【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる   作:琉土

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遂に前作と話数が並んでしまいました。


第三十七話

 改めて整理しよう。

 元々この世界に来たのは、ライズの記憶が飛ぶ事があったり、悪夢にうなされたりした事が切欠だ。

 それを解決する為に、ダイブや禊ぎを始め、様々な精神的な修行等を取り組み、結果としてライズの深層世界「両翼蝕む暗黒郷(ディストピア)」に突入する前に、この問題をほぼ解決する事は出来ていた。

 それが理由で、俺はライズにもうこれ以上ダイブしなくてもよいのではないかと話した事もあった。

 だがその過程で、ライズは元居た世界の自分の記憶を知りたい、強くなりたいと言う願いと、俺達のライズに対する根本的な心の問題を解決をしたいとの願いが一致した為、当初の予定通り、ライズの深層世界へと俺達は足を運んだ。

 そこでまず見せられたのは、ライズの前世であったミチルの居た世界の一部の光景であった。

 そう、管理AIを名乗るデマーゼルが、ジャイアントロロを大量に投下した所から始まり、バタフライエフェクトと化したライズが、この世界の俺であるイクスに撃たれるまでの、そんな残酷な光景を。

 それが終わり、この世界の主であるバタフライエフェクトと化したライズを中心に出来た、能力者と無能力者所か、ライズ本人も過去の記憶によって苦しめられ、そんなライズを護るノワ(くろな)すら苦しんでいると言う、正に無限地獄とも言える様相を呈するこの世界が、俺達の前に立ち塞がった。

 

「ノワ、この世界の問題を解決する根本的な方法が分かった」

「本当DEATH(デス)か!?」

「ああ、この世界は憎しみや苦しみによって世界が満ちている状態だが、その大本は電子の謡精(サイバーディーヴァ)の意思の影響を受けたライズ本人だ。この意志の影響は、元々あった本人の意思とも同調した極めて強固な物だが、見せられた世界の最後に出てきた黒モルフォの事を考えれば、今は電子の謡精の意思の影響を受けていないと十分に考えられる。今ならば、何らかの方法でライズの憎しみや悲しみを如何にかして鎮めるなり消すなりすれば、この世界の問題は解決するはずだ」

「それが出来れば苦労は無いDEATH。その位の事は、くろなにも思いついていたDEATHから」

「だろうな。そんな姿になってしまっているが、ノワが優秀なのは俺が一番良く分かっている。だが、今は状況が違う。これまではお前一人だったが、今は俺とロロが居る。それでもダメなら、俺の世界に居るノワを始めとした、俺の仲間達が居る。方法はあるはずだ」

「アキュラ様……。そうDEATH! 今まではくろな一人だったけど、アキュラ様とロロが居るなら、実行できる方法があるDEATH!」

『え、くろなちゃん、それ本当なの?』

「本当DEATH! この方法は、下手をするとこの世界が崩壊してしまう危険性があるのDEATHが、くろなを見破り、ここまで来れたアキュラ様とロロなら、きっと実行できる筈DEATH!」

 

 その具体的な手段は二つの方法を用いた物。

 先ずは一つ、()が力の源である天使の力、或いは退魔の力を用いて、ライズの憎しみや悲しみを打ち消す事が一つ。

 そしてもう一つは、ノワの持つ悪魔の槍を経由し、ライズの憎しみや悲しみを一手に引き受け、その感情を「ダークパワー」と呼ばれる悪魔の力の源に変換すると言う方法だ。

 ただ、この二つの方法は当然の如く問題があった。

 天使の力や退魔の力の方は言わなくても分かるように、そもそもそう言った物を備えた装備がこの場には無い。

 そしてもう一つの方法も、また問題であった。

 それは余りにもダークパワーが多すぎると、ノワ本人が暴走する危険性があり、下手をするとノワの暴走によって、この世界が崩壊する危険性まであるのだと言う。

 この話が出るという事はつまり、ライズの憎しみや悲しみは、そんなノワの許容量を大きく上回る程に巨大であるという事に他ならない。

 その上、弱体化の影響で一度感情をダークパワーに変換する工程を始めてしまうと、その流れを止められない欠点も有している。

 

「ならば、先ずはノワを完全な状態に回復させる事が先決ではないのか? そうすれば、槍を使う方法の安全性が高まる筈だ」

「それをすると今度は、くろながこの世界で異物扱いされて、ライズ様に天魔覆滅されるDEATH。それを知らなかったくろなは一度、回復する事に専念していたのDEATHが……」

『ああうん、くろなちゃんの変わらない姿を見れば、その後の展開が予想出来ちゃうね』

「あの時は死を覚悟したDEATH……話を戻すDEATH。正直に言うDEATHが、くろなはアキュラ様に撃たれる覚悟はあるDEATH。それが切欠で消滅してしまったとしても、くろなは悔いも後悔も無いDEATH。ですが、ライズ様の安全を考えると、おすすめ出来ないDEATHし、本末転倒になる危険性が高いDEATH。それに、この方法を方法をする際に何よりも問題なのは、アキュラ様本人の装備が問題DEATH」

「……何?」

「アキュラ様の装備は高速機動を前提とした物DEATH。くろなの世界のアキュラ様と違って、小型とは言え盾としてエクスギアを装備してるDEATHけど、根本的な所は変わってないDEATH。それに、今のライズ様はバタフライエフェクトと言う世界の主として存在しているDEATH。人の姿だったライズ様と違って、守る範囲が明らかに違うDEATH」

『そっか……ノワを相手にすると、そう言ったリスクもあるんだね……』

「……ノワ、装備については一応の当てはある。一度見て欲しいのだが」

「それはいいDEATHが、戦い方もちゃんと習熟してるDEATHか? 装備が良くても、技術が伴わないと付け焼刃もいい所DEATH」

「そうだな。一度それを確認してもらう必要があるのは確かだ。この場でやっても大丈夫か?」

「少しライズ様から離れて、()()()じゃれ合うだけなら大丈夫DEATH」

 

 ライズの深層世界に突入する為に必要な修行等を行っていた最中、サーリ達との協力で、()()()()()()()()()()()()()()()()()をベースに改良を施したプロトタイプの新たな強化ジャケットの開発を行っていた。

 これはデルタとキャスの戦い方を参考にしており、簡潔に言えば「紡ぎ手」の守りに特化した装備。

 つまり、防御に特化した装備だ。

 機動力を必要最低限残し、その分得られたリソースを護りに特化。

 エクスギアも以前の物と比べてより大型化した上で、重量は従来の物と変化していない。

 その代わり、EXウェポンを使用する機能を完全にオミットし、ブリッツを用いた不可視の障壁(バリア)による防御も可能。

 それ以外にも、()()()()()も追加されているが……、それは今回使う事は無いだろう。

 武器はディヴァイドⅡのままであるが、追加のアタッチメントによる新機能で、近接時にビーム刃を展開する事で近接戦闘にも対応。

 それ以外の機能も当然あるが、これはエクスギアのとある機能と連動した物である為、同じく使う事は無いだろう。

 後はフラッシュフィールドは紡ぎ手を護る範囲まで効果を拡大し、対してEXウェポンは変化していない。

 そしてフェイクカゲロウは発動時、紡ぎ手も対応する効果を持たせているが、エクスギアの機能も含めて、ブリッツの消費は激しくなってしまった。

 その欠点を補う為にブリッツに込められるエネルギーの増加を図り、結果的に各種武装の使い勝手は体感でヴァイスティーガーの物と変化が無い程度にまで抑える事に成功し、結果的にヴァイスティーガー時のブリッツを扱う武装の能力の向上まで影響が及んでいる。

 そして、俺自身が重武装になったお陰でH-ブレイザー使用時の安定性が増し、通常の戦闘時でも十分に運用が可能になる位使い勝手が向上した。

 その代わり、当然だが機動力が完全に犠牲となっており、思い切って壁蹴りやブリッツダッシュの機能は完全に削除。

 その代わり、近接戦闘時の立ち回りに関しては強化されており、紡ぎ手を守る為に必要な最低限の機動力は確保されている。

 

「……分かった。ロロ、武装を変えるぞ!」

『了解! 武装変更(アームドチェンジ)()()()()()()()!!』

 

 その姿は嘗ての俺が運用していた装備である、メガンテレオンと見た目は変わりない。

 だが、エクスギアの大型化、そして追加のアタッチメントを装着したディヴァイドⅡによって、その印象は大きく変わる。

 デルタやガンヴォルトにその時の俺の姿に対して意見を求めたが、答えは一言で表せば、物語の中によく出てくる「騎士」であると称された。

 機能と見た目も含め、正しく「守護者」として相応しい装備として、メガンテレオンは生まれ変わった。

 

「その姿は……。なるほどDEATH。ライズ様を護り、その力を最大限に引き出す為の装備DEATHね?」

「その通りだ。ヴァイスティーガーは俺単独で動く際には申し分ない装備ではあるが、誰かを護るのには、お世辞を入れても向いているとは言えん。だからこそ、俺はこいつを改良し、再び表に出す事にしたという訳だ」

 

 俺とノワはこうして互いに()()()()()()()会話をしているが、メガンテレオンは予定通りの機能を発揮している。

 そう、ノワは俺が武装を変更した直後を不意打ちし、そこからなし崩し的に今の組手が始まってしまったのだ。

 そのせいでロロは動きを止めてしまい、その為のフォローに俺が動く事となった。

 勝敗のルールは口では語っていないが、ロロを狙っている様にノワは立ちまわっている為、恐らくロロを一定時間守る事が条件だと予測し、これに対応。

 ノワの持つ槍を用いた攻撃に加え、悪魔の力を利用したエネルギー弾による、俺にとっての初見の攻撃等も何とかさばき切り、結果としてロロを護り通すことが出来た。

 

「不意打ちにも対応出来たDEATHか。向こうのくろなも、平和ボケしてる訳じゃ無いと知って安心したDEATH」

「ふぅ……。こう言った不意打ちは抜き打ちで行われる事が何度かあったからな」

『び、びっくりしたよ、くろなちゃん。うぅ……こういう所は僕らの世界のノワと変わってないんだなぁ』

「で、俺の装備と立ち回りは問題無いか?」

「そうDEATHね……。確かに今の段階でも護りは問題無さそうDEATHが……今度は攻撃力不足が目立つDEATH。だから、今必要なのは決定力DEATH。具体的には、くろなのダークパワーに対抗する何かが欲しいDEATHね。出来れば天使の力か退魔の力、もしくはそれに準ずる力が欲しいDEATH」

「……俺の持つ銃ではダメなのか?」

「んーとDEATHねぇ……。アキュラ様、その銃、ちょっと空に撃ってもらってもいいDEATHか?」

「構わんが……」

 

 俺は分厚い雲に覆われている空に向かってディヴァイドⅡによるレーザーを放った。

 それを見たノワは、何やら確信を得た様に俺に再び話しかけた。

 

「凄いDEATH! どういう訳かその銃から放たれたレーザーから、天使の力に近い何かを感じるDEATH!」

「何だと……。それは一体どういう事だ? 少なくとも、俺はそう言ったオカルトめいた要素はこの銃に組み込んで無いぞ」

『……そういえばくろなちゃん。天使の力とかってさ、愛が力の源なんだよね?』

「その通りDEATH!」

『僕達が今いる世界ってさ、アキュラ君の仲間の白鷹が言うには、この世界は「愛で出来た世界」だって言ってたんだ。だから……』

「……ッ! つまりそう言う事か。この世界の物質を用いて俺の装備を改良した結果として、そう言った力が俺の武装に宿るようになったと」

『そう言う事! そう考えると、僕の使うEXウェポンや詩魔法も通用しそうだよ!』

「なるほどDEATH! これならくろなのダークパワーにも対抗できる可能性が出てきたDEATH!」

『じゃあさ、作戦を早速実行してみる? 条件は偶然だけど整ったんだしさ』

「……あくまで可能性が出来ただけDEATH。ダメ押しに何か、後幾つか手段が欲しいDEATH。万が一の失敗は出来るだけ避けたいDEATHから。何か無いDEATHか?」

「……流石に現状ではこれで品切れだ。一度戻って仲間と相談して、何か対策が無いか尋ねるとしよう」

 

 その後、俺達は一度この世界から脱出し、一度皆に集まってもらい、ノワの事をぼかしつつこれまでの事を話し、何か手は無いかを尋ねた。

 それに対して皆は、待てましたと言わんが如く、様々な手段を俺達に授けてくれた。

 

「そうなると……先ずは「フレンド技」が扱えるようになる、この端末をアキュラ、君にも渡そう。それに入ったデータをロロに入力すれば、僕はいつでもどこでも、一時的に君達を助けることが出来る」

「フレンド技?」

「要は簡易的な詩魔法みたいな物さ。「ソレイルの防衛機構をハッキング。火器管制システムにアクセスして絨毯爆撃を行う」と言う設定の「セイバーパトリオット」を、戦闘中一度だけ使えるようになる。上手く活用してくれ」

「アキュラ、僕からはこれを渡すよ。イオンと協力して調合した一品で、名前は「真なる聖剣」。僕のSPスキル「グロリアスストライザー」を戦闘中一度だけ任意に発動させることが出来るアイテムだ。上手く使って欲しい」

「アキュラ君……。もしかしたら、私の持ってるこの鈴が、役に立つかもしれない。だからこれを使って、ライズちゃんの事を助けてあげて」

「すまない、サーリ、ガンヴォルト、ミチル」

「どういたしまして、アキュラ君。……それとロロ、私とチェインしよう? そうすれば、私の持ってる詩魔法が使えるようになるはずだから」

「序だ、俺ともチェインしてくれ。俺には詩魔法を使う予定はねぇからな。どうせなら、有効に使ってくれ。キャスもロロとのチェインなら納得してくれるさ。そうだろ? キャス」

「まあ、ロロだったら許してあげる。じゃあ、私からも初期の詩魔法だけど、貸してあげるわ。私とデルタが最初に創った詩魔法で、効果もあまり高く無いけど、他の詩魔法と違ってリチャージの必要が無いから、他の詩魔法が使えなくて、それでも謳わなきゃいけない時に使ってあげてね」

「……ロロ、詩魔法はキャスティの物だから貸してあげられないけど……俯瞰視点なら、貸してあげられるわ。だから、有効に使って」

『ありがとう、ミチルちゃん、デルタ、キャスちゃん、ウルゥリィヤ(ネロ)ちゃん!』

『私達からは……。うん、一時的に()()()()力を多くロロに流すね』

『このくらいでいいかしら……? どう、ロロ?』

『うん! 助かったよ、シアンちゃん、モルフォ! この位なら、僕も何とか扱えそうだよ!』

 

 それ以外にも、タットリアからは各種回復アイテムを、白鷹からはサーリと同じようにフレンド技として「デスサーキット」を、カノンからは補助機能を持ったアイテムを授かった。

 ……流石にここまで手段が増えるとは俺も予想外であったが、ライズの深層世界の問題を解決する為の、大きな一歩になるのは間違いないだろう。

 そして、遅れてこの場にやって来たイオンが、ライズにとあるアイテムを渡した。

 

「ライズちゃんは、これを持ってってね」

「これ……「リインカーネーション」? でもイオン、これは皆が苦労して調合したアイテムだって……」

「いいんだよ? ライズちゃんのお話を聞いた時にね、これが絶対に必要になるって私は思った。だって、「悲しみを打ち消すエネルギー」が込められてるんだよ? だから、これはライズちゃんに使って欲しいの」

「そうだね。少なくとも、お守り代わりにはなるんだから、持ってたって損は無い筈さ」

「持ってけよ。そもそも、それを頼る事を前提にするつもりは無いんだろ? アキュラ」

「当然だ。この手の奇跡に頼るのは、本当にどうしようもない時だけだ。今回は、皆の力を借りられるからな。これに甘えるつもりは無い」

 

 そうして俺達は皆から多くの支援を受けた後、この場を立ち去り、ライズと共にダイブ屋へと向かったのであった。

 そこで待つ俺の世界のノワが、俺と因縁深い「ある銃」を携えながら待っている事も知らずに。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。






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