艦娘と提督   作:ためきち

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10話

 結論から言えば特に何もなかった。俺への被害は。

残念ながら寝室の門は艦娘ゴリラパァウァーで一部がひび割れてしまった。かわいそうに。

そして、寝室の入り口にヒビを入れた大淀はまるで何もありませんでしたという態度で極々普通に俺に話しかけてきた。

 

 

「提督。そろそろお時間になりますので食堂の方へ移動しましょう」

 

「え、もうそんな時間? じゃあ、先にシャワー浴びて服も新しいのにしたいんだけど、そのぐらいの時間はある?」

 

「えーそれはもったいないよ提督。すぅー……はぁー……こんなにいい匂いなのに」

 

「川内が良くても他の子が嫌かもしれないだろ。てか、俺が嫌だ。服が乾いてきて自分でも汗臭さを感じ取るレベルになってきてる」

 

 

 俺の言葉を聞いて「ん~」と唸る大淀を横目に川内の腕を剥がしにかかる。

が、全くもってピクリとも動かない。川内に力を入れて踏ん張ってますという雰囲気を一切感じないあたり人間と艦娘の出力の違いを見せつけられているようで少しへこむ。

ちなみに川内はそんな俺の奮闘を無視するように鼻息荒く俺の匂いを嗅ぎまくっている。真面目に恥ずかしいし鼻息が結構くすぐったい。

 

 相性がいいと汗もいい匂いに感じるなんて話をさっき聞いたけどそれでも限度って物があると俺は思うんだ。

流石に川内のこれはいい匂いだから沢山嗅ぎたいというよりもくさい匂いが癖になってきた臭いフェチの行動なんじゃないかと思えてきた。

 

 

「川内ってもしかして臭いが強いものとか好きだったりするか?」

 

「え? ん~そんな事ないと思うけどなぁ」

 

「でも、貴女納豆が好きだとか言って3食全部に納豆出してもらってるじゃない」

 

「納豆はノーカンだよ。納豆だもん」

 

「ノーカンの理由になってないんだが? ちなみにだけど匂いの少ない納豆とかではなく?」

 

「那珂の笑顔が固まるレベルよ」

 

「アウトじゃねーか」

 

 

 川内の腕が少しずつ食い込んでいくのを感じるんだが。

まだ我慢できるレベルだけど少し息苦しい。大淀ー! まだかー! 早くぅ!

 

 

「お待たせしました。10分程なら時間がありますがいかがしますか?」

 

「10分? まあ、そのぐらいあれば余裕かな。シャワー浴びるだけだからね。悪いんだけど替えの服の用意をしてもらってもいい?」

 

「わかりました。では、この部屋に備え付けてあるお風呂を使ってみたらどうでしょうか?」

 

「……そうだな。時間もないしあっちに移動する時間がもったいないか」

 

 

 そう言って風呂場に移動する。

さっき変な声出しながら風呂場の中は見たからどこに何があるってのは把握してるから大丈夫なはず。

あと、浴室の鍵ね。これ重要。もしかしたら俺の後ろにまだ誰か隠れてるかもしれないからね。鍵をかけて変なものを見せてしまうみたいな事故を未然に防いでいかないと。

大丈夫。一緒についてきた妖精さんに洗濯物を置いておく場所なんかは教えてもらえるからね。

 

 男の風呂なんてのは常にラディカルでグッドなスピードと相場が決まってる。烏の行水というやつね。

バッと入ってバッと出てきました。男の入浴がサービスシーンになるのはゴールデン〇ムイだけ。

バスタオルは備え付けの物を使って下着を……下着かぁ。

どうするべさと悩んでたら妖精さんが服の下から俺の下着を取り出して渡してくれました。

 

 

「ありがとう。でも、次からは先に出しておいてくれていいからね。ちょっと流石にデフォルメ幼女の服の下で温めた下着ってのは犯罪臭が尋常じゃないんだ。頼むね?」

 

 

 俺の言葉に敬礼で答えてくれたので次は大丈夫だと思う。

とか言ってたら次はワイシャツを服の下から取り出して俺に渡してきた。まあ、そうよね。全部そうやって持ってきたに決まってるよね。

ありがとうとお礼を言いながら渡される衣服を着用していく。

結局靴以外がデフォルメ幼女の服の下で温めた物な俺氏。なかなかに犯罪チックである。

 

 

「悪い。待たせたな」

 

「いえ、5分程でしたし大丈夫ですよ」

 

「ちゃんと汗は流せた?」

 

「あぁ、バスタオルもふわふわでどんどん水を吸い取るから拭くのも楽で助かった」

 

「あれは毎日鳳翔なんかが主立って洗濯しているものだ。お礼なら彼女にしてあげるといい」

 

「そうか。わかった。後で言っておくよ。で、川内はどこに行った?」

 

「川内さんなら先に行って待ってるねーと言って行っちゃいました!」

 

 

 臭いの薄くなった俺には興味がないという事なのだろうか。

それはつまり納豆に負けた状態? いや、でも納豆と勝ち負けを競ってもそれはそれでどうなんだろうか……

 

 

「それでは提督。食堂に行きましょう」

 

「わかった。案内よろしく」

 

 

 大淀を先頭に食堂を目指して移動を開始。今更だけどこうやって何人かでまとまって部屋を移動するのは移動教室ぽくて結構好きかもしれない。

懐かしきかな学生生活。まあ、あの時は周りにこんな綺麗所なんて居なかったけどね。野郎だけでわいわい騒ぎながら移動したもんよ。

 

 んで、移動が済んで食堂の前。

ちなみに長門と陸奥、五月雨ちゃんは先に中に入っていった。廊下には大淀と俺だけ。

こういう仕切り担当が大淀ってのはわかるけどこの子だけ働きすぎじゃないかなって思えてきたんだけど?

実際、今大淀作成の本日の歓迎会式次第を俺に手渡して上から順番にプログラムの内容の説明をしてくれている。

けど、これ何回読み直しても歓迎会って感じじゃないんだよね。

わかる。わかるよ。これは何分とかこれは何時間とか時間区切ってはじめと終わりを明確にしておきたいのもわかる。

提督である俺を持ち上げるために一所懸命考えてくれたんだろうなってのもその顔を見ればわかる。

 

 

「だからこそ。だからこそだよ、大淀」

 

「何がですか? どこかおかしな所がありましたか?」

 

「あぁ、いや。大淀が作ってくれた歓迎会のスケジュールは完璧だと思う。とてもよく出来てるよ。俺も仕事で何回か作ったことはあるけどこれ結構めんどくさいよなぁ。俺的にはもうやりたくない」

 

「大丈夫ですよ。今後、こういった仕事は私が作って提督が確認といった風になりますから」

 

「あ、ほんと? そいつは助かる。じゃあ、早速今回のこれについてだけどこれはダメだよ大淀君。完璧だとかよく出来てるって言ったけど宴会としては堅すぎるからやり直しだな」

 

 

 俺は式次第に書かれた時間が来ていないのにもかかわらず食堂の引き戸を開け放ち中に入っていく。あ、引き戸の先は下駄箱なんですね。ちょっと勢いよく入ったのに恥ずかしいじゃん。なんもかんも曇りガラスが悪い。

んで、靴を下駄箱に入れてさらにその先にあった引き戸を開けて中に入ると最初に目に飛び込んできたのは俺に向かって敬礼をしてくる艦娘達だった。

 

 

「うぇ、いつから敬礼して待ってたんだ? あ、敬礼はやめていいぞ」

 

「私達が食堂に入ってからだな」

 

「あーなるほどね。よろしい」

 

「提督。私は何かまずい事をしてしまっただろうか? 次の時の為に教えてもらってもいいか?」

 

「ふむ……長門、それに大淀。君たちは何も悪い事なんてしてないさ。俺の為を思ってしてんだろ? ならいいんだ。俺はうれしいよ。でも、それと同時に俺は悲しい。なんでだと思う? あーそうだな。じゃあ……うん。こういう時は吹雪だな。なんでだと思う?」

 

「うぇっ! 私ですか!?」

 

 

 たまたま俺が立っている位置の近くに居ただけという理由で吹雪を指名すると吹雪はなるべく女の子が出すべきではない声を出しながら俺の方へギュオンという効果音と共に振り返った。

いきなりの事に頭が動いていないのか口元まで持ってきた手をもにょもにょと動かしながら「あ、え、えーっと」と混乱しまくりの姿は非常に愛らしい。やっぱり艦これは芋に限る。

 

 

「残念ながら時間切れとなった為、吹雪君は後で一発芸の刑です」

 

「えぇー! 司令官それは理不尽過ぎません!?」

 

「大丈夫。お供に長門と大淀つけてあげるから。じゃあ、次は白雪ね。白雪が答えられなかったら次は初雪だからな。考えておけよ? 初雪の次は深雪様かもしれないし別の誰かかもしれない」

 

 

 吹雪の「なにも大丈夫じゃありませーん!」という叫びを無視して白雪を指名する。

それと同時に次に当たる予定の初雪の顔を見てみれば眉間に皺を寄せて全力の嫌だアピールをかましているのが見えた。正直めっちゃ笑いそうになったんだけど?

まあ、でも白雪多分わかってるよね? だってこの子、キャラソート的には2番目だからね。最古参も最古参よ。

 

 

「そうですね。私は歓迎会にしてはちょっと堅苦しいかなって思ってました。だって、司令官と私たちの仲ですし。今は特に業務時間内というわけじゃないですからね。司令官は堅苦しいの苦手ですし最初から無礼講と言って騒ぐ方が好きなのでは?」

 

「いやー流石は白雪だな。ほとんど正解。じゃ、リベンジマッチだ吹雪。答えられたら一発芸はなしにしてやろう」

 

「が、頑張ります!」

 

「よし。じゃあ、吹雪。俺とお前はなんだ?」

 

「うぇっ!? な、なんだ? え、えぇぇー……なんだ?」

 

「5、4、3……」

 

「短い! 司令官! 制限時間が短すぎます!」

 

「2、1……」

 

「あ、えっと! あぁぁぁぁぁ家族! 司令官! 司令官と私は家族です!」

 

 

 0と同時に吹雪の肩を叩こうと思っていた俺の両手が止まる。

そしてそのまま肩ではなく右手を頭の上へ左手を顎の下に持っていって目を閉じて俺の判決を待つ吹雪を思いっきりよしよしと撫で繰り回した。

 

 

「てっきり上司と部下っていうのかと思ったけどよくわかったな。当てずっぽう?」

 

「い、いぎぇ……そぎょ、しれいぎゃんもそう思ってでぎゅれたらうぃうぃにゃって」

 

「大丈夫だよ。俺も吹雪もそうだし、他のみんなも全員家族だと思ってる。だからさ、次から宴会開くときは式次第なんていらないし俺に向かって敬礼はいらないかな。宴会やるなら集合! 乾杯! 満足したやつから解散! ぐらいの気持ちでいいよ。正直、俺と皆は対等。俺はそう考えている。てか、ね。上下関係かたっ苦しいのでなしでお願いします」

 

「ふふ、しれいぎゃんてりぇてましゅね」

 

「吹雪さっきから面白しゃべり方してるな」

 

「えぇぇぇ! しれいぎゃんがなでぇりゅきゃらでしゅよ!」

 

「マジで笑える。にしても開幕お説教みたいな感じになって悪かった。よし。じゃあ、とりあえず全員グラスを持てぇい!」

 

 

 

 ほんとはね? ほんとはもうちょっと軽い感じでやるつもりだったんだけど想像以上に長門と大淀が真面目ちゃんだったせいで一瞬ガチ説教みたいな雰囲気になってしまってこちらとしては吹雪を使って場を和ます以外手段がなかったんだ……吹雪……なんて万能型な主人公なんだ……

 

 見渡して全員がグラスを持っているのを確認する。いや、待て。あの飲兵衛集団グラスじゃなくてお猪口なんだけど? 一発目から日本酒キメるつもりかよ……まあ、いいか。好きなもん飲みなさい。

よし。大丈夫かな。俺も鳳翔さんからグラスを受け取って喉の調子を整える。

 

 

「ん゙ん゙っ……えーまあ、開幕から白けるような事やってごめんね? でも、俺が言いたいことは伝わったと思う。思いたい。まあ、よくわからんって子が居たら後で聞いてくれ。いくらでも答えるよ。それじゃあ、とりあえず一言だけ。ありがとう。こんな俺に会いに来てくれて本当にありがとう。俺から皆に送る言葉はその一言だけだ。よし! それじゃあ、グラスを上げてー……はい、かんぱーい!」

 

 

 マジでね。自分から注目されるように話を始めたのは良いけど300近い目に注目されると恥ずかしいわ結構怖いわで最後の方は早口で乾杯までもっていってしまった。

俺の乾杯に合わせて飲兵衛集団がノータイムでかんぱーいと声を上げてくれたおかげで他の子達もそれにつられて乾杯と復唱してくれた。ありがとう飲兵衛集団。ポーラの酒はしばらく見て見ぬふりをしてやろう。

 

 じゃあ、俺も席に着いてなんか食べるか。すきっ腹にビールはなかなかに堪える。と、思ったけど俺の席は? 

ちなみにこの鎮守府の食堂は畳と掘り炬燵形式らしい。いいよね、掘り炬燵。掃除大変そうだけどいいよね。

一応奥の方にテーブル席も用意されていて掘り炬燵に慣れていない海外艦に配慮しているのだろう。

でも、パッと見た感じ海外艦も結構な数が掘り炬燵の方に座ってる感じがする。

 

 さて、どこに入れてもらおうかな。

ここに居るのはよく考えなくても俺以外は全員艦娘。自分から「みんなはこれまでもこれからも俺の家族だ!」みたいなファミパンを放ったくせにあまりの顔面偏差値の高さにビビってる。

いや、ほらやっぱり美人に声かけるのって勇気がいるじゃん? 自分との差を見せつけられて話しかけられるほど俺は強くない。

だから、俺は吹雪の横の誕生日席によっこいしょうきちと座り込んだ。

 

 

「え、司令官。ここでいいんですか? もっと戦艦の皆さんとか空母の皆さんの方がいいんじゃないですか?」

 

「いや、ほら。あっちのお姉さま方食べるので忙しそうな感じがするんだよね。それならまだ駆逐艦の方が人間味溢れる食事量かなって。まあ、ある程度腹が膨れたら歩き回るからそれまでは一緒に食事しよう。あ、それから大淀も自分の席に行っていいからね? 今日も疲れたろ? 沢山食べて沢山飲んでゆっくり休んでね」

 

「えっ……あ、はい。それでは失礼します」

 

 

 俺の言葉に返事をしてとぼとぼと歩いていく大淀の背中は寂しそうに見えた。

が、大淀は俺のそばに居ると働いてしまいそうなのでここは心を鬼にして大淀を送り出す。

うちの鎮守府はブラックではなくホワイトなのです。女の子がブラックになっていいのはプ〇キュアだけ。

 

 

「司令官は何が食べたいですか? 小皿によそいますよ?」

 

「どれもおいしそうだな。じゃあ、とりあえずその沢山ある卵焼きを何個かと唐揚げをお願いできるか?」

 

「卵焼きと唐揚げですね」

 

「あ、司令官飲み物はどうしますか? 次もビールですか? それとも日本酒とか焼酎ですか?」

 

「いや、このあと歩き回る事を考えたらソフトドリンクの方がいいな。麦茶とかあったらいいんだけど、悪いが吹雪持ってきてくれるか?」

 

「任せてください!」

 

「お、司令官! このお稲荷さん美味しいぞ! 司令官も食べてみろよ!」

 

 

 俺が席に座って妖精さんからおしぼりを貰って手を拭いている間に吹雪型の2、1、4番艦から怒涛のラッシュ攻撃を喰らった。

白雪におかずをよそってもらい吹雪に飲み物の補充をしてもらって深雪様からお稲荷さんアタック。このお稲荷さんべらぼうにおいしいんだけど。え、なにこれ。無限に食えそう。

ちなみに初雪はマイペースにおかずをよそってもそもそと食べていた。え、なにこれ。べらぼうにかわいいんだけど。無限に見ていられる。

 

 

「ちょっとあんた。姉たちに何させてんのよ。自分のことぐらい自分でしなさいな」

 

「大丈夫だよ、叢雲ちゃん。なんか司令官のお世話するのちょっと楽しいかも」

 

「白雪が楽しいかどうかじゃないわ。こいつが自分で自分の世話が出来なくなったらどうすんのって話よ」

 

「そうなったら……それはそれで」

 

「よくないから言ってるんでしょ!? ほら、あんたもアホ面してないで白雪から小皿奪い取って自分でよそいなさい!」

 

 

 叢雲が想像以上におかんやってる。最高かよ。生きててよかった。

しかしこれ以上睨まれたくないので白雪にお礼を言って途中まで盛り付けられていた小皿を受け取る。そこからちょろちょろっと付け足しで小皿を重くしてから自分用の割りばしを割った。

その時ちょうど吹雪も飲み物を持って戻ってきてくれた。芋だなんだ言われてるけどこの笑顔最高なんだよなぁ。

まあ、改二だから改よりもシュッとしてて芋成分少な目だからってのもあるかもしれないけどね。

 

 

「お、吹雪も飲み物ありがとな」

 

「いえ、このぐらいお安い御用ですよ司令官!」

 

「吹雪もあんまりこいつを甘やかしたら駄目よ」

 

「えーこのぐらい甘やかしたうちに入らなくない?」

 

「入るわよ。それでなくてもこいつを甘やかそうと躍起になってる連中が居て頭が痛いってのに……」

 

「叢雲ちゃんも司令官の事お世話してみたら? あ、初雪ちゃんは何か食べたいものある?」

 

「司令官の前にあるお刺身が食べたい」

 

「これか? 俺がよそってやるよ。皿くれ皿」

 

「ん! このお稲荷さん美味しいですね司令官!」

 

「あ、司令官! 深雪様にも刺身くれ!」

 

「あんたらね!」

 

「叢雲もそうかっかしなさんなや。ほれ、叢雲の刺身とお稲荷さん。刺身のおかわりが欲しかったら司令官にな!」

 

「あ、ありがと。……はぁ、もういいわ。私も食べよ。でも、あんた達司令官をこれ以上甘やかすんじゃないわよ」

 

 

 その後お稲荷さんを頬張った叢雲はキラキラと輝きながら「え、これ美味しすぎない?」と興奮と困惑を織り交ぜながら、先ほどまでの怒りをどこかに吹き飛ばしてリスのようにほっぺたを膨らませながら食事を開始した。可愛すぎかよ……どうなってんだ吹雪型……

 

 ちなみに磯波と浦波もその場に居るのだけどこちらの会話に参加せずにいた。

いや、正確には何回か磯波もこちらの会話に交ざろうとしてきたがその悉くを浦波が話しかけたり食べ物をあーんしたりしてつぶしていた。

ふむ。浦波はこっちの世界ではより磯波大好きガールになっているという事なのだろうか。

それとも向こうでは触れ合いみたいな事が出来ないからこっちでそのうっぷんみたいな物を発散しているとかそんな感じなのかな。

実際、ちらりと横を見てみれば少し離れたところで北上が助けてくれと視線で訴えてきたので親指を立てて応援してあげた。利根と筑摩はまああれで正常か。

 

 さて、そろそろ小皿の上も卵焼きだけだ。俺は好きなものは最後にとっておくタイプ。

絶対これ瑞鳳が作ったやつだろ? 絶対美味しいよね。あれだけ卵焼き押しで美味しくなかったらウソだもんな。

改めていただきますと言ってから箸で卵焼きを掴もうとした瞬間。俺の腕は何者かによってその動きを止められてしまった。

 


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