【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる 作:琉土
ほんの少しの進展、受け継がれる先読み、増える幸せ
今日、ソレイル内で暴走している機械群を見つけたと連絡が入った。
私達の居るソレイルは時々、この様な多くのロボットが徘徊している時がある。
私達「ジェノメス」は、それをやっつける事も仕事の内に入っており、今丁度その殲滅が終わろうとしていた。
全く、今日は折角新作の「にゅろきー*1」グッズを徹夜で手に入れることが出来たのに、いきなりこれなんだもん!
こいつら、少しは空気を読んで欲しいわ!
まあでも、デルタと一緒の時間が増えるから……。
あ、合図が来たわね。
じゃあ、思いっきりぶちかますわよ!
「最後の仕上げ、頼むぜ、キャス!!」
「ええ! ……見せてあげる! 全力全開よ!! ――言葉を紡ぎて いざ
今まで謳い想いを練り上げていた詩魔法「ツンデレイン」。
私の心の抵抗が具現化した存在。
詩魔法に詳しい専門家が簡単に分析すると、この様な感じになるらしい。
曰く、「ツンデレは、あらゆるものに抵抗する事で、自らの精神や大切な人を消極的に護る為の心理作用であり、私はそれによって、かつての記憶を失っていたデルタを自らの危険な心の中へと入れるのを拒否していた」との事。
この詩魔法の発動に伴い、彼女の発した「言葉そのものが物理的な文字」となり、それらがまるで絨毯爆撃の如く雨あられと降り注ぎ、敵をなぎ倒していく。
『本当に、私が居ないと何にもできないんだから!!』、そう言葉を言い残し、ツンデレインは姿を消して……後に残った物は、暴走した機械の残骸のみであった。
うん、今回も文句なしの完勝ね!
それに、デルタも随分と調子を取り戻してくれて、私は嬉しい。
流石、私の大好きなデルタよね。
あぁ……だけど――
「……少しだけ、見直したかも」
「ん? なんか言ったか、キャス?」
「えっ……!? 別に、なっ…何も言って無いわよ! デルタの気のせいじゃない?」
「そんな大声出さなくてもいいじゃねぇか」
――相変わらず、私は素直になれない。
これでも私、少しは色々と努力してるんだけどなぁ……。
最近は、シアンが素直になる為の特訓に付き合ってくれるし、これでも少しはマシになったのよ?
デルタにお礼を言う時だって、小さな声でだけど、ちゃんと、言えるようになったし、それに、二人きりになった時も、大好きって、言えるようになったんだもん。
それに! さっき素直になれなかったのは、デルタが悪いんだからね!!
だって、あの時の私の言葉、絶対聞こえてた筈なのに、あんな言い方するんだもん!!
あんな、どこか悪戯っぽい表情で、そう言うんだもん……。
昔の、まだ私が「ター坊」って呼んでた時と同じ様な、そんな眩しい笑顔で。
そう思っていた時だった。
「えっ……? ちょっとデルタ、何するのよ!!」
「ん? いいじゃねぇか、キャスは今疲れてるだろ? 確か今日は新作の「にゅろきー」シリーズの発売日だって言って、徹夜で並んで買った直後だって聞いてたしよ」
私の事を急に抱き上げて来た。
それも、お姫様抱っこ!!
いきなりだったから、私はその事に物凄く驚いちゃった。
嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ちが、頭の中でぐるぐると駆け巡って混乱しちゃう。
「どっどうしてそれを!? ……じゃなくて、それ、誰に聞いたの!?」
「ん? モルフォからだぜ?」
モルフォ!?
確かに並んでる時に飛んでる所を見てたけど……。
もう! 何時の間にそんな情報をデルタに渡してたの!?
……ふぅ、やっと少し落ち着いてきた。
それにしても、どうしてデルタがこんなに気を効く事を突然やり始めたんだろう?
一応、今までだって私の事気にかけてくれてたけど、こんな風に直接行動する事なんて無かったのに。
それに、よくデルタの顔を見て見たら、少し赤くなってるし……。
きっと、誰かが入れ知恵したに違いないわ!
私はデルタに誰がそんな入れ知恵をしたのかをそれと無く聞いた。
「あ~……えっとな、GVに聞いたんだ。俺、どうしたらキャスをもっと喜ばせてあげられるのかってさ……。前々から相談してたんだ。それで少しづつそれを生かしていったら、キャスの笑顔になる回数、増えて来てるからさ。今回のこれも、その一環なんだぜ?」
そう言えば……最近のデルタ、私がして欲しいなぁって思ってる事を先回りする機会が少しづつ増えてるのよね。
それに、実はこうやって抱っこして欲しいって詩魔法が終わった後、内心思ってた。
やっぱり徹夜で並んでて、その直後に戦闘だったから。
それにしても……ふふ、温かいなぁ。
「全く、GVったら……。デルタに余計な事を言わないで欲しいわね」
「GVを責めないでくれよ、キャス。元々これは、俺が言いだした事なんだぜ? それに、そろそろ戻ろうぜ。俺ももう、腹減っちまったからよ」
「……もう、仕方が無いわねぇ」
そうしてお姫様抱っこをされながら、私はフェリオンへと戻った。
なお、この時を境にデルタは私の行動の先読みを、より積極的にやるようになり始めたのであった。
大人の女子会、その夜話
今、ここにはネイさん、サーリ、私、イオン、モルフォ、シアンの六人が居る。
ここで私達は、色々とお話をしていた。
最近のフェリオンの流行のファッションだったり、にゅろきーの事だったり。
それで、今の話は……。
「それでぇ~、デルタとは何処までいったのよ?」
「そ、それはもう、アレよ。そう、アレ!!」
「アレじゃあ分からないよ、キャス。ちゃんと僕達に言ってくれないと」
「うんうん。アタシも気になるわ」
「私も、ちょっと気になるかな? 色々と特訓に付き合ってる身としては……ね?」
「確か、素直になる特訓……だったよね? シアンちゃん」
「うん。だから、そろそろ何かしら効果があるんじゃないかって思ってこの話題を出したんだけど……」
「この様子じゃあ、進展は無さそうねぇ~」
「そっ、そんな事ないわよ! この前だって、デルタに、その……お姫様抱っこ、してもらったし、あの時だって、恋人繋ぎしてお出かけもしたし……」
「……これは驚いたね。キャスにしては、凄い進歩じゃないか」
「「私にしては」ってどういう事よ、サーリ!!」
「どういうも何も、そのままの意味だけど? イオンもそう思うだろう?」
「うん。今までのキャスちゃんの事を考えると、すっごく進歩してるって感じがするよ」
皆言いたい放題言ってくれちゃって……!
サーリだって、白鷹が戻って来てから浮かれてるの、私知ってるんだからね!
「そういうサーリは、白鷹とはどうなのよ?」
「な……っ! むぅ……キャスばかり恥ずかしい思いをするのは不公平だし、僕も話すとしよう。そうだね……最近の白鷹は、何か吹っ切れた様に――」
ここから、サーリの惚気話がしばらく続く事となる。
サーリは昔から、白鷹に好意を抱いていた。
だけど、GV達がこの世界に来るまで、彼はもう死んでしまっていると考えられていた。
何故ならば、白鷹とはコールドスリープする前に別れてしまっていたから。
だからこそ、サーリの精神世界に潜った際も、恋愛事について否定、若しくは諦めてしまっている世界になっていた。
だからこそ、彼が生きていたと知った時のサーリは、それはもう凄かった。
シャールの問題も含めた様々な問題が一気に解決したのもあるだろう。
積極的に白鷹にアタックし、今まで興味の無かった恋愛について私に相談するまでになっていたのだから。
私が見る限りだけど、今の所順調に進んでいるように見える。
今こうやって楽しそうに、恋する乙女を体現したかのような表情をしているサーリは、実に微笑ましい。
それはもう、私の口の中が心なしか甘く感じてしまう程に。
そうして一通り話して満足したのか、今度はイオンがこの話題を話す事となった。
最初は正直、GVには既に恋人がいるって話は聞いていたから、あまりいい話は聞けないんじゃって思っていたんだけど……。
「ふふ……。GVはね、とっても優しいの。細かい気配りが出来て、それでいて、私の趣味の事を理解してくれる。最近は、もうキスだって済ませちゃったんだから」
「えぇ~~!! ちょっとイオン、アタシ聞いてないんだけど!! って言うか、凄い勢いで浮気されてるけど、シアンちゃん達はいいの!?」
「問題無いよ? だって、私達公認だもん」
「そうそう。アタシ達公認だから問題ないわよ」
「シアンの本心であるモルフォからも同じ答えが出るって事は、公認なのは間違いないみたいだね。でも、僕から見るに、君達は嫉妬深い様に見える。よく公認したね」
「何も全く無条件でそうした訳じゃないのよ。当然、色々と取引や打算はあるわ」
「そう言う事。詳しい事は、ここでは話さないけど……ね」
「改めて言うけど、浮気公認って、とんでもないわよ。私だったら、絶対に認めない、許せないってなっちゃうのに……」
「それが普通だよ、キャスちゃん。だからキャスちゃんは、絶対にデルタを他の女の人に渡しちゃダメだからね?」
そうよね、それが普通よね?
GV達の関係を見てると、その辺どうにも感覚が麻痺しちゃう感じがするのよ。
確かこの場に居ないオウカって女の人の事もそうだし、一度故郷に戻ってるネロだって恋人だって聞いてるんだもの。
とまあ、それで次は必然的にシアンちゃん達の出番になったんだけど……。
一気に大人の話って言うか、凄く生々しい話になっちゃったのよね……。
曰く、大人のキスの話だとか、こんな風に愛を囁かれながらゴニョゴニョされたとか、貫かれた時の話とか……。
中でも一番驚いたのがこの話だった。
「
「えっとね、元々は生体電流を活性化させて怪我を治癒する「ヒーリングヴォルト」ってスキルを応用しているの」
「だから理論上、ただ触れただけで相手を気持ちよくさせる事も出来るって訳。他にも、達したの時の電気信号を直接送って……なんて事もね」
「ねぇ、シアンちゃん。その話し方だと、まるでシアンちゃんも出来る様に聞こえるんだけど……」
「出来るよ? だって、私も蒼き雷霆の能力、使えるもん。こうやって実体化してるのだって、この力のお陰なんだから」
「出来ちゃうの!? って言うか、実体化してるのはGVのお陰なのかな~っておネイさん思ってたんだけど!?」
とまあ、シアンちゃん達の話題は色々と生々しかった為、此処で打ち切り。
そうじゃないと、私まで変な気分になっちゃう。
それで、最後にネイさんなんだけど……。
「アンタ達は良いわよねぇ~……。あたしなんて、まだ誰もそんな人いないんだから」と妬ましそうに逆切れされてしまった為、このお話はここまでとなってしまった。
だけど、次のにゅろきーの魅力についてをシアンちゃん達に理解させる事に大成功したのは、私にとっても、サーリにとっても喜ばしい事だった。
こうして、夜は更けていったのであった。
胸膨らむ野望、その第一歩
「幸せ胸膨らむソーダ」と呼ばれる「ネイアフランセ」で調合された失敗作があった。
これの効果は、胸の小さな女の子が、飲むだけで巨乳になれるコンセプトで調合されたソーダ。
味は良かったし、そう言った気分にはなれたけど、あくまでそれだけで、肝心な、胸を大きくすると言う効果は無かった。
それで、色々とネイさんも私も試行錯誤を繰り広げたんだけど、結局どうにもならなくて、もう、正直諦めかけていた。
胸が大きくなるという事を。
だけど、天は私達を見捨てなかった!!
切欠は、シアンちゃんにこの事を相談した事に始まる。
「私はそう言った悩みは持った事、一時期はあったからその気持ちは分かるけど……」
「そこを何とか! あたし達、ほんの少しの希望にも縋りたい気持ちなのよ!」
「外から私達の世界を見てたのなら、何かいいアイディアがあるはずよ! そこをなんとか、ね? ね? シアンちゃんだって、胸の小さな人の悲しみ、分かるでしょ?」
「うーん……、私、その気になれば大人の姿になれるし……」
「え? ちょ……ちょっと待って、アタシそれ聞いてないんだけど!!」
「私もよ! どういう事か、説明して貰おうかしら? シアンちゃん……!」
「えっえっと……私はモルフォと同じように、電子の身体で、本来なら姿形は皆から見えない筈なんだけど……、私、その影響で、自分の姿を変えられるの。私の能力で。元々はモルフォの姿形を色々と構築していく過程で出来るようになった事を、自分にやっただけの事なんだけど……」
「……やってみてよ」
「ぇ……?」
「やって見せなさいって言ってるのよ!!」
「ひゃう……! 分かったよ……。じゃあ、ちょっと姿を変えるから待ってね」
そうして一度シアンちゃんは姿を消し、少しの時間が過ぎた。
そして、再び姿を現したその姿は……。
「こ……このっ、シアンちゃんの裏切り者~~!!」
「そうやって、貴女は私達の事、陰で嘲笑っていたのね!!」
「そ、そんなつもりは無いってば!!」
私達よりも背が高く、出る所は出て、引っ込んでる所は引っ込んでて……。
モルフォのお姉さんと言ってもよい、実にグラマラスな体形であった。
なんでも、シアンちゃんは成長すると、この様な姿となるらしい。
とまあ、最初はこの憤りをシアンちゃんにぶつけるだけだった私達だったけど、そんなシアンちゃんから、思わぬ提案が舞い降りて来た。
正しくそれは天啓だった。
「えっとね、確か、カノンさんの所で「クラスチェンジパック」って言うカソードがあったの、キャスちゃんは覚えてるよね?」
「……ええ。効果は確か、シャール専用で、人魚に変身できるようになるカソードだって聞いてたけど」
「うん。それでなんだけど……、キャスちゃんとネイさんは、ヒトガタで、シャールの身体を持ってるでしょ? だから、このクラスチェンジパックを基に……」
「それだわ!! シアンちゃん、今の言葉はアタシ達には天啓よ!! これならきっとうまくいくわ!! キャス、確かこのカソード、まだ沢山あったわよね!?」
「ええ、在庫なら一杯残ってるわ!!」
この天啓を得て、私達の計画は始まった。
最初は頓挫する事が多かった。
そこで、同じ
夢が、叶う事となった。
「出来た……完成だ!! これぞ僕らの悲願……!!」
「「クラスチェンジパック ver.2」!! やったわね! サーリ!!」
「これで私達も……! オホン、あ~私は別に無駄に肉を付けるつもりは無いんだけど~~」
「そうそう、別にアタシ達は大きくなって嬉しいだなんて、これっぽっちも思って無いけど~~」
「誰かが実験しないと、安全性は保障できないから、そう、これは仕方が無いんだ。決して胸が大きくなるのが嬉しい訳じゃ無いんだ」
「「「……それじゃあ同士、幸運を!!」」」
そうして、私達はこのカソードを装備し、目をつぶった。
本来、カソードは前衛、つまり守護者が装備する物で、紡ぎ手には不要な物だ。
だからこそ、RNAやTxBIOSによる余計な不具合も発生する事は無いとサーリは言っていた。
そうしてしばらくする事、ほんの数秒。
私の胸の部分に、質量を感じるようになった。
そして、それが着実に、実感できる重みへと変化していく。
そうしてしばらくして、その変化が収まった。
そして、期待も胸に詰め込んで、いざ目を開けた。
その光景は……!!
「…………」
「…………」
「……何、これ?」
確かに、胸は大きくなっていた。
だけど、だけど……!!
「何この違和感……。すっごく不自然なんだけど……」
「それに、無駄に重たくって、体のバランスが……」
そう、余りにも違和感があり過ぎたのだ。
何と言うか、例えて言うなら……時々、デルタの部屋で見つかるえっちな本で出てくる、胸が大きすぎて逆にすごい違和感がある、そんな感覚。
それが現実になっている為、余計に不自然で、かえって不気味な様相を呈しているのだ。
「ふむ……、これは、私達が分不相応な大きさを求めたから、身体全体のバランスが崩れているんだ!」
「……ただ大きければいいって訳じゃ無いのね」
「そう言う事だね。キャス」
「……あぁぁぁぁ!! もう!! やっと念願叶ったと思ったのにぃぃぃぃぃぃ!!!」
「確かに、今回は失敗したよ。……でもネイさん、この失敗は無駄じゃない。こうして実際に、僕達の体系を変化できるようになったのは、大きな進歩だよ。次に生かせばいい。希望は、まだ残っているんだ」
「そ、そうよね! あたし達は進歩したわ! だから、諦めなければきっと、今度は違和感なく大きくなれる筈よ!」
そうして私達は、この終わりなき新たなる戦いに身を投じる事となる。
この過程で、同氏は一人二人と増え続け……。
最終的に、胸の無い人達の大いなる希望となるのであった。
いったいどれ程かかったのかかは、内緒である。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。