Fate/EXTRA ニトクリスと行く月の聖杯戦争 作:くりふぉと。
「――その強い疑問、聖杯の代行として聞き逃せません。
貴方は、死に瀕しながら己が生に疑問を抱き、死に飲まれながら自らの不明を恥じた。
――よく言いました。
……その心の在り方を誰が見過ごせましょうか。
貴方のその叫び、この私が聞き届けましょう!」
清廉で優しい声。
それが第一印象だった。
そんな思考をかき消すかのように。
ガラスの砕ける音がして、ともに部屋に光がともった。
軋む体をどうにか起こし、頭痛に耐えながらあたりを眺める。
部屋の中央には、いつの間にか、ぼうっと何かが浮かび上がりつつあった。
紫のロングヘア。
褐色の綺麗な肌が露出されている。
にも拘わらず、清楚な印象をも伴っているのは、その瞳の輝きのせいだからだろうか。
見惚れてしまう。
今は、そんなことを考えている場合じゃない、と分かっていてもこんなことを考えてしまう。
「一応、念のため、問いましょう。貴方が私のマスターなのですね?」
マスター……とは。
正直な回答を言うと、分からない、だが。
ここで違う、と言ったらどうなるのだろう。
多分、ここは肯定していい流れ、いやしなければいけないのだと。
そんな使命感に駆られる。
こく、と彼女の目を見て頷いた。
彼女はそれを、受け取ってくれた。
「ここに契約はなりました。貴方は瀕死の身です。頭を垂れない、不敬の態度には目を瞑りましょう。
この
そう言い、人形と対峙し、彼女は杖を振り上げる――――
「いでませえぇい!」
黒に近い、紫の何か。
霊と言うのが適切だろうか。
とにかく、霊が召喚される。
それが、人形の周囲をうごめき突撃する。
金属を砕く音が劈く。
あっけなかった。
あれだけ、この命を削る、恐ろしい存在であった人形はあっけなく散った。
「す……ごい」
思わず声を漏らしてしまう。
なんて心強い存在なのだろう。
「ほら、いつまで座っているのですか?」
彼女に手を引かれ、立ち上がる。
「ぃたっ……!!」
と、握られた手がわずかに発熱した。
……鈍い痛み。
何かを刻まれたような。
「なんだ、これ」
そこには、3つの模様が組み合わさった紋章にも見える、奇妙な印があった。
入れ墨のように皮膚にしみ込んでいる。
「それは……」
彼女が口を開く。彼女は既に知っているようだった。
しかし、予め決まりごとだと言わんばかりに、どこからか先刻の男の声が響き出す。
「手に刻まれたそれは令呪。
サーヴァントの主人となった証だ。
使い方によってはサーヴァントの力を強め、あるいは束縛する、3つの絶対命令権。
まあ使い捨ての強化装置とでも思えばいい。
ただし、それは同時に聖杯戦争本線の参加賞でもある。令呪を全て失えば、マスターは死ぬ。注意することだ」
「では洗礼を始めよう————」
何を言っているのか、もう意識で捉えることはできない。
そんな状態の中、辛うじて聞き取ることが出来た言葉。
「さあ、聖杯戦争の幕開けだ——」
ニトクリスの言葉遣いに若干の自信がありません……どうぞ指摘・違和感などありましたらよろしくお願いします。