【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる 作:琉土
「ロロ」と言う存在
僕は今、アキュラ君とミチルちゃんと一緒に「クオンターヴ」と呼ばれる街にあるサーリちゃんの工房「ノエリア・ラボラトリーズ」と呼ばれる所に居る。
ここで僕は、アキュラ君から定期メンテナンス作業を受けていた。
そんな様子を、ミチルちゃんは微笑ましく見つめて、サーリちゃんは興味深そうに観察していた。
「ふむ……こうして見ると、やっぱり僕達の世界と比べて機械構造が全然違うね。実に興味深い」
「俺も同じ意見だ。この世界は俺達の世界とは違って、真空管が発達しているのが理由の一つなのだろう。……これで良し。ロロ、調子はどうだ?」
『うぅ~ん。アキュラ君、相変わらずのテクニシャン……zzz』
「ロロ、アキュラ君が呼んでるよ?」
『うん? あぁ、アキュラ君ゴメンね。えっと、ちょっと待ってね……うん、システム、オールグリーン! 今日も僕は元気いっぱいだよ!!』
「そうか」
「良かったぁ! ロロ、今日も街の復興、頑張ろうね!」
『うん! ジャンジャンバリバリ、頑張っちゃうよ~』
アキュラ君のメンテナンスのお陰で、今日も僕は元気いっぱい!
ミチルちゃんの笑顔で更に倍!
うん、今日も一日頑張ろう!
それにしても、アキュラ君ってば、「そうか」の一言で済ませるなんて、相変わらず返事は素っ気ないなぁ。
こう、もうちょっと何かしら反応してくれればいいのに。
……でも、最近見せてくれるようになった今アキュラ君が浮かべてるほんの少しの笑顔が、僕には嬉しい。
少し前のアキュラ君は、表情もあまり変わらなかったから……。
「そういえばアキュラ、このメンテナンス中に行っていたロロのFFTスペクトラムに対する解析で、実に興味深い事が判明したんだ」
「興味深い事?」
「……ロロ、FFTすぺくとらむ? ってどういう物なの?」
『えっとね、ミチルちゃん……。簡単に言うと、個人情報の詰まった物凄く細かいQRコードみたいな物……かな』
そう、僕はこのメンテナンス中、サーリちゃんに僕に対するスペクトラム解析をお願いされていた。
アキュラ君もこの世界特有のこの解析方法に興味を持った為、この場に居た皆はそれを了承し、僕のメンテナンスと並行して解析が進められていた。
それで、肝心のその内容なんだけど、それはこの場に居る全員が驚く結果だった。
うん、僕も最初に聞いた時は本当にびっくりしたよ。
「うん、これは本当に興味深い事だよ! 何しろ、ロロから
「……何だと。それは確かなのか、サーリ」
「この精神波スペクトラムを見てくれ。この波長は魂を持つもの特有のものだよ。そう、想いを込められただけの波長とは、明らかに違うんだ」
『え……僕に……魂?』
この世界では魂の観測が実現されている。
それ所か、人間の身体から魂を取り出して閉じ込めたり、別の人間の魂を空いた身体に居れたりも出来る。
ちなみに、前者を体験したのがネイさんで、後者を体験したのはイオンちゃんだね。
まあ、これは二人の相性がそれだけ良かったって言う事なんだけど。
っとと、話が脱線しちゃったね。
話を戻さないと……。
「うーん……。私には良く分からないけど、サーリちゃん。それって凄い事なの?」
「凄いなんて物じゃないさ!! 何しろ魂があるって事は、
この話を聞いて、僕は以前、ガンヴォルトに「人間らしい」と言われた事があった事を思い出していた。
あの時から、僕は自分が何なのか意識してアイデンティティを確立する為に、自問自答をする機会が多くなっていた。
それ以外にも、ミチルちゃんやノワ、ガンヴォルトやシアンちゃん、他にもいろんな人の意見を求めた事も有った。
そして気が付いたら、以前はアキュラ君を経由しないと使えなかった「ラムダドライバ」、所謂波動の力も、Pドール形態の時限定ではあるけれど、僕単独で使えるようになっていた。
だけど時の流れと共に、もうそんな事は僕の
だから僕は、サーリちゃんに尋ねた。
『じゃあサーリちゃん、僕はロボット? それとも……「人間」?』
「……ふむ、難しい質問だね。それを定義する場合、もっと色々と調べたい事が余りにも多い。人間の定義も見直す必要が出てくるだろうね。だけど、今の段階で言わせてもらうなら、僕の意見は――」
――「人間」だよ。
サーリちゃんはそう答えた。
「……そうだな。ロロはもう、「人間」だ」
「そうだね! ロロはもう私達と同じ「人間」だよ!」
サーリちゃんに続いて、アキュラ君とミチルちゃんも、同じように答えた。
答えてくれた。
それが僕には、たまらなく嬉しい。
今の僕がPドール形態になっていたら、間違いなく顔がくしゃくしゃになってるって確信できる。
そっか……僕は「生きて」いて、「人間」なんだ。
そう自覚し、僕はこの瞬間、初めて「ロロと言う人間」としてのアイデンティティを確立するのであった。
シャール達と歌おう!
シャール。
それはかつて存在した惑星「シャラノイア」――後のラシェーラ――と呼ばれる惑星の住民で、中には蝶や天使や悪魔の翼を持って自分で空を飛んだりする子や、人魚みたいな見た目で宙に浮いてたりする子も居たりと様々だ。
昔色々あってラシェーラ人であるデルタ達と敵対していたけど、今はもう仲直りしているみたい。
性別は存在せず、その性格はイオンみたいに温厚でのんびり屋。
おおよそ闘争心や敵対心、嫉妬とは無縁の存在で、こっちが心を許せばあっという間に仲良くなれるんだ。
だから、僕やミチルちゃんなんかはあっという間に仲良くなることが出来て、今ではもう僕達の世界のお話をしたり、逆にシャール達の居るこの世界のお話を聞いたりも出来た。
オマケに病気知らずで、賢いし、色んな事もどんどん覚えていくんだ。
例えば今みたいに――
『ちょっちょっちょっ もう待てない♪』
「「「「待てない♪」」」」
『ス・ト・レ・ス 無限大♪』
「「「「無限大♪」」」」
『「「「「ラ・ラ・ラ・ララ歌って、ここ! から! また!
こんな風に、歌を一緒に歌ったりも出来るんだ。
まあでも、シャール達は歌どころか、詩魔法も自前で謳える凄い種族なんだけど。
ちなみに、この歌のタイトルは、
いくつか候補はあるんだけど、最終的に「ストレスアラーム」か、「ストレス☆アラーム」の二択に絞られてるんだ。
……うーん、ノワが言うにはこの「☆」の有無が重要らしいんだけど……これってそんなに重要なのかなぁ?
話を戻すけど、切欠は僕が自分で作詞作曲してたこの歌を、ミチルちゃんと一緒に歌ってた所を目撃されてた事なんだ。
それを知ったシャールの子の一人がジェノメトリクス経由で仲間に僕達の事を知らせた結果、こうやって歌を皆で歌う日が設けられるようになったんだよね。
『「「言葉ひらひらと
『「「
『「「「「目覚めさせーて
それが続いた結果がコレ。
今、僕達の周りには沢山のシャール達に加え、アキュラ君にノワ、それににデルタ達等の顔見知りも多く居て、ちょっとした規模のライブみたいな状態になってるんだ。
それでもって、その舞台には僕にミチルちゃん、それに有志のシャール達に加え、楽器担当にシアンちゃんにモルフォ、それにガンヴォルトと言う、僕達の世界から見ればある意味とても豪華なメンツが揃ってる。
『空は晴れ ピーカンー☆』
「「「「ピーカンー☆」」」」
『
「「「「伸ばすぅー♪」」」」
『泣けるー日も 来るけどぉー♪』
「「「「来るけどぉー♪」」」」
『傘もーある どこーでもー行けるぅー♪』
「「「「行けるぅー♪」」」」
お陰で、この場に居る僕達は今、最高の一体感と言うべき物を感じてる。
今まで感じた事もない、心地よい一体感を。
ここに居る皆が笑顔で、心から楽しそうに歌ってるのが伝わってくる。
この僕達の居る新生ラシェーラの星も、歌っている様な感じまで伝わってくる。
最近、僕は僕と言う人間としてのアイデンティティを得ることが出来たお陰か、とても素直な気持ちで歌を歌えるんだ。
前はどこか迷いもあって、自信もあんまりなかったんだけどね。
『ちょっちょっちょっ 早くしてよ♪』
「「「「早くしてよ♪」」」」
『ス・ト・レ・ス 吹き飛ばせ♪』
「「「「吹き飛ばせ♪」」」」
『「「「「ラ・ラ・ラ ララ歌って、ここ! から! また! おやすみおはようエンドレス!」」」」』
そして、このライブが切欠で、僕と一緒に歌ってくれたシャールの一人と友達になることが出来たんだ。
その子の名前は「ライズ」ちゃん。
最初に見た時は、すごく印象に残ったなぁ。
何しろ、
性格は他のシャールの皆と同じように温厚でのんびり屋。
と、ここまでは普通のシャールの子と同じなんだけど……。
このライブの後で分かった事なんだけど、シャールとしては珍しく、
でも、こうやって普通の歌を歌う分には問題無いんだけども。
『「「
過去に何があったのか分からないから気になるけど、今は思いっきり歌って楽しむ事に専念しよう。
ライズちゃんと僕達はまだ友達になったばかり。
詩魔法を謡うのが嫌いな理由だって、その内話してくれるはずさ。
その理由が何であれ、その時は必ず僕は手を貸そう。
ライブが終わってミチルちゃんとハイタッチしているライズちゃんを見ながら、僕はそう決意したのであった。
魔改造ロロちゃん
沈んでいた意識が浮上していく。
各種データチェック開始。
ABドライブ、及びUSドライブ――問題無し。
各種センサー――問題無し。
全
EXウェポンミラーリング――問題無し。
詩魔法媒体「グラスノ結晶*1」、「アーデル結晶*2」、「パラメノ結晶*3」――問題無し。
うーん。
後は……っと。
うん、その他諸々、問題無し!!
『システム・オールグリーンっと。おはよう、アキュラ君』
「……どうだ、ロロ? 今回は思い切って色々と部品を新しくしたり、新機能を追加してみたのだが」
『少なくとも、僕の主観的には物凄く頭がすっきりしたなぁって感じがするのは確かだよ、アキュラ君』
「それは良かった。僕も手伝った甲斐があるってものだよ」
「そうだね、サーリちゃん。私も久しぶりに、こんな本格的な作業が出来て、楽しかったよ♪」
今回アキュラ君の研究施設で行われた僕のオーバーホールと新機能実装の為の改良。
最初はアキュラ君一人でやる予定だったんだけど、たまたまお客様として来ていたサーリにイオンが見学も兼ねて協力してくれたんだ。
「サーリ、イオン。ロロのオーバーホールに協力してくれて、感謝する」
「いいさ。僕の方だってアキュラには沢山手伝ってもらったし、これでやっと借りを返せたと肩の荷が下りた心境さ」
「私、ロロちゃんの事ずっと色々と気になってたの。どんな動力源が使われてるんだろう、どんな原理で宙に浮いてるんだろうって。お陰で大分勉強になったよ」
それで、まず僕の新たな新機能を紹介するよ!
先ずは一つ目、詩魔法の実装。
以前はミチルちゃんと一緒じゃ無いと詩魔法は使えなかったんだけど、向こうの世界で手に入った「グラスノ結晶」「アーデル結晶」「パラメノ結晶」、「超伝導デンドロビウム*4」を組み合わせる事で、僕にも収まるくらい超小型の詩魔法媒体の作成に成功したんだ!
他にも、シャールみたいに「同調」する事も出来るようになったのは、思わぬ収穫ってやつだよね。
二つ目はスペクトラム解析機能の追加。
これは既存のパーツをちょちょいと弄って如何にかできたみたいだね。
これのお陰で、より情報取集が効率化するし、仮に
うん、ここまでは僕も諸手を挙げて喜べる新機能だったんだけど、最後の三つ目で暗雲が立ち込めてきたんだ。
それで、その三つ目の機能なんだけど……。
『ダメだよアキュラ君。そんなの、僕に差し込まれたら壊れちゃうよぉ……』
「大丈夫なはずだ。俺を信じろ、ロロ」
『アキュラ君……でも、僕……怖いよ。……あぁ!! ダメぇ!!』
「……そんなに怖がることは無いだろうに。そう思わないかい、イオナサル? ……どうしたんだい? そんなに顔を真っ赤にして」
「な、何でもないよ、サーリちゃん! でも、ロロちゃん、そんなに怖がる事なんて無いのに……何が怖いんだろう?」
「試験的にとは言え、
「一応、私達の世界の物と互換性は持たせてあるはずだから、大丈夫だと思うんだけど……」
そう、三つ目は「TxBIOS」と「RNA」と「カソード」が装備できるようになった事。
まず初めにTxBIOS、RNA、カソードから説明させてもらうけど、簡潔に言うと、RPGで言う所の武器や防具に該当する機能を持つ機械パーツなんだ。
まあ、僕からしてみれば拡張機能って言った方が近いのかもしれないけど。
とまあ、ここまでは良いんだ。
互換性があるって言うのも、問題は無い、寧ろ大歓迎だったんだ。
最初の内はね……。
だけど、そんな僕でもお断りしたい事実が分かったんだ。
『こんなゲテモノRNA、僕に差し込まないでよ! 他のRNAは問題無かったんだからいいじゃないか!!』
「……仕方があるまい。お前の身に関わる事だ。妥協は出来ん」
『妥協してよ! そんな
「触手プレイだなんて……。ロロちゃん、何所でそんな言葉を覚えたの?」
そう、そんなTxBIOS、RNA、カソードに「ゲテモノ」と呼べる物だったり、見た目が物凄く恥ずかしい物が存在しているって事が!
今アキュラ君が持っている触手……RNAは「モラスクの素肌」って名前のRNAで、「敵の攻撃を受け流し、衝撃を和らげる効能を得る」効果を得るんだけど、肝心の見た目が問題なんだ。
一言で言えば、
しかもこの触手、製作者のタットリア*5曰く、「生きてる」みたいなんだ。
「……? 何を言っている。別にRNAを差し込むのは今回で初めてではあるまい。さあ、観念して受け入れろ、ロロ」
『そう言う意味じゃ無くて……。あぁ、ダメ、だめぇぇーーー……』
「まあ、モラスクの素肌に対してのロロちゃんのあの反応は、正常だって私は思うよ……。それに、ロロちゃんの体格だと、装着した途端触手塗れに……」
「……下手をしたら、各種センサーに異常が出る可能性があるね。アキュラ、ロロにそれを付けるのはやめよう。それは物理的に問題が起きそうだからね」
「……言われてみればそうだな。このうねうねした物がロロに絡みつくと、ミッションに支障が出るのは避けられんだろう。分かった。これは取りやめよう」
『……全く、アキュラ君はもうちょっと乙女心を理解してくれないと、困るよ! 危うく僕、全身触手塗れになる所だったんだからね!!』
だけど、別の意味で取り付けるのをやめて欲しいRNA、TxBIOS、カソードが出て来て僕はまた大変な思いをする事になるんだけど、それはまた別のお話。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。
・ライズちゃんについて
アリスちゃんに続いてのオリキャラで、見た目は今回のお話の説明通りの外見をしています。
正体について察しの付いている人は居ると思います。
仮にわからなくても、更新が続けば判明します。
今回は顔見せ程度の出番。