Princess Principal ~Gearing BUILD and CROSS-Z~ 作:ポロシカマン
では、どうぞ。
「勝利の法則は……決まった!」
舞い上がる土煙が晴れたと同時、ぶち折った鎌を足で踏んでおきながら久々のビルドの感触を確かめるべくいつものあれ…右複眼の一部である砲塔を模したアンテナ部をなぞり、閃きの象徴、電球が光る様をイメージしたジェスチャーを決めてみる。
おぉ~、これこれ!いや~やっぱこれがないと始まらない!
…でもまぁあれだ、今回は純粋な人助けのための変身だ。戦争阻止のためとか地球を守るとか複雑な事は抜きにして今は初心に帰って目の前にいる人たちの為に戦おう。それが、今の俺にできるただ一つのことだからな!
「――ねぇ、さっきから聞こえる変な声はな………は!?!?!?」
おぉすっごい驚き顔……ってあら?中々そんな、可愛い顔できるじゃないのアンジェさん?
もしやそっちが素だったりするのか?喋り方がどこか演技っぽいとは思ってたけど。
「誰!?」
「あ、どうも。改めまして桐生戦兎です」
いやいやあなたさっきバッチリ俺の変身みてたでしょ。うーん、仕方ない。ここはきちんとペコリと腰を曲げてお辞儀して、天才物理学者っぽくアピっとかないといけないか。
「………あ…兎」
「あぁうん。そう兎兎、これね複眼ね。よくできてるでしょ~?」
「……………そう、ね…そうなのね」
そして一頻り見終わった後、顔の方を見つめて強かな笑みを浮かべる。
「――姿は変わっても、どうやら…」
「………」
「私がさっきまで共にいた桐生戦兎で間違いないようね。だって…あなたの優しい雰囲気はそのままだもの」
なんだよ、
「へへ……」
嬉しいこと言ってくれんじゃん。
「な……ナン、ナンなんだおマエはァアアアアア!!?」
「!?」
おっと、いけない。肝心のマスクメイカーがほったらかしだった。あっちもあっちで俺の変身に滅茶苦茶混乱してるようだな。元々混乱気味だったのが更に顕著になってるし。よし、今の内に…
「――き、桐生は兎ではなく狐であったのかぁ!?」
ってそっちも混乱してるしぃ!
何だよみんな驚きすぎだろ!!そんなに仮面ライダーが珍し……あぁ、いや珍しいのは当然か。人が人の姿じゃなくなるなんてこっちの世界じゃそうあることではないし、そもそもさっきのマスクメイカーが全身金属になった時だってアンジェもちせもびっくりしてたもんな…あぁいけない、まだ前の世界の常識でモノを考えてるよ俺…気を付けないと…
「あー……おい戦兎ォ!!さっさとソイツどうにかしてくれー!!こっちは何とかすっから!」
「あ、おう!!任せた!!」
「…シツモンにィ…コタえろォオオオオオ!!」
「今の俺は『ビルド』、『仮面ライダービルド』だ。そしてそれが、今からお前を"救う"、正義のヒーローの名前だ!…覚えとけ!」
ビシッ!と指さしマスクメイカーに名乗りを上げた後、俺は踏んづけていたマスクメイカーの鎌を持ち上げる。
「いよぉ~……~おい、しょっ!とぉ!」
それを鼻をかんだティッシュを丸めるように、刃の部分を潰す形でボール状に圧縮。これで一先ずは誰が触っても安心だ。
「…僕の鎌アァアアアア!?」
「危険物をそのままにしておくわけがないでしょうが!刃物を捨てる時はこんな感じに人を傷つけないようにしておく…常識だぞ?」
「ッ……アァアアアアア!!!」
激昂したマスクメイカーが突進してくる。
それを感知した俺は持っていた鎌だったものをアンジェに投げ渡した。
「あー、これ!持っといて!」
「あ…ちょっと!」
「ッアァ!!」
「ほっ」
「ア"!?」
飛んできた左腕の鎌を左手で受け止める。そして、
「力を借りるぞ…一海!」
《ロボット!》――《Are you ready?》
「ビルドアップ!」
レバーを回転、そして軽快な音楽がドライバーから流れ、青かった半身は金属的な黒色へと置換。
『ラビット』と『ロボット』…ベストマッチでないボトルの組み合わせにより形成される『トライアルフォーム』が一つ、仮面ライダービルド"ラビットロボットフォーム"へと変身した。
「おぉ、さらに化けたぞ!!」
「――だからスゲェだろビルドは!あぁやってボトル変えて、色んな姿にフォームチェンジできんだよ!」
「ほぉほぉ…あの奇々怪々な姿はさながら狐狸妖怪のようではあるが、実際の所は
「あー…(やべぇ、ちせの日本語が古すぎてわかんねぇ…まぁ取りあえずは納得したみてぇだしだまっとこ)」
「――よっ!」
そして左腕の鎌も、ロボットアーム型の拳…『ディストラクティブアーム』へと変化した左手の強靭な握力により根元から紙のように千切り取る。
「あぁ?…アァアアアアアァアアアアアァアア!?」
「万丈!ドラゴンを!」
「…おぉ!受け取れェ、戦兎ォ!」
万丈から投げ渡されたドラゴンボトルをキャッチ、装填。
《ドラゴン!》《ロボット!》――《Are you ready?》
「ビルドアップ!」
かけがえのない仲間たち、『二人のライダー』の力の一部を合わせた力、仮面ライダービルド"ドラゴンロボットフォーム"へと変身する。
「この手で変われ…悪しき科学の象徴よ!」
『ドラゴン』の成分の力の一端、あらゆる物を燃やし尽くす蒼炎を右拳に纏い、マスクメイカーの残るもう一本の大鎌を融解させながら、ディストラクティブアームにより安全性が高いボール状に固め直す。ハザードレベルが上がっていたおかげか何度かドラゴンの成分が入ったアイテムで変身したからか、以前のようなドラゴンボトル特有の暴走状態になるような感覚はない。キードラゴンじゃなくてもいけそうだ。
そして、二個目の今度は完全なボール状になった鎌を空中へ投げ、仕上げに別のボトルを取り出す。
《ダイヤモンド!》――《Are you ready?》
「ビルドアップ!」
トライアル、"ドラゴンダイヤモンドフォーム"となって高温で落下してくる鎌ボールを『ダイヤモンドボトル』の能力によって、大粒のダイヤモンドへと変えた。
「ほい、ビルド印の大玉ダイヤ…一丁上がり!」
「「は……はぁあああ!!??」」
「ナンでだァアアアアアアア!!??」
スパイ二人とマスクメイカーが揃って大驚き。こんなことだってできちゃうんだからスゴイでしょう、ビルド。
「(考察どころか、もう驚くのさえ無意味と思わせるほど由来不明で理解不能なデタラメなまでの能力!…なんで、なんであなたがそんな力を使えるの、桐生戦兎!!)」
「よ、よくも…ボクのカマを……アァ…アァ…」
「えー、気に入らないこれ?あぁんな物騒な物よりこっちの方がよっぽど世のため人のためになるのになぁ…あ!そうそう!ダイヤモンドってぇ、硬いから歯医者が虫歯の治療に使うドリルの」
「――ナゼだ!?ナゼそんなことをする!?」
はぁ……やっと聞いてきたか
「戦兎…そうかお前…」
「万丈、これが今の俺にとっての"勝利の法則"だ…待っててくれ」
「…おう」
「コタえろォ!!」
「あぁ…何故って、まずはお前に教えようと思ってさ。強い力に溺れるってことがどれだけ空しいことかをな」
「……ならどうしてダイヤなんかツクってみせた!?さっきのロボット?やらそのドラゴンの力で!ボクをイタめつけることだってヨウイにできたはずだろう!?…どうしてだ!!」
「確かに、お前の言う通りそうした方が簡単にお前に言うことを聞かせられたかもしれない。でも俺は敢えてそれをしなかった。何故だか分かるか?……人を傷つけることだけが、力の使い道じゃないからだ。」
「ナニ……?」
――戦いが力の全てではない。
俺があの戦いを通して、仮面ライダーとして戦い抜いて導き出した、『力を得た者の心得』の一つだった。
「桐生戦兎……ちょっとあなたまさか」
「頼むアンジェ、時間をくれ。これが俺の、ビルドのやるべきことなんだ。」
「こいつに説得なんて無意味よ」
「無意味かどうかはやってみなきゃわからないだろ?それに一々行動に意味を求めてたら科学者は務まらない」
「……勝手にしなさい。」
「させていただきます」
「フン……」
マスクメイカーから政治家の汚職の証拠の在りかを聞き出したいアンジェ側の目的を阻害するわけではない。むしろ説得により彼の心を開くことが出来ればそれを円滑にできるかもしれない。それをアンジェも理解してくれたようだ。
「なぁマスクメイカー…お前の鎌だって、破壊以外のずっと誰かの役に立つ使い道があった。例えば…伐採するのに人も時間も掛かるような大木を一瞬で
「フザケるな……そんなことシるか!ボクにとってはヒトをキザんでカネをウバうことだけがチカラのスベテなんだよ!!!」
「そっちこそふざけんな!!…そんなわけねぇだろ!!人を傷つけることだけが、お前の全てなわけねぇだろ!!」
「…ダマれぇエエエエエ!!」
俺の言葉に耳を貸さず、マスクメイカーは両肩の鎌を鎖鎌として射出、俺に叩きつけようとする。
それを、
《ドラゴン!ロック!ベストマッチ!!》――《Are you ready?》
「ビルドアップ……」
《封印のファンタジスタ…"キードラゴン"…イェイ!!》
「…ハァ!!」
左腕の巨大な鍵を模した装置、『バインドマスターキー』から鎖を射出して封じた。
ドラゴンボトルとのベストマッチによる効果でその拘束力は通常よりも向上し、マスクメイカーの鎌と絡ませて鎌の挙動を完全に掌握した。
「ハナせ!!ハナせぇえええええ!!」
「あの日、あの公園で、お前は俺の顔をコピーするのに俺に絵のモデルになってくれって頼んできただろ?そして俺はそれに応じてお前と時間を共にした。…さっきまではそれを後悔してた。でも、今は違う!」
「ナ二ぃ!?」
「人を傷つける以外のお前を知ることが出来たからだ!!…あの時、一心に絵を描いてたお前は、優しそうに笑ってただろ!!絵を描くことを、純粋に楽しんでただろ!!」
「!!!」
マスクメイカーの動きに乱れが生じ始める。
やっぱりそうだよ。闘争や破壊、それだけが人間の全てじゃない。
こいつにだって、人並みの喜びを感じる心があるんだ。それをここで証明して見せる!
「お前の描いた絵はすごく上手で…俺、見せてもらった時すごく嬉しかった!!お前は、人を笑顔にできるすごいヤツになれるんだよ!!」
「あ………」
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『ねぇ、ショーン。あなたの絵は、きっと世界中の人に感動を与えられるわ。』
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『だからいつか、私の他にもあなたの顔も、他の全部も受け入れてくれる人がきっと現れる。』
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『その人にも、絵を描いてあげてね?……私の分も、あなたはその人と幸せに……生きて。』
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僕は、姉様の分も幸せにならなくちゃ。
――ぶちっ
お金を、画材を買うお金を、稼がなきゃ。
――ぶちゅ、ぐちゅ、
父様も母様も死んじゃって、お屋敷から追い出されて何も無い僕でも、きっとお金を稼ぐ方法はあるよね?ねぇ、姉様。
――ぶじゅじゅじゅじゅじゅじゅ。
……あれ?僕は何で絵を描いてたんだっけ?
――初めて人の顔を剥いだ時、僕の顔はみんなと同じ顔をしていたのだと知ったのだ。
「あぁあああああああ!!!あああああああああああああああああああああ!!!!」
その時、
「――ヴアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
けたたましい蒸気音と爆風と共に、マスクメイカーの全身が血のように赤く発光した。
「!!………一体何が!?」
「わからない!!……なんだこの、光!?」
「!…ちせ!!」
「かたじけない…!飛ばされそうになるほどの風…彼奴に何が!?」
「……!!鎖鎌が!!」
拘束していた鎖鎌が独りでにどろりと融けて地面に落ちる。そして爆風が凪いだと同時に彼の下へと飛んで行った。
「そんな……」
彼がいた所に、彼はいなかった。
「お……おぉお…!?」
代わりに、そこにいたのは
「おいおいマジか…」
四本の鎖の絡まった『肢』、
腕の部分には一対の巨大なチェーンソーのような『鎌』、
ステンドガラスのように輝き、美しい女性のような意匠が見られる『
四つの大きな昆虫的『複眼』。
側面から紅い蒸気を噴き出す『腹部』
全長6メートルはあろうかという巨大な
[ぼくは、幸せにならなきゃいけないんだぁああああああああ!!!]
「ねぇ」
「どうした?」
「力を貸して。あれを……撃滅する」
「…いや、説得する」
「いい加減にして!!もうそんなこと言ってられる状況じゃないでしょう!?」
「いや、まだ言ってられる状況。アイツへの対処法はすでにこっちは確立済だ。あとはお前達がそれに乗るかどうかだけど……」
「やめて」
「――信じて、くれるよな?」
「それを言わないで!」
「うむ!やるぞ!!」
「…ちせ!?」
「まさか異国の地で妖怪退治の機会が巡って来るとは…!!
「そんな……ダメよ…」
「アンジェよぉ…多分今すっげぇ気乗りしてねぇと思うけど、まぁ気持ちは分かるぜ?俺も最初はこいつのハチャメチャに振り回されてたからな」
「おい万丈、それだと俺が危ないヤツみたいに聞こえるんですけど?」
「実際そうだろうが。この期に及んで知らばっくれてんじゃねぇぞこの天才バカ!!」
「なんだとこの筋……真性バカ!」
「いや筋肉バカじゃねぇのかよ!!」
「――あぁもう!うぅるさぁあああああああああい!!!」
「「うぉおおう!?」」
「わかったわよもう!やればいいんでしょう!?やれば!?やってやるわよスパイだものね!?」
「おぉ、アンジェがいつにもましてえらく饒舌に……嬉しいやら悲しいやら…」
「ちせ……?」
「ひぃ!?」
「すぅうーー……はぁあーーー……ふぅ……で、どんな対処法なのかしら、天才『バカ』物理学者さん?」
「あぁまず…っておい!」
「!…戦兎ォ!!」
「! みんな避けろ!!」
突如放たれた巨大カマキリの横薙ぎを全員咄嗟に屈んで躱す。危なかったぁ!
[ぼくを、ぼくを幸せにしてくれよぉおおおおおお!!]
「仕方ねぇ…動きながら話す!万丈!」
「お…おぉ!?」
「ドラゴンボトルと『クローズマグマナックル』…今はそれで何とかしてくれ!」
「…上等だ!!何すりゃいい!?」
「肢全部折れ!以上!!…ちせもそれを頼んでいいか?」
「おっしゃ!やってくるぜ!」
「むぅ……不承不承ながら、了解した」
「アンジェはCボールで俺をアイツの顔に!」
「了解、行くわよ」
「頼む!」
差し出されたアンジェの手を取ると、全身が淡い緑光に包まれる。
やはりあの時と同じだ。Cボールには使用者が触れた相手も重力から解放されるはずだからな。
「よし……待ってろマスクメイカー!」
幸せになりたい…それがお前の、本当の願いなら。
《ラビット!タンク!ベストマッチ!!》
《"ラビットタンク"!!イェェエエイ!!》
「お前の、本当の夢を…お前が幸せになるための道を、俺たちが!創ってみせる!!」
――ロンドンの空に、月が輝いた。