【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる 作:琉土
世界を捻じ曲げ弄び、悦に浸り暴走する雷を纏いし悪魔
生じた悪意は、異なる今を生きる
そのダイブ屋の前に、見知った人物が立っている。
そう、あの場に居なかった、俺の世界に居るノワだ。
少し話す時間が長くなりそうだったので、俺はライズに先に行ってダイブの準備を行う様にお願いし、ダイブの準備が終わるまで、俺達はノワと会話をする事となった。
そんなノワなのだが、俺達に対して
「これは……「ボーダー」。それに、この弾丸は……」
「アキュラ様、話は聞かせてもらいました。……ライズ様の中で、
「……その通りだ、ノワ。そして、お前の正体も……な」
「……向こうの私は、どうやら修行が足りていなかったみたいですね」
「いや、そんな事は無いぞ、ノワ。今のお前の
『うん……。僕の場合、スペクトラム解析機能のお陰で自動でノワの事、看破しちゃってるし。……でも、弱体化してないノワって凄いよね。何て言うか、本当に「傾国の誘惑者」の二つ名がしっくりくるって言うか……』
「……話を戻します。そちらの状況は把握しています。ならば、ガンヴォルトから一時的に返却してもらったこの「退魔リボルバー」ボーダーが本来の役割を持って、必ずやアキュラ様のお役に立つ事でしょう。そしてこの、
「……侍女長と叔母上に頼んだのか」
「ええ、あのアホ天使に頭を下げるのは、いささか腹が立ちましたが……。異なる世界のミチル様であるライズ様、そして私の為ならば協力は惜しまないと、二人はそう、おっしゃっていました」
「そうか……。有難く受け取っておこう。……必ずライズの心の闇は晴らす。朗報を待っていろ、ノワ」
「……ライズ様と向こうの世界の私の事を、どうかよろしく願いいたします。……ご武運を、アキュラ様、ロロ。」
こうしてノワの見送りが終わり、俺達はいよいよ、ライズの深層世界「両翼蝕む
「もう一度手順をおさらいするDEATH。まず、くろなの今持てる力を使い切って、外部から反乱を企てる人達が入り込まない様に、そして、ライズ様をくろなの暴走の余波から少しでも守る為に、物理的な防壁を展開するDEATH。その後、くろなは悪魔の槍を使って、ライズ様から憎しみや悲しみ等の感情を一気に引き受けますDEATH」
『それと同時に、くろなちゃんがライズの感情を取り込んでいる最中は身動きが取れないから、この間にどんどん増大していくダークパワーを僕とアキュラ君が少しでも多く削る』
「その後、ノワは間違いなく暴走を始める。その余波から俺達がライズを護りつつ、ノワに宿るダークパワーを相殺しきればミッション達成だ。……だが、本当に大丈夫なのか、ノワ?」
この方法はライズの身の危険性が大幅に減り、かつ分かりやすく心の闇を晴らすメリットがある。
だが、その分ノワに対する負担が大きい。
ライズの安全を確保し、心の闇を取り込み、浄化しやすい形の力に変換し、俺達の攻撃を一手に受けるのだから。
だから、他に方法が無いか作戦前に色々と俺達で試していた。
例えばライズに声を掛けたり、話をしてみたり、世界から追い出されない範囲で色々と試した。
だが、バタフライエフェクトと化したライズは、憎悪の想いでこの世界の人々を苦しめる思考に完全に支配されており、俺達の言葉と想いが届かない。
その理由は極めて単純だ。
これをノワに指摘された時は俺もロロもふざけるなと思った物だが、その説明を聞いて、改めてあの世界のアシモフ……いや、管理AIデマーゼルに対して憤りを強く感じた物だった。
そもそもライズは、百年以上あの姿のまま恒久平和維持装置として無理矢理生かされてきた。
全世界の能力者達を監視、コントロールする為の道具として。
つまり、その性質上
この説明を受け、理解
納得なぞ微塵も出来ないが。
むしろそんな状態でも、向こうの世界の俺であるイクスの事を認識し、死を求めるだけの意志を残していた事は驚嘆に値する。
ならば他にも世界中を探し回り、何か有効な手立てが無いか探したが何も無く、結局この作戦以外に選択肢しか無かった。
「大丈夫DEATH。悪魔は地上に生きる人間よりも、ずっと精神的に頑丈なのDEATH! だから、アキュラ様とロロはくろなを信じて、ライズ様をお護りしつつ、思い切ってぶっ放せばいいのDEATH!」
「………………分かった。信じているぞ。必ずライズを心の闇から救い出し、その上で、
『了解! 翼戦士「獅子王旋迅」、詠唱開始するよ!』
『おぅおぅ、まさかこうして、イクスに玉っころと共闘する事になるとはのぅ!』
ロロの詩魔法詠唱により、
これを合図に、ライズを救う為のミッションが始まった。
当初の予定通り、ノワが持てる力を振り絞り、俺達がライズを護り通す為の防壁が周囲に、そしてライズの周囲にも展開される。
そして、ノワが悪魔の槍の石突きの方をライズに向け、ライズの持つ悪感情を引き出し、ダークパワーに変換する工程が始まった。
その変換速度は、「謡精の眼」を経由しながら観測しているが、俺達の予想よりも遥かに早く蓄積され始めている為、ディヴァイドⅡで攻撃を始めつつ、ロロのビットの一部を拝借し、EXウェポンの一斉攻撃を慣行。
それと同時に、ロロから放たれるバクトの螺旋の能力が元となった追撃とサポート攻撃の合間に、カノンから貰った補助アイテムを使用。
その後、白鷹のフレンド技「デスサーキット*1」を使用しつつ、俺は攻撃を続けているが、謡精の眼を経由した視界では、俺の目から見ても明らかに危険であると分かる程のどす黒い力の奔流となって、ノワを包み込んでいた。
「あ…アキュラ様、そろそろ、くろなは、限界、DEATH……。だけど、もう、少しで、ライズ様から、憎しみや、悲しみ、を、取り、除く、事が、出来る……DEATH。いい、DEATH、か? 必ず、ライズ様、の、こ、と、を、ま、も、る、の……DEATH……よ……」
「ああ、ノワは良く頑張った。後の事は俺達に任せろ」
「は……い…………DEATH………………DEATH、DEATH、DEATH! KILL、KILL KILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILL!!!!!!」
「……ッ!! ロロ、詩魔法発動!! ライズからノワを引き剥がせ!!」
『了解! バクトさん、お願い!!』
『任せろぉ、玉っころぉ! ……これぞワシの道ィ!』
――転遷が生む螺旋の流線 降誕双つ混沌の回転 仁義の許より向かうは極道
『ぶっ飛びやぁ!
バクトの能力「
ライズの悪感情を引き出し切ったノワを、左右から放たれる巨大な螺旋の力が吹き飛ばす。
その威力は最初に試し撃ちした時よりも遥かに威力が増しており、それはモルフォ達から一時的に多く供給された力、そしてネロの俯瞰視点の強さを物語った。
それと同時に俺達は予定通りライズを背に、背水の陣でノワに挑む事となる。
『俺ぁここまでじゃあ。 ……負けんなよ? イクス、玉っころぉ』
『もう! 僕は玉っころじゃないってば!』
「ああ、お前に言われるまでも無い。必ず、俺達が勝つ」
そう、ここからが本番だ。
俺達は暴走を開始し、無差別に力を振り翳そうとしているノワから、バタフライエフェクトと化したライズを護らなければならない。
俺は改めてディヴァイドⅡとエクスギアを構え、濃密な力が凝縮されたノワに対して構えを取る。
「配置についたな、ロロ? 次に使う詩魔法は【翼戦士「復撃のアルタイル」&「重力井戸のスダルシャナ」】を頼む。あの状態のノワが、何をしでかすか分からないからな」
『了解! 続いて翼戦士「復撃のアルタイル」&「重力井戸のスダルシャナ」の詠唱開始するよ! アキュラ君も、しっかり僕とライズちゃんの事、護ってよね?』
「当然だ。ここまでおぜん立てされた以上、無駄にはしない!」
二度目の詩魔法詠唱により、バクトと同じく変身現象を引き起こしたダイナインとインテルスが姿を現す。
『まさか、この様な形でお嬢様と共に戦える日が来るとは……』
『ふふ……こうやって手ぇ取り合うのも、悪ぅ無いなぁ、ダイナイン。……さぁ、気ぃ、入れてこか? 折角玉っころが用意してくれた、ウチらの晴れ舞台や。気持ちよく暴れさせてもらうで!!』
『了解です、お嬢様。 ……異なる世界のロロ、そしてイクス。こうしてお嬢様と共に一時的ではありますが、共に戦える機会をお与えくださり、感謝しています。この御恩、決して忘れません。……私はガルガンチュア謹製、お嬢様付きの万能秘書ヒューマノイド・ダイナイン……。推して参る!』
この二人が姿を現した事が引き金になったのか、ノワは本格的な暴走を開始した。
俺の視界を埋め尽くすほどの魔弾を形成し、それを無軌道にばら撒く。
それに対し俺はエクスギアのバリア機能をブリッツを用いて起動し、そこに魔弾が殺到。
まるで空爆の如く俺達に降り注ぎ、その圧力がエクスギアを通じて伝わってくる。
それ以外にも、魔弾によって飛び散った破片もいくつか迫るが、これはフラッシュフィールドで対処。
何とかこれを凌ぎ、俺達は反撃を開始した。
まず、エクスギアのバリア以外の新機能「カウンターロックオン*2」が発動している事を確認。
それを元に返す刃として、俺のディヴァイドⅡからそのロックオンされた数だけ、絶対必中のレーザーを放つ。
この際、エクスギアで防いだ衝撃がそのままエネルギーに変換され、ディヴァイドⅡに追加したガジェット経由で威力を上乗せできる為、その威力は折り紙付きだ。
それと同時にロロによるダイナイン達の
それらは正しく浄化の力として作用し、確かに彼女の持つ力を削り取った。
だが、それは今のノワが持つ力の氷山の一角をなんとか削り取ったに過ぎない。
とは言え、今のままノワが魔弾を生成し続けたまま暴走が続いたとするならば、時間はかかるがこれだけで浄化する事も出来ただろう。
(……今の所、事は順調に進んでいる。今も謡精の眼を通じてノワの持つ力を観測しているが、少しずつ、確実に削り切れている。このまま上手く事が済めばいいのだが……ッ! やはり、そう上手くはいかないか!)
ノワが放つ魔弾が止み、力を槍に収束させ、俺目掛けて突っ込んで来たのだ!
これが横からであったならば、もしくはライズがバタフライエフェクトでなければ正面からカゲロウで受けても……いや、確かガンヴォルトは意志の乗った攻撃は防ぎきれないと言っていたな。
よって、これに対し俺は即座にマズイと判断し、ブリッツを全消費してエクスギアのバリアを最大出力で展開し、何とか受け止める事に成功したのだが……。
(このままでは押し切られる! ならば……力を借りるぞ、ガンヴォルト!)
それは俺のライバルであり、仲間であり、友である蒼き雷霆から譲り受けた力。
奴の持つ聖剣の、真の力が解き放たれた、
それを放つために俺は譲り受けた「真なる聖剣」の撃鉄を起こし、炸裂させたのであった。
この一撃が、今の戦況を覆す事を信じて。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。