【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる   作:琉土

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今回はアキュラ視点です


第十三話

VSデルタチーム

 

 

 俺はPLASMA本部へと足を運び、そこでたまたま実践訓練の最中であったデルタ達を見つけ、近況を話したのち、個人的な興味もあり、その場に居た責任者と話を通した後、その様子を見学していた。

 そして、今見学しているのは詩魔法が使える「紡ぎ手」と、それを守る「守護者」によるペアで構成された特殊部隊「ジェノメス」同士の模擬戦闘の様子だ。

 紡ぎ手は守護者を信じ、詩魔法を紡ぐ。

 守護者はそんな紡ぎ手を信じ、その身を挺して紡ぎ手を守る。

 彼らの戦い方を簡潔に表すとこの様な感じとなる。

 こうして訓練を見る限り、生半可な皇神兵では数を揃えても、ここに居る平均的な守護者単独相手でも歯が立たないだろう。

 これに紡ぎ手も加われば、宝剣持ち能力者相手でも善戦出来ると俺は踏んでいる。

 中でもやはりと言うべきか、デルタとキャスのペアが抜きん出て優秀だ。

 この二人ならば、宝剣持ちの能力者も十分打倒できるだろう。

 そう考えていた時、丁度訓練を終えたデルタ達が、此方へと足を運んできた。

 

『お疲れ様、デルタ、キャスちゃん。はいこれ。アキュラ君お手製、特性ジュース。疲れた体によく効くよ!』

「おう、助かるぜロロ」

「ありがとう、ロロ。んく……あら美味しい。それに、疲れも程よく取れていい感じだわ」

「んく……おぉ、本当だ! こりゃあいいぜ。なあアキュラ、これはどうやって作ったんだ?」

「……「ポックリスエット*1」を薄めて味を調えただけだ。大して手間はかかってはいないぞ」

「……マジかよ。よくあんなゲロマズジュースをこんなウマイ物に出来たな」

「アレは元々、漢方薬、薬草等を合成して濃縮させたものだと聞いていたからな。ならば薄めて味を調えれば問題は無い」

「ねぇ、そのレシピ後で教えて貰ってもいいかしら? 私達、アレの在庫を大量に抱えてるのよ……」

「……そうか、時間が出来たら用意しておこう」

 

 そんな風に他愛の無い会話を続けている内に、話は戦闘談義へと変わっていった。

 主に互いの武装の話、戦い方、意識して居る事等だ。

 そうして話している内に、自然と俺とデルタ達との模擬戦の流れが出来上がった。

 俺自身、実際にデルタ達に機会があれば手合わせをしてみたかったのだ。

 一対一での経験はあったが、キャスの居る状態での模擬戦は機会が無かった。

 だからこそ、実際に体験して見なければその本質が分からない。

 それに、こう言った事を切欠に研究のアイディアが出来たりする物なのだから。

 

「準備はいいか? キャス」

「勿論よ。デルタ、何時も通りお願いね」

「おう。……こっちは準備できたぜ、アキュラ。そっちはどうだ?」

「少し待ってくれ。ロロ、準備はいいな?」

『勿論! P–ビット、展開するよ!』

 

 ロロの合図と共に展開されるP–ビット。

 それと同時に俺は既に準備が出来ていたデルタ達に構えながら相対する。

 

「待たせたな。こちらは何時でも始めて構わない」

「おう。それじゃあ……行くぜ、キャス!」

「ええ! ……さあ、始めるわよ!!」

 

 キャスの詩魔法「クァンタムノヴァ」の展開が模擬戦の合図となった。

 先ずは様子を見てデルタに対して攻撃を仕掛ける。

 紡ぎ手であるキャスの居るデルタがどの程度なのか自身で体感する為に。

 これまで、デルタとは組手と言う形だったり、一対一での模擬戦の経験はあった。

 実際に、その腕前は大した物であった。

 年齢や体格差もあるだろうが、単純な身体能力では明らかにデルタが上で、単純な戦闘能力ではアシモフともやり合えるだろう。

 装備もサーリによって作られた合体変形機構を持った「エネルギートンファー」で、攻防共に隙がない。

 とは言え、これは真っ向から戦った場合での話だ。

 

「チィ! 分かっちゃいたが、動きが早すぎる!!」

 

 ヒット&アウェイを心がければ、そうそう後れを取る事は無い。

「ヴァイスティーガー」の高速機動、そして「ボーダーⅡ」から放たれるフォトンレーザー、そしてEXウェポンがあれば、負けはしない。

 その後、様子見を辞めてキャスにも攻撃を仕掛ける機会を増やし、ある程度の時間が経った。

 それでも尚、デルタはまだ俺の攻撃をキャスに一度も通してはいない。

 今では防戦一方ではあるが、臨機応変にバリアを展開し、トンファーを盾に的確にキャスを護っている。

 これでインターディメンド有りの時よりも戦闘力が落ちていると言うのだから大したものだ。

 それにしても、そろそろ動きが鈍ってもいい頃合いだと思っていたのだが、その気配が一向にないのが気がかりだった。

 そうして戦闘を続けている内に、デルタの動きが変わった。

 守り一辺倒だった状態から、けん制射撃が飛んでくるようになったのだ。

 そして、それだけでは無い。

 

『アキュラ君! キャスちゃんから攻撃が来る!』

「……っ!」

 

 詩魔法詠唱中のキャスからデルタの攻撃に合わせた追撃が放たれる。

 それだけでは無く、俺の足元に魔法陣らしき力場が展開され、爆発を起こし、俺の動きを止める。

 その隙を突き、デルタは待ってましたと言わんが如く、両腕のトンファ―を合体させ、一つの巨大なエネルギーによる大剣を作り出し、振り下ろした。

 幸い、これはカゲロウで回避する事は出来た。

 

「チィ! カゲロウって敵に回すと厄介極まりないぜ!」

(……おかしい。何故体力を消耗していない)

『アキュラ君! キャスちゃんからデルタへのエネルギーの流入の増加を確認! それと同時に体力も回復してるみたい!!』

「これがジェノメスの強みって奴だぜ、アキュラ! 俺がキャスを信じている限り、キャスが俺を信じている限り、負けはしねぇ!」

 

 後になってサーリから聞いたのだが、この時起こった現象は、デルタとキャスの同調率を示す「ハーモニクスレベル」が増加した事で発生している。

 これにより、詩魔法の効果が引き上がり、守護者は紡ぎ手から得られる加護が増すのだと言う。

 おまけに先ほどの追撃や、魔法陣によるサポート攻撃の頻度も上昇し、その威力も向上する。

 つまり、長期戦になればなる程力を増していくという事……!

 

(今はまだ余裕はあるが、このまま更なる長期戦にもつれ込めばこちらが息切れをする。それにストライクソウでも、H-ブレイザーでも、あの守りを突破するのは厳しい。詩魔法である以上、ガンヴォルトの時の様に相手の力を利用する事も出来ない。……今後の課題が見えたな。とは言え――)

「動きが鈍った……! 今だ、キャス! ブチかませ!!」

「判ったわ、デルタ! 見せてあげる……全力全開よ!!」

 

 ――勝ちを譲るつもりは無いが。

 俺はあえて動きを鈍らせ、隙を作り、詩魔法の発動を促した。

 キャスから放たれる詩魔法の輝きが迫って来る。

 それを俺は辛うじて余波を掠めながら回避し、その隙を突いてキャスに対してボーダーⅡを突きつける。

 

「あっちゃ~……。あの動き、誘われてたのかよ」

「そう言う事だ、デルタ。……俺の勝ちでいいな?」

「そうね。悔しいけど、私達の負けだわ。いいわよね、デルタ?」

「そうだな。俺達の負けでいいぜ。実際、誘われちまった時点で勝負ありみたいなもんだしな」

 

 と、二人は負けを認めてくれていたが、俺自身もデルタにトンファーを突きつけられていた。

 それでも負けを認めてくれたのは、カゲロウによって回避される事が分かっているからなのだろう。

 今回は俺が勝つ事が出来たが、次はどうなるか分からない。

 向こうだって、母胎想観戦で使用していた詩魔法を温存している為、まだ本気ではないのが伺えるからだ。

 俺はデルタ達に礼を言ったその翌日、例のレシピを渡した後にロロに更なる改良を施す事を決意するのだが、それはまた別の話となる。

 

 

 

第七波動をRNAに転用

 

 

「これで良し……。出来た! 僕達の世界と君達の世界、その合作がね!」

「名付けて「カゲロウRNA」と言った所か」

 

 カゲロウRNA。

 それは装備した人に対して電磁結界「カゲロウ」と同じ挙動を発生させると言う物。

 材料等はこの世界の物のみだが、技術やノウハウは俺達の世界の物が殆どだ。

 

「おぉー! 遂にできたのか!」

「デルタ、何だか嬉しそうね。よっぽど完成を待ちわびてたみたいだけど」

「そりゃあそうだぜ! あの攻撃が透過して、身体が赤くブレると同時に羽が舞い散るあの光景は、すっげぇカッコいいからな!!」

『デルタの中では、カッコイイかそうじゃ無いかか明確な基準の一つみたいだね』

「おう! 男にはなぁ、カッコ良さは無茶苦茶重要なんだぞ! その辺アキュラは分かってるよなぁ。あんな風に透過する際の演出を作れるなんてさ」

「……一つ言っておくが、俺の持つカゲロウは狙ってあのような形になった訳では無いぞ?」

「え、そうなの? 私はてっきり狙ってそう言う演出させてるのかと思ってたわ。ほら、男の人ってこういうの好きでしょ?」

「キャス……それはアキュラに対して失礼だろう?」

「……俺の使っているカゲロウは、元々ガンヴォルトの持つカゲロウを模倣した物だ。同じような形になるのは当然だろう」

 

 この俺の発言を切欠に、ガンヴォルトの――正確には蒼き雷霆(アームドブルー)の能力の簡単な詳細を語る事となった。

 とは言え、デルタ達はそもそも第七波動(セブンス)の知識など無い。

 だから先ず前提としてそれの説明をしつつ、その後に改めて蒼き雷霆の説明をする事となった。

 

「第七波動とは、簡単に言えば超能力の様な物だ」

『炎を出したり、水を出したり、金属を操ったり色々出来るんだ』

「つまり、漫画とかによくある物と考えていいのか?」

「……まあ、詳しく話すと長くなるからな。大体そんな認識で構わない」

「ふぅん……。そんな超能力みたいな力、よく再現出来たわね」

「だが、完全に再現する事は俺でも出来ん。精々原理を解明し、疑似再現するので手一杯と言った所だ。……では続けるが、このカゲロウRNAの元となった俺のカゲロウは、元々ガンヴォルトの持つ第七波動の能力の一部にすぎん」

「マジかよ…」

「奴の能力の名前は「蒼き雷霆」。その能力の内容は、簡単に言えば電子を操ると言う物だ」

「ふむ……それは、電子に関わるあらゆる物を操作することが出来るのかい?」

「そうだな……少なくとも、電気を扱う機械関連はまず手中に収めることが出来るだろうな。対策するならば似たような能力者で対抗する、或いは専用の対策を済ませたプロテクトが必要になる」

「彼はその気になれば、ソレイルを手中に収められるって事か」

「そうだな。だが、奴がそんな事をすると思うか?」

「いや、全然。あいつ、そんな事するような奴じゃあねぇし」

「俺も同意見だ」

 

 そうやって話を進めて行く内に、カゲロウ以外にも第七波動の能力の一部をRNAで再現すると言う流れが出来上がった。

 この事が切欠で近い未来、この再現された能力の機能を持ったRNAが俺達の世界にも普及し、能力者と無能力者との壁が縮まる要因の一つとなるのであった。

 

 

 

悲しみを打ち消す奇跡のパーツ Take.2

 

 

「完成だ」

「これは凄いな……。二人共、これが何かわかるかい?」

「どっかの星ってのはわかるけど、どこかまでかはわからねぇな」

「アルシエルでもらったレシピで作ったんだから、アルシエルじゃないの?」

 

 良かった。

 サーリの事だから、きっとまともな物が出来上がるだろうと信じて正解だったようだ。

 流石にサーリまで「ネィアフランセ」で作られた物と同じような代物を完成させたら、俺は正気を失ってしまう。

 

『それにしては、赤いよねぇ。それに、心なしか地表が荒れ果ててるようにも見えるよ。少なくともアルシエルじゃないのは確かだと思う』

「……ロロは実に目がいいね。そこに着目するのは正しい。そこまでわかるのならば、もう答えは出るはずだよ」

「あ……ひょっとしてこの星……ラシェーラ?」

「言われてみれば……こりゃあ、ラシェーラじゃねぇか!!」

「正解だよ、デルタ、キャス。そう、この映し出されている惑星は僕らの故郷、ラシェーラだよ」

「この星が……ラシェーラなのか」

「そうだよ、アキュラ。……それで話を戻すけど、これはラシェーラの姿を映し出す投影機。名付けるとすれば、「ラシェーラファクター」と言った所かな」

 

 デルタ達の故郷、惑星ラシェーラ。

 この投影機を見る限り、ギリギリの状態であろう様子が見て取れる。

 大地は割れ、クレーターは多く、赤く染まっている事から、もう末期である事が見て取れる。

 が、それは兎も角、気になる事がある。

 それは―― 

 

「ちょ、ちょっと待ってくれよ! これって、アルシエルで貰って来たレシピで作った物だろ? それなのに、どうしてラシェーラが映し出されるんだよ?」

 

 そう、それだ。

 アルシエルで貰ったレシピで作った物で出来上がったのがコレなのだ。

 デルタが疑問に思うのは当然だろう。

 だが、()()()()()()()()()()()()の事を考えれば、辻褄は合う。

 

「……考えられるとしたら、「()()()」の存在が関係してるんじゃないかな。彼らの祖先は、僕らと同じラシェーラ人だって事は忘れて無いだろう? 当時、彼らの内の誰かが、故郷であるラシェーラを想ってその姿を残したとしてもおかしな事は無いさ」

 

 テル族。

 それは5000年前のラシェーラからアルシエルに降り立った先発隊の子孫にあたる存在だ。

 その当時、アルシエルに存在する未知の病原体によって死に瀕した彼らは、同行していた竜型のジェノムと一体化する事で、新たな存在となり、難を逃れた。

 そして、その竜型のジェノムの名前から、彼らは自身をテル族と定義したのだと言う。

 

「じゃあ、これは5000年前の、ラシェーラ人が作ったレシピ、って事か?」

「レシピを作ったかどうかは定かじゃないが、彼らの想いが何かしらの経緯で込められた事に間違いは無いだろうね。じゃなきゃ、説明が付かないよ」

「……その人達も、やっぱり帰りたいって想い続けてたって事かしら?」

 

 故郷……か。

 今の俺はもう、かつての俺に戻るつもりは無い。

 ミチルも元気になった。

 それに、新たな家族(ロロ)も居る。

 俺も一段落付いたら、母さんに顔を出してもいいのかもしれんな……。

 それに「ボーダーⅡ」も、父さんの遺志を継ぐ必要は無い以上、名前を変える必要があるだろう。

 これを機に、この世界の素材を使って俺の装備回りもロロと同じように改良するのも、悪く無い。

 

「そうだろうけど、ラシェーラが無くなって、宇宙を彷徨う事に比べたら、まだ幸せだったのかも……。いや、そんなのわからねぇか。勝手に決めつけるのはいけねぇな」

『そうだね。仮に戻って来てたとしても、僕達と一緒に惑星創造をしてた未来もあったのかもしれないし』

「そうねぇ……もしかしたら、その時はテレフンケン*2も一緒に居たのかもしれないわね」

「……まあ何であれ、これに彼らの想いが込められているのには違いないんだ。それを無駄にしない為にも、他の材料と見事組み合わせて見せるさ」

「……アレをか?」

 

 話が終わり、視線を移した先に有った代物を見て、俺は現実へと引き戻された。

 ……そうだ、俺とサーリは()()と今回出来た物、そして残り二種類のパーツを組み合わせないといけないんだった……。

 俺が指さしたのは、ネィアフランセで作成された「肉じゃが」だった。

 

「……不本意だけど、レシピに書いてある以上、そうせざるを得ないよ」

『あぁ……いい話で終わると思ったのに、肉じゃがが台無しにしちゃったよ……』

 

 この肉じゃがの存在のお陰で、正直何が出来るのか不安で仕方がない。

 俺はそう思いながら、このラシェーラファクターを見つめるのだった。

*1
飲めばポックリ逝ってしまうと誤解されている飲み物。実際の所、栄養豊富だが余りにも味が悪く、いっそポックリ逝ってしまいたくなる事からこの名前が付いた。

*2
空想生物型のジェノム。嘗て生命エネルギーを完全に契約者に依存するため、前の契約者を失い弱っていたところをイオンに助けられ同調した経歴を持つ。以後行動を共にしており、普段イオンからはテレくんと呼ばれている。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。




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