私は奴隷である
生まれは戦地、母は判らぬが戦火に燃えて灰となった祈る者《プレイヤー》と祈らぬ者《ノンプレイヤー》の中を揺かごとし死闘の中で華のように散った血を乳として育ち、飢えと狂気に死んだ獣を遊び相手としつつ育ち捕らえられた生まれるべきではなかった存在という事になっている
事実は殆ど異なる
両親は知っているし普通に育ったが運悪く遊びに出た時に道に迷い戦場跡に出てしまいこれまた運悪く死体漁り《スカベンジャー》の団体にばったり出会しそのまま奴隷として売られてここに来た
では何故この来歴が闘技場に響いているのか
唯の箔付けである、そして今日が引退記念日のセレモニーであり今日の戦いで再起不能で主人に多額の費用が貰える手筈であり勝てば晴れて自由の身多くの者に羨望と嫉妬、絶望を感じながらスタートを切れる金貨をぶら下げられている
これまでは運と偶然あとは意地汚さでなんとか刺されて裂かれて潰されそうになりながらも両手の棒で何とか生き延びた
時に剣のように、時に槍の様に、棍棒のように、フレイルの様に、杭の様に使い続けてなんとか生き延びたその結果がここだ
どうやら主人とオーナーは結託したらしい
正面の檻から巨大な猪の顔を被せた人形のようなのがいるオークのように見える
どうして断定出来ないのかはそのモノには野生も知性も見えず
飢えを越したのか痩せた豚を無理矢理立たせているような雰囲気である
GAAaaaaa!!
闘技場に響いていく豚人形の発声で会場は盛り上がりどこか絡繰じみた動きで中央につく
どうやら前任者が居たようだバラけた四肢を辛うじて繋いで出来た欠けた人形がいくつか見える
ある者は胴をある者は首をある者は半身を
どの者も見覚えのある姿だ
疾風で蜂の巣と言って居た槍持ち
謝肉祭と騒いで居た派手な奴だった錬金崩れ
宗教で身持ちを崩した破戒僧
どうやらここで騙して悪いが処分らしい
あー
仕方ない食い破ってやろうじゃないか
走る走る、追いつかれないように捕まらないように死なないように殺す為に
そうしないと周囲の死体と同じになる
そうしてあの豚人形を見る粗末な布を着けてはいるが裂かれ穴が空いている生前の彼らは正直に挑み千切られ喰われたようだ、だがその跡には奴は生き物ではないコトが分かる
食い物があれば食べる不快なモノは消すそういった動きがない強いて言えばまるで出来の悪い演劇をフリークスだ
怯えさせるように強がるような動き
そして全身に見える新しい傷もあの豚人形が眼で見ていないコトを雄弁に語っている
ならばこれだ
走る中で錬金崩れの荷を拾い外周に投げた
周囲の観衆は怯える者構える者といたが所詮は賭け
砂塵に見えなくなった中央を凝視した
その隙にそれぞれの死体の頭を叩き割り暴れ出す豚人形を避けつつ
じっと中央を見つめた
砂塵が半ば収まるその瞬間片手にあった棒を手槍の様に投げた
一時の悲鳴の後豚人形は崩れた
なんということか悲鳴が出た場所には肥えた術者崩れが居るではないか!
奴は偽の死体を用意して窪地に板を貼りそこから操っていたのだ!
肥えた術者崩れは胸にに棒を生やしながら息も絶え絶え血の泡を吹きながら言った
「あー、めんどくせえ強いのとやるのは、疲れんだよ。なぜわかった?」
彼は言ったそれを答えるように周囲の人の中四方で倒れた厚着の四人を指差してそして板の一部を指差した
「あーやっちまったな、まあいいか 頼むから避けんな…」
その瞬間横に飛ばされたどうやら時間稼ぎだったらしい
豚人形だったモノが生き物の様に動き出した
どうやら術者の手が離れて動くようになったらしい
奴はもう隠れて居るそのうち死ぬだろう
だが私は片手が折れて胸の骨が折れた程度だ
まだ死なない
片手には棒いつも通りだ
足は大丈夫、呼吸も充分
問題は迫り来るオークだ
腐ってもオーク全身が赤黒くその姿は壊れた殺戮人形だ
迫り来る中でふと死んだ奴の話を思い出した