【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる   作:琉土

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第三十九話

――掲げし威信が集うは切先 夜天を拓く雷刃極点 齎す栄光 聖剣を超えて

 

「受けろノワ、俺の友である、真なる蒼き雷霆(ガンヴォルト)の一撃を! グロリアスストライザー!!」

 

 真なる聖剣の切っ先が、ノワに迫り、彼女が纏う力のオーラと衝突し、その力を大きく削っていく。

 その削れ具合は当たり方が良かったのもあり、ノワの暴走の力を大きく削いだ。

 更に畳みかける様に、ロロに詩魔法の発動を指示した。

 

「今だロロ、畳みかけろ!」

『了解! インテルスさん! ダイナイン!』

『いいタイミングやなぁ。ウチに合わせや、ダイナイン』

『お任せください、お嬢様』

 

――夢破れた秩序なき墓 鋼の遺物たちが目を覚まし 踏み入るものを包み砕く

 

『取って置きや……グラヴィトン・スクラバイター!!』

 

 インテルスの重力によるSPスキルによって、周辺の瓦礫がノワを中心に集まり、圧縮し、炸裂させ、その分だけ暴走の力を削ぎ落す。

 それを何度か繰り返した後、ノワの頭上に無人戦車すら容易く引き裂く程の巨大な円月輪を二つ出現させ、叩き落した。

 

『お代わりや! ……ダイナイン、後は任せたで!』

『了解です、お嬢様!』

 

――悲劇の終わりの始まりに 深更の幕が下ろされて 全ては闇に染められる

 

『スキルスタンバイ……光無き世界(シャットザワールド)!! ――お覚悟を!』

 

 ダイナインの偏向布巾によるSPスキルが発動し、巨大な円月輪のあった場所に居たノワに対して偏向布巾で生成されたであろう超大型の布が、彼女を拘束する。

 その後光の剣を構え、神速の速さで切り刻み、最後に一刀両断。

 

『ほな、ウチらはもう行くで』

『ロロ、イクス……貴方方のご武運を、お祈りいたします』

『ありがとう、インテルスさん、ダイナイン!』

「ああ、ロロの世界で二人仲良く、吉報を待っていろ」

 

 インテルスとダイナインのコンビネーションが再現された詩魔法により、更にノワの暴走の力は大きく削がれた。

 そのお陰で、戦況は大きくこちらに傾いた。

 実際、ノワの纏っている暴走の力は当初の頃より半減。

 これならいける。

 そう俺は判断していた。

 それがいけなかったのだろう。

 ノワの現実ではありえない行動に、俺は驚きのあまり声を出す事が出来なかった。

 

『えぇぇぇッ! くろなちゃんが分裂して、小さなくろなちゃんが一杯出てきた!』

「「「「「DEATH(デス)、DEATH、きるぜむおーるDEATH!!」」」」」

 

 ノワが突如デフォルメ化した外見をした小さなノワに、大量に分裂したからだ。

 それと同時に、そんな大量の小さなノワ達が、その見た目に反する力を用いて無軌道に辺り一面に散らばり、魔弾を形成したり、その一部がまるで魚群を思わせるような軌道をして俺達に迫ってきたりとランダム性が激しく、俺達は一気に護りに転ずる事となった。

 今はまだ小さなノワ達の行動が無秩序なお陰で何とかなっているが、何時ふとした拍子に何をしでかすか分からない為、身動きが出来ない。

 このままでは……、いや、落ち着け。

 よくよく考えればストラトスの能力のそれに近い事をしているだけだ。

 ノワが悪魔だからと、変に身構えるな。

 俺の周りに居る、第七波動(セブンス)能力者達を思い出せ。

 

(何とかパニックにならずに済んだが、あの状態のノワ達がもし全て殺到したら、今のままでは何も出来ずに押し負ける。ロロもこんな状況では詩魔法を謳う集中力を維持するのも難しいだろう)

 

 そういう訳で、今はロロも詩魔法では無く数を減らす事を優先してもらい、EXウェポンによる迎撃に専念してもらっているが、焼け石に水もいい所だ。

 どう切り抜ける?

 ……そう言えば、まだサーリから譲り受けた「フレンド技」が残っている。

 アレの性質上、今の状況は正にこれを使う絶好の機会の筈だ。

 

「サーリ、力を借りるぞ! 「セイバーパトリオット」起動。少しでも数を減らす!」

『漸く僕の出番だね! ――システムブート、プログラムリンク確認! 僕の力に耐えられるかな?』

 

 ソレイルの防衛機構より放たれる絨毯爆撃によって、小さなノワ達がその爆風と煙に包まれた。

 これで隙を作り、ロロに詩魔法の詠唱を再開させれば……ッ!?

 

「何ッ!? くそ、エクスギアが!」

『アキュラ君!』

 

 煙の中から投擲されたであろう悪魔の槍が、エクスギアを貫いた。

 それと同時に、元に戻ったノワの姿が現れるが……。

 

「人間、憎い、憎い、DEATH! ライズ様、苦しめる、人間共、皆殺し、DEATH!」

 

 セイバーパトリオットの一撃で、遂に最初の戦闘時よりも闇の力が剥がされてきたのだが、ここに来て新たな問題が発生した。

 これまでのノワは力の暴走で、辺り一面に力をばら撒く程度しか出来なかった。

 それが力が弱められ、何とか理性を得るか得ないかと言う、境界線付近に差し掛かった事で、先の攻撃の様に精度が従来のノワと、何ら差し支えない状態にまで回復したのだ。

 そう、あの状態のノワは、ライズの世界で見せられた暴走したブレイドの様な状態に近い。

 とは言え、そのお陰で狙う対象が俺に固定されたのは不幸中の幸いであった。

 少なくとも、ライズを背に戦う必要は無くなったからだ。

 俺はディヴァイドⅡに付けられていたもう機能する事の無いアタッチメントを外し、そのままレーザー攻撃をしつつ移動し、ライズが巻き込まれない様にノワを誘導。

 それに対して、ノワは魔弾による攻撃を慣行。

 数は減ったが、その分追尾性能や速度等が増したその攻撃に、俺は多少の被弾を余儀なくされた。

 とは言え、そこは移動しながら「ヒーリング」やタットリアから譲り受けた回復アイテム等で凌ぎ、打開策を考えていた。

 しかし、エクスギアを失った上に、ノワの俺に対する攻撃が苛烈さを増したせいで、ヴァイスティーガーに武装変更(アームドチェンジ)する隙すら見出せず、遂に俺は追いつめられてしまう。

 

「追いつめたDEATH、人間! ライズ様を苦しめる人間は、皆滅びるDEATH!!」

 

 俺を追いつめるまでに力を使ったのが理由なのか、ノワの喋り方が流暢な物へと変化している。

 これまで減らせた暴走の力は、「謡精の眼」経由で見る限り、ノワが行動を開始してからなんとか三分の二までは減らせた。

 だが、今のノワには隙が無く、まだ温存している切り札を出すことが出来ない。

 そんなノワの姿に、俺はある親近感を持った。

 それが何なのか、俺は覚えがあった。

 

(その眼、その表情……。嘗て、鏡越しに俺がミチルを撃とうとした時の物と同じ。……嘗て俺が仕出かした罪を、こうして因果が巡ると言う形で実感する事になるとはな)

 

 ……俺はここまでかもしれんが、せめてノワを正気に戻すのだけは為さねば。

 幸い、ノワはロロを狙っていない。

 だから、ノワが俺に飛びついた所をロロに任せれば――。

 

「終わりDEATH、人間!!」

『アキュラ君!!』

 

 ――ノワの持つ、悪魔の槍が迫る。

 少しづつ、少しづつ迫って来る。

 それと同時に、今までの思い出が頭を過り、グルグルとその光景が映し出されていく。

 この現象は……。

 これが、走馬燈と言う物なのだろう。

 俺は何とか打開策を練ろうとしながら、その光景を見る事しか出来ず、ノワの槍が俺を捉え――。

 

「……!!」

『これ、電子……結界(サイバー……フィールド)?』

 

 捉える事は無かった。

 俺の眼前に出現した電子結界が、ノワの槍を防いだからだ。

 この電子結界は、電子の謡精(サイバーディーヴァ)の力を利用した結界。

 この世界で、こんなことが出来る存在は唯一人。

 

 

 

ア キ ュ ラ ク ン

 

 

 

ア キ ュ ラ ク ン ハ

 

 

 

ワ タ シ ガ

 

 

 

ワ タ シ ガ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺達が今までこの戦闘が始まって以来、ずっと護っていたバタフライエフェクトと化したライズ。

 そんなライズを中心に、この世界の闇を割く程の光が溢れる。

 藍色の、絶望を飲み込む程の大きな光が輝きだす。

 その光はこの世界の全てを照らし、それと同時に、今まで受けた俺のダメージが癒される。

 暴走したノワは突如として発生したその光に目を眩まされ、狼狽えていた。

 その隙に、俺はロロに武装変更を指示し、メガンテレオンからヴァイスティーガーへと装備を変更。

 俺達は態勢を整え、ブリッツダッシュでその光の中心へと近づき、それを背にノワと改めて対峙する。

 それと同時に左手にディヴァイドⅡを、そして右手に天使の力と退魔の力が込められた弾丸が装填されたボーダーを装備。

 呼吸を整え、構える。

 やがてこの光は収縮し人の形となり……。

 

 

「私が、アキュラ君を護るんだからぁ!!!」

 

 

 俺達の知っている、シャールであるライズの姿が現れたのであった。

 俺達を護る為だけでは無く、暴走するノワを助け、その元凶である自身の闇の心と対峙し、大祓(おおはらい)を成す為に。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。






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