【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる   作:琉土

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第四十話

 俺達が戦闘をしている最中、作戦開始前のノワが形成した物理的な防壁は既に破壊されつくし、世界の主であったバタフライエフェクトと化したライズが元の姿に戻った影響で、防壁外に居た全ての人々がこの場に殺到し始めている。

 大気を振るわせるほどの怨嗟の唸り声と共に。

 時間が経てば、この人々達はライズを傷つけ、滅ぼそうとするだろう。

 何故なら、ライズがこの世界の人々を苦しめていた元凶であったから。

 ……状況を考えれば絶体絶命と言ってもいい。

 暴走しつつ、それでいて理性を維持した状態のノワも居る。

 なのに、これは一体どういう事だろう。

 

「アキュラ君、イソラちゃん達を呼ぶ詩魔法行くよ! ちゃんと護ってくれるって、信じてるから!」

「……ああ、必ず護る」

 

 まだライズは本格的に詩魔法を謳っていないのにも関わらず、負ける気が全く起こらない。

 この感覚を、どう説明すればいいのだろう。

 まるで、一心同体にでもなったかのような……、その様な感じの一体感と安心感と言えばいいのだろうか。

 ……キャスを護るデルタは、そしてイオンを護るガンヴォルトは、この様な感覚を持っていたのだ。

 だとしたら。

 

「ロロ、一緒に謳おう!」

『任せて、ミチルちゃん!』

 

 だとしたら。

 

『は~い♪ これからぁ、イソラ達は、ライズちゃんとロロちゃんとぉ~、トリオをしたいと思いま~す★ そういう訳なんでぇ~……、ちょ~っと過激なファンの皆様はぁ……イソラ達の歌で、メロメロにしちゃうんだから★』

『僕達の役目は、そんな過激なファンに対する警備員かな?』

『違うぞリベリオ! 僕達の真の役目は、この場をアーティスティックに彩る事! 警備員は、そこに居るイクスに任せればいいのさ!』

 

 この状態で全力の詩魔法の支援を受けたら、俺はどんな気持ちになれるのだろうか?

 

「……行くよ! この絶望に染まった世界を、私達の詩魔法で大給(おおはらい)するんだから!」

『了解! ライズちゃんとイソラちゃん達、そしてアキュラ君との同調接続完了! ABドライブ、USドライブ、オーバーブースト!!』

『イソラ達の緊急生ライブ、レッツスタート★』

 

――火と気と死と身と 素の 主は来ませり いざ 仰ぎ見て 負える重荷を

 

 ロロ達トリオによる歌が始まった。

 既に発動している詩魔法【翼戦士「翼戦士系★アイドル」&「夢の熟練者(クラフトマンズドリーム)」&「素晴らしき起爆剤(ファンタスティックデトネイター)」】で顕現しているイソラも含めた歌が。

 この歌はロロが電子の謡精におけるSPスキルである「謡精の歌(ソングオブディーヴァ)」の際に歌われる物だ。

 その歌の名前は大給(イグナイター)

 心の闇を祓い清めると言う、この世界における目標に相応しい歌だ。

 そんな歌を歌っている三人を中心に、藍色の光が溢れ、()()が生まれようとしている。

 それと同時に、そんな三人を通じて、俺が今まで感じた事の無い程の想いと力が流れ込んで来た。

 これにより、ヴァイスティーガーの全リミッターが解除され、俺は更なる高みへと導かれる。

 ……言葉に出来ないとは、この事か。

 俺がもう少し詩的に表現出来たのならば、少しはまともな感想も出来たのだが。

 

(もうこれ以上出し惜しみする必要は無い。ここが正念場だ。全ての切り札を出し切る。……後少し、俺に付き合って貰うぞ、ノワ)

 

 俺はノワの暴走の力を削ぎつつ、足止めに専念する。

 EXウェポン「アンカーネクサス」を発動させ、ノワと俺を「赤い糸」で繋げ、螺旋状のエネルギーを身に纏ったブリッツダッシュと同時に赤い糸を伝い、ノワに迫った。

 それに対してノワは回避が間に合わないと悟り、防御に専念し、これを容易く捌き切る。

 だが、俺はノワに「ロックオン」する事に成功し、左手に持つディヴァイドⅡによる、詩魔法の支援で強化された絶対必中のレーザーをオートで撃ち込む。

 そして、撃ち込まれたレーザーに怯んだノワ目掛け、俺は右手にある退魔リボルバー「ボーダー」を用い、復讐の為でも無く、悪魔を討滅する為でも無く、暴走の力を削り、ノワを助ける一助とする為に、弾丸を放つ。

 そう、天使の力と退魔の力が込められた弾丸を。

 既に俺の視界(謡精の眼)で捉えていた、ノワの持つ暴走の力目掛けて。

 ソレは着弾と同時に大爆発を起こし、辺り一面に、まるで禊ぎを行っていた時の神聖な空気が優しく、そしてふわりと大きく広がった。

 

(侍女長、叔母上……、これは流石にやりすぎなのでは?)

 

 そんな俺の気持ちを無視する様に、大爆発の余波は周辺へと広がり、この場所近くに居る、暴徒と化したこの世界の人々を巻き込んだ。

 その爆発の余波を利用し、俺は再び歌っている三人の元へと移動し、体勢を立て直す。

 それと同時に、三人が歌っていた場所から、藍色の光と共に()()は生まれた。

 それと同時に、俺がロロにお守り代わりに持たせていた、ミチルから受け取っていた退魔の鈴が飛び出し、その光の中へと吸い込まれていく。

 その姿は儚い見た目でありながら、どこか意志の強い所を見せる瞳を持った少女の姿。

 背中にモルフォが持つ蝶の様な翼と、ロロが持つ不死鳥の様な翼。

 ロロの衣装を更に派手に、それでいて神聖さを併せ持った衣装を纏い、片手に独自の形をしたマイクらしき物を持つ。

 そんな姿をした少女の名前は――。

 

「俺の役目もここまでだな。……後は任せたぞ、()()()

 

 ――【真なる蝶の羽搏き(真なるバタフライエフェクト)「神園ミチル」】。

 ライズの前世の、俺の居る世界とは異なる世界のミチルが、この場に居る三人の祈りの歌で詩魔法として生まれた存在。

 ロロから飛び出した退魔の鈴を髪に付け、その身が放つ藍色のオーラと共に、遂にその姿を現した。

 そんな彼女が現れたと同時に、ノワも、暴徒と成した人々も、完全に動きを止めた。

 そんな人々を一瞥(いちべつ)し、彼女は歌いだした。

 その歌はどこかオルゴールを連想させるかのような優しい曲調と歌。

 何処か聞き覚えのある、温かな歌がこの世界に流れ出す。

 

(この曲調……。モルフォ達の歌う、「藍の運命」か)

 

 かつての悍ましい運命を覆すが如く、歌は続く。

 そんな彼女を中心に、この世界に変化が生じた。

 日光が届かない程分厚い雲に覆われた空から光が漏れ、その光を中心に雲は裂かれ、青空を覗かせ、徐々にその面積を増やしていく。

 黒く汚れた大地も、彼女を中心に緑生い茂った大地へと姿を変える。

 泥の様に粘ついた海も、底まで見える程に澄んだ海へと生まれ変わっていく。

 そうして、長いようで短い、ミチルの歌が終わり、それと同時に俺達の位置から少し離れた場所から、光の柱が立ち上った。

 そう、この世界の完了を示す光「エンブレイス・ロール」が。

 その光を確認すると同時に、生まれ変わったこの世界の姿が俺の目に飛び込んだ。

 まばらに白い雲が綿菓子の様に散らばる青い空。

 美しい草と花と木と川が織りなす大地。

 海底に咲き誇るが如く散らばる海藻(かいそう)珊瑚(さんご)が、ここからでも見える程に澄み渡った海。

 その世界の美しさは、今の惑星ラシェーラにも負けない位、美しい物であった。

 暴徒と化していた人々は、正気を取り戻し、この澄み渡った世界を見て、希望を胸に抱え俺達から離れる。

 そして、ノワは正気を取り戻し、元の姿に……。

 

「やったDEATH!! 今の外の世界や天界にも負けない位、綺麗な世界が出来上がったDEATH!!」

 

 ……戻らなかった。

 とは言え、あれだけの攻撃を受けてケロッとしているのは、悪魔としての面目躍如と言った所か。

 その事に俺は気が抜けたのか、足元がふらつき、その場に仰向けに倒れた。

 

『「アキュラ君!」』

『……え~とぉ。これ以上はお邪魔になりそうだから、イソラ達は戻るね★』

『そうだね。……僕の家族にも、いい土産話が出来そうだ』

『これはまた、実にアーティスティックな世界が生まれた物だ。これには僕も、新たな芸術の美しさを知ることが出来たのを喜ぶべきなのだろうな。……では、僕達は失礼するよ』

 

 詩魔法が解除され、イソラ達が姿を消すと同時に、ロロとライズ、そしてノワが俺の傍に駆け寄る。

 

「大丈夫? アキュラ君。さっきの戦いで、どこか怪我でも……」

『しっかり、しっかりしてアキュラ君!』

「落ち着け、二人共。……少し気が抜けてしまっただけだ」

「全く、アキュラ様はまだまだ鍛え方が甘いのDEATH。でも、今回は良くやったと褒めてあげるのDEATH」

 

 そんな俺達を、「神園ミチル」が微笑ましそうに眺めている。

 ……優しい風が心地いい。

 本当ならば、直ぐに立ち上がってフュムノフォートへと向かうべきなのだろう。

 

「まあ、そんな事はどうでもいいだろう。それより、この場に寝転がって見ろ」

 

 だが、俺は……。

 

『どれどれ~……。うわぁ……これすっごい心地いいよ』

 

 もう少し、そう。

 

「ホントだ。ふふ……、日がポカポカして、眠くなりそう」

 

 もう少しだけ、この世界に居たい。

 

「悪魔見習いの時に、木陰でサボってた時の事を思い出すDEATH……zzzzzz」

 

 そう思っても、罰は当たらないだろう?

 俺はそう思いながら、重い目蓋(まぶた)を閉じ、この世界で眠りについた。

 

『ありがとう。アキュラ君、ロロ、ノワ。そして、未来の私(ライズ)。お陰で私は、本当の意味で救われる事が出来た。……アキュラ君、私ね、今だから言うけど、私がまだ悍ましい姿だった時に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()、凄く嬉しかった。この事が無かったら、私はずっと心を閉ざしてた。私の事を救うだなんて事を信じる事も無かった。だから、改めて……ありがとう、アキュラ君。……本当は完了の儀式をしなきゃいけないんだけど、今回はサービスするね。……()()()()「謡精の楽土」でも、また会おうね。……本当はイケナイ事なのに、こんなにされたらアキュラ君の事、一人の女の子として好きになっちゃいそうだよ。でも、世界も身体も違うしセーフ? なら……

 

 この世界の新たな主となった「神園ミチル」の、そんな優しい独白を朧気に聞き、この世界に合わない僅かな悪寒を感じながら。

 

――ライズのジェノメトリクス「両翼蝕む暗黒郷(ディストピア)」を完了しました。詩魔法【真なる蝶の羽搏き(真なるバタフライエフェクト)「神園ミチル」】をインストールしています。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。





〇詩魔法【真なる蝶の羽搏き(真なるバタフライエフェクト)「神園ミチル」】について
イオンの詩魔法「第七世界神示」、キャスの詩魔法「アルシェールスフィア」に相当する詩魔法。
この詩魔法は神園家由来の退魔の力、そしてこの世界でアキュラの持ち込んだ弾丸から発生した天使の力を複合、更にそれを電子の謡精(サイバーディーヴァ)由来の力で増幅、開放する事であらゆる悪意を浄化する。


〇ライズのジェノメトリクス「両翼蝕む暗黒郷」について簡潔に

・DLv6ですか? イエスなら次の項目へ、ノーなら追い出される

・バタフライエフェクト初遭遇時、咄嗟にこの姿のライズを護ろうとしましたか? イエスなら次の項目へ、ノーなら三十九話にて電子結界が発動せず、くろなの槍で終了のお知らせ

・くろなの正体を見破りましたか? イエスなら次の項目へ、ノーなら積み

・暴走したくろなとの戦闘前、一度戻って仲間を頼りましたか? イエスなら次の項目へ、ノーなら戦闘突入後、暫く善戦するが敗北確定

・リインカーネーションを調合してますか? イエスなら次の項目へ、ノーなら暴走したくろな戦における戦闘不能時、救済措置無し

・暴走したくろなとの戦闘時、戦闘不能になりましたか? イエスならリインカーネーションを消費し復活、その後、問答無用で似たような流れが起こり、この世界()完了され次の世界「謡精の楽土」への道が永遠に閉ざされ、ノーなら次の世界、「謡精の楽土」への道が開かれDLvが7になる
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