なのでルビだけを読んでもらえればと思います。
「ハアーイ! アドミラールは居るかしら!!」
「アイオワじゃん。どったの」
「どうしたのじゃないわ! サギリの代わりに私が食堂までエスコートしに来たのよ! さあ、行きましょ? アカシはどうするの? 一緒に行く?」
「あ、私はもうちょっと作業していくんでお気になさらず~」
「そう? じゃあ、行くわよアドミラール! GO! GO!」
「でゅうぇ! 腕組もうとするな! アイオワのがでかいんだから! いでぇ!」
スーパーマン並みの防御力はどこへ。
まあ、これまでも艦娘からのダメージは一切抑えられてなかったわけだし、多分だけどこの身体って艦娘相手だと演習扱いになるんじゃないか、これ。
つーか、素で俺より身長が高いアイオワがヒールなんて履いてるもんだからマジででかい。180超えてないかこれ……
あと、至る所がでかい。流石外国産。うちのでかい筆頭大和と武蔵より幾分かでかく感じるわ。うん、至る所が。
「えー、でもアドミラールと腕が組みたいわ! アドミラールもうちょっと身長大きくならない?」
「無理だな。成長期なんてとっくに過ぎてるおじさんだし、身長が縮むことはあっても伸びることはない」
「なら、アカシに頼みましょう! きっと身長を伸ばす薬ぐらいすぐに作ってくれるわ!」
「えっ! うーん……身長ですか。骨延長手術でもしてみます?」
「それめっちゃ痛い奴じゃん……漫画で見たぞそれ。190ぐらいのやつが250ぐらいになってたな」
「ありゃ、知ってましたか。まあ、痛みぐらいならちょちょいのちょいと消せますよ。けど、ふむ。身長考えておきますね」
「よろしく頼むわ! じゃあ、アドミラール! 行きましょう!」
今度はガッツリと腕を組まずに俺の二の腕を掴んで歩き出すアイオワ。
って、指回ってるんだけど? 俺そんなに腕細かったかしら……それとも外人さんはやっぱり手も大きいのかな。
あと、アイオワってもうちょいルー語が凄くなかったっけ?
まあ、正直日本語も不自由な日本人な俺は外国語なんてさっぱりだから言われても反応できない自信があるけどね……
「なあ、アイオワ。ゲームとかじゃもう少し英語しゃべってなかったっけ?」
「あぁ、それね。だって、アドミラールってば日本語以外ダメダメでしょ? だから、日本語を頑張ってマスターしたわ! 英語が伝わるならそれに越したことはないけどわからないでしょ? いざ、愛を囁いても通じないんじゃ意味ないもの!」
「それは、悪かった……まあ、追々な追々、俺も勉強していくから。多分きっとおそらくメイビー」
「それ知ってるわよ! アドミラールがそれを言い出したら大体やらないってみんな言ってたわ!」
「……ソンナコト、ナイヨ?」
「ふふっいいのよアドミラール。そんなアドミラールも愛しているわ。とってもとーっても愛しているわ」
「……いきなりどうした?」
「アドミラールを見てたら、なんかこう、胸が一杯になって言いたくなったの。やっぱり面と向かって愛してるって言えるのは良い事だわ」
アイオワはきっと凄いいい事を言ってるんだと思うんだけど、アイオワの胸が一杯ってそれは……っていう感想で頭がいっぱいになってた。ごめんねアイオワ……
「アドミラールももっと沢山私達に愛してるって言ってくれてもいいのよ? 日本人の奥ゆかしさだっけ? それを否定するつもりはないけど私的にはもっと情熱的に求めて欲しいと思うわ」
「……それも追々ね、追々」
「ん~しょうがないわね。それじゃあ、アドミラールが言ってくれるまでは私がその分沢山愛してるって言ってあげるわ。愛してるわアドミラール」
腕を引き寄せて耳元で囁くように言ってくるもんだから吐息が物凄くこそばゆい。
俺がこそばゆいのに我慢できなくて身をよじろうにも気づけば腕じゃなくて俺の肩を抱いているアイオワの膂力に勝てるわけがないのでされるがままの状態。
つーか、これ普通立場逆じゃないの? 恥ずかしがる女の子の肩を抱いた男が好きだとか愛してるって言う状況はわかる。でも、今これ逆だよね?
なんだろう。ここだと俺のポジションが本来女の子が担当すべきポジションになりつつある気がするぞ? これがうわさのメス堕ちか……
「あれ? なんで提督とアイオワがここに居るの? コンゴウ達食堂で待ってたよ?」
アイオワとじゃれ合っていると後ろからサミュエル・B・ロバーツことサムとガンビア・ベイことガンビーが歩いてきた。
お腹を押さえて「満腹満腹」とご機嫌なサムを見る限り晩御飯を食べた帰りなんだろうなと。あと、どうでもいいけどサムって聞くとドレイクが出てくるんだよね。続編出て欲しい。
でだ、サムとガンビーが後ろから来たって事は食堂は進行方向とは真逆って事だよな?
正直まだ脳内マッピングが済んでない俺が一人で歩き回って迷子になるのはわかるけど、それなりに長い期間ここに住んでるはずのアイオワが迷うわけないよなって思いアイオワの方を見ると顎に手を当てて「ふぅ~む」と悩む姿が映った。
数秒悩んだアイオワがちょいちょいとサムを呼び俺とガンビーから離れた。
時折サムが「ん~まだ早いと思うんなー」と指を折りながらあれこれ言っている。
それに対してアイオワが「なるほどね」と頷く。
そんな二人の様子を見ていたら袖をちょいちょいとガンビーに引かれた。
「
「ガンビーも晩御飯食べた帰りか?」
「
「ミートアンドポテト……なんだろ……」
「uh, 肉じゃがです……」
「肉じゃがか。デリシャスって事は美味しかったって事だよな。そうだろうなぁ。あの人らが作る肉じゃがとか絶対美味いよな」
「
「あぁー……なんて言ってるかわからないけど凄い美味しかったんだな。いいなぁ。俺も食べたいな。この後出してもらうか」
「あ……ご、ごめんなさい。ついAdmiralと話せるってなって舞い上がってしまいました……私も日本語大丈夫です……すいません」
「いや、ガンビーが謝る事じゃないさ。英語がわからない俺が悪いだけだからな」
「うぅ……すいません」
「なになに提督ってばガンビーいじめてるの? いっけないんだー」
「個人的には、よし楽しく話せたなってレベルなんだけど?」
「その評価は流石にないよー……」
アイオワとの話が終わったのかサムが右腕に抱き着いてきた。
いじめてるつもりは一切ないけどガンビーの性格上常におどおどしてるみたいな状態だからはたから見ればそう見えなくもないかなって。
「ガンビーはいつものでしょ? ほら、アドミラールがこの程度の事で怒るわけないんだから顔を上げて上げて!」
「うぅ……はいぃ……」
「あなたは笑ってる方がキュートなんだからなるべく笑いなさい!」
「ふぁい……」
「両手でほっぺた挟まれたら笑えないよアイオワ」
「いや、でも、んふ」
「この顔もキュートね」
その後更に小さくなってしまったガンビーをなだめてから二人と別れてアイオワと一緒に食堂を目指して移動を開始した。
さっきまで逆方向に進んでいた事を聞いてみると「そんな事聞くなんて野暮よ?」とウィンクしながら言われた。
陸奥にしてもそうだけど美人のウィンクって凄く様になるんだよなぁ。羨ましい。
まあ、それとは別に道を間違えてた理由をおじさんに教えて欲しい。おじさん若い女性の考えとかわからんちんのよ……こういう時に勉強させてほしい。
食堂に着いて色んな駆逐艦に絡まれつつも戦艦達が待っている一角にたどり着いた。
んだけど、何人か居ないな。まあ、情けない話だけど全員出席ってなっても全員と話す時間を作れるかって言われたら多分無理だったろうしこれはこれでありがたい状況かな。情けないけど……うん。
「やっと来たか相棒」
「すまん。明石と話してたら意外と時間がかかっちゃってさ」
「まあ、私と相棒の仲だ。許してやろう。さ、私の膝の上に来い。大和もお前と話したがっているしな」
「ちょっと待つネー! それは絶対ダメ! 提督は私の横!」
「えーお姉さんも横に提督が来て欲しいなぁ」
「mon amiral. あなた分かってるでしょ?」
武蔵酔ってようが酔ってまいがそれ言うのか。あ、大和に頭はたかれてた。
金剛は昨日から待たせてるけど、昨日結構話したから後回しかな。むしろ、比叡達と交流した方がいいんじゃないかと思うわ。
で、陸奥。陸奥は正直明石からの情報もあってあまり近くに居ると余計な事口走りそうだから後だな。
つまり、自分の席の横をカツカツと人差し指で叩いてアピールしているリシュリューか無言でほほ笑んでいる女王陛下かな……
アイオワは「私はまた今度アメリカ組で食事するときでいいわよ」と言って身を引いてくれているから助かる。
さて……どーする。どーするの俺! なんて考えてもカードが出てくるわけでもジョージボイスで選べと脳内選択肢が出てくるわけでもナッシングなので……
「それで? なんでリシュリューの所に来たのかしら? 勿論リシュリューを選んだ理由があるのよね?」
「そんなの決まってるだろ。リシュリューと話がしたかったからさ」
「声、震えてるわよ。ま、いいわ。理由はどうあれ最初にリシュリューの所に来たことを評価してあげます」
「それは……ありがとう」
「えぇ、次からはしっかりとした口説き文句を考えてきてちょうだい。それじゃ、リシュリューがあなたのために作った料理を持ってくるから少し待っていて」
あなたのためにって部分を強調してリシュリューが席を立った。
そしてリシュリューが居なくなった途端に今まで以上に突き刺さる視線。ちらりと右を見れば金剛。左を見れば女王陛下。
金剛はわかりやすく頬を膨らませてこちらを睨んでいる分まだましだけど、ウォースパイトはじーっとこっちを見てくるだけというちょっと怖い状況。
金剛に関しては見て見ぬふりをした方が可愛い表情が見れそうだけど、ウォースパイトはなんかダメな気がする。
「次はウォースパイトのとこ行くからちょっとそれ以上見つめるのはやめて……」
「えぇ、お待ちしていますね」
「ノゥ! 絶対にノゥ! 提督が次に来るべきは私の所デース!」
「順番な順番。なるべく交流が少ない順に回るから」
「うぅ……わかりました。早めにお願いしますネ……」
「待たせたわ」
「お帰り。それ、パイか?」
「まあ、そうね。キッシュっていうフランス料理よ」
リシュリューはそう言いながらテーブルにキッシュを置いて切り分けていく。
取り皿は持ってこなかったみたいだからテーブルの上にあった別の料理用の取り皿を渡そうとしたんだけど、「いらないわ」と言って一口サイズまでカットしたキッシュを「あーん」とこちらに差し出してくる。
呆気に取られていると「早く口開けなさい」と怒られたので口を開けてキッシュを受け入れる。
パイっぽいような茶碗蒸しの様な……とりあえず卵とチーズが強くて後からくる肉と野菜の味もいいしパイ生地のサクサク感も嫌いじゃないわ。
「どう? 美味しいかしら?」
「初めて食べたけど結構美味しいな」
「当然よね。このリシュリューが作ったんだもの。じゃ、はい。あーん」
「待て待って。一口目はまあいいとしても二口目からはね。自分で食べるから」
「何? リシュリューにあーんしてもらうの嫌なの?」
「そういうわけじゃないんだけどね?」
「じゃあ、いいじゃない。あーん」
口の中にキッシュが入ってきた瞬間に横の方でバキリと何かが折れる音が聞こえてきた。
分かってる。見なくてもなんとなくわかるぞ。多分、誰かが箸折ったんじゃないか?
確認してみるかと振り返ろうとしたらリシュリューに止められた。口では何も言わないけど目が「私を見なさい」と物語っている。
リシュリューの目力半端じゃないんだけど。やっぱこう外国人って日本人とは違う怖さを感じる。
と思ってたらリシュリューの視線が俺の後ろに向いて何事かと思ったら俺の背中に大きいマシュマロがぶつかってきた。
それは俺の胴に手を回してしっかりと抱きしめて右肩に顎を乗せてぎゅむっと力を入れ始めた。
「ちょっと、今はリシュリューの番なんですけど?」
「いやなに。相棒が美味そうに食べてるそれが食べたくてな。私にも一口くれないか?」
「ダメよ。これはリシュリューがamiralのために作った物なの。他の誰にもあげないわ」
「ふむ……そうか。大和のやつもこれは作れないと言っていたしどうしたものか」
「今日のは無理だけど、次は他のみんなに振舞う用の物も用意するからそれまで我慢してちょうだい」
「そうか。まあ、それなら我慢するか。よし、邪魔したな。ほら、いくぞ相棒」
「何しれっとamiral連れて行こうとしてるのよ!」
「いや、もう充分楽しんだだろ?」
「まだ、これ残ってるでしょ? 全部食べさせるまではリシュリューの時間よ!」
「相棒は艦娘じゃないんだからそんなに食べたら他の食べ物が食べられなくなるだろ。それと、そろそろ相棒を抱きしめたいと思っていたんだ」
「本音駄々洩れじゃない……というか、日本人って順番待ちはしっかりするんじゃなかったの? amiralが次はウォースパイトの所に行くって言ってたわよ。というか、さっきからamiral何もしゃべらないけど大丈夫なの?」
「ん、おっとしまった。締めすぎたな。相棒大丈夫か?」
明石博士……俺の強度しっかりと上がってたよ……
完全に武蔵の締め技入ってたけど生きてる……このゴリラをも超える……超える……ゴリラより強い生き物ってなんだろ。熊? 象……つまりは地上最強の生物か。神イントロ流れそう。あの曲結構好きよ。
「武蔵。次はもう少し弱めで頼む。耐久は上がってるけど力は上がってないからな」
「あぁ、すまなかった。次はもう少し優しく抱きしめよう。ほら、来るんだ相棒」
「あなた懲りないわね……まだリシュリューの番だって言ってるでしょ? あなたはまだ先よ。待っていなさい」
「武蔵。後で行ってやるからもうちょい待っててくれ。ほら、今の一連のやり取りを見ていた大和が恥ずかしさのあまり顔を覆ってるぞ。あっちに行ってやれって、な?」
「……しょうがないな。待っててやるからちゃんとくるんだぞ」
「なんでそんなにも上から目線が出来るのかしら……」
「武蔵的には上からじゃなくて対等な立場からの軽口ぐらいの気持ちなんだろうな」
「そう……ほら、あの女王様もチラチラとこっちを気にしだしたし残りも食べてしまいましょ?」
そう言った割に別段急いで食べさせてくるといった事はしてこないリシュリュー。
なるべくゆっくりと噛みしめる様に俺に餌付けを施していく。
何故かと問えば俺が喉を詰まらせたらいけないからと言ってはいるけど、どう考えても周りに見せつける様にやってるのは流石の俺でもわかった。
「はい。これで最後よ」
「……美味しかったよ。ご馳走様」
「そう。よかったわ。所で、少しはお腹膨れたかしら?」
「むしろちょっときついぐらいだわ」
「そうよね。あなたそこまで食べる人じゃないものね」
「分かってて何故」
「これだけ苦しそうにしているあなたにこれ以上食べさせようとする鬼畜な艦娘なんていないでしょ? つまり今夜あなたにあーんする事が出来たのはこのリシュリューだけという事よ」
それだけのために……と言ったら多分自慢げに胸を張っているリシュリューは怒るだろうから言わないでおこう。
まあ、自慢げにドヤってるリシュリューも美人。美人は絵になるなぁ。
視界の端でポ〇子みたいに目が血走ってる金剛もある意味絵になっててウケるんですけど。
ちなみに反対側のウォースパイトは優雅にアークロイヤルに何かを指示してる。てか、今アークのやつ指パッチンで現れた? 俺もやったら現れてくれるんだろうか。いや、川内とか出てきそうだな。
それから最後にとリシュリューはハグしてきて頬をくっつけてきた。
フランス人的にはよくある別れの挨拶らしい。やっぱ外国ってすげぇよ……