Fate/EXTRA ニトクリスと行く月の聖杯戦争 作:くりふぉと。
突然、関係ない話失礼しました。
異界の先――
そこは、準備室、というのにふさわしい。
理科準備室とか、音楽準備室とか、そんな感じ。
部屋に照明はついておらず、廊下からの漏れた光が薄暗い空間を形成し、本棚やテーブルの周囲を書類や雑貨が散らばっている。
奥には扉。
と。
「うわっ」
その傍らに。
無機質な人形だ。
誰かが潜んでいるかと思って、驚いてしまった……
ただの人形でのっぺらぼうなわけだが、側面にオレンジ色の線が入っている。
薄い金属で出来ているよう。
すると。
この人形は、この先で、
自分の剣となり、盾となるもの……
どこからともなく、そんな声が聞こえてきた。
これが、従者?
分からないことだらけだが、何をすべきかは分かる。
ギシリ、と、その人形は立ち上がり。こちらに追従しようと動く。
非日常な現象も、今となっては受け入れるしかない。
その、奇妙な従者とともに、新たに出現した扉へと足を踏み出す――
◇
そこは、闇だった。
闇を足元の線だけが目立つ。
走り出す。
怖さはあると言えばあった。
でも、今更こんな異界への道を知ってしまった中、戻ろうなんて思わない。
たぶんその方が後悔する。
それなら、何が潜んでいるか分からない、この道の向こう側。
この世界の真実を知りたい。
かつかつ、と厚いガラスのような床タイルの上を、音を鳴らしながらひたすら走る。
従者は一定距離を保ち後続する。
と。目の前に淡く光る物体が浮かぶのを見つける。
「それは敵性プログラムだ。触れると戦うようになっている。……といっても、実際に戦うのは君ではない。先ほど与えた人形だ。人形が攻撃を受け続け、もし壊れるようなことがあれば……君を守るものはもういない。すなわち注意したまえ。戦闘の仕方だが……」
男の声が続く。
ブレイク、アタック、ガード。
この三種類の命令を使い分ける。
ブレイクがガードに強く。
ガードはアタックに強く。
アタックはブレイクに強い。
それぞれが優劣の関係を持つ、三すくみのシステムというわけか。
要領は分かった。
先を進むと、球体の敵性プログラムと出会う。
それぞれ、ブレイクしか使わないもの、ガードしか使わないもの、アタックしか使わないものと、こちらを学習させるためのチュートリアルですよ、といわんばかりで倒すのは容易すぎた。
そして、広い間に出る。
「————!」
人が倒れている。
カタカタ、と。
その傍らに崩れていた人形が音を立てて立ち上がる。
何度か敵性プログラムと戦った今なら分かる。
あれは、敵だ。
人形が倒れていたのは何故か?
あの死体を殺して、次の獲物が来るのを一緒に倒れて待っていたのか?
それとも別の人形に倒されてたけど、新しい人間がやってきたらそれを殺すようにプログラミングされているのか――?
様々な疑問点が一瞬で浮かぶも、考察している余裕なんて、ない。
人形は、大きく体を振ったと思うと、そのままこちらに近づいてくる――。
背筋が凍る。
いきなりの、感情のない殺人鬼の登場に、あわてて自分の従者である人形をあてがう。
しかし。
こちらの目論見もほぼ看破されていたかのように、数秒後には従者は跡形もなく破壊される。
「――――っ!!」
一瞬、意識が消し飛ぶ。
それが戻ったのは、膝をつき床に上半身をぶつける自分の状態。
「……ふむ、キミもダメか」
……遠く、声が聞こえる。
「そろそろ刻限だ。
まだ128名に揃ってはいないが、仕方あるまい。
キミを最後の候補とし、その落選を以て今回の予選を終了としよう。
――さらばだ。
辺獄の焼却炉にて、安らかに消滅したまえ」
「――――ぁ」
突然、軋んだ視界に、土色の塊がいくつも浮かび上がった。
いや、今になって見えただけで、元からそこにあったのかもしれない。
それは、その塊は、幾重にも重なり果てた月海原学園の生徒たちだった。
先ほどの彼だけではなかったのだ。
ここまで辿り着き、しかしどうすることもできず、果てていった者たちは。
それは自分でも理解できない衝動だった。
死ぬのが怖くて諦められないのではない。
むしろ楽になりたがっている。
なのに、なぜ懸命に、体は力をこめて立ち上がろうとしているのか。
その理由が分からない。
なぜ殺されるのか分からない。
どうして自分がここにいるのが————
なら————分からない、で済ませてはいけない。
否。
自分は心を持って目覚めたのなら。
分からないままで終わるのだけは、命がある限り許されない……!
まだ、生きたい……!