【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる   作:琉土

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第三十話

『何!? こいつら!』

「分からん……! だが、今は応戦するしかない!!」

 

 俺達は無事、ライズの精神世界へと降りる事が出来た。

 俺達の背後には「ヒュムノフォート」と呼ばれるこの世界の入り口、及び「承認の儀」と呼ばれる、この世界の問題が完了した事を承認する古びた扉が存在している。

 周りを見渡してみる。

 そこは草花が一杯に広がり、大きな湖も山もあり、遠くには賑わっていそうな町が見える。

 なるほど、ここは正しく楽土と呼べる場所と言えるだろう。

 だが、それに似つかわしくない現象がこの世界では起こっている。

 そう、先ほどから所々に黒い煙と火の手が上がっているのだ。

 それを認識した途端、俺達の周りに()()()()()()姿()()()()()が姿を現した。

 俺達がそれを見て、即座に戦闘態勢へと移行したと同時に、奴らは攻撃を開始し、冒頭に戻る。

 奴らの攻撃パターンはエネルギー弾を放ったり、爆弾を投擲してきたり、火炎放射による攻撃を放ったりと何処か身に覚えのある物ばかりであった。

 それにロロが気が付いたのだろう、即座にパターンから該当する正体を割り出した。

 

『パターン解析……っ! アキュラ君! こいつら、()()()()()()()()()()()よ!!』

「やはりそうか! ……だが、何故だ? 俺達とのチェインで影響を受けたのか、それとも……今はそれ所では無いな。少なくとも、こいつらは間違いなく……」

『ライズちゃんを苦しめてるのは間違いない! 行こう、アキュラ君。やっつけなきゃ!!』

 

 この黒い塊……これは恐らく、ライズを苦しめている記憶が具現化した存在だ。

 街の方や湖の方にもこの黒い塊と思われる存在が(たむろ)しており、そいつらがこの世界を傷つけているのが分かる。

 少なくとも、この世界では害悪に等しい存在なのは間違い無い筈だ。

 俺達はこの黒い塊の群れに対して攻撃を開始。

 幸い、こいつらの戦闘能力は皇神兵の物と大差なく、この場に居る黒い塊は瞬く間に殲滅することが出来た。

 

『それで、次はどうするの?』

「まずはこの世界に居るライズを探そう」

『そうだね! ん~……。この世界でライズちゃんが行きそうな場所と言えば……湖かな? この前、ミチルちゃん達と一緒に遊びに行った覚えがある!』

「そうだな。この世界ではそう言った直感も大事だとデルタ達も言っていたからな」

 

 それに、俺自身もロロと同じように、何となくそこに居るのではと思った。

 根拠のない推論に頼るのは科学者としてあるまじき行為だが、ここは精神世界だ。

 今までの交流によって出来た絆とも言うべきものが直感として表れやすいのだろう。

 そう考えながら、俺は立ち塞がる黒い塊を蹴散らしつつ、湖へと向かった。

 

『……っ! 見つけた、ライズちゃんだ! それに、この世界のデルタ達も居る!』

「どうやらこの世界の二人はライズの護衛をしていたみたいだな」

 

 俺達は黒い塊に囲まれ、応戦してライズを護っている二人に加勢し、これらを退けた。

 デルタ達はずっと護っていた為なのか、かなり息切れをしており、その場に座り込んでしまった。

 

「すまねぇアキュラ。こいつら、無駄に数ばかり多くてよ」

「気にするな。それより、これはどういう状況か分かるか?」

「ごめんなさいアキュラ君……私には何も分からないの。ただ、前にも何回か同じようなことがあって……」

「こいつら、その度にこの世界に現れて暴れてるのよ! 折角今日は湖でピクニックしてたのに!!」

 

 詳しく話を聞くと、これまでにも何回か、同じようなことがあったらしい。

 最初の時の規模は大した事は無く、精々五体にも満たない程度の数であった為、余り問題視されなかった。

 だが、日を追うごとにその数は増加し、今ではこれ程の規模になるまで増加し、対応に苦慮しているらしい。

 ……やはり、カノンの言う魂の修復と連動しているらしいな。

 

「今はこんな感じだし、俺達は固まって今暴れてる奴等をぶっ倒しちまおう」

『一応、草原の方はここに向かう序に僕達がやっつけたから、向かうなら街がいいと思うよ』

「そうだな……。デルタ、キャス、俺が遊撃を担当する。お前達はライズの護衛を頼む」

「おう、まかせとけ!」

「判ったわ。私とデルタのラブラブコンビなら、どんな相手でもかないっこないんだから!!」

『らっラブラブコンビって……』

「……ライズにはデルタ達がそう見えているのだろう」

 

 そうして俺達は街へと向かった。

 そこで待っていたのは、やはりと言うべきか、あの黒い塊だ。

 それ以外にも、()()()()()()()()()()()()()()()()の姿もあった。

 

「……っ! 街にまでこんな……くそ!」

「プリム……大丈夫かしら? 一応ネロと一緒にサーリの所で遊んでる予定だったって聞いてるけど」

『……ッ! いけない、あのでっかいの、こっちに気が付いたみたい!』

「デルタ達は先にサーリの所へ行け! アレは俺達がやる!」

「……すまねぇアキュラ!」

「その代わり、ライズの事は任せておいて!」

 

 そうしてデルタ達はサーリの居る所へと逃がし、俺達はあの黒いデカブツとの戦闘に入った。

 その黒い塊はミサイル、及び機銃掃射がメインの攻撃方法であった。

 そして、その巨体に合わず、軽々とジャンプする機動力も併せ持つ。

 ……やはり、この動きをするメカニクスと思しき黒い塊、見間違いで無ければ――

 

『……ッ! パターン解析完了! やっぱりコイツ、「マンティスレギオン」だ!!』

 

 マンティスレギオン。

 それは俺達の世界の皇神未来技術研究所が開発した第九世代戦車。

 俺達の世界の現行機であった「マンティス」に、「プラズマレギオン」の技術を一部転用する事で生まれた無人戦車だ。

 基本的な武装はマンティスと同様だが、ミサイルにビームを内蔵しているなど様々な点で強化がなされている。

 その攻略法は頭部にダメージを蓄積させ、そのダメージを強制冷却する際に出現するコアを破壊すればよい。

 

『コアの出現を確認! アキュラ君、いっけぇー!』

「これで終わらせてもらう」

 

 俺はコアに向かってブリッツダッシュをしつつ、この世界の技術も加えて更なる改良を済ませた俺の持つ銃、「ボーダーⅡ」改め「ディヴァイドⅡ*1」を叩きつけロックオン。

 それと同時に必中の二筋の光の矢を複数叩き込む事でコアを破壊し、決着を付けた。

 

『ま、この程度なら僕達の敵じゃないよねぇ~』

「…………」

『……アキュラ君?』

「……いや、何でもない」

 

 俺は最初、()()()()が頭の中に浮かんだが、それと同時にこいつと交戦した記憶があった事を思い出し、その疑念は頭の片隅へ追いやられた。

 その後、街に巣くう黒い塊は全て始末し終え、この世界の目に見える範囲の脅威を退ける事に成功した。

 その後、デルタ達と合流し、無事を確認した後、俺達はこの世界のライズの家へと招待される事となった。

 だが、その家は、俺達に対して凄まじい親近感を持たせた。

 何故ならば、その家は……。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()だったのだから。

 しかも、それだけでは無く、ライズの世話をしているメイドがノワであると言う点も、それに拍車を掛けた。

 ……これが、たまたまこの世界におけるノワの役割だと言えばそこまでだ。

 だが、俺には……いや、俺達にはそれだけであるとは到底思えなかった。

 故に、その疑念は更に深まる事となったが……まだその疑念が正しいかどうかを決定付けるピースが足りない。

 

「ライズに怪我がなくてよかった」

「うん。私はもう大丈夫。ありがとう、アキュラ君、ロロ」

『いやぁ~、それ程でもないよ~』

 

 案内された部屋はやはりと言うべきか、ミチルの居た部屋と何ら変わりが無い。

 そこでライズはベッドの上に座り、俺達と他愛の無い話をする事となった。

 昨日出されたおやつのようかんの話だとか、以前チェロの演奏家に生演奏をしてもらった話だとか、今日の朝出されたブロッコリーを避けた話だとか、本当に、()()()()()()他愛の無い話が続いた。

 そして、先ほどの黒い塊の話題も、何事も無く終わるはずだった。

 

「アキュラ君もロロも、凄いよね。あの黒い塊をあっという間にやっつけちゃうんだから」

『あのくらい、僕達ならどうって事は無いさ!』

「あの程度ならば、問題は無い」

「そっか……本当なら私も謳えれば、アキュラ君の足手纏いになる事なんて無いのに……」

『ライズちゃん……』

「……大丈夫だ。ライズは足手纏い等では無い。俺達の仲間であり、友達だ。そうだろう?」

「……うん。ありがとう、アキュラ君」

 

 そうして話している内に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()事で、俺はこの世界でまだ行っていない箇所があった事を思い出し、()()()()そこに向かう事をライズに話した。

 その瞬間、空気が何となく変わった。

 

「……ダメだよ」

『ライズちゃん?』

「ダメ、そこには、行ってはダメ」

「どうした、ライズ?」

「お願い……行かないで、アキュラ君、ロロ。あそこは絶対に近づいてはダメって言う、この世界に伝わる言い伝えがあるの」

 

 言い伝えだと……あの時、ライズは何も分からないと言っていた筈。

 いや、言いたく無かったからああ言ったと考えれば自然な話だ。

 ともあれ、ライズが言うにはその山の山頂に向かえば、この世界の真実と対峙する事となる扉が開くらしい。

 そして、今まで撃退しているあの黒い塊の力の源は、その扉の先に眠る「何か」だと言う。

 

『そこまで分かってるのに、どうして行かないでだなんて……』

「……あの山に眠る真実は、ライズ様を大きく傷つけ、災いを齎す物だからです」

「ノワ……」

「アキュラ様、もしあの山に行かれるのでしたら……()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そのつもりでいて下さい」

「ごめんなさい、アキュラ君、ロロ……」

 

 こう言った事も有り、俺達は一度ライズの屋敷から離れ、状況を整理する事とした。

 まず、「この世界の真実」とはライズの深層意識に眠る記憶であり、そこにある「何か」。

 これは間違いないだろう。

 だが、もう一つ気がかりなことがある。

 それは、俺達をあの山に行かせない様に仕向けている事だ。

 これに気が付いたのは、ノワの言動だけでは無い。

 一度街に戻ってそこに居る住民に山の事を尋ねると、決まってあの山には向かうなと警告を出している。

 後、黒い塊に対して妙に楽観視している事も気がかりだ。

 ……落ち着け、ここは精神世界だ。

 ここは常識の通用しない世界。

 俺はあの山に行こうとしている存在、つまり、この世界のライズに災いを齎そうとしている存在と同義の筈だ。

 なのに、ライズにノワもそうだが、ここの世界の住民は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そもそも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()がおかしいのだ。

 正直に言う必要などなく、あれは自然発生する物だとでもいえば、ごまかしが効く筈。

 それに、態々話題にこの世界の山の事を話さなければ……あの情報さえなければ、俺は無理に山に行こうとは思わず、その場を退いたはずだ。

 そう考えると……。

 ライズは少なくとも、あの山の真実……つまり、奥底に眠る記憶を恐れているのは間違いない。

 そして、そこから出てくる黒い塊……記憶の残滓の脅威にさらされているのも、本当なのだろう。

 それなのに、俺に対してこの情報を与えている。

 こうして考えると、ライズ(残滓に蝕まれる楽土)はこの世界の真実を知りたがっているのだろう。

 だが、恐れていると言うのもまた、本当の事のはずだ。

 そう俺は考えながら真実が眠る扉が開くと言う山頂へと目指す事となったのであった。

*1
アルノサージュの世界の技術により改良されたボーダーⅡ。この小説内では退魔リボルバー「ボーダー」をモデルに一から作成した武装であり、尚且つアキュラは父の意思を継ぐ事も無くなった為、その決別の意思を示す事が動機で名前を変化させている。改良内容はロックオン時間の増加及び、ロックオン対象が二つに増加。そして出力及び銃口が単純に二倍となっている。二体にロックオンすれば二つの異なる銃口から必中のレーザーが同時に着弾し、一体にロックオンすれば異なる銃口から放たれる必中のレーザーはその一体に集中する。なお、ディヴァイドⅡの「Ⅱ」は単純に銃口の数がその理由だったりする。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。




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