与太過劇フォロワースタァライトーオーバープレイー   作:ゆるり

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第3幕 ベビベビベイビベイビベビベイベー(前編)

学園の寮、ここにはスタァを目指す舞台少女達が暮らしている。

休日には日頃の疲れを癒すために大きなリビングでくつろぐ者もいる。

今は永久 千代(ながひさ ちよ)という少女がコーヒーが入ったマグカップを

片手に本を開いていた。

日頃、苛烈に生きる彼女の休みは時間を惜しむようにゆったりとしている。

午前の優しい光を浴びながら、一人用のソファで読書をしている永久の所にドタバタという音が聞こえてくる。

バンッ!という音と共に、一人の少女が部屋に飛び込んでくる。

ツインテールを揺らしながら入ってきたのは、黒丸 雪理(くろま せつり)だ。

黒丸は永久の顔を見るなり、駆け寄ってきて

 

「千代!私がここにいる事黙ってて!」

 

そういうや否や、永久の隣にある大きなソファの陰に隠れてしまった。

永久が首を傾げていると、背中まで伸びる髪にカチューシャをつけた少女、布袋 瑠光奈(ほてい るみな)が禍々しいピンク色の液体が入ったコップを片手に部屋に飛び込んできた。

 

「雪理さーん!大丈夫ですわよ!死にはしませんからー!って、あら?」

 

布袋は永久しかいないリビングを見まわし、

 

「千代さん、雪理さんを見ませんでしたか?」

 

黒丸を探している布袋に、永久は首を横に振る。

 

「おかしいですね。ここに入ったと思ったのですが・・・」

「新作?」

 

永久の質問に、布袋は嬉しそうに

 

「ええ!今回も面白いモノが出来ましたわ!1人協力してくれたのですが、もっと協力者を増やしたいと思いまして!」

 

布袋は時々、その類い稀なる才能を活かし謎の薬を製造する事がある。

そして、出来た新薬はクラスメイトで勝手に臨床試験をするという暴挙に出るのだが、

毎度の事なので周囲はほぼ諦めている状態だ。

1人協力したというならば、犠牲者が一人出たと捉えるのが正解だ。

永久はコーヒーを一口飲んで、

 

「ほどほどにね」

「分かりましたわ!」

 

そういうと布袋は永久に近づき、顔を寄せ

 

「千代さんの分もキチンとご用意してますので」

「・・・・・」

 

小声で囁くように言われた永久はマグカップを口元に運びながら目を逸らす。

永久は布袋と『とある契約』を結んでおり、布袋の作った新薬の実験体になる約束をしているのだが、今は関係の無い話なので置いておこう。

そんなやり取りをしている脇で黒丸はソファの陰に隠れて

 

(冗談じゃないわ!あんなモノ飲まされる訳にはいかないわ!こうなったら・・・)

 

黒丸はソファからゆっくりと顔を出す。

すると、布袋が永久に近づき2人で何かを話してるように見えた。

 

(チャンスだわっ!あの薬を叩き落としてやるわ!)

 

黒丸はバレないようにソファの陰から布袋目掛けて飛び出す。

が、その瞬間、ソファを飛び越えた黒丸の足がリビングの床で滑る。

 

「へ!?」

「え?」

 

黒丸の声に振り返った布袋の手を、転んだ黒丸の足が蹴り上げてしまう。

そして、布袋の手からピンクの液体が入ったコップが打ちあがる。

 

「「「あ」」」

 

それを見た三人が同時に声を上げた。

 

 

ショートカットの少女、九十九 猩陸(つくも しょうり)は、

飲み物を取りに行こうとリビングに向かっていた。

すると廊下の先から、豊満な胸を持つ女性、白川 鶴子(しらかわ るつこ)が何かを抱えて、

九十九の方へ向かってくる。

 

「おーい!しょーちゃーん!」

「おはよう!鶴子さん。何を抱えてるの?」

 

九十九は白川が抱えてるものを覗き込む。

そこには、ぐっすりと眠っている可愛らしい赤ん坊が白川の腕に抱かれていた。

 

「わぁあ・・・可愛い・・・えっと、どうしたんですかこの赤ん坊?」

「この赤ん坊シスアなのよ~」

「え!?」

 

白川の口から出た言葉に思わず大きな声が出た九十九は自分の口を押える。

この赤ん坊が葦海 シスア(あしみ しすあ)だと言うのだ。

驚いた九十九だが、赤ん坊を起こしてしまったかと心配になり覗き込むが、

赤ん坊はまだスヤスヤと眠っていた。

ホっとした九十九に白川が話を続ける。

 

「お嬢からピンク色の飲み物貰ったんだけど、シスアが勝手に飲んじゃってね~

そしたら、いきなり赤ちゃんになっちゃって~」

「え~・・・えっと・・・」

 

九十九は必死に状況を整理しようと頭を回転させる。

 

「つまり、布袋さんから貰った薬をシスアさんが飲んで赤ちゃんになってしまった・・・と?」

「そういうことになるね」

「大変じゃないですか!早く布袋さんに治して貰わないと!」

「しょーちゃん、しー・・・!」

「あっ!」

 

また大きな声を出してしまったと、九十九は慌てて口を押える。

シスアはまだ起きる気配はないので2人は安心する。

 

「そうね~。でも、可愛くない?触ってみたら?」

 

白川が眠っているシスアを九十九に近づける。

 

「うっ・・・・・」

 

シスアのあまりの可愛さに九十九の心が揺れる。

 

(いや、シスアさんの!しかも、赤ちゃんのシスアさんのほっぺ!

触ってみたい・・・!触るだけ!ちょっとだけ触るだけなら・・・!

大丈夫だよね・・・ちょっとだけだから!)

 

自分の欲望に負けた九十九は、恐る恐る指をシスアのほっぺに指を伸ばす。

ぷにっ、まるでマシュマロをつついたような柔らかさにほわぁと、

声を漏らしながら堪能する九十九。

しかし、突かれたシスアは少し身を捩りながら、九十九の指から脱出し、

 

「あー」

 

と口を開けて、さっきまでほっぺたをつついていた九十九の指をパクっと咥えた。

 

「っ!?ぁぁぁっぁぁぁぁああぁぁっぁぁああぁ・・・・・!!」

 

叫ばないようにしたせいで掠れた呻き声ような声を出しながら、九十九はその場で悶絶する。

 

「あはははは!!しょーちゃん面白い~!」

 

鶴子が耐え切れず爆笑する中、なんとか正気を取り戻した九十九がよろよろとしながら、

シスアの口から自分の指を抜き、

 

「鶴子さん、静かにして下さい・・・」

「ご、ごめん・・・」

 

真顔で怒られた白川は笑うのやめる。

深呼吸をして、冷静さを取り戻した九十九は

 

「とりあえず、布袋さんを見つけよう。治し方も知ってるだろうし」

「そうだね~。じゃあいこっか」

 

「それは難しいと思うわ」

 

2人が布袋を探しにいこうとしたところに声がかかる。

そちらを見ると、何かを抱えた永久とばつの悪そうな顔をした黒丸が立っていた。

 

「永久さん!・・・どういう事ですか?」

「こういうことよ」

 

そういうと永久は腕に抱えていた赤ん坊になってしまった布袋を2人に見せた。

 

「まさか、布袋さんですか!?」

「雪理さんが滑って、その足で布袋さんが持っていた薬を蹴ってしまったの」

「わ、悪かったって言ってるでしょ!まさかあそこでこけるなんて思っても無かったのよ!」

 

黒丸の声にシスアがうぅ~と言ってクズリだそうとする。

 

「雪理さん。しー・・・!しーですよ」

「アナタも大きな声出してたでしょ・・・!」

 

2人は小声で言い合いする中、白川がシスアをあやして落ち着かせる。

 

「もう、2人共静かにねぇ。布袋は元気そうだねぇ~」

 

白川が永久の腕の中にいる布袋を覗き込むと、あうあうと声を上げながら、手を振りながら遊んでいた。

 

「でも、これは知力も赤ちゃんになってるみたいね~」

「そうみたいなんだ。どうすればいいか聞いているんだけど、答えてはくれなかった」

「そんな・・・!作った本人が分からないんじゃどうしたら・・・」

「まだ、方法はあるわ。あまり邪魔したくないんだけど・・・」

 

永久は少し困った顔をしたが、黒丸はため息を吐いて、

 

「仕方ないでしょ。他に頼れる人もいないんだから。さぁ、行くわよ」

「行くって、どこに行くの?」

 

九十九の問いに、永久が微笑み、

 

「この事態をなんとかしてくれそうな人の所よ」

 

そうして、4人は2人の赤ちゃんを抱えて、とある部屋に向かうのだった。

 

 

 

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