【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる 作:琉土
なんだ、これは……。
「ようやく見つけた。バタフライエフェクト……。いや――」
やめろ……。
それ以上、先を言うな!
「ミチル……。俺の、たった一人の妹……」
『僕の疑似セプティマ機関も感じてる……カラダが無くても、心が流してる……、ミチルちゃんの涙……ぼくのチカラの
『
――そう、バタフライエフェクトとは、ライズの脳を生体パーツとして組み込まれた、神をも冒涜する、この世に存在する悪意の具現化その物。
あのような状態なのは恐らく、俺の世界の皇神でも研究されていた、
そして、あれ程までに肥体化した脳。
脳は頭蓋骨から開放されたまま生かされると、そのまま際限なく肥体化していくのだと言う。
それを考えれば、どれほどの時を、あの姿で、ライズは――
「今、俺が楽にしてやる……」
――待てイクス、お前、何をするつもりだ?
まさか、お前、お前は、ミチルを、ライズを……!
まだ、生きている。
ライズは、まだ生きているんだぞ!?
「ロロッ!! 光学迷彩を解除と同時にエクスギアを転送し、波動防壁を俺の全面に最大展開!」
俺の行動は、条件反射であった。
『……ッ! りっ了解!!』
本来ならば、イクスの行動が、正しい。
あのような姿にされて、ライズはどれほど長い年月を生きてきたのか、その苦痛たるや……俺には想像する事も出来ない。
あのような姿に変わり果ててしまえば、もはや死による幕引きこそが救いであると、いくら俺でも、
だが、それでも……。
護りたいと思う気持ちに、嘘などつけるものか!!
「……ッ!? 何故だ!! 何故攻撃が防げない!!」
『アキュラ君、落ち着いて、この世界では僕達は……!』
防げない理由も何も、この世界で俺達は干渉する事は叶わない。
そんな事、ここに来るまでに散々試してきたのだ。
出来ないのは分かっている。
それでも、反射的に体が動いてしまうのだ。
ロロも俺に落ち着けと言っているが、俺と同じように、現状持てる手段を全て用いてライズを護ろうとしている。
そして、そんな俺達を嘲笑うかのように、この世界は俺達に悪意を突きつける。
向こう側のロロが、ダークネストリガーを発動させ、その姿を変えた。
その表情は元々の暴走の力で苦しんでいるだけでは無く、早くライズの事を楽にさせてあげたいと言う、確かな想いがあった。
それに呼応するかのように、ライズを護る防壁が出現。
それと同時に、電子の謡精由来であると思われる大量のモルフォが出現し、イクスを迎撃しようとする。
それを、暴走の力で増幅されたスパークステラーによって防壁ごと薙ぎ払われる。
それによる余波で受けたダメージが、瞬く間に修復される。
それを見たイクスは、ライズを繋ぐ、恐らく生命維持に直結するであろう、束ねられた太いコードをロックオン。
そこに暴走したロロによって力が増幅されたオービタルエッジが舞い散り、切断される。
俺達は、そんなライズの前に、滑稽にも立ち塞がる。
いや、最初から立ち塞がっていた。
この世界に干渉出来ないと分かっていても、イクス達の行いが正しいのだとしても、俺達は立ち塞がり続けた。
だが、そんな俺達を嘲笑うかのように、イクス達による攻撃、そしてライズによる迎撃すら、俺達をすり抜ける。
『こんなの酷いよ……。こんなのって無いよ! もうやめて!! やめてよぉ!!』
ロロの悲痛な叫びも虚しく、イクスによる介錯が佳境を迎える。
障壁を再展開した後、ライズから
イクスはそれを回避し、障壁と黒モルフォに対し、それぞれロックオンレーザーによる攻撃と、増幅されたキスオブディーヴァによる攻撃がそれらを迎撃する。
そして――
「終わりだ、ミチル……!」
――イクスから放たれた一閃のレーザーが、ライズの生命機能を止める致命的な一撃となって放たれ……。
「……ミチル、長い間……、辛かっただろう……。せめて兄の手で眠れ……、安らかに」
バタフライエフェクトとしての活動を、停止した。
ライズの、イクスに対する感謝の文字と共に。
イクスがこの場から立ち去った後の暫くの時間、この場を動けなかった。
……俺達は、心の何処かで甘く見ていた。
この世界は、そんな俺達の甘さを指摘するかの様に、残酷に、その光景をまざまざと見せつけた。
そう、俺達には、圧倒的に覚悟が足りなかった。
俺達は、無力だった……。
『うぅ……。ライズちゃん……、ライズちゃん……』
ロロの嗚咽がこの空間を支配し、取り残された残骸が、この世界でお前達に出来る事は無いと突きつける。
既に引き起こされた悲劇を記憶した世界であるが故に。
だからこそ、俺達が何も出来ないのは当然であり、必然なのである。
そんな風に自分に言い聞かせ、この世界に干渉出来ないからだと、すでに起こった出来事だと、理屈で心を落ち着かせようとしても、俺の心の中は、様々な感情に荒れ狂う。
もっと何か出来る事は無かったのか?
何故このような悲劇が起きた?
あのような、誰もが苦しむ世界を管理する為に、ライズは弄ばれたのか?
憎い。
許せない。
納得が出来ない。
それ以外の形容しがたく、言葉にも出来ない様々な感情が、俺の理性を押しつぶしかけている。
……そんな時であった。
「……? あれは、何だ?」
イクスによって安らかな眠りを与えられた筈の、バタフライエフェクトだった物から、
それは、先の戦いでライズがイクスを迎撃する際に出現させた黒モルフォ。
その表情は、この世の全てを呪わんと、言葉も無く語り掛ける程に憎悪に染まり切っており、その瞳からは血涙が止まる事無く溢れ出ている。
そんな黒モルフォが両手を掲げると、その頭上に体中がズタズタに引き裂かれ、今にも消滅しそうなライズとおぼしき姿が現れ、天へと昇っていき……。
「
『そっか……、こうやってライズちゃんはマリィに救われて、デルタ達の世界で生まれ変わったんだね』
その見るも無残な姿であったライズを抱きしめ、その傷を癒し、黄昏の女神は自身が持つ権能を行使する。
その光景は、憎悪に塗れた黒モルフォですら、一時の笑顔を見せた程、安らかな物であった。
俺達も、同じようにその光景によって、心渦巻く様々な感情が解きほぐされ、落ち着きを取り戻していく。
そしてこの光景を最後に、徐々に回りの景色がぶれ始め、その形を失っていく。
干渉出来ない世界が終わりを告げ、この世界「両翼蝕む
その刹那――黒モルフォは笑顔であった表情を、再び憎悪に染まった物へと戻し、この場を飛び立った。
まるで、何かに導かれるかのように……。
そのような出来事の後、ライズの本当の世界が姿を現した。
「ここは……ッ! バタフライエフェクトが、
『えぇ!? じゃあ、今まで見てきた景色は何なのさ!?』
「……異なる世界のアキュラ様、ロロ、よくここまでたどり着きました。正直な話ではありますが、私も驚いております」
そこには、復元されたバタフライエフェクトを護るかのように前に立つ、ノワの姿があった。
「ノワ……。お前が、何故ここに?」
「私は、
『そんな! ノワもそうだったなんて……』
「……お前ならば、何だかんだと生き延びる事が出来ると思っていたのだが」
「……その当時、アキュラ様はライズ様が突如として
「ノワ……」
「その気になれば、ライズ様を見捨る事も出来たでしょう。ですが、私はライズ様の行く末を見守ると決意しているの
そうか……。
ノワならば、あの世界でも生きていたのかもしれないと思っていたのだが。
……いやちょっと待て、ノワの語尾に違和感があった様な……。
それに、「力尽き、倒れた」と言ってはいるが、「死んでいる」とは一言も言っていない。
俺の質問もさり気無く無視しつつ話を続けているのも、少し引っ掛かる。
つまり、ここに居るノワはもしや、元々精神世界内で構築された存在では無いという事になる。
「それでもせめて、攫われる寸前のライズ様の御心を護ろうと願い、私の力の残滓をかき集め、それを用いて私は深層意識に乗り込んだのDEATH。その後、私はライズ様の心の中を経由して、魂の根幹である深層意識の領域を護りつつ、その行く末を見守る事としましたDEATH」
『力の残滓って……。え、ちょっと待って? 話が急におかしくなったような……?』
「ロロ、その事についてはまた後で説明させてもらいますDEATH」
(先ほどから語尾がおかしいのも、それに関係しているのだろうか?)
「では、話を続けさせて貰いますDEATH。……その後、かつてフェザーの頭目であり、スメラギを手中に収めた「アシモフ」主導の元に、
『アシモフだって!? で、でも、僕達の知ってるアシモフならそんな事するはずが……』
「……いや、アシモフの過去を遡れば、その位やってもおかしくはない。彼は当時の皇神による、父さんが主導で行った人体実験の犠牲者だ。それを考えれば、こう言った事を仕出かしても違和感は無い」
「……アキュラ様、知っていたのDEATHか?」
「ああ、俺達の世界に居るガンヴォルトのお陰でな」
「ガンヴォルトDEATHか。……私達の世界での彼は当時、まだ皇神と呼ばれていた頃にあった施設「アメノサカホコ」にてアキュラ様との遭遇戦を最後に、姿を見せる事はありませんDEATHた。後にアキュラ様は、
「アシモフの手に掛かったとも考えられるな」
ともあれ、ライズの世界における必要な情報は集まり、おおよその俺達の疑問は晴れる事となった。
だが、別の疑問が浮かび上がってくる。
そう、ここに居るノワの事だ。
深層意識に乗り込むだなんて事、デルタ達の居る世界でも、シャールのような特殊な存在でもない限り、ダイブ屋を経由しなければならない。
それなのに、その当時瀕死であった筈のノワが、それを成している。
それに、先ほどから一部、語尾の発音がおかしい。
ノワ……、お前のそう言った、何所かおかしいと感じていた違和感を、俺はあえて無視してきたが、ここで向き合う必要があるようだ。
……そう言えば、ガンヴォルトが言っていたな。
「ノワの事で何か気になる事があったら、「謡精の眼」を用いて見てみればいい」と。
「……ロロ、波動の力を、俺の目に収束させてくれ。「謡精の眼」を使う。お前も観測モードを「謡精の眼」に変更してくれ」
『……? 別にいいけど』
「アキュラ様? ロロ? 一体、何をするのDEATH……」
こうして波動の力を目に収束させると、普段見えないはずの物が、見えるようになる。
ガンヴォルトはこの現象を、ノーマルスキル「謡精の眼」として扱え、俺も研究課程で、この効果を確認していた。
例えば、光学迷彩を施したガンヴォルトであったり、実体化を解いたモルフォであったりと、その観測能力には目を見張る物がある。
そんな「謡精の眼」を用いて、ノワの姿を見た俺達は、その姿に驚愕する事となる。
側頭部に黄色い螺旋状の角を生やし、背中に黒い……、そう、まるで悪魔の翼を生やす、ノワの姿を直視した事で。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。