【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる   作:琉土

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番外編最終章 七つの海を越えた只人は謡精を導く
第二十九話


 新生ラシェーラ。

 それは大地の心臓と一つとなったコーザルを元に、イオンを中心としたソレイルに居る全員による詩魔法「ラシェール・リンカーネイション」によって、惑星創造によって生まれた惑星。

 出来た当初、それはもうソレイル全体が、凄まじい活気に沸いた物であった。

 喜びを分かち合う人々。

 笑顔で飛び交うシャール達。

 目の前に出現した惑星は正しく彼らの希望なのだ。

 そうして目の前の惑星の誕生を、ソレイルに居た皆は祝った。

 その後、直ぐに調査団が派遣される事となり、環境の調査及び土地の確保が行われ、暫くの時が経った――

 

「なるほど……貴方方の事情は分かりました。ライズの生まれた当初を知りたいのですね?」

「その通りだ、カノン」

『僕からもお願い。ライズちゃんの力になりたいんだ。最近、ミチルちゃんと一緒にお泊りした時も酷くうなされたし、記憶の飛ぶ頻度も多くなっちゃって……』

 

 俺達がカノンと相談している内容、それは惑星創造が成される前に知り合った少女の姿をしたシャール「ライズ」についてだ。

 彼女とはロロが開いた小さなライブを切欠に知り合った関係で、今では俺にロロ、ミチルやノワは勿論、ガンヴォルト達とも仲が良い。

 その見た目は()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()に加え、()()()()()()()()()()を有し、かなり露出度の高い服装をした女性と言った物だ。

 まあ、服装に関して言えば、シャール基準では平均的な見た目なのだが……。

 そして次に性格、これは平均的なシャールの物と同じだ。

 つまり、のんびり屋で優しく、純粋なのである。

 そんな見た目がミチルに似ている以外、平均的なシャールである筈の彼女なのだが、俺達と知り合って以来、ある問題を抱えていた。

 それは、時折記憶が飛ぶ時があるのだと言う。

 最初にそうなったと思われる状態になったライズを見つけたのは俺であった。

 その時の状態とは、目に光の無い、正しく虚空の瞳で立ち尽くした状態で表情を無くした物。

 最初はその時、直ぐに元に戻っていた為、見間違いであるのかと判断していたのだが、ロロやミチルを始め、ガンヴォルト達に、彼女の知り合いであるシャール達も目撃するようになった。

 それもあり皆、その事をライズに尋ねた事で、この記憶が飛ぶと言う現象が判明したのだ。

 その事が判明した時、今回の様にカノンに一度相談をした。

 その際、精神世界へと潜る事を勧められたのだが、一つ問題があったのだ。

 仲良くなったとは言え、まだ知り合って間もない。

 だから、もっと親しくなり、彼女の方から精神世界へ潜ってもらう事を誘われるまで待つ事とした。

 何故ならば、必要な事なのは間違いないが、それでも他者を自分の心の中に入れると言う行為は相応に精神的負担が大きい。

 これはかなり親密になったガンヴォルトとイオンによるダイブでも、若干の負担が感じると言うのだから、せめてその位言われるまで親しくならなければ、必要以上の負担を強いる事となるだろう。

 そういう訳で、そこまで仲良くなるのに惑星創造を跨ぎ、暫くの月日がかかった。

 とは言え、必要に迫られていると言う理由はある物の、ライズと過ごす日々は研究とはまた別の意味で充実した日々である事は否定できない。

 今やロロもミチルも完全に懐いており、ノワも俺も彼女の仕草に時折笑みを浮かべたりと、シャール特有ののんびりな性格も相まって心を許している。

 その月日の最中で感心したのが、禊ぎだ。

 あれはいい。

 あの清浄で神聖な雰囲気の中、互いの想いを循環させ合うと言う儀式は、心身共に清められ、引き締められる気持ちになれる。

 ただ少し気になるのは、その時ライズが心なしか顔を赤らめている点だ。

 禊ぎの際のライズの服装も、普段の時と大差ない、いや、寧ろ露出度は減っている筈である。

 本人にそれについて尋ねても、普段のんびり屋な彼女でも、少し拗ねた表情をしながらはぐらかしてしまうので、結局分からず仕舞い。

 まあ、今にして思えば種族の違いによる価値観の違いと言う物なのかもしれないのだが、少なくとも嫌がっていない事は流れてくる想いから判断する事は出来た。

 ただ、その流れてくる想いというのがその……何と形容してら良いのか、温かさに加え、何処か甘い様な、包まれている様な……どうにも言葉で説明するのが難しい。

 そしてこれを機にライズだけでは無く、ミチルもロロも参加するようになった。

 ただ、ノワは顔色を悪そうにしながら遠慮していたが。

 そう言った事もあったが遂に、彼女の方から俺とロロに対して、自身の精神世界へと潜って欲しいとお願いされたのだ。

 そのきっかけも、のんびり屋な彼女でも気になる程、記憶が飛ぶことが気になりだし、それをカノンに相談した事が切欠であった。

 こうして精神世界へと潜る最低条件は整った。

 そう、あくまで最低条件だ。

 ガンヴォルトが言うには、精神世界へ潜る際は、出来る事で思い当たる事は必ずやった方がよいと言う。

 奴は経験者である以上、俺もその意見を参考にする事となった。

 興味のあるアイテムについて話したり、禊ぎが終わった後の会話の時間を増やしたり、色々な人達と知り合わせた。

 その結果、ライズはガンヴォルト達や俺も含め、大勢の人達とチェインするまでに至った。

 そして今カノンと話し合っている事も、その一環だ。

 

「ふむ……コーザルに尋ねてみましょう。彼ならば、彼女が生まれた当初の事が分る筈」

 

 そうして彼女は目を瞑り、瞑想の体勢に入った。

 今彼女は、惑星の意思その物となったコーザルと対話をしているのだろう。

 コーザルとはジェノム達の王であると同時に、この俺達の立っている惑星その物の意思だ。

 その強大さ故、意思を伝えるには巫女であるカノンを経由しなければならない。

 

「…………ふぅ。終わりました。……アキュラ、ライズは少々、今までのシャールとは少し異なる様です。それを踏まえて説明いたします」

 

 ライズが誕生した当初、()()()()()()()()()()()()()()()()()()があったのだと言う。

 その痕跡は例えるならば、全身を引き裂かれ、かき回されたかのような残虐極まりない物であり、むしろ良く生まれてくるまで無事であったとコーザルも驚いていた程であったらしい。

 それもあり、コーザルはまだ生まれたばかりの時のライズの事も気にかけてはいたが、表面上は普通のシャールとは、一部を除いて変化が無かった。

 だが、その一部が不味かった。

 何故ならば、ライズは()()()()()()()()()()()()()からだ。

 これまで普通のシャールであった彼女が取り乱し、猛烈な拒絶反応を出した。

 その拒絶反応は、それこそ魂が損傷する程に酷い物であった。

 だが、それ以外は普通のシャールとは変化がない為、詩魔法を謳わせる状況を作らせない様に気を配る事となった。

 そうして今に至る訳なのだが、その時の魂の損傷はもうほんの少しの痕跡も残っていない程に回復していた。

 特に、最近親しくなった俺達との交流に加え、禊ぎが大きな効果を発揮した事が特に貢献したそうだ。

 が、その事が……魂の損傷の痕跡が消えていく事が、記憶が飛び、うなされる事も有る原因なのだと言う事が、カノンの口からの説明で判明した。

 元々、まだ魂の損傷の痕跡が残っていた頃は、その奥である深層領域内に眠っていた記憶やら何やらもグチャグチャのままだった。

 本来ならば、この状態は良くない。

 例えるならば大黒柱が無く、辛うじて残っている柱に支えられている家の様な状態だからだ。

 それが、俺達との接触や活躍等によって魂が正常になり、その心の奥底で眠っていた記憶も完全に修復された。

 ここまではいい。

 だが、その修復された、心の奥底に眠る記憶その物が不味かった。

 その記憶が具体的に何なのかは分からないが、「ソレ」は彼女の表層の心すら蝕みかねない程の悍ましい記憶らしい。

 俺達はそれが分からなかったが、惑星の意思となった今のコーザルならば把握できた。

 だが、その記憶の内容が、如何にも言葉では説明できないのだと言う。

 ならば当然巫女であるカノンも説明出来るはずも無い。

 ただ、分かった事はある。

 その記憶は現在進行形でライズの心を蝕み、苦しめている事。

 もう一つは、これによって記憶が飛ぶ理由だ。

 その記憶は俺とロロ、そしてノワの姿を見る事がトリガーで表面化し、それに対する精神防御と言う形で、記憶が飛ぶと言う現象が起こる、これが一連の流れであり、理由なのだ。

 

「ハッキリ言います。アキュラ、ロロ。貴方達がライズの精神世界へと潜るのはリスクが大きすぎます。下手をすれば、未帰還者となる危険性があるからです」

「……だそうだが? ロロ」

『ふっふ~ん! そんな理由で引き下がる程、僕達とライズちゃんとの絆は甘く無いよ!』

「そう言う事だ。それに、その程度で引き下がるのならば、俺は、俺達はわざわざこの世界に来る事も無かっただろうな」

「アキュラ君……ロロ……」

 

 今日ここに来て、初めてこの場に居るライズは口を開いた。

 自分が迷惑を掛けていると自覚していたのだろう。

 普段の明るく優しい表情も、今では曇っており、何かを恐れている様に目を伏せていた。

 だが、俺達のこの答えを聞き、漸く口を開いてくれたのだ。

 

「……分かりました。そこまで言うのならば、私は止めません。ですが、専門家の協力を得た方がよいでしょう。私の知るダイブ専門のBIOS屋に、一筆(したた)めます。これを用いて協力を仰ぐと良いでしょう」

「ありがとうございます。カノン様」

『ありがとう、カノン!!』

「感謝する。必ず、無駄にはしない」

 

 そう言う訳で、俺達はライズの精神世界へとダイブする準備を整える事となった。

 ……俺自身、ダイブをすると言う行為は初めてだ。

 そこで、その経験者とも言えるガンヴォルトとデルタから話を聞く事とした。

 

「ダイブで重要なのは、洞察力、後は適応力かな。例えば精神世界では思わぬ事が常識になっていたりする事も多かったり、その世界で登場している人達の言動がおかしくても、何かしら共通する部分があって、それが本音であったりとかだね」

「そんでもって、何よりも重要なのが信じる力。これはダイブする側もそうだが、される側も重要なんだ。いかに互いを信じあえるか……ここが足りて無いと、例え正解にたどり着いていたとしてもどうしようもなくなっちまう」

『だから色々と交流を重ねて仲良くなったり、禊ぎなんかをする必要があったって訳なんだねぇ』

「なるほどな」

「だから、今のアキュラとロロならダイブした途端追い出されるという事は無い筈。とは言え、これはあくまで前提であり、スタートラインだ。そこから先は完全な未知の世界である事は念頭に入れて欲しい」

「それと、行き詰ったと思ったら無理せず戻った方がいいぜ。情報収集が必要になったりするからよ」

 

 そうして俺達はガンヴォルト達からアドバイスを貰った後、カノンが紹介してくれたダイブ屋へと足を運び、俺達はライズの精神世界へとダイブする事となった。

 その世界の名は「残滓に蝕まれる楽土」。

 その名が何を意味するのか。

 それは、俺達がこの世界へとタイブした直後に味わう事となる。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。




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