Fate/EXTRA ニトクリスと行く月の聖杯戦争 作:くりふぉと。
早くオリジナルの展開に持っていきたい……です。
ガラガラと音を立て、紫の足元まで伸びる長髪の、白衣の女性が入ってくる。
間桐桜。彼女も前の学校で保健用務員として働いていた。
彼女は――
「目が覚めたんですか?
よかったです。身体の方は以上ありませんから、もうベッドから出ても大丈夫ですよ。
それと、セラフに入られた時に預からせていただいた記憶は返却させていただきましたので、ご安心を」
この世界を理解している様子。
どうやら彼女も何かしらの役割を与えられた存在なのだろう。
「聖杯戦争に参加する魔術師は門をくぐるときに記憶を消され、「月海原学園の一生徒」として日常を送ります。……そんな仮初の日常から自我を呼び起こし、自分を取り戻した者のみがマスターとして本選に参加する――以上が予選のルールでした」
なるほど。彼女は本選前の説明役のAI……といったところだろうか。
「そして、貴方も名前と過去を取り戻しましたので、確認しておいてくださいね」
「――ん?」
名前と記憶を取り戻す……?
それはおかしい。
確かに名前ははっきりと口にできる、がいまだに自分の過去の記憶を思い出せない――!
「記憶の返却に不備がある、ですか……それは私には何とも。私はただ聖杯戦争の運営用AIですので」
講義の声はあっさりと無視された。
やはり、彼女の役割をこなすだけの仮想人格のようだ。
「それからこれ、渡しておきますね」
彼女から、スマートホン型の何かを手渡される。
「これは……?」
「これは携帯端末機。本選参加者に与えられます。ステータス、マトリックス、装備、アイテムの4つの項目を確認できます。本選の参加者は、この端末に送られるメッセージに注意するように、とのことです」
ステータスは、自分であるマスターやサーヴァントの能力の確認。
マトリックスは……空欄が多くて分からない。
装備は文字通り、装備しているものの情報。
アイテムも文字通り、所持しているアイテムの情報。
この4つの項目に分かれているようだ。
分からないことが多い、この世界。
聖杯戦争……本選……とにかく情報は重要だ。
そのメッセージとやらを見逃さないようにしなければ。
「それでは、私からは以上です。厳しい戦いになると思いますが、頑張ってくださいね」
保健室の扉を開く。
「ついに本選の開始ね。よく記憶を取り戻せたって自分でも思うわ」
「もし、敵同士になったら容赦はしないから――」
廊下を出ると、マスターと思われる生徒たちの会話する姿が見受けられる。
この校舎の中に128人もいるのだから当然といえば当然か。
各々、意気揚々とした、そんな空気だ。
この、セラフにやってくる以前の記憶があればこそなのだろう。
逆に、偽りの学園生活を送る以前の記憶がない自分にとっては、未だに聖杯戦争というのが実感できない。
「私……もう対戦者が決まったみたい。いよいよ本選って感じ! 緊張してきたわ」
「ああ……僕も対決に向けて対策を練らないとな」
対戦者?
……ああ。さっき保健室でキャスターが言っていた殺し合いをするマスターとサーヴァント同士による対決のことか。
そういえば自分の対戦者は誰なのだろう……?
重要なことだ。他のマスターに質問しても別に問題はないだろう。
「あのーすみません。対戦者ってどこで分かるんですか?」
「え……まだ対戦者が決まってない? 管理者の言峰神父を探してみたら?」
「ことみね……教えてくれてありがとう」
礼を言って、踵を返す。意外にも親切に教えてもらえた。
ことみね、という人名は聞きなれないが、探す他ないだろう。
相手が分からなくて不戦敗になりました、なんてなったらシャレにならない。
とにかく足を使ってこの世界のことを知らなければ。
そんなかんだで、3階、2階、と探索していく中で1階に降りた瞬間、神父、という特徴に合致するそれらしき人物が目の前にいた。