なのはクローンのたくらみ   作:もぬ

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GOD シークエンス2

【バトル2】

 

 ディバインバスターを撃ち放つ。

 赤い光が空を駆け抜け、どこかへ消えていく。

 ……壁にぶつかって打ち消された様子はない。

 シミュレーターじゃないのか? それで幻術系、でもないなら。どこかの世界に強制転移をさせられたということになる。

 通信は先ほどからアイズが試みているが、何故かどこにも通じないらしい。だとしたら、管理局で使われるSOS信号を飛ばしてみようか。

 そうだ、サーチャーであたりの様子を探るのも良い。

 いきなり戦いが始まったせいで混乱させられたが、帰還のために試すべきことはたくさんある。

 

「その前にもう一発うっとこ」

 

 なんかぶっ放し足りないよね。次は違う方向に撃ってみよう。

 

《マスター! 射線上に人がいます!》

「へ?」

 

 砲撃をぶっぱなす瞬間、警告が耳を打った。吐き出そうとした魔力が喉元でせき止められ、やや暴発しかける。アイズが発射機能にロックをかけたんだ。

 落ち着いて魔法を解き、エネルギーを霧散させる。敵かどうかわからない人に向けて撃つなど、あってはならない。アイズに感謝だ。

 やがて、わたしにも見える位置にその人物は姿を現した。同じように空を飛んでいる以上、相手は魔導師だろう。敵対行動を見逃さないよう警戒する。ゆっくりと近づいてくるその容貌は……、

 

「え……どういうこと……?」

 

 そう言ったのは、わたしではなく向こうだ。聴き慣れているものより少し高い声だった。

 白いバリアジャケットに、赤いリボン、金とピンクの杖。

 

「また偽物か。解除する必要はなかったな」

「わたしの闇の欠片、なの? でも、なんか大人だし……」

 

 髪型やバリアジャケットの意匠、手に持つレイジングハートさんからして、今度はわたしではなくなのはさんの偽物のようだ。しかも多分、小学生のときの外見。

 むむ、小学生の時のなのはさんを生で拝むのは初めてだ。当たり前のことだが、数年前の自分と本当によく似ていた。でもなんかオーラがあるよな。可憐さというか、強さというか、わたしには無かった雰囲気が。

 そんななのはさんをこれから撃つのは心苦しいが、まずは現状を切り抜けねば。

 デバイスをカノンモードに変え、華奢な少女に狙いをつける。

 

「……! レイジングハート!」

 

 奇しくも……いや奇しくもではないな。

 相手は、わたしと同じ構えだった。

 

『ディバイィィン……バスター!!』

 

 音と光と衝撃が、身体に響いた。

 撃ち切ったあと、すぐに位置を変え、体勢を整える。こちらにダメージはない。……相手も無傷だ。

 仕留めそこなった……どころの話じゃない。

 あのタイミングからわたしのバスターに射線を正確に合わせ、あまつさえ相殺しきった?

 訓練不足の日々でも、自分の武器たり得る砲撃だけは腐らせちゃいない。それが必殺技であり続けるように研鑽を積んでいるつもりだ。今のはノックアウトするつもりで撃った。

 手札を知っている自分の偽物なら、速射砲を避けられはするだろう。しかしあの切り返しはそれとはレベルが違う。本物のなのはさんクラスじゃなきゃできない芸当だぞ……!

 一流の剣士は剣を一度交えるだけで相手の実力を量るというが、まさに今それを体験した気分だ。ただし自分は一流でもなんでもないが。

 脅威の度合いを上方修正する。先ほどの弱っちい偽セリナのようにはいかないな。というかなんでわたしの偽物はクソザコなんだ? 悲しい。

 ……気合を入れ直せ。

 敵を見据えながら、デバイスを強く握りしめる。

 

《マスター》

「なんだ」

《彼女は先ほどのような幻術のたぐいではありません。会話を試みるべきです》

「………」

 

 えっ。

 

「あ、あの……」

「あ、ハイ……」

 

 対面の少女に話しかけられる。互いに武器を下ろし、わたしたちは自然と近づいていく。

 こちらから問答無用で攻撃したため、何の罪もないなのはさんのそっくりさんだとすれば、気まずい。基本目をそらしつつ、ちらちらと顔色をうかがう。

 ここまで近付くと、写真や映像でみた過去のなのはさんと全く同じ姿だとはっきりわかる。

 何と話しかけたものかこちらが悩んでいるうちに、やがて彼女は意を決したような表情になった。

 

「あの、ちょっと後ろを向いてもらっていいですか?」

 

 言う通りに180°回転する。……はっ! 何故従ってしまったんだ!? もしかしたら後ろから撃たれるかもしれない。

 思わず身を硬くしたところで、背中にぽすっと何かが寄りかかってきた。

 首をぐんとひねって横目で見るに、少女は何故かわたしに背中合わせで寄りかかり、片手で自分の頭とわたしの背中の高さをしきりに比べている。

 ……どうやら背比べをしているらしい。少女の頭はこちらのうなじにも届いていない。

 謎のひとときを終え、再び向かい合う。それにしてもなのはさんに似ている。

 

『あなたはまさか……』

 

 そっくりな声が重なる。まるでステレオだ。

 少女はわたしを指でビシッとさした。

 

「未来のわたし!」

「え!? ちがいます」

「え!?」

 

 わけのわからないことを言われたので、反射的に否定してしまった。今度はこちらが指をビシッとさす。

 

「なのはさんの新しいクローンの子!」

「え!? ちがいます」

「え!?」

 

 ちがうの!?

 

「未来……?」

「クローン……?」

 

 片や腕を組み、片や顎に指を当て、二人して考え込む。

 え、違うの? それ以外考えられなくないか?

 

「あ、あの……少し、お話しませんか」

「お話し……」

 

 それは、なのはさんのよく使う言い回し。

 彼女の言う通り。少なくとも今は、戦う場面ではないようだ。

 

 

「というわけで……今はシステムU-Dって子を捜索したり、闇の欠片を眠らせたり、未来から迷い込んだ人たちを保護したり……って感じなんです」

「ふーーーーん……」

 

 やべ、頭が疲れてきた。

 この話が本当なら、とんでもない異常事態だ。歴史に残るような事件かもしれない。

 だけどこんな話、知り合いの誰からも聞いたことがないし、前世の記憶にもない。

 リリカルなのはっていうのは色々メディアミックスがあったみたいだからな……ドラマCDのエピソードかな? あるいは、まだ読んでない方のコミックか……映画の新作かもしれない。ともかく、わたしの知識に無い出来事だ。

 さて。今の話が本当だとすると、自分の現状が見えてくる。

 つまりわたしは、いわゆるタイムトラベルをして、過去の海鳴市にいるということになる。

 

「なのはさんの言うことなら信じたいのですが……流石に荒唐無稽だ。時間を飛び越える魔法なんて、いくらなんでも聞いたことがありません」

 

 彼女には悪いが、まだ幻術空間である疑いは捨てきれない。

 

「あなたも、幻術や変身魔法で過去のなのはさんを象っている存在かもしれない」

「そんな……」

 

 偽物と言い切るには、ディバインバスターの威力はホンモノのそれだったが。

 

「とりあえずはあなたについていきますが、警戒する態度でいることをどうかお許しください」

「……わかりました」

 

 しゅんとした感じ。なんか心が痛い。

 

「その、あなたは未来のわたし……じゃないんですよね」

「はい」

「なら……あなたの、名前を教えてください」

 

 こちらの目を真っ直ぐに見て、そう言われる。

 優しい表情が、わたしの良く知るなのはさんと重なって、ドキッとした。

 

「セリナです」

「セリナさん! わたしは……」

「高町なのはさん」

「はいっ」

 

 可愛いなあ、小さいなのはさん。花の咲くような笑顔とはこういうもののことを言うんだね。

 先ほどはああ言いはしたが、正直目の前の少女にほだされつつある。

 このままこの海上に浮いていてもどうにもならないし、やはり彼女についていくのがいい、と思うんだけど、アイズはどう考えているかな。

 ちょうどそんなことを思ったとき、相棒が声を発した。

 

《魔導師らしき反応が2つ接近中》

「あ、それ、多分わたしの友達です。さっき通信で呼んで……」

 

 ヴァーミリオンアイズの警告に、なのはさんが答える。

 友達。ここが本当に過去の世界だとしたら、なのはさんの友達と言えば……。

 背後から、風を切る飛行魔法の音。誰かが来た。

 

「あっ、フェイトちゃん、ユーノくん」

「!!!!!!!!」

 

 そんななのはさんの声と視線につられ、首が180°回転した。

 

「え!? こわっ!?」

 

 顔を引きつらせた美少年がそこにいた。顔を引きつらせても美しいって何?

 やわらそうな金髪、翠色の瞳、美少女と言っていいその顔立ちに心臓が撃ち抜かれる。あと声。なんと可愛らしい音色だろうか。

 全身を見つめる。半ズボンで露わになった生足に目が行き、己の血流が加速していく。

 視覚と聴覚から得られる情報でわかる。この少年……ユーノさんだ。

 あと小さいフェイトさんもいた。お人形さんみたいでめちゃくちゃかわいい。

 

「は、その、すみません。失礼なことを……」

「ハァ……ハァ……ッ」

 

 なんだその、しおらしい態度……ちんまりして……存在が可愛すぎる……わたしを誘惑しているのか?

 

「もしかして、未来のなのは……?」

「ううん。その人はセリナさんっていうの」

 

 フェイトさんも、最初のなのはさんと同じようなことを言った。

 本当に過去の世界なのだろうか。

 

「いま、このお姉さんに現状を説明してたところなの。ふたりも手伝ってくれる?」

 

 そうして改めて、新たに現れたふたりの口からも、なのはさんの言うのと同じ事情が語られた。

 闇の欠片という、闇の書の残滓から生まれた偽物たちがそこら辺を徘徊している。

 闇の書の中に眠っていたという、システムU-Dと呼ばれる少女を保護したいが、まあハチャメチャに強い。トリプルブレイカー級の攻撃を受けて無傷。彼女が暴走すれば地球とその周辺の世界は消滅しかねない。

 今は未来から来た人達を保護しつつ、仲間たちと協力し、事態に当たっているとのこと。

 

「信じましょう。ユーノさんの言う事なら間違いない」

「ええーー!?」

 

 なのはさんが不満そうな声をあげた。

 思った以上にのっぴきならない現状である。トリプルブレイカーって、なのはさんとフェイトさんとはやてさんの合体技でしょ。あの星ごと吹き飛ばしそうな攻撃を受けて無傷って、ホラーか? 明らかに史上最強の敵だ。

 一応対抗策があり、今はその完成を待ちつつ、なのはさんの言ったように、闇の欠片を眠らせたりして回っているらしい。焦ってもやれることは変わらないようだ。

 ……わたしも時空管理局の一員だ。協力させてもらいたい。

 信頼してもらうため、こちらもある程度事情を話そう。自己紹介もしていない。

 

「わたしはセリナ・ゲイズといいます。なのはさんのクローンとして生まれた人間ですが、なのはさんにはとても優しくしてもらいました」

 

 そう話すと、3人はかなり驚いた様子である。反応したのはなのはさんのクローンという部分。そりゃまあ、驚くだろうなあ。

 こちらからすると、エースオブエースのような魔導師を量産するという違法な研究は、結構あちこちでやってるだろうなという感覚であるが、今はまだなのはさんは小学生だ。なぜ自分のクローンなんてものが生まれるのか、理由がわからないことだろう。

 それは聞かれれば答えるとして、今はもっと大事な部分を自己紹介せねば。

 

「あと、ユーノさんの将来の……」

「将来の?」

「でへへ」

「何? なんですか!? こわい!」

 

 やっぱり全部を言うのは恥ずかしいぜ。とりあえずこんなところで。

 おや、何やら落ち着かない様子だが、安心してください。きっと幸せな家庭にしてみせますからね。

 

「なのはの、クローン……」

 

 ……動揺した様子になったのは、フェイトさんだ。顔色が悪い。

 フェイトさんがこの手の話に敏感なのは当然だ。配慮が足りなかったか。わたしを生んだクローン技術はまさに、プロジェクトFATE――今彼女の頭をよぎっているだろう、フェイトさんの出生に関わる違法な研究だ。それがどこかで続いているかもしれないことは、大きなショックだろう。しかも親友のクローン。なんか存在していることが申し訳なくなってきた。

 せめて皆までは言うまい。

 

「フェイトさんにも、すごく良くしてもらいました。一番最初にあなたと出会えたから、今の自分がある」

「……そう、ですか」

 

 彼女も誰かのクローンとして生み出された人だからこそ、一番にわたしを保護しようと駆けつけてくれたことを、今でも忘れてはいない。まああの時は色々考えてオーリス姉さんについていったけれど。

 そんな感謝を込めて話しかけると、困惑しつつも微笑んでくれた。

 複雑そうな表情だ。聞かれれば答えるが、こちらからあれこれ伝えることはしないでおこう。

 話題を変えてしまうか。

 さっきから我慢していて、もう限界だ。

 

「ちょっと触ってもいいですか?」

「え、な、なにを!」

 

 手をわきわきさせて、ユーノさんをねめ回す

 うーん、余裕のない反応が新鮮でいいな。

 

「ダメですよ!」

「いいですか、フェイトさん?」

「どうぞ」

 

 許可が出たので、侵攻を開始。攻防の末、ユーノさんを背後から抱きかかえることに成功した。うーん、髪が良い匂い。

 ユーノ少年は身じろぎをして抵抗したが、わたしがぎゅっとすると緊張したように動かなくなった。横から顔を覗くと、少し赤らんでいる。よしよし。あててんのはわざとである。

 大人になる前の今の内からわたしに惚れさせるという狡猾な作戦だ。光源氏。

 

「ユーノさん。わたしのことはどうか、セリナお姉ちゃんと呼んでください」

「な、なぜ……?」

「呼ばないのなら、離しませんよ」

「……セ、セリナ、お姉ちゃん」

「ヌオオオオオオ!!」

「あ! ちょっ……ギブ!」

 

 何が起きているのかわからないが、今とても充実している。

 ハッ。もしや……いや、やはり、フェイトさんが囚われたという、自分の望む夢の世界へ誘う魔法を自分は受けているのだろうか?

 

「……むう」

 

 あっ、やばい。

 対面のなのはさんがなんか頬を膨らませているのを見て、戦慄する。瞬きの間にこれまでにないほど頭が回転し、冷や汗が出た。

 妬いてるっぽい顔だ。大人の方のなのはさんならともかく、このなのはさんはお年頃。あまり目の前でユーノさんにいつものようなことをやりすぎると、逆にユーノさんとなのはさんをくっつけることになりかねない気がする……!

 名残惜しいが、ユーノさんを解放することにした。

 

「ふう……」

「ふう……」

 

 ため息がふたつ。ひとつはユーノさん、もうひとつはわたしである。何か込められた意味が違うかもしれない。

 

「セリナさんは、その、わたしのあとに生まれたんですよね?」

「はい、もちろんそうですが」

「その、あの……なのはお姉ちゃん、って呼んでもらってもいいですか……?」

「ええ……」

 

 もじもじしながら言葉を紡ぐなのはさんは可愛らしいものだったが、言ってることがちょっとアレだった。

 さっきムッとしてたの、そんなこと考えてたの……?

 要求される側になってわかる恥ずかしさがわたしを襲った。いやあちょっと、それは。

 

「ふふ」

 

 くすりと、フェイトさんが笑った。

 

 

【バトル3】

 

 今の拠点は次元航行船のアースラだという。いざ転移をしようというときに、新たな人影が現れた。

 

「おや、あなた方は……」

 

 現れたその子のことを簡単に言い表すと、『黒いなのはさん』だ。

 今度こそ偽物だろう。デバイスを構える。

 

「シュテル!」

「ん?」

 

 知り合いか? 

 こんなそっくりさん、わたしの記憶にないが……。うーん、後で聞こう。

 というかなのはさん大丈夫かな。自分と同じ顔の人間に囲まれちゃったら、しんどい気分にならないだろうか。

 ちらりと様子をうかがってみる。

 

「きゅう~」

「ああっ、フェイトちゃん!」

 

 先ほどから静かだと思ったら、フェイトさんが目を回してしまっていた。そっちかー。

 いや無理もない。まだ心の整理をしている途中の時期だろうに、プロジェクトFが続いていることを示唆され、なのは顔が3人も揃ってしまったのだ。

 あまりわたしは近づかない方が良いだろうか。

 

「ふむ……」

 

 黒くてクールななのはさんと、目が合う。何やら考えるような間が空いた。

 

「ナノハ。師匠。先ほどぶりですね」

『師匠……?』

 

 なのはさんとわたしの声が重なり、間にいるユーノさんにステレオ音声を浴びせかけた。

 

「ナノハはともかくとして、なんでしょう、師匠。わたしというものがありながら、その女性は」

 

 なん……なんだと? え?

 

「ユユユユーノさん? 彼女とはどういう関係ですか?」

「そうだよユーノくん。いつの間に仲良くなったの?」

「いや! 話すのまだ2回目くらいなんですけど!」

「ほんとかなあ……」

 

 落ち着いたところで、少し話を聞いた。

 彼女の名はシュテルといい、姿はなのはさんのコピーだが明確に別人だという。闇の書の奥深くで眠っていた存在で、この事件の関係者らしい。

 より詳しい話はアースラで聞かせてもらおう。

 

「からかい甲斐のある方ですね。それでは、冗談はさておき」

 

 どこからどこまでが冗談なんだ……? わたしの第六感がこの少女を脅威判定しているんですけど。

 

「セリナ。ナノハの姉妹でしょうか」

「あ、ええと……」

「うん。セリナさんは、わたしの妹なの」

 

 妹にされている……!

 嬉しいけど、なんか恥ずかしい。

 

「彼女を保護するならば、あなた方は一度拠点に戻るのも良いでしょう。こちらはお任せを」

「シュテル、ありがとう」

 

 良い子っぽい。性格はちょっとファンキーだけど。なのはさんと同じ顔なのに、ギャップがあってなんともこう……魅力的に感じる印象がある。

 ここが過去の世界だとして……なのはさん達にこんな知り合いがいたなんて、聞いたことないんだけどな。いたらユーノさんをとっくにとられていておかしくない……。

 帰れたら、ユーノさんにこの事件のことを聞いてみよう。……帰れるのかな? 帰れるよね? でないと、ユーノさんが、わたしより年下になってしまう。

 ちらり。

 

「……? どうかしましたか、セリナさん」

 

 ……アリだな。

 いや! いやいや! だめだめ。あちらのユーノさんと……優しいひとたちと過ごした日々を、無かったことにはしたくない。

 あとあっちが年上じゃないとこっちから甘えにくいみたいなところあるじゃない?

 みんなの落ち着いた様子から、未来人については既に解決しているとみた。落ち着いた場所で改めて話を聞いてみよう。

 

「では、なのはとフェイトは、セリナさんをアースラへ。僕が転送するよ」

 

 え? ユーノさんは来てくれないの?

 シュテル氏とは二人きりにはしたくないんだが。

 

「さあ、一か所に集まって……ん?」

「待ってユーノくん、これは……」

 

 シュテルちゃんも含めて、自然と全員で一か所に固まる。

 新たな人影が現れたからだ。そしてそれは、今度こそ『闇の欠片』だった。

 なのはさんがさらに2人、出現した。表情には活力がなく、こちらをじっと見ている。いや訂正、5人だ。いや……、

 10人。20人。……待て待て。ストップ。

 気が付くと、数え切れないほどのなのはさんに、我々は囲まれていた。

 

「なんだよ、この数……!」

 

 思わず口調も荒くなる。こんなことがありえるのか? 

 これだけの戦力で対抗できる事件じゃない……!

 

「なのはさん、平気ですか?」

「う、うん。だいじょうぶです」

 

 よく見るとなのはさんだけではなく、わたしや、シュテルさんの偽物もいる。

 これだけ同じ顔が並ぶと……さすがにきついものがある。なのはさんは平気だというが、戦闘が始まればフォローに回ろう。……自分も同じ顔なので、良い気分ではないが。

 そうだ、フェイトさんは!?

 そちらの方に首を向けてみると……なんてことだ。あまりのことに、思わず口を手で覆う。

 

「し、死んでる……」

「ああっ、フェイトちゃん!!」

 

 フェイトさんは空中で白目を剥いて気絶していた。

 いや、シャレにならないこと言っちゃったな。デバイスが浮遊状態を保ってくれているのだろうけど、それがなければ海面に墜落してしまう。

 

「ユーノさん、フェイトさんをお願いします」

「はい」

 

 ユーノさんをフェイトさんのフォローに回し、こちらは残りの3人で対抗するしかない。

 最初に出会ったわたしの偽物もそうだったが、向こうからすぐに襲い掛かってくることはないらしい。だが、これだけの数に一斉に攻撃されたら、このメンバーでもひとたまりもないぞ。

 

「シュテル、なんでこんなにわたしたちの欠片が?」

「ナノハっぽい人物が一堂に会したのにつられて、集まってきてしまったのでしょう」

「そんな習性あるの!?」

「さあ……適当に考えました」

 

 あれ、関係者じゃないの……?

 

「あの子たちのことは良く知りません。年に一回、お年玉をもらうときにしか家に遊びに来ない親戚の子どもみたいなものです」

「うーん、それは知らないね」

 

 なんでそんな例えが出てくるんだ。なのはさんも納得してるし。君たちまだもらう側でしょ。

 

 さて……どうする。

 まともに相手するべきではないな。一旦逃げるべきだ。

 ユーノさんを見る。既に転移の術式を組んでいるようだが、間に合うか?

 もしその前に敵が動き出したら……やはり、二人の力が必要だ。

 そういえばシュテルのことをなんと呼ぼう。なのはさんには敬称をつけているわけだし、こっちもそうした方が良いかな。

 

「なのはさん、シュテルさん! 力を合わせましょう!」

「はいッ!」

「……!」

 

 む、返事がないが、ダメか? 協力関係ではないのか……?

 

「このシュテルさんにお任せください」

 

 心なしかドヤ顔に見える。気に入ってくれたっぽい。

 周囲を改めて確認する。頭上を闇の欠片たちが埋め尽くし、逃げ場は海中だけ。それも選択肢のひとつだろう。

 すぐに動けるように気を張る。

 ……なのはさんは強いし、シュテルさんも結構強そうな雰囲気だけど……今はわたしのほうが年上だし、局員としてのキャリアも上ってことになる。

 守らなければならない。

 

「まずい……!」

 

 ユーノさんの声がした。欠片たちが一斉に、杖をこちらに向けたのだ。

 転移は間に合わないのだと分かった。

 わたしはとっさに飛び出した。

 

「セリナさん!」

 

 なのはさんの声。力を合わせましょうなんて言っておきながら何も思いつかず無茶をするようなやつを、わたしの大好きな教導官は許さないだろう。

 闇の欠片たちの注意はうまく引けたようだ。数え切れない砲塔が、こちらへと向いた。

 頭の回転速度が急激にあがり、周りがスローモーションに見える。これは、やはり、判断ミスだったかもしれない。こちら側は防御力が売りのメンバーだった。4人で全開の障壁を張った方がよかったか――

 

「ママ! 危ない!!」

 

 知らないような知っているような、不思議な響きの声が、すぐ近くから聞こえた。

 ひどい炸裂音と閃光に、思わず目を閉じる。

 ……おかしいな。ダメージが無い。死んだか? わたし。

 

「……しまった。つい……」

 

 目を開くと、わたしを庇うように、ひとりの少女がそこに立っていた。

 ……誰だ? 声は似ているけど、なのはさんでもシュテルさんでもない。

 私達はイエローの防護膜で覆われていた。……今の一斉砲撃を、ひとりで防いだのか?

 彼女はぼそぼそと呟きながら、こちらを振り向く。ちらりと見せたその横顔は。

 

「金髪の……なのはさん……?」

 

 白を基調にしたジャケットとロングスカート。歳は自分と同じくらい。その顔は、さっきから気が狂うほど見ているものと、つくりが同じ。

 ただ、髪と瞳の色は……わたしやなのはさんではなく、わたしの大切な人によく似ていた。

 




あとがき
なのハーレム

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