Fate/EXTRA ニトクリスと行く月の聖杯戦争 作:くりふぉと。
ここを除いたら、設定ガバガバになるかと思ったので、適当に飛ばしながらニトちゃんとのやり取りをご覧ください。
夢。
夢を見ていたようだ。
「あ……れ」
最初に聴覚を刺激したのは、小鳥の囀り。
視界にまず入ってきたのは、白い天井。
タイルを仕切る黒い線以外は、白い平面が広がっている。
胸元には、軽い布。ベッド。
そこに横たわっている自分。
この雰囲気……保健室か。
いつの間にか倒れて、誰かに運ばれたみたいだ。
「――――ってことは」
あの違和感。あの未知への扉の先の世界。
そして自らを殺しにかかった人形とか……サーヴァントは夢だった?
――全て、夢?
「ようやく目覚めたのですね。マスターが虚弱体質などこの先が思いやられますね……」
え。
ベッドの傍らの、何もない空間から、突然。
声と共に、一人の女性が姿を現す。
「愚かですね……この私を数刻も放置プレイするなど身の程を弁えぬ、愚か者」
こちらを見下ろす眼差しで、かつ耳ざわりの良い声で突然、罵倒してくる。
これはこれで……いや。そんなことよりも。
その姿は、忘れようもない。
強烈な印象を残したその姿――
褐色肌の、露出度の高い格好が特徴な女性。
そして、頭の上には兎のような耳。
そういう性癖・趣向な人格、とも受けとることができるが、恐らく違う。
胸元、腰には薄い布に紫と黄金の装飾をあつらえた格好。
これは、元々それが彼女の常識における、彼女たらしめる正装なのだと直感的に感じた。
……もっとも、外見や性別の判断はこの場合、意味がないのかもしれない。
なにせ相手は人間ではないのだし。
「ですが、許しましょう。聖杯戦争の本選には間に合う。むしろこれからなのですから」
良かった。
と思ったが、それなら罵倒する必要なかったのでは……ただ愚か、と言いたかっただけではなかったんだろうか、この人。
「ところで、貴方は聖杯戦争のことはどこまで理解して参加しているのですか?」
「聖杯戦争?」
あの時も聞いた言葉だけれど、いったいどういうことなのか、未だに分かっていない。
「な……なんと! 貴方は基礎中の基礎も知らないというのですか。よくマスターとして生き延びたものですね」
彼女はショックを受けたり、ジト目したりと表情が豊かだ。
罵られているはずなのに、不思議と不快感がない。
「……まあそれを手助けしたのも私ではありますが。
差し伸べた手を途中で手放すほど、私は野暮ではありません。この私が教えて差し上げましょう。
貴方、さすがに聖杯はご存知でしょう。
尊き者の血を受けたとされ、あらゆる願いを叶えると言われるあれです」
聖杯……というと、あの黄金の杯だろうか。
西欧の伝承の端々にあらわれる何かしらのシンボル。
アーサー王の探索単などでも有名な、奇跡を起こす聖遺物だ。
「もっとも真作の所在は定かではありません。世に出てくるものは贋作ばかり。人の世は愚かです。
だが、それは問題ではありません。それが願いを叶える願望機としての能力を持っていれば、贋作であれども、それは聖杯なのです。
かつて、そういった聖杯を巡る魔術師たちの儀式があった。
それを聖杯戦争と言います。
もっとも。
アレは儀式とは名ばかりの生存競争。
所有権を決める殺し合いに他なりませんでした。
一方、この戦いは、その聖杯戦争を模した戦いのようです。
そうでしょう?
魔術の絶えたこの時代でなお魔術師と呼ばれる、最新の
「
聞きなれない単語だが、どうも、自分はそういったモノとして認識されているらしい。
それにしても聖杯戦争というのが殺し合いというのは一体……?
「仕方がありませんね。
互いに雌雄を決する以上は、敗北者は必然であり――死は避けられません。
いいですか。聖杯戦争の仕組みは単純です。
選ばれた魔術師はサーヴァントと共に戦場へ赴き、一騎打ちの勝負を行うのです。
敗れた者は全ての令呪を失い、また、戦いの結果によっては命をも落とすでしょう」
「令呪……そういえば」
思わず左手に目をやる。そこには紋章にも似た奇妙な模様が3つ、刻まれている。
あの時の痛みは、今はもう無い。
「その勝負を繰り返して、最後まで生き残った者が聖杯へと至る――という筋書きなのでしょう。私も詳しくは知りません。
細かなルールが色々あるようですが、つまりは勝利し続ける。それだけです。簡単なことです」
それほど簡単な話じゃないだろうし、素直に納得もできなけれど、ひとまず話を進ませたい。
「うーん……わかった」
とにかく、好む好まざるにかかわらず、その聖杯戦争とやらに参加してしまったのだ。
「……曖昧な返事ですね。まあいいでしょう。我が同盟者よ。言葉だけでは理解が追い付かないこともあります。