【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる 作:琉土
楽しい楽しいお買い物とウェディングケーキ
私達がソレイルに来て、暫くの時間が経った。
フェリオンの復旧やアルシエルとの接触も済んで、その他諸々の用事が一段落が付いて、丁度空いた時間が出来たから、GVを買い物に誘ったんだ♪
最初は何時もの調子で実体化する前に変装しようとしたんだけど、この世界では
そう、今回はモルフォもお休みでフェリオンでのお買い物。
GVと寄り添いながら恋人繋ぎをして、私達の世界では見られない色々な物を見て回ったの♪
この世界特有の詩集やファッション性のある服だったり……。
そうして歩いている内に、私達はとある看板を発見したの。
「あ、GV、ここネイさんのお店じゃないかな?」
「「ビストロ ネィアフランセ」……確かに、ここはネイさんの店みたいだ。どうする、シアン?」
「ん~……。一回行って見てもいい?」
「僕は構わないけど……。怖いもの見たさって所かな?」
いつも通りGVは私の事、何でもお見通し。
それが凄く嬉しくて、私は腕を絡め、より体を密着させる事で「そうだよ」と返事を返したの。
それで、そのままお店に入ったら、中にはネイさんだけじゃなくて、デルタ達もここにいたんだ。
最初は何かあったのかなって思たんだけど、ネイさんの机の前におっきなケーキみたいなのがあって、それが気になったから、恋人繋ぎをやめて三人に話を聞く事にしたの。
「「こんにちは、ネイさん、デルタ、キャス」」
「よーし、出来たー! 如何よ二人共、凄いと思わない!? って、GV、シアン、二人共いらっしゃ~い」
「すっげぇ! こんなデカいケーキ、初めて見たぜ! っと、おう、GVにシアンもいいタイミングで来たな! 今丁度、ネイさんがこんなでっけぇケーキを完成させた所なんだぜ!」
「わぁ……」
「これはまた……」
「こ、これって……」
このおっきなケーキ、私の見間違えじゃ無かったら、
GVもこのケーキを見て、そう思ってるみたいだけど、どこか警戒しているみたい。
まあ、画面の向こう側に居た時にデルタ経由で散々
GVのこの反応は当然だよね。
「早速味見してみようぜ。キャス、そこのナイフ取ってくれ」
「だ、ダメだってば! デルタ、あんた気づかないの?」
「……何がだ? あっ! もしかして、また何かすっげぇゲテモノ料理って事か!?」
「……からかう為に作ったのに、まず説明しなくちゃいけないっていうのが若干テンション下がるわぁ。キャス、教えてあげたら?」
ネイさんのこの反応……。
何時ものゲテモノ料理じゃないみたい。
となると……。
やっぱり、アレだよね?
「……こ、これはね、つまりあれよ」
「アレって何だよ? でっかいケーキじゃないのか?」
「確かにそうだけど、もっと特別な時の物で、えっと……た、食べるのが本来の目的じゃないって言うか……」
「ケーキなのに喰わねぇのか!? 食いもん無駄にするのはダメだろ」
「だ、だから! ああ、もう!」
キャスったら、相変わらずの恥ずかしがり屋さんだね。
うん、ネイさんはこのケーキ、キャスの事をからかう為に作ったのは間違いないみたい。
GVも内心ホッとしてるのか、警戒するのをやめちゃってるしね。
それにしてもキャスったら、いい加減素直になればいいのに……。
「これ、ウェディングケーキよ! 結婚式で、新郎新婦が入刀するあれよ!」
「…………へっ? う、ウエディングケーキ!? それって、こんなデカかったのかよ!?」
「はぁ……。全く、折角アンタ達の為に作ってあげたってのに、まさか本物を見た事がなかったとはね……」
「どうして俺達の為にこれを作る必要があったんだよ?」
「そりゃまあ……。うん、あれよ。はい、二人共もっと寄り添って並んで。それとこれ、専用のナイフだから二人でしっかりと握って」
あ、誤魔化した。
やっぱりからかう為だったんだ……。
これには私もGVも苦笑いだよ。
「えっ、えっ!? あ、あの、ネイさん、一体何を……」
「わー、おめでとー! 二人共、末永く幸せにねー!」
「ちょっとちょっと! 何この展開、っていうかそれだと本当に、その……。け、結婚式……。みたいな感じがしちゃうじゃない……」
「どうせ早いか遅いかの違いでしょ? てか、二人共もうチューくらいしちゃってるだろうし」
「してねぇ!」
「してない!」
えー!!
嘘、二人共キスもまだなの!?
私達なんて、いい雰囲気になってキスしたくても散々邪魔が入ったのにも関わらず一年で出来たのに。
って言うか、デルタが小さい時に私達が観測してない間に済ませてると思ってたのに……。
これには私の中に居るモルフォも苦笑いだよ……。
「はぁ!? あんたらいくつよ!? 付き合い始めの子供じゃないんだから、チューもしてないなんて異常よ、異常!」
「い、言いたい放題言って……!」
「ああ、もういいわ。じゃあチューとかそういうのすっ飛ばして、とりあえずケーキ入刀いってみよっか?」
「飛ばしちゃダメでしょ!?」
「じゃあ、ここでチューする?」
「うっ……。そ、それは、ちょっと……。やっぱり、最初はムードとかそういうの、大切にしたいと思ってるし……」
その気持ちは分かるけど……。
でも、この二人の場合、このままズルズルとそのままな気がするんだよね。
何か切欠でもあれば、いいんだけどなぁ。
そう考えていた時、ネイさんが急に私達の方を向いて、何処か怪しい笑みを浮かべた。
「じゃあGVにシアンちゃん。ちょっとこのおこちゃま二人にお手本を見せてあげてよ」
「お手本ですか?」
「そうそう。チューの手本よ。こいつら、まさかここまで進んで無いなんて思わなくって。いいわよね、二人共? 貴方達恋人同士なんだし、問題無いでしょ?」
「ちょっ……ちょっとネイさん! 何さらっとシアン達を巻き込んでんだ!?」
「そうよ! そんな事をこんな場所でこの二人がする……訳…………」
「いいじゃない。減るもんでもないし。ってどうしたのキャス? 顔真っ赤よ?」
「ん? 如何したんだ、キャス? そんな顔真っ赤にして固まっちまってよ?」
「あっ……あっ…………シアン、貴女、何やってっ……!?」
あ、やっと気が付いた。
そう、私はあえてネイさんの要請通り、私からGVにキスをしていた。
三人に見せつける様に。
深く、深く……。
甘く、重く、ねぶるような大人のキスを。
私達に顔を真っ赤にしながら指を指していたキャスの指先を辿って、デルタ達も私達の様子に気が付いたみたい。
二人共、キャスと同じように顔を真っ赤にして固まってたのが、何所かおかしかったなぁ。
とまあ、そんな三人に見られている事等お構いなく、私達の行為は続く。
互いの舌に絡みつく粘膜の音が静かに奏でられる。
そうして3分くらい時間をかけて、私達は名残惜しそうに粘膜の糸を断ち切った。
「あ……アンタ達何やってんのよ!? ここはラブホ……宿屋じゃないのよ!?」
「ふぁ……。ネイさんがデルタ達にお手本を見せてって言ったからしたのに、どうして怒ってるの?」
「ふぅ……。そうですよネイさん。僕達はネイさんの要請に従っただけです」
「あぅぅぅ……。参ったわ。あたしの負けよ、負け!! ……全く、まさかアンタ達がそこまで進んでるとは思わなかったわ。おネイさん、一生の不覚よ」
うん、上手くネイさんに仕返しすることが出来たみたい。
本当はもっと長くしたかったけど……。
あれ以上長くしちゃうと、ちょっと歯止めが効かなくなりそうだったから、我慢しなきゃ。
「……あ~、アンタ達、折角だからケーキ食べてく? デルタ達はあんな状態だし」
「あぁ~……。二人には、刺激が強すぎたかな?」
「うーん……。でも、あれくらいしないとあの二人、このまま進展しなさそうだし……。まあ、いいのかな?」
その後、真っ赤に固まったデルタ達を後目に私達はケーキを頂くのであった。
……因みに味は珍しく、普通の味でした。
キャスとお話
今、私はキャスのお部屋である相談を受けている。
GVはそんなキャスの部屋から離れた位置にあるお部屋でイオンとお話し中。
流れとしては、まずキャスが私と二人きりで相談したいと誘われた事が始まりだったの。
それで、GVは当初その離れたお部屋で装備の点検やメンテナンスも兼ねて待機するはずだったんだけど、丁度イオンもこのタイミングで私達と接触。
それでGVが装備のメンテナンスをする事になっていたから、そっちに興味が行っちゃって、これを機会に向こうもお話をするって流れになったんだ。
とまあ、向こうのお話はさて置き、今はキャスの相談の話。
その内容は当然、彼女の大好きなデルタのお話。
「デルタが私の事、その……好きでいてくれるって事は分かってるんだけど……」
「素直になれなかったり、恥ずかしかったりで、つい突き放しちゃったり、強がりを言っちゃうんだよね?」
「うん……。それでも、時々いい雰囲気になったりはするのよ? でも……恥ずかしくって……」
キャスは普段は強気で怒りっぽいけど、それはあくまで誤魔化す為の、仮面に過ぎないの。
それこそ、その仮面を被っていないと、デルタの事が好きすぎて自分を抑えられない程に。
それで今回の問題となっているのは、その仮面が物凄く強固である事。
「キャスは今まで我慢してきたんだから、もう我慢するの、やめていいと思うの」
「我慢するのを……やめる?」
「うん。もうデルタは完全に記憶が戻ってるよ? 今いるデルタは間違いなく、貴女の知ってるデルタ。記憶を失ってる時の、おかしなデルタじゃない」
「…………」
「万寿沙羅*1だって、ルウレイ*2さんの事だって、プラム*3の事だって覚えてる。グレイコフ*4さんから託された願いだって、もうデルタは思い出してる」
「……プラム……お父様」
「それに……もうキャスはデルタに告白、受けてるでしょ?」
「え……?」
そう、アレは確かまだ惑星ラシェーラがまだあった頃にあったコロンの一つ、「情報集約都市アルメティカ」でキャスはデルタから告白を受けていた筈。
だから後は、キャスが素直になればいい。
だけど、やっぱり恥ずかしいんだろうなぁ……。
「確かアルメティカで言われたはずだよ? 「一生守っていく」って」
「……っ! あ……あぅ……」
その当時を思い出した事で、キャスは今にも倒れそうなくらい顔を真っ赤にして、俯いちゃった。
……これはもう、デルタに押し倒して貰わないとダメかなぁ。
あー、でもデルタって、今まで見てる限り肝心なところでヘタレちゃうんだよね。
GVみたいにもっとぐいぐい押せば、あっという間だと思うのに。
それとも……。
「いっその事、キャスがデルタの事押し倒しちゃえばいいのかな?」
「んなっ……! そんな事、出来る訳……!」
やっぱり無理だよね……。
これじゃあ正直、今の段階で二人の進展は発展しそうに無いなぁ。
となると、外的要因を加えないとダメかな。
となると……焚きつけちゃおうかな?
「でも、そうやって手をこまねいてると、
「え……。そ、そんなはず無いわ! あんなダメ男、私以外に好きになる奴なんて居る訳が……訳が……」
急速に語尾を弱めて行くキャス。
その反応は、まるで覚えがあるかのよう。
まあ、私もその辺りは何となく予測は付いてるけどね。
キャスの事を煽る為に、若干の着色も付けるけど。
「例えばネイさん。普段はテキトーな態度してるけど、少なくともデルタは嫌って無いでしょ?」
「……そうね」
「他にもカノンさんもデルタに助けられてるし、最近、デルタを見ると挙動不審になってる時があるの、気が付いてる?」
「…………」
「それに、レナルルさんも今はまだ大丈夫だけど、切欠があれば――」
「ダメぇ! デルタは……デルタは……」
「――うん、分かってるよ。デルタは必ずキャスの事を選ぶ。それは間違い無いよ。でもね……世の中にはね、既成事実って概念があるの」
そう、これをされると男の人は責任を取らざるを得なくなる。
ネイさん達がそんな事するなんて私も思わないけど、お酒の席だっり、ふとした拍子に優しくされて盛り上がっちゃったりして
だからそう言った事が無いように、私としては早く二人にはくっ付いて欲しいなって、私は思う。
「既成……事実?」
「そう。お酒が入ってベッドに連れて行くって行為だけでも、かなり危ないよ?」
「…………」
「これの厄介な所はね、デルタの意思が何であれ、本人は拒めなくなっちゃう所なの。だからね、
「……うん」
「その為の協力、私もするから」
そんな時、私は一つの考えが浮かんだ。
そう、確か素直な気持ちを隠せなくなる
「早速だけどキャス、「プッツンプリン」って今持ってる?」
「え? ええ。まだデルタが貴方達に操作されてた時に、大量に買い込んでた記憶があるわ」
「じゃあ、まずは――」
想っている事を素直に言葉に出す練習をしようと、私はキャスに提案した。
キャスは一度食べた事がある為、このプリンの効能を知っている。
最初は渋ったけど、相手はデルタじゃ無くて私だからと説得し、この練習が始まる事となった。
そして、その練習の一部始終をデルタに見られてしまう事となるのだけれど、それはまた、別のお話。
悲しみを打ち消す奇跡のパーツ Take.3
私達は今、天領沙羅にあるカノン*5さんのお店、「ちゅちゅ屋」と呼ばれる所に居るの。
ここでは「とある物」を作成する為の四つのパーツの内の一つを作成中で、カノンさんに加え、私、モルフォ、GVも手伝っており、今はカノンさんが仕上げる最後の工程まで済ませた為、私達は一息ついて一休み。
その工程を途中まで見させて貰った私の予測だけど、あれは何かしらの水晶の形になると思う。
でも、油断をしちゃいけない。
何故なら、此処から全く別の何かに変わってもおかしくないから。
何しろ、サラッと永久機関が出来ちゃうのはよくある事だし、アイスがその場で連結して、そのままヒートシンクになっちゃったりするのがこの世界なんだから。
そう思いながら固唾を飲んで見守っていたら、カノンさんが完成したと思われる水晶を両手に持って作業場から出て来て、私達に無事完成した事を伝えてくれた。
「わぁ……不思議な結晶ですね。これ、中の炎って本物ですか?」
「炎である事に間違いはありませんが、イオナサルが想像している普通の炎とは違いますよ。これはマナフの結晶と言って、命の炎を灯した、不思議な結晶なのです」
「命の炎、ですか? それじゃあ、触っても熱くないと?」
「どうなのでしょう? ガンヴォルト殿、私も実際に触れてはいないので、分からないのです。炎も、結晶を完成させた瞬間に、突然中に灯ったものなので……」
「そうだったんですか……。でも、水晶を触った感じは熱くないし、やっぱり普通の炎とは違うのかもしれませんね」
「折角だから、アタシとしてはこのまま置物として使いたいわねぇ。そう思うでしょ? シアン」
「そうだね、モルフォ。……イオンもそう思うよね? だって、ゆらゆらと儚くて、優しい光がとっても素敵なんだもの」
「えへへ……。私も同じ事思っちゃった。夜とか、部屋の明かりをこれだけにしたら、凄く幻想的な気分になれそうだよね?」
「それは確かに……。何だかそう言われてしまうと、これを材料にするのが、少々勿体無く思えてきますね」
内部に命の炎を灯す球体の水晶。
空気が入り込む隙が無いのに、時にゆらゆらと揺らめく様子は見る物に静かな感動を与え、儚さと尊さを訴えかける。
その輝きを放つあらゆる可能性を秘めた赤い炎は何を想い、水晶の中で揺蕩うのだろう。
……ふふ♪
まだ材料には余裕があるし、カノンさんにお願いして、余分に幾つか作ってもらおっかなぁ。
まあその時は、当然私達も手伝うけどね。
「でも……これを使って最終的に、どんなものが出来るんだろ? この時点で凄い物なのは分かるから、それより先を想像できないや」
「そうですね……。やはりこの命の炎が、何かしらの意味を持っているのでしょうか? まあ何にせよ、これで私の出来る事は、終わりです。後はサーリ達に任せるとしましょう」
「そうですね……。サーリとアキュラに任せれば、大丈夫なはず。……だけど」
「だけど?」
「サーリの方は大丈夫だと思うけど、ネイさんの所で何が出来るのか、正直気がかりなんだ。あそこは色々な意味で、魔境だからね……」
あぁー……。
うん、GVの言う事も分かるよ。
あそこは色々と混沌としてるから、ちょっとアキュラの事、別の意味で心配。
時間が合うなら、そろそろネイさんの方のパーツ、出来上がってる筈だもん。
……一体何が出来ているんだろう?
ちょっと、怖いなぁ……。
そう思いながら、今頃頭を抱えているであろうと予想されるアキュラに黙祷を捧げつつ、私達の談笑は続くのであった。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。