与太過劇フォロワースタァライトーオーバープレイー   作:ゆるり

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第2幕 友達

学園での一日が終わり、九十九 猩陸(つくも しょうり)は帰り支度をしていた。

 

「ちょっと、九十九さん良いかしら?」

 

そこに、ツインテールを揺らしながら、黒丸 雪理(くろま せつり)が声をかけてきた。

 

「雪理さん?どうしたの?」

「実はお願いしたい事があってね。今度の休みに私と2人で映画の試写会を見に行って貰えないかしら?」

「試写会?」

 

特に休みに予定を入れてない九十九だったが、とある事が気になり

 

「予定は無いから大丈夫だけど、夏実さんと一緒に行かないの?」

 

いつも一緒にいる夏美さんではなく何故私となのだろうと九十九は疑問に思い、黒丸に聞く。

 

「う~ん・・・確かに夏実は誘ったら来てくれると思うんだけど、今回のはちょっとね~

カップル限定の試写会だし」

「へぇ~カップル限定・・・か、カップル!?」

 

黒丸の口から出てきた言葉に九十九は驚く。

 

「そ、送った中にカップル限定のがあったんだけど、世界一可愛い私と

男性役が出来るアナタなら問題無いでしょ?」

「ももも、問題あるよ!?私女の子だよ!?」

「大丈夫よ!私に任せなさい!しっかりボーイフレンドに見えるようにコーディネイトするわ」

「そういう問題じゃないと思うんだけど!?」

「予定はないのよね!じゃあ、次の休みによろしく頼むわね!じゃあね~~!」

「ちょっ、ちょっと・・・!」

 

そういうと、黒丸は九十九を置いてさっさと帰ってしまった。

 

「はぁ~~・・・」

 

1人、教室に残された九十九はため息をついて項垂れた。

 

 

そして、約束の試写会の日、九十九は朝から黒丸の部屋に呼ばれ、

着せ替え人形と化した後、年相応に見える男装をして収まった。

すでにグロッキーな状態になっている九十九だが、黒丸に急かされ、試写会の行われる映画館へと向かう。

 

その道中、九十九は機嫌の良い黒丸を見て、

 

「そういえば、好きな役者さんでも出るの?」

「え、なんでよ?」

「いや、私は試写会って初めてなんだけど、確か始まる前か終わった後に、

役者さんが出てきてトークショーなんかするんだよね?」

「そ、そうね。今日のは終わった後にトークショーがあるわ」

「それで、好きな役者さんが来るから、ご機嫌なのかなぁって」

「・・・昔の知り合いが出てるのよ」

「へぇ~!すごいね!誰々?」

「主演の子」

 

黒丸雪理は、九十九と話しながら、昔の事を思い出していた。

子役をやっていた頃に入っていた事務所で盗難事件が発生していた。

名前が売れてきた女の子の物ばかりなくなっており、

その時に、事務所の子役達の間で何も盗られていない黒丸が疑われていた。

もちろん、黒丸は他人の物を盗るなんて事はやっていなかったが、

普段の口調や態度などで他の子役達に良い印象を与えてなかったのも事実だった。

 

その頃、黒丸には事務所で友達が一人いた。

同じ年の女の子で、よく二人で演技について話し合ったりしていた友達だった。

辛い中でも、その子が頑張っているから負けられない。

黒丸は気づいてなかったが、その子の存在はその時の彼女にとって支えのようなものになっていた。

そんな時に、その子の物がなくなってしまった。

黒丸は事務所の他の子役仲間に呼び出され、そこには件の女の子も来ていた。

 

「私はやってないわ!」

「どうせ、黒丸さんでしょ。主役を貰えなかったからって陰湿ね」

「だから、私は・・・!アナタは私を信じてくれるでしょ?」

 

黒丸は、その女の子を、友達を信じていた。

だから、友達の顔を見た瞬間に分かってしまった。

自分がその子に疑われている事を。それでも、黒丸は信じたかった。

 

「・・・・・」

「ちょっと・・・何か言いなさいよ。私はやってないわ!」

「・・・・・ごめんなさい。アナタを信じられない」

「・・・ッ!?」

 

その瞬間、黒丸の中で何かが折れた。

 

「そう・・・じゃあ、もういいわ」

「ちょっと、黒丸さんどこに行くの!」

 

 

それだけが原因な訳ではない。

だけど、色んな要因が重なって、私は入っていた事務所を辞めた。

私があの時、唯一認めていた子に信じてもらえなかった。

その事実に私はそこに興味がなくなったのだと思う。

だけど、舞台に上がることは止められなかった。

だからこそ、この学園で最初からやり直そうとした。

今度こそ・・・今度こそ・・・・・?

 

「雪理さん・・・?」

 

九十九の声に黒丸が、はっとなる。

 

「どうしたの?いきなり黙り込んで?」

「な、何でもないわ!」

「そう?雪理さん、もしかして不安なの?」

「え?」

 

九十九の言葉に黒丸はドキリとする。

 

「分かるよ~!知り合いに久しぶりに会うってドキドキするよね!

相手は自分の事を覚えてくれてるのか~とか、何を話せば良いんだろう?とか」

「試写会なのよ?話せる訳ないじゃない。そもそも、気づいて貰えるかも分からないわよ」

「あ、そっか!でも、大丈夫だよ!雪理さん、世界一可愛いから気づいて貰えるよ!」

 

黒丸は目をパチクリさせた後、噴き出した。

 

「アハハハハハ!!・・・でも、そうね!私の顔を見て思い出さない訳はないわ。

私は世界一可愛いんだもの!」

「やっと、笑ってくれたね」

 

九十九はニッと笑って、

 

「知り合いの話をしてから、雪理さん落ち込んでるみたいだったから」

「そんな事・・・」

 

無いと言おうとした黒丸の言葉が止まる。

今度こそ・・・そんな声が聞こえた気がした。

意を決して、黒丸は再び口を開く。

 

「九十九さん、さっき昔の知り合いが出てるって言ったわよね」

「え?うん」

「本当は友達だった子なのよ。でも、離れてしまったの」

「そう・・・なんだ」

「今更、友達に戻りたい訳じゃないけど、私はあの子の演技が好きなのよ。

だから、一目見たくなったの・・・変かしら?」

「ううん。普通の事だと思うよ。話してくれて、ありがとう」

 

それは、黒丸の予想した返答とは違っていて、恥ずかしくなった黒丸は

九十九から顔を背けて、

 

「・・・アナタ、変な子だって言われない?」

「う~ん・・・学園じゃないところだと結構言われてるかも」

 

そこから、黒丸と九十九は取り留めのない会話をしながら、映画館についた。

カップル限定との事だったが、スタッフが軽く確認を取る程度だったので、

難なく入場することが出来た。しばらくした後、上映が始まる。

 

物語は、不器用な女の子が憧れの男の子との恋を成就する為に奮闘するという内容だった。

不器用ゆえに人付き合いが上手くいかない女の子の心情が表情や言葉で表されており、

心に迫るものを感じる演技だった。

 

「アナタがやったんでしょ?」

「わ・・・私はやってない・・・!」

(・・・・・ッ!)

「私を信じて・・・?」

「ゴメン・・・僕には信じられない・・・」

 

女の子が謂れのない疑いを掛けられ、憧れの男の子にすら信用されなくなる。

だが、映画は進み、男の子は女の子の無実を証明する為に女の子と共に行動し、

2人の距離が縮まっていく。

女の子の無実を証明し、二人は結ばれて映画はハッピーエンドになり終わった。

 

(・・・・・まぁ、こんなものでしょ。フィクションなんて・・・)

 

拍手が起こる中、黒丸が隣の九十九を見ると、彼女は号泣していた。

 

「えぇっ!?」

「良い映画だっだねぇえ”」

「そ、そこまで、号泣する内容じゃなかったと思うけど・・・」

「女の子も幸せになったし良かった~」

 

九十九が感動する中、舞台の上はトークショーへと移っていく。

役者達がステージに上がっていく中で、主演の女の子が出てくる。

腰まである長い黒髪に凛とした顔立ちの女の子。

 

「あの子が?」

 

九十九が耳打ちをしてくる。

黒丸は複雑な表情でコクリと頷く。

男の子の方も有名なのか、出てきた時に女の子達の黄色い声が上がる。

役者がステージに並んで、トークショーが始まる。そんな中、

 

(何か・・・出来ないかな)

 

九十九はそんな事を考えていた。

久しぶりに同じ場所にいる2人がこのままで良いのだろうか?

お節介なのは分かってる。

でも、九十九は納得出来なかった。

 

(何か・・・!)

 

九十九の眼にまだ黄色い声を上げている女の子達が映る。

これだッ!九十九はそう思い、息を吸い込む。

 

「私、ファンなんですーーーーー!!!」

 

九十九は立ち上がり、大声で叫ぶ。九十九の声は舞台まで真っ直ぐに通る声で響き渡る。

隣にいた黒丸もびっくりして動けないでいたが、はっとなり、九十九を座らせようと立ち上がって引っ張る。

 

「な、何してるのよ!早く座りなさい!」

「うわぁっと・・・!?」

 

九十九はふら付きながらも席に座るが、周りからクスクスと笑い声が聞こえてくる。

それに九十九は顔を真っ赤にし、座るイスの中で小さくなる。

そんな九十九を見て、黒丸は呆れ気味に

 

「本当にどうしちゃったのよ。赤くなるぐらいならやらなきゃいいのに」

「あはは・・・でも、これで気づいて貰えたよね」

「え?」

 

黒丸がステージに目をやると、あの子が真っ直ぐにこちらを見ていた。

九十九を見ている訳じゃない。黒丸の方を見ていた。

向こうも驚いたような顔をしていたが、トークショーの司会に質問をされてそちらに対応する。

気付いてもらえた。

それだけで、黒丸の心臓に跳ねるような痛みが走る。

数年ぶりに一瞬、目を合わせただけ、ただそれだけ。

けれど、黒丸はまだ我に返れずにいた。

そんな中、トークショーは進む。

 

「灰原さん、この映画の主演になるに当たって、どのような役作りをしましたか?」

 

司会の質問に、主演を務めた灰原という少女は、チラリと黒丸の方を見て、少し考えた後、

 

「私の友達に似た人がいたので、その子を想って役作りをしました」

 

黒丸はピクリと反応する。舞台の上の彼女を見つめる。

 

「昔、同じような事があったんですが、私はその子を信じる事が出来なくて、

その子をとても傷つけてしまいました。

あの時の私にこの登場人物達のような勇気があれば良かったのですが・・・

だから、この役には、今の私の全力でぶつかって演じました」

 

「バカみたい・・・」

 

灰原の真っ直ぐな瞳を見て、黒丸は小さくそう呟く。

 

(私は、今も昔も自分の事ばかりなのに・・・・・)

 

「本当に、バカみたい・・・」

 

程なくして、トークショーは終わりを迎えた。

観客達の拍手の中、役者達がステージを降りていく。

 

「帰ろっか」

「えぇ」

 

九十九と黒丸は映画館を出る。

 

もう二度と話す事は無いだろう、そう思っていた。

だけど、彼女の気持ちを聞く事が出来た。

それで、昔のような友達に戻れる訳じゃない。

そんなに簡単な問題ではない。

けれど、彼女が今を頑張っているのなら、黒丸雪理は負けられない。

新しく築いていく今に、黒丸雪理も向き合わなくてはならない。

来てよかった。九十九さんと来て・・・本当に良かった。

 

「・・・ありがとう」

 

黒丸は照れくさそうに九十九にお礼を言う。

 

「うん!」

 

九十九も笑顔で答え、2人は自分たちの舞台へ戻っていった。

 

 

舞台少女を目指す仲間達がいる舞台へと。

 

 

 

 

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