Princess Principal ~Gearing BUILD and CROSS-Z~   作:ポロシカマン

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1-⑥

 「させるものか!!!」

 

 

首筋に迫った凶刃を、ちせが刀で受け止めた。衝撃で被っていた編笠が何処かへと飛んでいく。

鈍い金属音をかき鳴らしながら、紅い火花が二人の間に飛び散った。

 

 

「ハハァ、硬い!!いい刀だなァ!」

 

「…ッ、ヌゥ!!」

 

 

上げ受けていた大鎌を上方へ飛ばし、マスクメイカーに蹴りを入れて下がらせる。

 

 

「ちせ!!店長が!!」

 

「わかっておる!!しかし、この間合いでは…!」

 

「グゥ…フフ、まさかボディガードを雇ってたとはなぁ『俺』?」

 

「俺って言うな!!殺人鬼のくせに!!こっちはお前のせいで腸煮えくり返ってんだよ!!」

 

「こんのパクり野郎が!!戦兎はここにいるコイツだけだ!!てめぇなんぞが『桐生戦兎』を名乗るんじゃねぇ!!」

 

「ハ!ブチギレちゃってぇ…ま、それも今の内さ。自分の顔したヤツに刻まれる恐怖ってのを、たっぷり味合わせてやるよォ!そら!!」

 

 

マスクメイカーが満身創痍で横たわっていた店長をこちらに投げた。

 

 

「ぐわッ!?」

 

「ぐ!まずい!!」

 

「ハァーーッ!!」

 

 

店長で視界をさえぎられた一瞬、マスクメイカーが大きく距離を詰めていた。

……ダメだ!避けられない!!

 

 

「…させぬと言ったァアア!!」

 

「ぐぉあ!!」

 

が、ちせが床に転がった大鍋をヤツに向かって投げる。

それがクリーンヒットしてヤツを転がせることに成功した!

 

 

「今じゃ逃げろ!!」

 

「あぁ!!」

 

「助かる!!」

 

 

ヤツがひるんでいる隙を突き、店長を抱えてすぐさま厨房から離脱する。

 

 

「早く、医者に診せねぇと!!」

 

「くそ!!何処だ病院!!」

 

「あーー!!時間がねぇ!!」

 

「…………バン、ジョー……セント…?」

 

「店長!?今はしゃべんな!!」

 

「ハッハ……無事、だったのか、セント……もしかしたら…お前もアイツに、やられたんじゃないかと……」

 

「しゃべんなって!!!話はあとでたくさんするから!!」

 

「お前が……殺しなんか……するわきゃねぇって……信じてたぞ……きっと、よく似た誰かの、仕業だって……いっつも誰かが困ってるのを助けてるお前が……強盗なんて……するわきゃねぇって…」

 

「そんなこといいから!!」

 

「町のみんなと…ポリ公の所に行って…何かの間違いだって、言ったんだけども…ハハ、悪ぃ、信じてもらえなかった……」

 

「頼むから……静かにしててくれよ!!」

 

 

涙が、溢れてくる。止まらなかった。

俺の知らない所で、色んな人が、俺の為に動いてくれていた。

それが、俺には…

 

 

「泣くなセント……俺の事はいいから……もっと遠くに、逃げ…………」

 

「店長?……店長ォオオオ!!!」

 

「いや!!まだ脈はある…痛みのショックで気絶しただけだ…」

 

「クッソ……なんで…!!」

 

 

万丈の全身が怒りで震えているのが伝わる。

俺も同じ気持ちだ。もう誰も、俺たちのせいで危険に巻き込まないと誓ったのに……結局大切なものを傷つけさせてしまった。その自分への怒りが俺の中でも燃え滾っている。

 

 

「病院を探そう!きっと近くにある筈だ!!」

 

「オォ!!」

 

「――待って!!」

 

 

声がした方へ目を向けると、そこにアンジェがいた。

 

 

「迂闊に動かないで。その人なら私が知ってる病院へ連れて行く。私の目の届かない所で勝手な行動はしないで」

 

「んなこと言ってる場合かよ!!」

 

「万丈!!……わかった。俺たちも行く」

 

「当然よ。…その人、マスクメイカーにやられたのね」

 

「あぁ、今ちせが足止めしてくれてる……あんまり時間ねぇぞ」

 

「わかったわ。ちせならきっと大丈夫……こっちよ」

 

 

アンジェの案内に従ってたどり着いたのは、町はずれにある小さな診療所だった。

 

 

「ここならワケアリの急患も融通が効くわ」

 

「手続きは任せていいか?」

 

「大丈夫」

 

 

そして店長をベッドに寝かせ、俺は今日のファイトマネーのほとんどを受付の人に渡す。

 

 

「この人を、よろしくお願いします」

 

「あ、ちょっとお兄さん!?いきなりこんなに…!」

 

「戻ろう。今度は俺たちがあの店を護る番だ」

 

「……オォ!!」

 

 

万丈が拳を鳴らして走り出す。俺たちもそれに続き、ちせがいる俺たちの"家"に向かった。

 

 

 

 

 

「フン!!」

 

「ふッ、やぁ!!」

 

「おぉっと!ハァーー、しっぶといなぁ…早く『俺』を刻みたいのに…」

 

「黙れ下郎!!貴様のようなヤツがいるから…!!」

 

「――ちせ!!」

 

「お前たちなぜ戻って…アンジェ!」

 

 

店に到着すると、店内は客席も含めてすべからく荒れ放題だった。戦闘による被害で椅子やテーブルは原型を留めている物は片手で数えられるほどしかない。

 

 

「おぉ!どこに行ったかと思ったぞ『俺』!さぁこっちに来て!一緒に楽しい時間を過ごそう!」

 

「万丈……」

 

「おう、倉庫は…くそ、アイツに邪魔されて通れねぇ」

 

 

マスクメイカーを無視し、俺たちは『アレ』がある倉庫への道筋を算段したが、どうしても進行ルート上でヤツの妨害に遭ってしまう位置だった。このままでは動けない。

 

 

「私も戦うわ。その様子だと、相当手強い相手なようね」

 

「ドロシー達と連絡はついたのか?」

 

「こういう時のためにこの店に合流するよう言っておいたけど…すぐには来れないでしょうね」

 

「そうか……」

 

 

ちせは再び剣を構え、マスクメイカーをその鋭い瞳で見据えた。

 

 

「上等よ。こうしてお主と再び共に戦えるだけでも、この身、力が漲るぞ。」

 

「そう…恥ずかしいけど、私もよ」

 

 

アンジェはメガネを外して俺に預ける。…彼女の瞳もまた、闘志で燃えていた。

下手に動いて二人の足を引っ張るわけにはいかない…ここはヤツから目を離さずに、ヤツから攻撃されない位置で身をひそめるしかない…!!

 

「ここに隠れるぞ」

 

「ちくしょぉ、それしかねぇか…」

 

(ちせ、ヤツの鎌は脅威だけど、逆にそれが弱点でもある…あの大きさの刃物をこのレストランの客席で無暗に振るえばどうなるか……あとは分かるわね?)

 

(そういうことか、了解した。)

 

「お、作戦会議は終わったかい?それじゃあ…」

 

「!!…行くわよ!」

 

「応!」

 

「真っ赤な"お花"にしてやるよォ!!」

 

 

マスクメイカーが跳躍、アンジェの方向へ鎌を振るった。

 

 

「くッ!」

 

アンジェは懐から取り出したCボールを操作、緑光に包まれ右方向への回避と同時に半分に割れている床の木製テーブル片をヤツに投げつける。

 

「同じ手が通じるかァ!」

 

しかしマスクメイカーはテーブル片をそのまま切断、機械音が響く中を大量の大鋸屑が舞う。

 

「せぇやっ!!」

 

「づおッ!!」

 

 

視界が削がれたヤツの死角へ、ちせが刃を振るう。だがヤツの鋼でできた右腕に弾かれ、脇腹を切りつけたものの致命傷とはならなかった。

 

 

「おぉーー痛ぇ……流石に二対一じゃ分が悪いなぁ……」

 

「仲間でも呼ぶ気?」

 

「いやぁそれほどじゃない…どうした、これで終わりか?」

 

「は!!」

 

「うお!!ハハァ、なんだよ!折角人も増えて盛り上がってるんだし楽しまないのか?」

 

「あなたと違ってこっちは仕事なの。さっさと倒されてくれるかしら…人のまねしかできない、おさるさん?」

 

「……『俺』を刻む前に、まず君の悲鳴を聞きたくなった…な!!」

 

「ふッ!!」

 

「大人しく刻まれろぉ!!」

 

「ほらこっちよ。ほら、ほら」

 

 

キレたマスクメイカーの攻撃をサーカスの曲芸師もビックリな身のこなしで避け、拳銃で動きを牽制しながらヤツの視界前方の位置を保ちながら店内を移動するアンジェ。

アンジェらしくない煽り文句とこの何処かへと誘導するような動き方…まさか、

 

 

「うぉら……あ!?」

 

「ふ……」

 

 

マスクメイカーの鎌が、店内の席を区切る囲い柱に深く食い込む。

ヤツの動きを、拘束した!

 

 

「今よ、ちせ!!」

 

「――ちぇすとぉおおお!!!」

 

 

ちせが原型を残していた数少ないテーブルを台にして跳躍、唐竹割りの構えだ!

これでヤツの右腕を切断――

 

 

 

「…そんな!?」

 

「マジかよ……」

 

 

 

 

「おいおい――誰が鎌は一つしかないって言った?」

 

 

 

できていなかった。

ヤツの左腕から生えたもう一つの『鋸鎌』が、振り下ろされたちせの刀を受け止めていた。

 

 

「フン!!」

 

「ぬわ!?」

 

「ちせ!!…ぐぅ!!」

 

 

ちせはアンジェの方へ向け投げ飛ばされ、それを受け止めたアンジェも大きく距離を取らされる。

 

 

「色々と小細工を弄して僕を無力化しようとしてたみたいだけど…残念、無意味だ。それと…」

 

 

食い込んでいた方の鎌も大きな駆動音を鳴らして柱を切断した。

 

 

「この程度で封じられるほどこっちの鎌もヤワじゃない、重ねて残念。これで分かったろう!君たちは僕に勝て…」

 

「最初から勝負なんてしてないわ」

 

 

アンジェがそう言った瞬間、店内は煙に包まれた。

ヤツの姿もまた包まれ、アンジェとちせがこちらに戻って来た。

 

 

「いつこんな仕掛けを!?」

 

「さっきちせを受け止めた時に。それよりまずはヤツの鎌をどうにかする手立てを練り直さないと」

 

「うむ、あれは生半な物で止められないからな。何か分厚い鉄板のような硬い物であればあるいは…」

 

「そんな切れ味ヤベェのかよ!?」

 

「硬い物か…」

 

 

硬い物といえばぱっとすぐに思いつくのは……

 

 

「ダイヤモンド…?」

 

「ちょっと、こんな時につまらない冗談はやめて」

 

「あぁいや…」

 

 

ダイヤモンドなら()()()()()。でも……

 

 

「戦兎」

 

「わかってる……使わない」

 

 

どんなに人間離れしていた力を持っているとしても、マスクメイカーは生身の人間だ。『アレ』を使うには危険すぎる。下手をすれば命を奪ってしまうかもしれない。……たとえ憎い相手だとしても、その一線だけは越えてはならない。

 

 

「お主ら、一体なんの話を……」

 

 

 

「あぁクソ、しゃらくせぇええええええええ!!!」

 

 

 

その時、俺たちの頭上でガラスの破砕音が鳴り響いた。

 

 

「――ヤベェ!!」

 

「危ない!!」

 

 

咄嗟に俺と万丈はアンジェたち二人に覆いかぶさって落ちてきた大量のガラス片から身を呈して庇う。

落下物が無くなった感触を感じると同時、アンジェたちの無事を確かめる。

 

 

「大丈夫か!?」

 

「バカ!!護衛される側(あなたたち)護衛(私たち)を護ってどうするの!?」

 

「うるせぇ!体が勝手に動いたんだよ!!…よし、ケガねぇな!?」

 

「!!……えぇい重い!助かったがどいてくれ!!」

 

「あ!悪ぃ…」

 

「何だったんだ今のは……ん?」

 

 

ふと横の道を方を見ると、何故か地面に刃だけの『小さい鎌』が刺さっていた。

それも一枚や二枚ではなく、何枚も。

 

 

「まさか……」

 

 

あれが店内からガラスを突き破ってあそこまで飛んでったから、こっちにガラス片が飛び散って来たのか?

店内…マズい!!

 

 

「ヴアァアアアアアアアア!!!!」

 

 

煙幕が晴れ、店内の様子が見えた。そこにいたのは、

 

 

「もうゲンカイだ……もう『オレ』じゃなくてもいい…おマエらゼンイン、このチカラでキザんでやるゥウウウウウウ!!!」

 

 

両腕だけでなく、上半身全てを酸性雨で溶けた銅像のような色の鋼で鎧覆ったマスクメイカー。俺をコピーしていた顔はカマキリに似た仮面で覆われ、両肩にも鎌が生え、胸部はミサイルハッチのように空洞になっている(丸鋸はあそこから発射された?)。……いや、上半身だけじゃない!下半身も今まさに金属がアメーバのような動きで体表面を這い、鎧になってヤツを包んでいっている。そして…

 

 

「そんな……全身、金属に……」

 

「あれは……」

 

 

その姿は、

 

 

「『スマッシュ』…?」

 

 

"同胞"に、よく似ていた。

 

 

「チらばれぇエエエエエエエエエエエ!!!」

 

 

マスクメイカーの胸部から、再び小鎌が発射された。

 

 

「くぅ、さっきのはあれの仕業か!?」

 

「こんな…!!あれはもう、殺人鬼で収まるようなちゃちなものじゃない!まるで」

 

まるで―――王国の新兵器か何かみたいじゃない!

 

 

「兵器……」

 

 

スマッシュ…ネビュラガスを注入されたがハザードレベルが足りずに肉体が変異して理性を失ってしまった悲しい怪物。兵器以上の価値を認められないまま報われずにいる、科学の発展の犠牲者の象徴。

 

――なら、あいつはどうなんだ?

スマッシュではないとしても、あの両腕に鎌を移植した技術は間違いなく外道の科学。

重ねた罪を抜きにして言えば、あいつも"科学の犠牲者"の一人と言えるのではないか?

 

 

「もしそうなら――俺が、アイツを止めないと」

 

 

破壊に狂ったアイツを止められるのは、きっと――

 

 

「――何ですって?」

 

「俺がアイツを止める」

 

「阿保を抜かせ!!お主に何ができる!?」

 

「できるよ、戦兎なら」

 

「万丈まで!?」

 

「……やるんだな?」

 

「あぁ」

 

 

万丈の問いかけに笑って答える。

 

 

「なら仕方ねぇ!俺らが足止めすっから取って来いよ」

 

「あぁ、助かる」

 

 

気付けば小鎌はもう飛んで来ていなかった。弾切れだろうか。

なら、最早ヤツに俺たちを止められる手段はほぼなくなったということだ。

 

 

「あそこ…ガラス割れて近道出来てるから行けそうだな…倉庫」

 

「ちょっと……さっきから勝手に話を進めないで」

 

「なぁアンジェ、お前は俺を護ってくれるんだろ?」

 

「えぇ勿論。で、何?」

 

「あそこに見える倉庫に、アイツを止められる道具がある。俺ならそれが使いこなせる。でも今あそこに行くにはちょっと危険だろ?だから、あそこに着くまで俺を護って!ください!」

 

 

できる限り、お気楽な雰囲気で頼む。こういう時こそ笑いを忘れちゃいけないって、そう思うからだ。

アンジェなら、多分――

 

 

「……いいわよ」

 

「助かる!」

 

「任務だからよ……任務じゃなかったら絶対許可しないわ、そんな無謀な提案」

 

「ホントに~?」

 

「引っ叩くわよ?」

 

「すいません」

 

 

ほら、俺を信じてくれた。そういう女の子だって、俺は信じてたからな。

 

 

「いいのか、アンジェ?お主らしくもない」

 

「こんな日もあるわ。臨機応変がスパイの鉄則、でしょ?」

 

「そうか、ならよい。……万丈、お主の腕が立つのはよくわかっておる。私もお主を全力で護る。それでも…完璧な命の保証は出来かねる。この足止め、命がけじゃぞ」

 

「わかってるよ!お前こそ"約束"忘れてねぇよな?死んだら、許さねぇからな」

 

「ふ、誰に言っておる。この程度の修羅場、飽きるほどくぐって来たわ!」

 

 

万丈とちせが互いを励まし合うのを横目に、俺は倉庫へと走り抜ける体制に入る。

 

 

「頼んだぞ、万丈」

 

「おう、任せとけ!」

 

 

ドラゴンボトルを見せ、笑う万丈。頼もしい笑顔だ。

今度は俺がお前達を護る。アイツも含めて!

 

 

「…ドコだァ、ドコにいるゥウウウウ!!!」

 

「アイツも限界みたいだな…」

 

「よし…3、2、1の後に俺とアンジェが『ゴー』でスタートするから、万丈とちせはそれと同時にアイツの足止めに行ってくれ」

 

「おう!」「了解した。」

 

「んじゃ行くぞ3、2、1……ゴー!!」

 

 

俺とアンジェはマスクメイカーの咆哮と万丈の雄たけびを聞きながら、倉庫に向け走りだした。

そしてテーブルや椅子、窓ガラスだったもので散らばる道を進み、たどり着く。

 

 

「――ここだ」

 

 

俺と万丈が住まわせてもらっていた物置小屋、倉庫。

そこの木箱の一つに何重にもして隠していた、『それ』。

 

 

「行こうアンジェ。俺達で、この事件を終わらせるんだ」

 

 

俺はそれらの中から今回マスクメイカーを止めるのに最適なものを選択し、取り出した。

 

 

 

 

「――ウォリャァアアア!!」

 

「グゥウウ…ヴァアアアアアアア!!」

 

「ハァア!!」

 

「おマエ、ウザいんだよォ!!!」

 

「ぐぁあ!!」

 

「ちせェ!!」

 

 

倉庫から出れば、万丈とちせがボロボロになって戦っていた。

全身をあざ塗れにしながら、大事そうにしていた刀をひび割れさせながら、

俺とアンジェに近づけないために、必死に。

 

――ありがとう。

 

今はそれだけを思い、手にした『それ』を握りしめた。

 

「……ぐおッ!?」

 

アンジェがマスクメイカーの背中を撃ち、俺たちに注意を向かせる。

 

「へ、来たか……行けェ!戦兎ォ!!」

 

「ハァアアー…『オレ』ェ……『オレ』ェエエエエ!!」

 

「もう"お前"から逃げたりしない。」

 

 

笑いながら力を振るうお前から。

それを見逃し逃げ続けた自分自身から!

 

 

「そして、救ってみせる!」

 

 

そして俺は『それ』を――

 

『ビルドドライバー』を腰に巻き付けた。

 

 

「……アァ?ナンだソレはァ…」

 

「"俺達"の発明品さ。お前みたいな道を間違っちまった奴等のためのな!」

 

 

懐から取り出した紅と青、二つのボトルを"振る"。

 

 

「な…なな、なんじゃ!?宙にあるふぁべっとがたくさん出てきおったぞ!?」

 

「ハハ!久々だってのにちっとも変わんねぇな」

 

「万丈、これは一体!?」

 

「あぁこれ?なんかよくわかんねぇ式」

 

「答えになっとらん!!」

 

 

これは凝縮されている成分(エレメント)の力を最大限(フル)にまで高めるために必要なシーケンスだ。

故にそのボトルは、『フルボトル』と名付けられた。

ボトルは栓を開放しドライバーに装填されることでその真価を発揮する。

これらは遠き宇宙より齎された禁忌の力を、かつてある男のイメージした『愛とそれを破壊するモノ』の形に固定したものであり、そして、争いのない平和な世界への懸け橋となったモノだった。

 

《ラビット!》

 

 

「覚えとけマスクメイカー(ニセモン)…本当の桐生戦兎(おれ)は――」

 

 

《タンク!》

 

 

人々を護る(ラブ&ピースの)ために戦う――」

 

 

――《ベストマッチ!!》

 

仮面ライダー(正義のヒーロー)だ!!」

 

 

ボルテックレバーを回し、プラモデルのランナーに似た変身フィールド『スナップライドビルダー』を展開させる。その中をボトルから抽出された成分が流れ、そしてスーツへと変換される。

 

 

「兎と、水槽(タンク)?ベストマッチって相性もなにも」

 

 

《Are you ready?》

 

 

傍らにいるアンジェのぽかんとした顔に、俺は笑顔でこう答える。

 

 

「ベストマッチは…ベストマッチだ!」

 

「えぇ…………え?」

 

 

そして両腕を、構えた。

 

 

 

 

「――変身!!」

 

 

 

 

 

「ナンだ……ナンナンだそれはァアアアアアア!!」

 

 

マスクメイカーが突進し、右腕の鎌を放つ。

しかし、

 

 

「………ナ、二…?」

 

 

直撃するはずだった鎌は"青い左手"に掴まれていた。そして、

 

 

「おぉ…りゃぁあああ!!!」

 

 

"紅い左脚"が膝でそれを根元から打ち砕き、

 

 

「カマが…ボクのカmブワァアアアア!?」

 

 

仮面を割るように、"紅い右拳"がマスクメイカーの頬を殴りぬけた。

 

 

 

 

《鋼のムーンサルト!"ラビットタンク"!!イェェエエエエイ!!!》

 

 

 

 

舞い上がる煙の中より現れたる紅と青の戦士。その名は、

 

 

「さぁ、久々の実験を始めようか!」

 

 

 

 

 

 

『仮面ライダービルド』

 

第49+1話 ベストマッチする世界 

 

 

 

 

 

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