与太過劇フォロワースタァライトーオーバープレイー   作:ゆるり

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第1幕

「舞台少女・・・!スタァを目指す少女達・・・」

 

もこもこの白い毛並みを揺らしながら、人の顔を持った羊が呟き、

ライトに照らされた舞台を見つめる。

 

「クク・・・レヴュー。トップスタァを目指す舞台少女のキラメキッ・・・!」

 

舞台のライトが消え、観客席の人面羊が照らされる。

 

「だが・・・まだその時じゃない。今は過劇をッ・・・!

彼女達の望んだ・・・その星を観るとしようか・・・」

 

ブザーが鳴る。

 

舞台の幕が上がる。

 

スタァを目指す舞台少女達の過劇が始まる。

 

 

 

「シスアァァァァァアアアアアアアアア!!後生だからぁぁあああああああ!!!」

 

一升瓶を持った三つ編みの少女に縋りついていた白川鶴子(しらかわ るつこ)が悲痛な声を上げる。

 

「ダメです。最近飲みすぎだったから、お酒は控えるように言いましたよね?」

 

足に引っ付く鶴子に、一升瓶を抱える葦海シスア(あしみ しすあ)が宥めるように言う。

 

「まだ3本目だから~!」

「”もう”・・・?」

 

鶴子の一声にシスアの目つきが厳しくなる。

威圧感を上から感じた鶴子は掴んでいた足から思わず手を離しシスアを見上げる。

 

「い、いやぁ~・・・2本目だったかなぁ~?どうだったかなぁ~?」

「はぁ・・・とにかく、これは預かります。夕食までは我慢して下さいね」

 

ため息を付きながら、シスアは寮の食堂に向かおうとする。

 

「・・・カ・・!」

「え?」

 

後ろから何か聞こえたような気がしたシスアが振り返ると

涙を流した鶴子が立っていた。

 

「シスアのバァァアアアカァァアアアア!!うわぁぁああああああああああん!!」

 

シスアが何か言う前に、叫びながら鶴子は廊下を走って行ってしまった。

 

「泣き上戸・・・そう言えば、もう2本は飲んだって言ってましたね・・・」

 

驚いたシスアは、ただ茫然と走っていく鶴子を見送る事しか出来なかった。

 

 

泣き上戸でとりあえず走っていった鶴子は隠していた『名酒・鶴殺し』の一升瓶を持って

寮の外に出てきていた。

 

そもそも、学園に通う学生である鶴子が何故酒を飲めるのかというと、

鶴子は入学の直前に事故にあってしまった為、三年間寝たきりになっていたのだ。

 

目が覚めてから、3歳下のシスアと一緒に学園に入学したので、もう鶴子は成人式を済ませている。

 

なので、お酒は飲める歳なのだが、如何せん飲みすぎてしまう鶴子は、

ついに、幼馴染のシスアにお酒を控えるように言われてしまった。

 

「何も、取り上げなくても良いと思うんだけどなぁ~。

そりゃ、周りは未成年ばっかりだし、学園でも先生の目を盗んで飲んでるけどさぁ~。

これは、もう私の一部みたいなものだからねぇ~」

 

そう言いながら、鶴子は鶴殺しをグビグビ飲みながら住宅街を歩く。

 

そんな鶴子の耳に、歌声が聞こえてくる。

 

「ん?」

 

そちらの方に向かうと、公園で小さな女の子が歌っていた。

 

しばらくすると女の子が歌い終わる。

 

「ブラボー!」

 

鶴子は歌を聴いている間に空になった一升瓶を脇に挟み、

パチパチと拍手しながら女の子に近づく。

 

「お歌上手だね~!」

 

女の子は少し恥ずかしそうにしながら、鶴子を見上げる。

 

「ありがとう!おねぇちゃんはだぁれ?」

「私?私は鶴子っていうの。お嬢ちゃんはお歌好きなの?」

「うん!大好き!」

「そっか~!私も好きなんだ~!一緒に歌おっか?」

「いいの~!?」

 

鶴子の提案に女の子の眼が輝く。

 

「うん!そっちの方が楽しいからね!」

 

その後、鶴子と女の子は時間も忘れて、歌ったり、踊ったり、

劇の一場面を再現したりした。

 

「本当に上手だねぇ~」

「えへへ、お友達とお芝居を見にいった時にね、約束したの!

一緒にあそこに立とうって!だから、いっぱいいっぱい練習したの!」

「お嬢ちゃんは、スタァを目指してるのね。私も目指してるのよ~?」

「そうなんだ!鶴子おねぇちゃんはどうしてお歌を歌ってるの?」

 

女の子の質問に、鶴子は少し考え、

 

「う~~~ん・・・忘れちゃった♪」

 

「えぇ~~~!?忘れちゃったの?」

 

「うん。でもね、輝く私を見せたい子がいるの。その子は、とっても優しくてね。

私が眼を醒ますと必ず私の傍にいて、髪を梳いてくれたり、ご飯を作ってくれたりしてくれるの」

「おかぁさんみたいだね!」

 

女の子の言葉に鶴子はニッと笑い、

 

「うん!だから、今はその子の為に歌いたいなぁ~って」

「鶴子おねぇちゃん、お歌も踊りも上手だから大丈夫だよ!」

「そうかなぁ~?そうだと良いなぁ」

「あ!おかぁさんだ!!」

 

女の子は公園の外にいる女性に手を振る。

 

気が付けば、もう夕暮れになっていた。

 

「じゃあ、私もう行くね!」

「えぇ、楽しい時間をありがとうね~」

「また、会える?」

 

女の子の問いに鶴子は

 

「そう・・ね。おねぇちゃん忘れっぽいから・・・どうだろう?」

「分かった!じゃあ、次は私が鶴子おねぇちゃんを見つけるね!

その時にまた一緒に歌おう!じゃあねーーーーー!!」

 

そういうと女の子はお母さんの方へと走っていく。

 

鶴子は女の子に手を振り、女の子のお母さんは鶴子に一礼して去っていった。

 

(見つけるね・・か・・・)

 

「・・・帰りましょうか」

 

鶴子は寮の方へ歩き出す。

 

「見つけましたよ」

「え?」

 

鶴子が声のした方へ振り返るとシスアが立っていた。

 

「どこへ行ってたんですか?中々帰って来ないので探しましたよ」

 

「シスア・・・」

 

「あっ!」

 

シスアは鶴子に近づき、鶴子が持っていた一升瓶を指さし、

 

「やっぱり、隠していたお酒を持ち出してましたか。

夕飯までは我慢して下さいと言いましたよね?」

「え?あ!いやぁ~元から空だったよぉ~?」

「そんな訳ないでしょう・・・はぁ・・・もう良いです。帰りますよ」

 

ため息をついたシスアが寮に向いて歩き出す。

 

「どうしました?行きますよ?」

「おかぁさぁぁああああん!!!」

 

鶴子はシスアを後ろから抱きしめる。

 

「ふぇっ!?なんですか、いきなり!」

 

突然、後ろから抱き着かれたシスアは素っ頓狂な声が出てしまう。

 

「お母さ~んおんぶして~」

「まだ酔ってるんですか!わ、私はアナタのお母さんではありません!」

「今は私のお母さんみたいなもんでしょ~~」

「鶴子さん!さ、流石に怒りますよ!うっ・・・重い」

「あ!ひどーい!罰として、このまま寮に帰りましょう~!」

「ええぇ・・・ちょっ!本当に危ない・・・!」

 

フラフラとした足取りで、二人は夕暮れの中を歩いていく。

 

きっと、何度忘れても、こうして2人で歩ける気がする。

 

そんな気がする。

 

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