艦娘と提督   作:ためきち

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1話

 

 

「あっ! 提督お疲れ様です!」

 

 

 これはあれだ。とてもよく出来た、いわゆる完成されたコスプレってやつだな。

人だかりが出来てる向こう側から俺が居る方に向かって笑顔で声を掛けてくるレイヤーさんが一人。

今日も今日とてしっかりと労働に勤しんだ俺に、と言うかこの駅を利用する全ての人に対するご褒美的なやつだろう。

まあ、中にはこういったものに嫌悪感を抱く人もいるだろうけど大体の野郎たちにとってはご褒美に違いない。

膝まで届く長い青色の髪の毛。袖なしセイラ―服とニーハイの組み合わせもグッド。身長だって150前後だろう。ちょうどいい小ささがよかよか。そしてなによりもあどけない笑顔とか最高です。ありがとう。

 

 ≪艦隊これくしょん≫。通称≪艦これ≫に登場する初期艦の一人でもある白露型六番艦五月雨のコスプレ。しかしなんでこんな何にもない田舎で……しかも一人で……?

公式からイベントの告知も出てないし何ならこんな田舎の駅で一人だけでコスプレってのはちょっと……あぁ! ようつべ投稿用動画とかそういう系ね。把握。

はぁ~いいねいいねぇ最高だねぇ! こういうの初めて間近で見たけど普通に可愛いもんなんだな。ネットに上がってるのもちょっとはフォトショ使ってない可能性を信じてみるか……

 

 さてと。そろそろ電車来ちゃうし行くますか。

写真撮りたいけどレイヤーさんを勝手に撮るのはご法度だしな。撮る前に声を掛けようにもこの人だかり。諦めるのが無難よね。今度ようつべで動画探して「俺これ見たわw」ってつぶやこう。うむうむ。

 

 

「あ、あれ!? 提督! ちょっとすいません! 通してください! 提督待ってください!」

 

 

 提督さん呼んでるっぽい。五月雨ちゃんが待ってるんだから一番良い笑顔で相手してやれよ。

しかし、コミケでもないのにレイヤーさんを間近で見れたのはえがった。しかも、五月雨ちゃんだよ五月雨ちゃん。

俺が艦これで唯一ケッコンしてる艦の完璧に完成されたコスプレとかね。明日も仕事頑張れる。やる気元気無敵だって金曜日だもん!えぇ、明日は土曜日。仕事頑張れる。頑張れるよ……五月雨ちゃん……んあーん!! 休みたいよー!!

 

 とまあ、現実逃避してたら後ろから野太い歓声が聞こえてきた。

気になって振り返るとロータリーに止めてあった車から今度は天龍型二番艦。天龍型のこわくて可愛い方の龍田が姿を現した。恰好は改二の方で凄い色気を感じる。

だってあれ凄くない? 見ろよあの太もも。まぶしすぎて直視できないもん。つーか、スカートみじかすぎよね。俺はもう少しロングなスカートさんが好きよ?

 

 でも、五月雨と龍田ってなんかあったかな……別艦種なら比叡とか夕張ならわかるんだけど龍田……わからん。Wikiガン見でろくに史実とか調べてない系提督には艦同士のつながりが導き出せない……本当にすまないと思っている……

あるとすれば、初期艦と最初の方の任務報酬でもらえる艦って感じだったかな。正直覚えてない。ホントごめんねレイヤーさん!

てかさ、龍田と五月雨ちゃんがこっちの方に向かって歩いてきてるじゃん。

提督さんこっちの方に来てんの?まあ、俺には関係ないし横にどいとこ。

 

 

「あらぁ? 提督? どこに行くのかしら~? 早く車に乗ってくれない?」

 

 

 ……? なんでこのレイヤーさんは俺の左の手首を掴みながら提督呼びしてんの?

てか、龍田のレイヤーさんもそんなに身長高くないのね。グッドよ。しかしあれだ。俺の目をまっすぐ見つめないで……照れちゃうでしょ!

 

 

「あ、あの……人違いじゃないでしょうか? 俺に貴女達のような知り合いは居ないと思うんですが……」

 

「いいえ。あっています。貴方は私の提督です」

 

「はい! 提督は私たちの提督です!」

 

「ね? ほら早く来なさい。車で天龍ちゃんも待ってるんだから」

 

 

 あの車の中に天龍もいんのかよ。つか、この人めちゃくちゃ力強いんだけど。

びくともしないと言うかまるで……そういわゆる万力に絞められた様な……痛い。めがっさ痛い。え、なんかどんどん握る力強くなってんだけど? え? 手首ちぎれちゃう! ちぎれちゃうから!

  

 

「あの……その……はい。行きます。行きますから手を離してくれません? めちゃくちゃ痛い……」

 

「うふふ。離して逃げられたら困るでしょ? まあ、私たちの脚力から逃げられるとは思わないんだけどね~」

 

「逃げません。逃げませんから! わかった! 離さなくていい! が、力緩めてー!」

 

「龍田さん! 提督本当に痛そうですよ!? 提督の手が取れちゃいますよー!」

 

 

 その後、龍田さんはちょっと怖いけど魅力的な笑顔と共に力を緩めてくれた。

そして左腕に抱きついてきた。ん? あれ? ……んはっ。やわらかっ! えっ? こんなに柔らかいもんなの?えっ? マジで? 何が柔らかいのか確認したら絶対に歩けなくなるから確認しないけど凄いな女体。あと凄くいい匂い。同じ人類なのか悩んでしまうレベルで俺の身体とは大違いだわ。

てか、今度は右手に五月雨ちゃんがくっついてきた。ふぅー……なんだこれ。なんだこれ。人はこれをハーレムと呼ぶのだろうか……あぁ~死んじゃう。これ死んじゃう。一旦五月雨ちゃんから腕の所有権を返してもらおう。

 ふんっ! 痛い……自分で自分の頬にいいパンチを決めておかないと死んじゃう。このデンジャラスビースト達は自分の魅力がどのレベルだか理解してないんだろ……いや、龍田さんは理解してそうだな……

 

 

「あの……提督? 大丈夫ですか? いきなり自分の頬にパンチしましたけど……もしかして私何か提督の迷惑になるような事を……」

 

「いやぁ五月雨は悪くないよ。悪くないんだ。悪いのは俺なんだ……」

 

「うふふ。さ、行きましょ?」

 

「はい!」

 

 

 そして再び俺の腕にくっついてきた五月雨ちゃん。龍田さんの言葉にとてもいい笑顔で返事をして龍田さんと同時に俺を持ち上げた。

 ……あれれ~? おかしいぞ~? さっきまでいちゃいちゃしてんじゃねーよ! みたいな感じだったのにね?

というよりも持ち上げるってなに? これでもいい年したおっさんだと自覚してるんだけども。いくら二人掛かりでも女性二人で男一人持ち上げられるものか? いや、無理っしょ……

てか待って。二人とも俺より身長低いからってベルト掴んで持ち上げないでくれない? 食い込むの。めがっさ食い込んでるの。コンドルもびっくりなレベルよ、これ。

あっはぁーいや我慢だろう。ここは我慢すべき時。あーでも、我慢してもしものことがあったらね? ほら、今後使う予定が無くても一生付き合っていく相棒のご機嫌取りはやっぱり大事というかね?

 

 

「二人とも申し訳ないんだけど自分で歩けるから俺を持ち上げるのをやめてもらいたい。……かなーって」

 

「龍田さん。やっぱり提督嫌がったじゃないですかー!」

 

「照れ隠しじゃないかしら? ほら、持ち上げてるから凄く密着してるし。うふふふ」

 

「テレ9割痛み1割ぐらいで下ろしてもらいたいんです。お願いします。歩きますから」

 

 

 下ろしてもらえた。ふぅ……これで相棒も安心してくれるだろう。

しかしあれだなぁ。これ付いていくって言っちゃったけどどこに連れて行かれるんだろか。なに? こんな三十路のおっさんをハイエースしてダンケダンケだと? ないわー……こんなんあるとしたらあの車の中に天龍ちゃん(ムキムキなお兄さん)がギッシリみたいな状態からの美人局しか無くない? はぁ……なんで俺なの……なんで俺なの……

 

 今日も普通に家に帰って風呂入ってアニメ見てゲームやって寝て明日も仕事っていうルーチンを決める予定だったのに……美人局ってやっぱり法外な金額を要求してくるものなのだろうか。今月はガチャ回してないし少しだけ残ってるけど来月の事を考えると余裕はない。水着ガチャにコミケ。その後水着ガチャ。なんで前後半で分けるんですかねぇホント。今年もノッブ来いノッブ。

 あぁ、あと甲作戦の進行具合によっては資材を買わないといけないから圧倒的金欠だわ。どうしよう……この美人局から逃げれんものか。このバスターゴリラより力の強いちゃんねーたちから逃げる手段僕にください。

 

 なんて現実逃避してたけど車までついてしまった。

まあ、そうよね。俺が居た位置から車までそう離れてなかったもの。あぁ、車のドアが開いてしまう。

そんで、開いたドアから最初に目に飛び込んできたのは厳ついおにいちゃん達だった。運転席と助手席と助手席の後ろに一人ずつ。やっぱり美人局じゃないですかー。

 

 後ろに居たおにいちゃんが五月雨と龍田に向かって敬礼をしてすぐに車から降りて席をスライドさせて「どうぞ」と俺を後ろの席に座るように促してきた。

えぇー……座りたくない。入りたくない。帰りたい。でもね。そんな俺の意思とは裏腹に先に乗り込んだ五月雨が俺の手を引いてくるんだ。やわらかい。だめだ。男という種はホントどうしようもねぇな。

 んで、おにいちゃんたちに気が回って気が付いてなかったけど運転席の後ろの席には改二仕様の天龍ちゃんが腕組みしながら涎たらして寝てやがったわけよ。おじさんびっくりよ。

つか、待ってやめて。いや、やめないで。でも、やめて! このレイヤーさんマジぱねぇッス! 腕に乗るの!? 初めて見たんだけども? いや確かに龍田さんもでかいけどこれは更に上をいk「早く進んでくれないかしら~」はい。

 

 俺、五月雨ちゃんと龍田さんの3人が乗り込むのを確認して先ほど外に出たお兄ちゃんも乗り込んできた。

どうでもいいけど3人掛けの席の真ん中って居心地悪いよね。俺だけなんだろうか。左右の席のシートベルトが微妙に尻に刺さるというかどっちに避けても座りにくいんだよね。あと、左右が美人過ぎてすごい縮こまってます。タスケテ……

 

 

「それじゃあ、向かいましょうか。車出してもらえるかしら~?」

 

「わかりました」

 

「……ちなみにどこに行くか聞いても? 後、お金はありません」

 

「うふふ」

 

 

 龍田さんそれ答えになってないよ!

そんな龍田さんの受け答えを聞いてすかさず五月雨ちゃんからフォローが入った。

 

 

 

「あ、はい。提督のおうちに向かいます! あと、お金は要りませんよ?」

 

「……ホントに? 家に行くの? お金要らないの?」

 

「どっちもホントです! 提督のおうちは自衛隊の人たちが調べたので間違いは無いと思います」

 

「自衛隊が調べた。え、いいの? そういうの?」

 

「本来は当然のことながらやってはいけないことです。しかし、事態が事態でしたので勝手ながら調べさせてもらいました。事後報告になりますが申し訳ありません。それと自己紹介が遅れました。自分は菊池崇というものです」

 

「あ、いえ。はい。大丈夫です」

 

 

 うん。大丈夫じゃないけど大丈夫。いや、だって視線は向けてないけど絶対に五月雨ちゃん泣きそうだもん。龍田さんは余裕の笑み浮かべてそうだけどね。天龍は知らん。

菊池さんからもらった名刺には菊池さんの名前と階級と所属が簡素に書かれていた。うーむ。2等海尉? どんぐらい偉いのかわからんのよー。社長課長で書いてくれ。

 

 

「ところで貴方はどこまで話を聞かされましたか?」

 

「えっ、あー何も聞かされてませんね。いきなり提督呼びされてここまで連れてこられたので……」

 

「そうですか……まあ、彼女達も自分たちの提督とようやく会えて舞い上がってしまったのでしょう。大目に見てあげてください。そうですね……どうしますか?自分の口から伝えてもいいのですが?」

 

「いえ、ここは私から伝えます。龍田さんもいいですよね?」

 

「当然よ~。貴女が一番提督と付き合いが長いのだものね~」

 

 

 置いてきぼり感がすごいのだわ。でも、五月雨ちゃんが俺の方を向いて覚悟を決めた瞳で俺の事を見つめてきているわけだししっかりと一語一句聞き逃さないように耳の穴かっぽじってよく聞いてやる。

  

 

 

 

 

 

「提督! 実は私達は提督に会いたい一身でげぇむの中から来た本物の艦娘なんです!!」

 

 

 

 

 

 

 さてさてさーて。このレイヤーさんは何を言ってるんだろうか? 本物の艦娘だと? 片腹大激痛なんだが?

流石に私達本物の艦娘なんです! って真正面から言われても信じられないんだよね。だよね。けどね。俺の事を軽々持ち上げるし自称自衛隊のおにいさま方と一緒に居る。

さらにだ。俺の画面だけぶっ壊れるっぽい。だれよこの画面用意したの? え、俺の両親? まあ、そうなるな。うむ。車に乗り込んでから視界の隅どころか中央にお邪魔虫が映りこんでるんだよね。

うん。俺このお邪魔虫見たことある気がしなくも無い。具体的には『どこに進むの?』とかいって羅針盤をくるくる回すように促してくるやつら……

ちくせう……ついに顔に張り付いてきやがった……無視したい。無視したいけど流石に邪魔すぎるんだよこのやろう

とりあえず、羅針盤妖精を顔から引き剥がしながら俺は五月雨に言っておかないといけないことを言うことにした。

 

 

「俺は君達が本物の艦娘だと信じられない。だって、艦娘が居るわけ無いじゃないか……あの子達は二次元の存在なんだから」

 

「妖精さんは私達艦娘か私達の提督にしか見えないし触れられません。それが証拠じゃだめでしょうか?」

 

「自衛隊でも妖精さんを見たり触れたりできないかとそれなりの数の人員を割きましたが誰一人として貴方のように顔に張り付かれてる事に気が付いた人は居ませんでした」

 

「では……その。ホントに信じてもいいと?」

 

「もう。そんなに信じられないなら私のここ見ててください」

 

 

 そういうと龍田さんは頭の上を指差した。そこには龍田の謎艤装でもある輪っかがある。

それに俺が目を向けるとその輪っかはクルクルと回りだしさらにはピカピカと光りだしたのだ。回るにしても真ん中の部分だけとかならすごい技術だな~ですんだんだけど、もう全体がクルクル回ってるわけよ。えーいや、えー。それって針金とかで浮いてるもんじゃないの? てか、結構早い速度で回転すんのね。

 

 

「うふふ。これでどう? 信じられそうですか~?」

 

「正直に言いますとそれを見せられても半信半疑なのは変わらないというのが本音ですね。でも、龍田さんにここまでしてもらったし妖精さんも見たし触った。さっき痛みも感じたし多分夢でもないんでしょうね。あとはまあ、時間の問題かな~って所ですね。戸惑いが隠しきれない」

 

 

 信じてるし信じたい。でも、さ。俺に会いたい一心で艦娘達が二次元を超えて三次元に現れるとかありえないじゃないか。そんなホイホイ二次元の壁を超えられるならもうこの世界二次キャラだらけになっちゃうよと言いたい。なんかそんなアニメ最近見た気がするな。

んーそれにしても俺そこまで愛されるぐらいこの子達のために提督やってたかな……成績も万年大将でランカー装備なんてもらった事ないしデイリー任務だってしょっちゅうサボってるし……つまり世の中に公表されてないだけでランカー達は自分の艦娘達とキャッキャウフフしてるとでも言うのか? うらやまけしからんなこのやろう。

 

 

「菊池さん。……俺の艦娘達以外にも艦娘って現れているんですか?正直、俺ぐらいのプレイヤーの所に現れるぐらいですし日本中に艦娘が現れていてもおかしくないと思うんですけど」

 

「いえ。この様な事は過去1度もありません。貴方の艦娘が日本で唯一の事例になります」

 

「ちなみに俺の艦娘ってこっちの世界に来てどのぐらいの期間になるんですか?」

 

「そうですね。もうあと半月もしないうちに1年になりますかね。最初に訓練中の護衛艦に接触してきたときは我々も貴方同様にそんな話あるかと報告に来た部下を叱ってしまったのですが実際に海の上に立っているのを見た時はまさしく開いた口が塞がらないという感じでした」

 

 

 そりゃ誰だってそうなるし俺だってそうなる。

しかし、1年か。よくもまあ、隠し通せたもんだなと。うちの鎮守府に居る艦娘の数はざっくりで150人ぐらい。

まあ、150人全員が来てる訳じゃないし150人ぐらいなら小中学校の全校生徒の半分いくかいかないかぐらいだし隠し通せない数じゃないか。

ただ、戦艦と正規空母が来てたら別の所で隠しきれないかもしれないな。食費的な意味で。

 

 でも、1年前だろ? 去年も普通にイベントやってたしなぁ。

流石に主力が居ない状態で勝てるようなイベントじゃなかったしもしかしたら行き来出来るのか。

二次元と三次元を行き来出来るとか羨ましすぎるだろ……

 

 

「ちなみにその時は誰が居たんですか?」

 

「あの時は……確か、第一部隊に赤城さん、加賀さん、飛龍さん、蒼龍さん、長門さん、陸奥さん。第二部隊に神通さん、金剛さん、時雨さん、夕立さん、五月雨さん、涼風さんだったと思います」

 

「連合艦隊ッッッ!!! 資材が吹き飛ぶぅ!!! あ、分かった。なんか資材減ったなって思った時期があったんだよ! ちくしょう。イベント前に資材が減ったもんだからあれー?おかしいなぁーって頭捻ってたんだよ。それが原因だったのか……」

 

「最初は大和さんと武蔵さんも行こうとしてたんですけど~止めました~」

 

「それについては良くやったと一応褒めておく。が、何もイベント最終海域突破編成みたいなクソ重連合艦隊じゃなくても潜水艦組でもよかったんじゃないのか?」

 

「最近提督が構ってくれないから資材を減らして構ってもらうでちって言ってたわ~」

 

「おのれでち公……まあ、確かにうちはあんまりオリョクルしないから構ってないって言えば構ってなかったかもしれないな」

 

 

 まあ、正直資材が減ったことはあんまり気にしてない。甲勲章はきちんともらったしそこはいいんだ。

でも、これでハッキリした。こいつら行き来してるわ。しかも、補給とかは向こうで可能。つまり、戦うための準備以外に掛かる生活費だけこっちで賄えばいい。水道光熱費とかそういう諸経費の類。

うちの艦娘がそこんところどう稼いでいたのかは分からんけど、ぐへへ的な展開じゃなきゃいいか。まあ、俺は自衛隊に関しては信頼してるしそういったことはないと思ってる。

あるとすれば演習の手伝いとかかな。荷物運びとかに便利そう。

 

 

「それよりも、結構な数の艦娘がこっちに来てるのか?」

 

「そうですね。基本的に全員来てます。提督が出撃と演習と遠征に出すメンバー以外はなるべくこっちに来てこっちの生活に慣れようって長門さんがおっしゃったので」

 

「やっぱ、向こうとこっちじゃ違うのか?」

 

「ん~そこまで大きな違いはないと思います。でも、やっぱりこっちの方が匂いとか空気感? というのを強く感じるなって言うのはあります! あ、でも一つだけ大きな違いがありました!」

 

「ほー。どんな所が違ったんだ?」

 

「はい! こっちの世界なら提督とお話が出来ます。一方通行の独り言みたいな会話じゃありません! それに提督に触れて提督の温かさを感じる事が出来ます。いくら手を伸ばしても触れられなかったあの頃とは違います。これはあっちでは体験出来なかった大きな違いです!」

 

「な、なるほどな」

 

 

 夕日に照らされた五月雨が満面の笑みを浮かべてとんでもなく恥ずかしい台詞を言ってきた。

五月雨ちゃんってそうよね……天然入ってるっていうか思ったこと躊躇なく言ってくるっていうか……まあ、五月雨が喜んでるならそれでいいか。

にぎにぎと俺の右手を握ってくる五月雨の姿に照れてしまって視線をそらすと、余っている左手を差し出せと右手を出してくる龍田と前を向いていて表情は見えないが絶対ににやけているだろう菊池さん。未だにぐっすりの天龍が視界に入ってきた。

 

 結局両手を弄ばれ無我の境地に至っているともう後5分もしないうちに俺が一人暮らししてるアパートに着くなぁってぐらいの見慣れた道が見えてきた。

これ明日の仕事に響くような疲れにならないといいなぁ……




10/9 誤字修正しました。報告ありがとうございます。
11/23 誤字修正しました。報告ありがとうございます。

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