる。

「カノイール・ククルル・プリシェール」…七支における菩提明王と呼ばれている、銀色の長髪を持ち、非常に真面目で責任感のある女性だ。

 以前はコーザルと同調し、シャールを導いていた。

 その後の現在では色々とあって、最終的に天領沙羅にて雑貨店「ちゅちゅ屋」の経営を始めている。

 実際、あのコーザルが巫女の候補に迷わずカノンの名前を出していたのだから、間違いは無いだろう。

 後、何気に僕達も用事があって天領沙羅へと赴いた時、イオンを通じて知り合っており、イオンの事で物凄く感謝をしてくれた。

 そして二つ目は導きの存在。

 それは要約すると、コーザルとカノンをよく知る人が適任。

 つまり、イオンの事だ。

 これはもうコーザルと合流を果たしたカノン公認で、イオンもその大役を引き受ける事となった。

 そうしてイオンがホルスから受け取った二人を導く為の詩魔法「Lxa ti-cia」によって、アルシエルの惑星の意思達と共に数日にも及ぶ過酷な魂の修練をこなし、二人は無事、魂の成長を果たす事に成功した。

 

 その後、コーザルから七支……皇帝契絆支であるデルタ、キャス、カノン、ネイ、サーリ、白鷹、レナルルさんの七人をこの場に集める様に言われ皆が合流する事となった。

 こうして集め終わった後、イオンと、この場に集まったこの七人の詩によってコーザルと、この事に色々と協力してくれたホルスが新たな惑星の意思となった。

 そして本格的な準備が整い、遂にこの時が……かつて惑星をエネルギーとして消滅させた謳う丘にて、「惑星創造」をする時が来た。

 

「ahih=mak-yan-a noh-iar-du N woo ah W shin ah rei ii-zu-uii;」

 

 惑星の創造と聞き、シャールは、人間は、希望に満ち溢れた。

 この詩の参加者は、このソレイルに居る全ての人達。

 そんな希望に満ちた詩に、異世界から来た僕達全員も参加していた。

 そんな希望に満ちた詩の名は、「ラシェール・リンカーネイション」。

 皆の詩で少しづつ形作られていく惑星。

 それは最初、真っ赤な色をしていた。

 それが、徐々に色が変化していき――謳い終わったその時、僕達の目の前にあったのは、緑と青で広がった、美しい惑星の姿だった。

 こうして僕達は惑星創造を成し遂げ、イオンとネロのこの世界における憂いを晴らし、二人を元の世界へと戻し、無事に大団円を迎えることが出来た……かに思えたのだが。

 

「「来ちゃった♪」」

 

 この二人が僕達の世界における一年後、色々あって僕達の住んでいるセーフハウスに転がり込んで来る事になり、僕達は頭を抱える事となるのだが……それはまた別のお話である。

*1
天文の総統で実質ラシェーラの実権を握っている人物。知略に長ける優秀な科学者だが他人を信用していない。レナルルとは実の親子であることが後に明らかになる。昔はジェノムと同調していたが、天文を設立した直後にシェルノトロンに溺れ、ジェノムを駆逐し地文を潰そうとしたためジェノムが天文の人間を襲う事件を起こしている。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
番外編における現実世界でのお話はこれで終わりですが、次回は時系列が少し巻き戻り、ジェノメトリクス…所謂精神世界にダイブするお話となります。





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