Fate/EXTRA ニトクリスと行く月の聖杯戦争 作:くりふぉと。
「――――は!」
気がつけば、目覚めはいつも唐突だった。
夢を見た感触もない。
気がつけば通学路を歩いている。
頭痛は日増しに強くなって行き、ついに警鐘のように脳に鳴り響いた。
その日。
あまりに強い痺れに、平時より2分だけ早く目が覚めた。
朝の通学路を行く。
午前7時半、雲一つない晴天。
なのに季節感は曖昧だ。
今が何月の何日なのかを考えようとすると、目まいで全てが真っ白になる。
気を抜けば、昏倒して朝のベッドに戻っているかもしれない――
そんな、益体のない想像を、これまでずっと抱いてきた。
――朝のベッドに戻る?
どういうことだろう。
まるで、ゲームでセーブポイントに戻るかのような……?
急ぎ足のクラスメート。
おしゃべりで賑わう通学路。
いつも通りの投稿風景。
何一つ変化がない。
何一つ変化はない。
深く考えると眩暈で視界が真っ白になりかける。
今日も、校門の前は混み合っている。
どうやら投稿してきた生徒たちが呼び止められているらしい。
何が起こっているのかは――――
校門には黒い学生服がひとり。
生徒会長である/と記憶している
友人でもある/と記憶している
柳洞一成の姿が見える。
この初体験は、既にわかっている。
一成は視線に気が付くと、人並みをかき分けてこちらにやってくる。
彼は初めて開示する情報のように、丁寧なチュートリアルを口にした。
知っていた。
知っている。
この展開は知っていた。
もう、幾度なく知っている。
頭痛がする。
眩暈で、一日の開始に戻されそうになる。
その強制退出に、意識をかみ殺して堪えた。
「では、まずは生徒証の確認だな。
言うまでもないが、校則で携帯する義務がある」
おまえは誰だ、という質問。
決まっている。
いつもは眩暈で曖昧にされる質問に、はっきりと回答する。
「よろしい。
天災はいつ起こるかわからんものだ。
有事の際。身分証明が確かだと皆助かる」
吐き気がする。
気分が悪いのは自分の体調不良ではない。
吐き気がするのは、自分以外のすべてだ。
この世界そのものが、同じすぎて気持ちが悪い――――
「それでは制服へ移ろう……襟よし! 裾よし! ソックスもよーし!」
どいてほしい。
その繰り返しを辞めて欲しい。
黒い制服を押しのけて先に進む。
乱暴に押しのけられた彼は、
「次は鞄の中身だが…………うむ。ノート、教科書、筆箱、異常! 違反物のカケラも見つからん。爪もきっちり揃えられているし、頭髪も問題はない……と。
うむ、実に素晴らしい。どこから見ても文句のつけようのない、完璧な月海原学園の生徒の姿だ!」
誰もいない虚空に向かって、高らかに独り言を言っている。
不気味、なんてどころの話じゃない。
頭痛がする。
悪寒をのむ。
確信がある。
ここは違う。
ここは、決して自分の知る学校じゃない……!
行かないと。
早く目覚めないと。
何もかも手遅れになる。
目覚めは一体……誰の為に……!