8区のバケモノ達は隻眼の王と共に   作:傘あきさめ傘

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あきさめです。
2話目になります。




2話 温心

「あ、ああああ、あああああああああああああああ!?」

 

「でだ、喚いているとこ悪いけど…このままやり続けるとお前の血で床があふれ返っちまうんだが、どうする止める?帰る?」

 

出来れば、俺としてはこのまま降参して帰ってくれれば一番嬉しいんだが。

3分設ける必要なかったなぁ…。

いや、まぁ単純に30秒とか、1分とかにしても良かったんだろうけど、絶対その条件だと飲んでくれなさそうだし、主導権取られたくないし。つーわけでヒーローが登場するまでの時間&カップ麺が出来上がるまでの時間がちょうど良いってことで、3分にすることにした。

我ながら安直すぎる時間設定だとは思う。

 

「き、きしゃまああああ!!おれの、おでのあじををおをおお!!」

 

ようやく自分の置かれている状況を認識し、そして俺に対してものすごい形相で、目を血眼にしながら、っていうか文字通り血眼(赫眼)になって、睨んでくるヤモリ氏。

 

おーおーめっちゃ興奮してんなオイ。

そんな鼻息荒くしてると、年がら年中発情期のオッサンに見えてくるからやめんしゃい。

いや、そうさせてしまったのは俺でしたね、はい。すんません。

 

一応、これ以上やり続けるか本人にもう一回確認するとしよう。

 

「おーいもしもーし聞こえてるか一。もう一回言うけどまだやるの?」

 

「あ、あああああ、、ああだmりまえぢゅああああ!!ころしゅう!ころすすうう!!

ぶっごごろろおおろしてやるううヴヴヴ!!」

 

はぁ~ですよねー。

まぁ完全にお怒りモードだから、当然と言えば当然の予想した答えである。。

と、内心ヤモリの戦いに対する執着心に呆れていると、奴の腰から、マゼンダ色の物体が一気に膨張する。

そして、それは徐々に形を変え、3本の鋭くトゲった尻尾に変貌していった。

トゲの一つ一つは、鱗が派生して発達したものらしく、いかにも表面の肉を削り取ることに特化した形状になっている。

これが喰種の持つ相手を殺し、食べるために殺傷性を高めた捕食器官

いわば『赫子』である。

 

形状とあの特徴からして、鱗赫だろうか。

 

「ぶっごヴぁしししsてえええええぐいごろしゅううくヴううヴう!!」」

 

うるせぇな、ここは地下なんだからもう少し音量下げて

発狂しろってんの。痛いのは重々承知してるけどさぁ。

あと何言ってんのか分かんねぇからもっとはっきりと喋ってくれない。

ただ叫ぶだけだったら、赤ん坊やチンパンジーにだってできるんだから、いい歳した大人が下手に喚かないでくれますかね?

いや、そうさせてしまったのは俺ry……

 

だが言語がまともに話せてないってことはアレだな…。

 

 

そう俺の予想に応えるように、ヤモリが右手で指の関節を再度鳴らす。

次の瞬間その3本の鱗赫は、突如形を変え、ヤモリを体を覆い始めた。

赫子は、集中的に奴の右半身を多い、腕は、唸るように巨大な赫子の腕へと変わる。

そして、奴の頭部も腕と同様、赫子に覆われ、口からはひどく唾液を垂らしながら、シューシューと熱のこもった荒い息を吐いていた。

切断した足も、いつの間にか止血しており。断面から赫子が形成され、立てる状態に持ち直している。

さながら、巨大化し、凶暴化した爬虫類の行く末を見ているかのようだ。

まさに怪物(赫者)。

ただし、形状からして発達段階はまだまだ低いことが見て取れる。

半赫者で間違いないだろう。

 

「さてさて、どう対処していくか…。」

 

とりあえず、まずは赫子の分身体を形成して、奴に出向かせ奴の振る舞いと攻撃方法と観察してみることにしよう。

赫子の一部を切り取り、そのまま俺の容姿とそっくりの分身体を作り出して、奴の所に向かわせる。

勿論、たかが分身体の分際なので、本体よりもかなり力は劣るが、相手の力量を図ったり、おとりに使う分ににはちょうどいい。

 

と、そうだった…一応ガキどもの様子を確認してみる。

あいつらヤモリの姿見て怖がってねぇかな、と内心少し不安に思いながら見てみると彼らのリアクションはその正反対の反応を見せており、

 

「わーすごーい!!」

 

「なんか、絵本に登場する怪獣みたい。」

 

「あの赫子の肉、食べたら美味しいかな?」

 

と、それぞれ半赫者化したヤモリに恐怖を抱くどころか、興味を示していた。

心配した俺が馬鹿だったでやんす。

君たちのその強心臓っぷりには、さすがの俺も脱帽ですわ。

でもできれば、もうちょっと恐怖心を抱いて、警戒してほしいと八幡思うな。

一応、俺がいなかったら今のキミたちは赤ずきんちゃんよろしく、オオカミ(ヤモリ)に食べられているところなんだから、まったくしょうがない子たちなことで。

 

ま、それはさておき。

一応、安全のために二階フロアに避難させておこう。

 

そうして一本の手状の赫子を作り出し、ガキたち3人を掴んでぐるぐる巻きにする。

 

「「「わー!」」」

 

感嘆と歓喜の声をあげるキッズたち。

巻き終えた後、一気に二階フロアに赫子をあげ1階を展望できるテラスにそっと3人を下ろした。

 

「お前たち3人はそこで見てろ。勉強会はそのあとでやるから。」

 

「はーい!」

 

「がんばってねー!。」

 

「お肉よろしく!」

 

「おう。」

 

 

【挿絵表示】

 

もうこの際、何もつっこまんわ。

ガキどもの声援に一言答え、再度ヤモリに視線を向けると、

 

「おりゅああ、おらぁあ!!どうだぁああ!!でもおあしもぢぇないだろおお!!うらヴぁあああ!!ははははあはshしゃしゃあはははは!!」

 

俺の分離形成した、赫子の分身体をひたすら狂乱・発狂しながら殴っていた。

分身体とは言え、俺がヤモリに殴られてる様子はなんともシュールなものである。

なんせ片方は発狂しながら殴り、もう片方は無表情でサンドバック状態。

見ている気分としては、〇マ〇ラのサンドバックくんみたいにホームランバットでバッコン、バッコン飛ばされるぐらい複雑な気分である。

 

まぁいい、大体のおおよその攻撃パターンと強さは理解できた。

とりあえず、気を取り直して半赫ヤモリをやっつけるぞー。

やるぞ!やるぞ!!がんばるぞ!!!

 

それで赫者との闘い方は、主に二通りあるのだが、

まずひとつめは持久戦。

そしてふたつめは短期戦である。

まぁ、今回の場合、いや今回じゃなくても短期戦を採用。

赫者は、見た目の姿から分かるように、通常の喰種とはケタ違いの攻撃力及び耐久性を備えている。

一発でももろに喰らえば、それが例え強力な喰種でも致命傷になりかねない。

ただし、もちろん弱点もある。

それは、言語能力そしてそれを司る思考能力が著しく低下すること。

これにより、周囲の状況・環境に合わせた戦いが困難になり、ごり押しのパワープレイに走りがちになる。

つまりは攻撃や行動が単調化し読みやすく、戦略的な頭脳プレイを駆使して戦う喰種&CCGのメンツに対しては突破されることがあるということ。

また、その強大な力を発揮するためには、膨大な赫子のエネルギーが必要であるため、普段の戦闘に比べて、体力の消耗が激しい

 

そして、もう一つの弱点を挙げるとするならば。

それは覆っている赫子を剥がされると徐々に戦闘能力が低下することである。

これらの弱点を照らし合わせて、戦っていけばあとは持久戦、短期戦どちらでも構わない。

まぁ、そういうことです。

 

で、俺はどっちかっていうと、今日に限らずだが短期戦が好ましい。

戦闘に対して、赫子が短期戦に特化している性能だから、要は適材適所ってやつ。

じゃぁ、俺の赫子がどんな感じかって?

ははは、教えてやろうではないか!

まずはとにかく速い!速すぎて某○○○のごとくの主人公のスピードが止まっているかのように見えるレベルで速い。

まさに速きこと島風のごとく!40ノット以上の快速なんだから!

 

あと鋭い!そして形も自由自在・千差万別・多種多様!超便利!

それと目がたくさんある!手も歯も!超真っ黒!ぶっちゃけ超気色悪い!

あと全然見えませんが、これでも赫者です。はい。

まぁ、ボクの赫子自慢はこんな感じですね。うん。

 

誰に対して、こんな下らない事を言っているのか、自分でも訳わからんが、いい加減ふざけてないでさっさとやる事にしよう。

 

「う~し、それじゃぁとっとと片づけて外におっぽりだそうか。」

 

と、いう事でこの後どういった感じになっていったかというと、攻撃性に特化した無数の赫子を作り出して、四方からとにかくヤモリの赫子を剥いで剥いで剥ぎまくるごり押しプレイ。そして、その剥いだ赫子は俺の赫子が捕食しつつ、同時並行で一方的に攻撃して無力化していく流れとなっていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…結局床は血まみれかよ……これなるべく外に持ち出さねぇようにしねぇとなぁ。CCGの連中に足取りを付かせないためにも。」

 

 

 

「うっ・……くそ・……おまえ……っつ…。」

 

戦闘が終わり、へこんだ地面とそこラ一帯に広がるヤモリの血に俺は辟易としていた。

その俺に完全に外部の赫子を剥ぎ取られ、赫子状態の狂乱から解放され地面に這いつきながら悪態をつくヤモリ。

 

奴の状態はというとまず手足は一切切断していない。

ただ抵抗しないように紐状に赫子でぐるぐるにしてある。

一応、赫胞の損傷はそこまで激しくないから、死ぬことはないだろうけど、ただもう赫子を再生するだけのエネルギーは残っていない状態ではある。

まぁ止血は済んでるから、血が流血する心配はないだろうが

これ以上の戦闘は事実上不可能なはずだ。

 

「もう、これでいいか。別にアンタの命を取るつもりはこちとらはなからなかったから、マジでこれで引き上げてくれない?あと今日言ってた他の2人もえげつない程強いから、もうこれ以上、俺らと関わるのはやめてくれ。別によそでアンタがどんぱち他の喰種と殺りあうのは、一向に構わんから。」

 

そう言い終えて、ヤモリの体を赫子を巻き付け、地上へと持ち運ぶ。

 

「じゃぁ、コイツ外に返してくるから、ここで待っていてくれ。」

 

「わかった。」

 

「帰ったら、勉強教えてね。」

 

「っていうか、そのおじさんの赫子、ボクもたべたったぁー。」

 

「口に入れたところで、強烈な吐き気と悪夢に襲われるだけだからやめとけ。じゃ、ちょっくら行ってくる。」

 

地上へと続く階段を駆け上がり、人気の少ない暗がりの小道に出る。

あたりはすっかり夕方、夕日の赤い射光がわずかに差し込み、俺の頬を照らす。

そろそろ、雪ノ下達が帰って来る頃かな。

まぁ、この現場を見られるのも、後で問い詰められそうで色々とめんどうだから、さっさとコイツを放置して帰ろう。

どこで、下ろそうか…。

と、悩んでいると左前方から、のそのそと誰かが近づいてきた。

逆光で暗くてわからんが段々と近づくにつれ、ようやくそいつの全貌が明らかになる。

背の高い、それに合わせた独特の外套を身に包み、顔には不気味な口だけが描かれたマスクを着用している。

近づいてきても、特に話しかける様子はなく、終始無言。

こんな特徴の塊としか言いようがないやつは、俺の中では一人だけ。

去年こいつらの組織とどんぱちやって、危うく生死を掻い潜ったくらいだから、そう忘れるはずがない。

 

「アオギリの樹のところの、ノロだよな。いっとくが組織の勧誘ならお断りだ。お前らのところには入らいないし、双方が下手に干渉しないって言う決議であの戦いのあと決まっただろ。それとも、今日はなんか別の要件で来たのか?」

 

「…………………………………。」

 

無言。相変わらずの超無言スタイル。

ただ、言葉として出さなくても、無視をするわけでもないこいつは、俺の問いにスッと手を前に突き出し、人差し指を突き出す。

その指先の延長線のものがお目当てということなのだろう。

 

「もしかして、コイツの迎えか?」

 

俺の確認に無言でうなずき、背後から環形動物のような不気味な赫子を取り出し、ヤモリを回収していく。

ということは、この様子だとヤモリもアオギリの樹に所属していることになる訳だが。

部下の管理ぐらいしっかりしといてくれよ、幹部さんよ……。

中間管理職の大変さは俺にも大体理解できるけど、一応部下の躾は上司の責任なんだからさぁ…。

そう考えると、部下は部下で上司に酷使されなきゃいけないし、上司は上司で部下の失敗の責任を取らなければいけないから、どっちにしろ社会に出て働きたくねーな。

うん、俺の考えていることはやっぱり間違いじゃなかったね。

これなら八幡一生ニートでいいや

そしてここに宣言する、働いたら負けだ と!

 

まぁ、終わった事だし、もういい。

そう言えば、確かこのノロも赫者だったけか?。

あの時、こいつは戦闘に加わっていなかったからどんな能力を秘めているかは全く知らんが、多分見た目と同様、一筋縄ではいかなそうな雰囲気は感じ取ることはできる。

 

「要件はこれで終わりか?一応こいつにも言っといたけど、上の奴ら…なんだったけ?エトとタタラだっけか。あいつらにも、もう一回俺らに変に関わらないよう部下たちに注意しといてくれよ。マジで。」

 

「……………………スッ」

 

そういって人差し指を突き出した手とは、反対の手で今度は時計を掲げてきた。

ピピピと小煩いアラームが鳴り、それと同時に奴は元来た場所へと翻していく。

どういった行動原理で動いてるのか、ホント分からんやっちゃな。

 

 

しかし……ふぅ、短時間の出来事ではあったが、終わってみればかなり疲れたわ。

もともと、今日は休養日で一日中、地下でゴロゴロするはずだったのに、畜生…。

どうしよう…帰ったら血の処理もしないといけないし、ガキたちの勉強見るのもだるいしなぁ、ホントどうしよう。

まぁ、見てやるって言っちまった手前、やらない訳にはいかないが…。

 

「あーでもガキたちの面倒、もう全部雪ノ下達に丸投げしたい。」

 

「何自分の仕事を、他人に丸投げしようとしてるのかしら、そこの押しつけ谷君は。」

 

「うおっ、びっくりしたー。なんだよ急に声をかけてくるなよ。思わず驚いちまったじゃねーか。」

 

急に声を掛けられ、思わずのけ反ってしまったが、どうやら大学から帰ってきた雪ノ下と鉢合わせになってしまったようだ。

由比ヶ浜の姿は見えないが、どこか寄り道でもしているのだろうか。

と考えていると、雪ノ下の肩が小刻みに震えているのが見て取れる。

 

「あら、普段喰種に対しては冷静沈着でいるあなたが、私のような人間相手に動揺するなんて、珍しいこともあるものね。ある種これはあなたの弱点ではなくて?」

 

けっ、ほざいてろ。

その口元を手で抑え、クスクスと心底面白可笑しく微笑している姿に不覚にもドギマギしてしまったため、これ以上口答えする気もないが。

代わりに半眼で雪ノ下をジッっと咎めていると、その後ろから遅れて由比ヶ浜がパタパタ急いで帰ってきた。

 

「ただいまー。はぁ、今日も大学の講義疲れたぁー。ヒッキー今日何か変わったことあったりした?なんか夕方頃に外に出てるのも意外だなーっと思って。」

 

「それもそうね。いつも暗がりでゴキブリのようにしぶとく潜んで暮らしているあなたが、そもそも地上に出ること自体、あまりないことなのにね。」

 

「はっ、あまりゴキブリを舐めんなよ。

人間や喰種が生まれる太古から、姿・形変わらず今の今まで生き続けているんだから。その生命力の高さに俺たちは敬意を表することが大切だろう。気持ち悪いが。

それになんか、ぼっちだった奴らからしたら、何となく共感するじゃん。気持ち悪いが。

大型の肉食恐竜(リア充)に常に太陽の元での華やかな環境(学校生活)を占領され、暗がりで寂しく貧しい暮らししか生きていけないゴキブリたち(ぼっち)。

しかし、隕石衝突・氷河期の到来により、肉食恐竜及びその他の地上生物の大半は絶滅するなか、ゴキブリはしぶとく柔軟に厳しい環境を乗り越え、現代まで長らく種を存命を維持し続けることに成功したのだ。

だが時代が変わっても、彼らの存在が地上生物に持てはやされることはない。

カサカサと素早く動く気色悪い動きは、人間にとっては生理的に受け付けず、排除されるべき存在として、忌み嫌われそして真に孤高で惑星最強生物として君臨することになったのである。まさにTHE BOCHI!

つまり何が言いたいかっていうと「ゴキブリ=ぼっち」ということであり、「ゴキブリ=孤高で最強」、代入して「ボッチ=孤高で最強」という結論が成り立つ。

ここに俺はぼっち最強至上主義を唱える。」

 

「何を長ったらしく力説するかと思えば、そんな下らないことを考えるくらいなら、もう少しこの歪んだ世界を打破する解決案を考えてほしいのだけれど。まぁ、あまり否定できないのが尺ではあるわね。」

 

「あ、あははは……。でも確かになんかすごそう。相変わらずだねヒッキーは。」

 

ゴキブリの立派な生活史が分かってくれたようで、よろしい。

しかし、そんな苦笑も一転して二人は暗い表情に変わり、

 

「でも…本当に今日は何もなかったの?袖に返り血がついているみたいだけれど」

 

「あっ、本当だ!?……大丈夫ヒッキー?なんかあったりしたの。」

 

何かあったのではないかと、問うてくる。

やべ…返り血落としてから外に出てけばよかった…。

一応気を付けてはいたが…こんな袖裏のわずかな血の跡も見逃さないとは、流石雪ノ下である。

 

まぁ別にそんな心配するような事をしたわけじゃない。

ただ単純によその荒くれものさんが入って来て、喧嘩になって返りうちにしたってぐらいだから。

いや、どうせそのことを心配しているんだろうけど。

とりあえず誤魔化すことにしようか…。

 

「いや、別に何もねぇよ。ただ何となく外に……。」

 

言い終える前に途中で中断する。

いや、違うだろ。

そうやって今まで変に隠し事して、心配させて、そしてそれが時として亀裂を起し、俺たちはすれ違いを起したんだろうが。

例えばあの修学旅行の一件なんかはまさにそうだ。

あの時、しっかり彼女たちに俺が言葉を伝えていれば、あんなデカい騒ぎにはならなかったと思う。

 

 

そして、その数か月後の冬の夜に起きたある出来事で俺たち3人は約束した。

 

『何か辛いこと、めんどうな事、どんな些細なことでもいいから何かあったらなるべく話して。』

 

『あなたの背負っているもの、少しで良いから私たちに分けてくれないかしら。あなたの辛い顔を見ると、私たちまで辛くなってしまうのだから…。』

 

 

 

あの時、彼女2人は、辛そうに涙を流しながら、そして優しい顔でそう俺に言いかけてくれた。

そして、俺もその時誓ったはずだ。

その時、その時の自分のできる限りの「最善の選択」をとること。

それをいつも心にしまっていたはずなのに、いざという時に忘れてしまう。

ホント、どうしようもねぇやつ。

自分で言うのもなんだが。

 

でも、そんなしょうもない事をしてしまう俺にこの二人は手を差し伸べてくれた。

そして今なお俺の、俺たちの背中を支え続けているのだから…。

 

だから、ここは正直に話すとしよう。

今俺のできる「最善の選択」をとるために…。

色々小言を言われるだろうけど。

まぁそれにどっちにしろ地下にいるガキが今日の事を話すだろうしな。

あと地下にある血の海で、どっちにしろアウトであることは変わらない。

説教より彼女たちがその惨状にビビらない事の方が心配である。

でも多分大丈夫だろう。今までも何度か見てきているから。

 

「いや、悪い。あったわー。超あった。むしろ何もないことがなかったくらい超あったわー。まぁ、地下に行ったらガキの勉強教えながら色々話すわ。」

 

「やっぱり、何かあったのね……・。じゃぁ、地下でゆっくり聞かせてね。」

 

「うん!聞かせて!」

 

そういうと、二人の表情も明るくなる。

何となく分かっていたことだが、そう優しさと嬉しさを滲ませた表情をされると、こっちもどう反応すればいいか分からなくなる。

まぁ、今日のところは

 

「はいよ、じゃぁ、ガキたちのところに行くか。」

 

「ええ。」

 

「うん!!」

 

 

これで良しとしよう。

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

おまけ

 

「ところで、雪ノ下。一応全部俺が教えるけど、算数に関しては最後お前がチェックしてくれないか?計算苦手だからさぁ。」

 

「はぁ、飽きれたものね。筋道立てて物事を説明したり、計算して戦略を立てて行動することが得意なあなたが、なぜ数理関連科目ができないのか、理解に苦しむわね。一つの謎だわ。」

 

「いや、謎って言えば由比ヶ浜がお前と同じ上井大学に行けたことの方が、謎すぎるだろ。それこそ宇宙の法則が吹っ飛ぶレベルくらいに。」

 

「ちょっ!?ヒッキーそれどういうことだし!!」

 

「それもそうね。」

 

「ゆきのん、納得しないでよー!!」

 

「つーわけで由比ヶ浜。お前はガキたちの勉強は教えなくていいから。むしろ教えたらお互い不幸になるだけだから勉強が終わった後、グリとグラでも読み聞かせ頼むわ。」

 

「ええ、よろしくね由比ヶ浜さん。」

 

 

「ちょっと二人ともバカにしすぎだからー!!…ところでグリとグラって?」

 

「「え・・。」」

 

まじですか…。

 

 

 

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