Princess Principal ~Gearing BUILD and CROSS-Z~ 作:ポロシカマン
早い話が急展開です。
それでもいいという方……ありがとうございます!!
では、どうぞ!
--ドロシー視点--
「おいおいおい、どういう状況だこれ……!?」
警察からマスクメイカーの捜査情報をすっぱ抜いたりなどの仕事も一段落し、ようやっと例の二人が住んでいた店に合流しようってプリンセス、ベアトを乗せて車を飛ばして来てみたたものの……
「ほっ……ハッ!!」
「…左から来るわ!」
「…うおっと!助かる!」
人語を喋るバカデカい黒いカマキリとこれまた妙ちくりんな格好をした怪人がアンジェと協力して戦っているというあまりにも現実離れした光景が広がって……あぁホントに何がどうしたってんだよ!
「うおりゃぁあああああ!!!」
「はぁああああああああ!!」
んでしかもその下でちせとバンジョーがデカ物の肢を執拗に攻撃して……いやいや下手したら死ぬって!!!何やってんだあいつら!!
「あ、あわわ、あわわわわわわ…」
「これは………マズい……」
[やめろ…僕の大切な物を…壊すなぁあああ!!]
「違う!お前が本当に大切に思ってたものはそんな人を傷つけるものなんかじゃない!それを全部取り除くまで我慢してくれ、マスクメイカー!!」
「え…ます、マスクメイカー!?…あれがですかぁ!?」
「『殺人鬼の正体が実は人間じゃなかった』…とかどっかの小説にありそうだなおい…」
「アンジェ、ちせさん、ミスター・バンジョー…あれ、ミスター・キリューがいない…?」
「あ……あの姫様、アンジェさんに掴まってるシマシマ怪人の声が…その、似てませんでしたか?」
「じゃあ、あの人が…!」
はははそんな…いや、ベアトが言うんだからそうなのかもな…
ちせといいあの時のジョーイローニンとかいうテロリスト共といい、日本人が分かんなくなってくるよ全く…
まぁそんなことはさておき、
「しょうがない、今は私たちにできることをしよう。」
「…はい!もちろんです!」
「うぅううう…(すっごく怖いけどこれも姫様のため姫様のため…)!」
「ドロシーさん!近隣の住民の方々の避難と誘導をお願いします!ベアトは私と人が立ち入らないようにバリケードを設置!!行きますよ!!」
「了解ぃ!!」
「は、はいぃいいい!!」
流石いい指示だよプリンセス!一皮むけたかな!
…あれ、でもこれスパイの仕事か?いや、んなもん気にしたってどうしようもないけどさ!!
――さぁて、もう一仕事頑張りますかね…!
--戦兎視点--
[来るな……よって来るなぁあああああ!!!]
「よっ……ハァアッ!!」
「くっ…ヤツの動きが速くなってきてる…!」
彼との対話のため、まず俺たちが行動に移したのは巨大鋸鎌や鎖付きの肢など、武装の破壊だった。
肢は万丈とちせが、それより上方の武装は過度な構造体の破壊を抑えるために俺のドリルクラッシャーとアンジェの銃撃で各部破壊する分担である。
今のマスクメイカーは合体状態の『ガーディアン』よりかは気持ちばかり小さいがそれでも巨大、しかも小ぶりでカマキリっぽい分小回りが利いてしまっているのもあって、『ホークガトリング』などの高速飛行形態で応戦すると不意な移動で彼の攻撃を誘発して市街地を危険に巻き込んでしまう可能性が大いにあるからだ。
だから俺はアンジェのCボールによる空中移動に頼ったのだ。彼女の操作なら無駄な移動をせずとも武装を破壊しながら最短ルートで彼の頭部に近づくことができる。
「よし、最後だ!!アンジェ!」
「…えぇ!!」
そしてドリルクラッシャーで破砕しておいた大鎌の装甲部の亀裂の中心をアンジェに銃弾で狙い撃ってもらうことで、過度な衝撃を出さずに彼の武装を解除させることができる!ビルドの力は強すぎて構造上おそらく存在するだろう彼の本体までをも攻撃してしまいかねないからな。これがベストの攻撃だ。
[あぁああ!うわぁああああ!!]
泣きわめく子供のようなこの声が、マスクメイカーのありのままの言動だったのだろうか、今は分からないがこれが彼の悲痛と苦しみで埋まってしまった心を表しているのは確かだろう。
「!…まずい、これ以上はボールが持たない!一旦下りるわよ!」
「え…あ、おい!」
なんてことだ…それ制限付きだったのか!
「また使えるようになるのは!?」
「…早くて三分。それが限度よ」
……長時間使用すると赤熱化し、そうなったら冷却しなければならず再度使えるようになるまでタイムラグができてしまう…まだまだ発展途上の技術なんだな。
近くの屋根に下り、アンジェはすぐに懐から液体窒素を入れるような容器にCボールを収納する。
さて腕の鋸鎌は破壊したし次は……
そうだ、万丈の方はどうなってるんだ?
ここからでも見えそうだな。どれ…
「ほ!……はぁ!!」
「――いよし、あと2本!ちせェ!そっちはァ!?」
お、順調みたいだな。スゴイなあの二人、息ピッタリじゃん。
この調子なら……いやまずい!!
「こちらも……!? 屈め万丈!!」
「お? うぉお!?」
折れたちせの刀の先端が飛ぶ!それを間一髪で避けた万丈が驚愕の声を上げた。
「っぶねぇ~…」
「すまぬ!!……くぉ!?」
「!…やべぇ!オルァ!!」
ちせを突き刺そうとした脚を万丈がナックルで受け止め、逸らした。
「大丈夫か!?」
「うむ、済まなんだ万丈……はぁっ!!」
「おぉい!?そんなボロいので無理すんじゃねぇよ!!」
「無理ではない!……たとえ剣が折れ果てようとこの身屈っすることなく最後まで戦い抜く!その心意気こそが武士なのじゃ!!……私は……私は!!」
折れた剣を支えに立ち上がり、万丈が受け止めていた肢を登る。そして付け根の関節へと昇り切ったちせは
――強くなったな……ちせ
「
一刀両断!ちせの放った一閃は見事マスクメイカーの肢を巻きついた鎖ごと根元から斬り取った。
[あぁあああああああああああああああ!!]
そしてちせが着地すると同時、彼女の剣は、
はらりはらりと桜が散るが如くその身を崩れさせた。
(友よ、今までありがとう…)
「よっしゃぁあ!あと一本!」
だが、
その残る一本から黒い鎖が射出され、ちせを捕縛してしまう。
「ぬぁ!?」
「ちせェ!!」
「くっ…ここまでか。最後はお主に任せるぞ、万丈!」
「……分かった。そこで待ってろ!」
ちせの言葉に応え、怒りうねる最後の肢を見据えた万丈はナックルからドラゴンボトルを取り外し、
「(アイツを一発で倒すには、ちせみてぇに剣でいった方がいいかもな…剣ならあるぜ、俺にもよ!来い!)」
祈るように両拳を握り、気を集中させる。
……そうだ!今のお前なら、生身でもアレを使える!
――《ビートクローザー!》
「…っしゃきたぁ!!」
ドラゴンボトルから青と金のチューブが伸び、万丈の剣、『ビートクローザー』がその手に現れる。
《Special tune!》
「今の俺は……」
万丈はそれにドラゴンボトルを装填。柄のグリップエンドを一回引き、パワーを充填させた。
《
「最ッ高に!」
するとビートクローザーはドラゴンブレスの意匠が入った警告音のような待機音を鳴らしながら、蒼炎を纏わせ、東洋の龍の形として固定させ万丈の周りを旋回しながら現出した。
「負ける気がしねぇえええええええ!!!」
万丈の決め台詞と共に龍が剣身から放れ万丈を乗せる。そして浮き上がり最後の肢に向け飛び、
「うおりゃぁああああああああああ!!!」
万丈が肢の根元を叩き斬った!!
[あぁあ、そんな、足が、足がああああああ!!]
「へっへ、いやったぜぇ!!」
「おぉ…見事だったぞ万丈…龍が見えるほどに…」
「あー、あれ幻とかじゃなくてマジで出てたんだぜ?」
「なんと!?」
「…よっ!ほら立てるか?」
「う、うむ……(幻でない??)」
龍は既に消失し、降り立った万丈はちせの鎖を解いて肩を貸す。
「大きいケガとかしてねぇよな?」
「あ…いや!ふふ、大事無い。それよりよくやったぞ万丈よ。とにかく見事じゃった」
「いやお前こそ!よくあんなとこまで跳べたなおい!こうズバーー!ズバーー!!ってよ!」
「あっはっは!なんじゃその動きは!そんなへっぴり腰で斬っとらんわ!!」
「いや、お前ちびっこいのにあんなバンバン動けてマジすげぇよホント!」
「ち…!?」
「あ?……うぉお!何すんだよ!?」
「ゆ、許さん!さっきの誉め言葉ごと、叩き斬ってくれる!!」
「あ、おい!ビートクローザー返……うわやめろ悪かった!ガチで危ねぇってうおぉおおおお!!」
おいおい…ったく何やってんだよあいつら…ちょっと仲良くなるの早すぎない?
筋肉バカとひたむきな侍系女子、あぁ体育会系だから?
…いや単純すぎんだろ!
「ちょっと、いつまで遊んでるの…よ!」
「おぉ悪……何してんの?」
声に耳を傾け振り向くと、アンジェが近くにあった煙突に何やらワイヤーの様な物を括りつけている所だった。それによく見ると括りつけられた束から延びている一本のワイヤーが道を挟んだ向かいの家の煙突に繋がっているのが分かる(鉤か何かで固定してあるのだろうか)。
「さっきの『ロック』だかであなたがアイツの鎖鎌を防いでいたのを思い出して、ならアイツを『檻』に閉じ込めてやればいいと気付いたのよ…今、その下ごしらえが完了したわ」
「あぁ、なるほど!…ワイヤーガンかぁ、それすごいスパイっぽいな」
「……ほらこれ持って、あっちの屋根に飛んであいつをワイヤーの円の中に入れなさい。
「よし分かった!………いぃ、よっと!」
幸いマスクメイカーの視線が最早一本もない肢を動かそうと躍起になって下に集中している今がチャンスだった。左足に力を込めロンドンの空を走り跳び、マスクメイカーを囲む形でワイヤーを何重にも巻き付かせてグルグル巻きに。そしてワイヤーガンの持ち手を既に煙突の巻き付いてる方とは対角線上にある屋根の煙突に巻き付かせた。これでついにマスクメイカーを完全に拘束できた!
[あれ?う、腕も動かせない?な……なんだ、なんだこの糸はぁああああ!?]
「四つも大きな複眼があるのに私たちの動きに全く付いてこれないなんて…皮肉ね」
「それだけ周りが見えない程に錯乱してるってことだろ!大人しくなった今の内に説得する!」
「もう他に使える道具は、弾があと数発ってところね…私が協力できるのはここまでよ」
「十分助かったよ。あとは俺が何とかする!」
「……(こんな事態になってしまった以上、今のマスクメイカーから汚職の証拠を得るには未知の力を秘めている『仮面ライダービルド』に頼るしかない…不本意だけど任務完了まで頼らせてもらうわ、桐生戦兎)……頼んだわよ」
「あぁ!…アンジェは万丈たちを避難させておいてくれ!」
「了解」
「……よし。マスクメイカー!!」
アンジェが万丈たちの方へ向かったのを見届けて、俺は狼狽しているマスクメイカーに声を掛ける。
[!!……おい!!これを外せ!!ぼくを、自由にしろぉ!!]
「その前に、君に聞きたいことがある!」
[あぁ!?]
そしてまず彼の心の
「君はどうして、強盗殺人を犯してしまったんだ?」
[………覚えて、ない]
よかった…答えようとする気はあるみたいだ。
今の彼は恐らく『子供』なのだ。素直で周囲の景色に興味をあまり示さないが、その分掛けられる声に特に敏感なのだ。
優しい言葉で話しかければ、どんな形であれ反応を示してくれるとは思っていた。読みは間違ってなかったようだ。
「何が君を、そこまで人を傷つけることに悦びを感じさせるようにしてしまったんだ?」
[そんなの……わからない……]
「………質問を変えよう。」
[うぅ……]
「どうして、君はそうまで強く幸せになりたいと願ったんだ?」
[わからない……わからない!ぼくも知りたい!!知りたいけど!!……その前に!]
「!!」
[もっと刻んで、刻んで…同じだと感じたい!みんな僕と同じ…『カオ』なんてないんだって!!そう、カンジタインダヨォオオオオオ!!!]
マスクメイカーの咆哮と急激な動きでワイヤーを固定してある煙突に亀裂が入ったのが見えた。
「まずい!!あんなに上体を揺らしたら拘束が……!!」
「…………マスクメイカー!!教えてくれ!!君の……本当の名前を!!」
[!!]
動きが止まる。
「『マスクメイカー』ってのは殺人鬼である君の呼び名として周囲が勝手につけた名前だろう?…君の本当の気持ちを知るのに、それが必要なんだ!!本名は本当の『君』の大事な要素なんだ!!」
[ボクノ………ナマエ?]
「そうだ!頼む、教えてくれ!!」
僕の名前。
そうだ、僕の……名前は……
~~~~~~~~~~~~~~~
――ねぇ****、どう?描けた?
あ………あれ?あの人、誰だっけ。刻まれてるから見えないよ。
――わぁ、ちゃんと私だわ!本当に上手なのね、
僕の名前……そうだ、それが僕の名前なのに、なんで聞こえないんだ
――将来は大画家さんね。今の内にもっといろんな人に知ってもらいましょうよ。その方がマ*ス*メイ*ー*にとってもきっといい。幸せの第一歩なのよ。
教えてよ、『マスクメイカー』じゃない僕を。ねえ。
――どんな人にも幸せになる方法があるの。あなたの場合は絵がそうなの。だから……
教えて
教えて
あぁ
行かないで
消えないで
僕の大事だったはずの人
あぁ
いない
僕の名前
わからないまま
僕は
誰なの
ねぇ
真っ暗で
何も
見えないよ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「戦兎ォオオオオオオ!!避けろォオオオオ!」
最後の質問の後がくがくと震えていた『彼』は、突如急激な動きで上体を揺らしワイヤーを引きちぎってしまった。
「いや、受け止める。」
こちらに倒れようとする彼の大きな体を、俺は立ったまま両腕でその頭を支える。
「俺は言った……お前を救うって!だから!」
彼の両腕で抱えられるほどの頭部を、抱きしめるように支える。
「君も、自分で自分を救え!!そうじゃないと君が本当の意味で救われない!!他の誰も君を救ってくれない!!君の未来は……君自身の力でないと、創りはじめられない!!!」
その時だ。
「!!」
俺と『彼』の間で紅と青の光が……溢れて、そして――
「ここは……」
目を覚ますと、俺の変身は解除されていた。
「!?……夕方じゃない…」
景色は快晴で身の回りには色とりどりの薔薇が咲き誇り、遠方には小さな池とそこに橋が架かっているのが見えた。
「まるで金持ちの庭みたいだ……あれ?」
そしてその池の畔に、一人の防災頭巾の様な物を被った奇妙な子供が、スケッチブックだろうか、それに絵を描いている。
「あ……ねぇ君!」
「………」
近づいて声を掛けてみたが返事はない。それどころか、
「俺が……映ってない?」
池の水鏡に、俺の姿がなかった。
「一体、何がどうなって……」
「――ショーン!探したわよー!」
「!!」
後ろから女の子の声。見えたのは綺麗な金髪に、左手薬指に大きな青い指輪を嵌めている少女だった。
……もしかしたら『ショーン』というのはこの頭巾の少年の事だろうか。
「また来たの?いい加減にしてよ」
「ねぇ、絵を見せてったら。いいでしょう?お願い!」
「やだ…絶対やだ!!」
「なんでよ!こんなに頼んでるのに!」
「どうせ笑いに来たんだろう!!そんな人に見せたくない!」
少年は胸にスケッチブックを少女に見せないようにして抱える。
強い拒絶の意思が感じられた。
「アルバート兄様も、ベラドンナも!みんな笑った!僕みたいなのが描いた絵なんてしょうもないって!一生飼い殺しのくせに、無駄な紙を使うなって!!!」
「そんなことない!」
「え……?うわ!?」
「死んだお父様が言ってたわ…『この世に無駄なことなんてない。どんな経験も人生の大切な宝物だ』って。つまり、あなたの今描いている絵はあなたにとっての大切な宝物ってことよ。そして……」
「あ……返してよ!」
「『弟のものは姉の物。姉の物は姉の物』ってね!あ、これはお母様の言葉ね」
「……弟?何それ…君僕の兄弟の誰かの友達か何かじゃないの?」
「あら、聞いてなかったの?しょうがないわねぇ…」
少女は少年の手を取り、太陽のような笑顔でこう言った。
「ちょっと前にこの家に越してきたの。『ユーシェ・シュタインヴァルト』よ。そしてあなたは私の弟になったの。よろしくね!!」
「………『ショーン』です。よ、よろしく」
「わ、カッコいい名前ねぇ。その顔もカッコいいし!」
「え……えぇえぇ!?」
「何驚いてるのよ、だってそうでしょう。」
俺は、ここでようやくその可能性に思い当たった。
「――顔が『ない』なんて、これ以上ないくらい個性的でカッコいいじゃない?」
この庭は、マスクメイカーの『記憶』の世界なのだと――。