艦娘と提督   作:ためきち

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21話

「今日は自分が提督殿のお付として頑張るであります。なにかあればこのあきつ丸へお申し付けください、であります」

 

「おう。よろしく」

 

「まあ、でも、この状況。自分がする事はそんなに無いのではといささか疑問ではありますな」

 

「そうな……まあ、とりあえず、この目の前に山積みにされたお茶請けを片付けるの手伝ってくれ。これ全部一人で食ったら今あの子が作ってる昼飯で俺は死ぬ。秋津洲もどんどんばりばり食べてくれ」

 

「わーい! えーっと……これとこれとこれと……」

 

「遠慮するな。おかわりもあるぞ。死なばもろともだ。沢山食ってけ」

 

 

 今日は朝から地下室送り。理由は各国のお偉いさんが来るから。

一般上がりの俺が艦娘の命令権を持ってるってなると何を言われるかわからないから姿を見せるなと言われての結果です。

今日は自衛隊のお偉いさんが提督って事で対応に当たるらしい。

正直大丈夫かしらって気持ちしかない。多分、今日一日那珂ちゃんはアイドルの顔をしないんだろうなぁ。

まあ、なんかあったら下に降りてこいとは言ってあるし酷い事にはならんだろ。

 

 てなわけで、今日は一日地下生活でございやす。正確には昨日の晩から。

昨日自衛隊の人へ引継ぎが完了した段階で俺+αでちゃっちゃか移動しました。

俺の部屋の隠しエレベーターで下に降りたんだけど、どのぐらい地下なのかは正直俺には把握できてましぇん。

だって、階数表示が仕事してなかったんだもん。地下20階までは書いてあったけどそこから下は「隔壁到達」から文字が変わらなかったんよね。

多分あれが明石がドヤ顔で「地下は核程度なら余裕で耐える隔壁が何層もあるので安心してください! 最強の拒絶タイプとか来ない限りは平気です!」って降りる前に説明してくれたやつだと思う。

あのセリフがフラグではないことを切に願うわ……

 

 

「にしても上は大丈夫だろうか」

 

「あー……まあ、平気でありましょう。提督殿から穏便に済ませるようにという指示がある限り酷い事にはならないであります」

 

「なにかあればここへ送れって長門達にも言ってあるし、なにより心配し過ぎも彼女たちを信じてないようで悪いか」

 

「そうでありますな。提督殿はここでドーンと構えて吉報を待ちましょう。なーに。そうそうやらかすような艦は居ないであります!」

 

 

 なっはっは! と二人で笑ってから二人同時にある方向を見た。

そこには地上からこの地下へと続く一本の滑り台がある。あれは、俺又は上に居る旗艦達がもう駄目だと判断した艦娘がこの地下へと滑り落ちてくるための滑り台。

一体地上からここまで何メートルあんのか知らないけど俺なら死ぬ。

てか、絶対摩擦で尻もげるわ。あれか? ローションとか塗ってあるの? 

ぬるぬる滑り台を降りてくる艦娘。需要? ありますね。需要しかありませんね。

でも、何事もなく終わってほしいから落ちてきて欲しくないんだよなぁ……

 

 

「二人していきなりどうしたの?」

 

「いや、こういう話って大体すぐにフラグが回収されるからさ。あのボッシュート穴をつい見てしまった」

 

「わかるであります。自分ももしやと思い見てしまったであります」

 

「モニター見てみるかも。しっかり皆整列してるかも」

 

 

 今日のお偉いさん鎮守府訪問は当然ながらテレビ中継される。

まあ、テレビのカメラが入れるのは基本的に鎮守府の船着き場までだけどね。

いらん事する輩とか絶対出てくるし何よりそんなに沢山の人を誘導する人員も居ないって事にした。

 

 一部抽選で通った所だけが条件付きで鎮守府内に入れる。

1つの報道局につきスタッフは3人までで事前に名前や性別なんかを届け出ておくこと。もし、事前の届け出と違う人が来れば中には入れないなんていうキツメの条件。

しかも、中に入ったら入ったで自衛隊の屈強なお兄さんお姉さんに囲まれる。

トイレだって決まった時間のみだしそれ以外はダメ。おむつを渡すらしい……

 

 それでも! って所ばっかりだったらしく結構な倍率だったらしい。

らしいってのは、自衛隊と大淀に丸投げしたので詳しい情報は知らないから。

だって、大淀が「私がやります! 仕事! ください!」って言ってくるから勢いに負けてつい……

その後、精査終わりましたと書類を渡してきた大淀を褒めたら目に見えてご機嫌になって可愛かったです。

 

 

「んーいや、まあ確かにそうなんだが。ほら、見てみろあれ。大井とか物凄い顔してるぞ。テレビに映ってるってわかってんのか?」

 

「いい笑顔じゃありませんか。あれのどこが悪いというのでありますか?」

 

「あれは、この前俺が北上の尻をまくらにしてうとうとしてた時に見た笑顔だな。名前を呼ばれて目を開けたらあの笑顔が目の前にあったから間違いない。誰かを殺そうとしてる笑顔だ」

 

「笑顔は本来というやつでありますな。というか、提督殿の状況に関しては全面的に提督殿が悪いだけでは?」

 

「あれは多摩が悪い。多摩が「北上の尻は程よい柔らかさにゃ。提督も試してみるにゃ」とか言って誘惑してきたんだもの。北上も二つ返事で許可出してくれたし」

 

「提督殿は命知らずでありますな……」

 

「とまあ、理由はどうあれ、あれは大井がかなりキテる時の笑顔だ。誰だか知らんが北上に声をかけたお偉いさんが居るのかもしれんな」

 

「どうします? もう落としてもらうでありますか?」

 

「あー……いや、もうちょい様子見しよう。もう一歩ヤバくなったら落としてもらう。大井もそのぐらいの分別は出来るだろうし。って、それよりあっちがやばい。ビスマルクだ、ビスマルク。ちょっとビスマルクに繋いでもらえる?」

 

「了解であります」

 

 

 あきつ丸がビスマルクへと直通の連絡を入れるとすぐに『何かしら』とちょっとドスの利いた明らかに不機嫌なビスマルクが返事をしてきた。

モニターに映るビスマルクの口は動いてないのにしっかりと言葉が聞こえるあたり艦娘ってやっぱすげーやってなるわ。

 

 

 

「ビスマルク聞こえるか? いいか? その人がなんて言ってるのかわからないけど落ち着け」

 

『あら、私は落ち着いてるわ』

 

「ホントに落ち着いてたら俺が連絡入れるわけないだろ?」

 

『………………だって、こいつ提督の事、「あんな無能のどこがいいのだ?」とか言うし「あれよりいい男を用意するからうちの国に来い」とか言い出したのよ? 提督の事バカにするし上から目線だし胸とか足とかしか見てなくて気持ち悪いし……ちょっとぐらい殴っても問題ないわよね?』

 

「そのお偉いさんが言った無能な提督ってのは自衛隊の人であって俺じゃないんだから気にするなって。上から目線は……まあ、実際お偉いさんだし我慢してくれ。あと、女性にこういう事を言うのは酷かもしれないがそういう視線も申し訳ないけど我慢してくれ。ビスマルクが殴ったらその人死ぬから。外交問題だから。問題しかないから」

 

『我慢我慢って言っても私達別に客寄せパンダになりたくてこっちに来たんじゃないわよ? わかってるわよね?』

 

「分かってる。ビスマルクもそうだが他の皆にも今日は無理を言ってる自覚はあるんだ。だから、この後、軽いお願いなら聞くって伝えてあるじゃないか」

 

『ちょっとこれは軽いお願いじゃちょっと割に合わないわ。なんでもに変えてくれない?』

 

「なんでもはちょっと……」

 

『声で分かるわ。にやけてるでしょ。じゃ、提督もまんざらじゃなさそうだしそれでいきましょう。代わりにこいつは殴らないし視線は我慢するわ。それじゃ』

 

「ビスマルクのやつもしかしてこうなる事が分かってて不機嫌そうな顔してたのか……?」

 

「提督殿。女性はみな女優なのですよ」

 

「お菓子分けてあげるかも」

 

 

 画面に映るビスマルクは表情こそ変わってないが目の奥が笑っているように見えた。

てか、今のやり取りですらお偉いさんが鎮守府内に入るちょっとした道のりでの出来事だと思うとこの後どんだけめんどくさい事が待ってんだって話なんだが?

もう、上の映像は作業用BGMぐらいの感覚でつけといて別モニターでテレ東見ようよ。他のテレビ局は緊急特番とか言って軒並みうちの話だけどテレ東だけは通常営業だし。

 

 なんて、考えつつもついつい上の状況が気になってそっちに視線がいってしまう。

いつもだったらこんな政治ニュースは眠くなるから見ないけど身内の話題だしね。

今は俺も知らなかった会議室みたいな所で日本のお偉いさんと各国のお偉いさんが向かい合って小難しい会話の応酬を繰り広げていた。

それを今日の旗艦たちが壁際で椅子に座りながら眺める構図。

天龍とかさっきからあくびしかしてないし赤城とかずっと目をつぶってるけど起きてんのかあれ。

ちなみにテレビに映るのは基本的に軽巡以上。駆逐艦以下は見た目が見た目だからカメラが入らない場所で待機又は巡回警備なんかをしてもらってる。

 

 

『暇すぎる。なあ、ホントにオレ達必要なのか?』

 

『ここに居ろというのが今日の任務だからな』

 

『つっても、オレ頭がいい方じゃないからあいつらがなんて言ってんのかさっぱりだぞ?』

 

『構わないさ。あとで、要点をまとめた物を渡すから目を通すだけでもしておいてくれ』

 

「長門、俺にもそれちょうだい」

 

『了解した』

 

「あと、天龍。お前、女の子なんだからそんな大口開けてあくびするんじゃありません。赤城を見習え赤城を」

 

『なぁっ、ぐっ、見んじゃねぇよ! てか、赤城とかさっきからずっと爆睡じゃねーか! この人席に着いたと同時に寝始めたからな!』

 

「まじかよ……え、寝てるのは知ってたけどそんなに速攻で寝たのか」

 

『寝てるの知ってて見習えって言ったのかよ……じゃあ、そこまで言うならオレも寝るわ。あと任せた』

 

『あぁ、時間になったら起こそう』

 

 

 赤城って思ってたより自由なお姉さんなんだよね。

初期の頃のしっかり者のイメージから随分と遠くまで来てしまったものだ……

あれ? もしかして、隣にいるしっかり者代表みたいな妙高も寝てたりするんだろうか。

艦娘って体幹お化けしか居ないからじっとしてろって命令するとマジで何時間も身じろぎ一つしないでその場で待機するからね。

だるまさんが転んだで一度も勝てたことがない俺が言うから間違いない。

海防艦のちび助たちでそれなんだから重巡で最大練度ともなればもはや言うまでもないってやつか。

 

 まあ、結論としては妙高は起きてた。

艦娘を各国に数人ずつ引き渡して戦力の分散を図るべきだみたいな話になった時に思いっきり顔をしかめたのが見えたから。

 

 

「今、妙高の顔見た?」

 

「見たであります。というか、誰だってあんな顔するであります。ここから離れるとかありえませんしな」

 

「あたしもここから出ていけーって言われたら怒るかも! まあ、秋津洲の戦闘力じゃ引き抜きとか話にも上がらないから関係ないかも」

 

「それを言ったら自分もでありますな。自分もルート固定に使われるぐらいで戦力としては制空権争いに参加できるぐらいでありますからな」

 

「いや、まあ、うーん……ごめんな。あんまり使ってやれなくて」

 

「別に気にはしてないかも。ちゃんと改造もしてくれたし文句はないかも」

 

「ま、自分は元々陸軍の船でありますし。海の戦いに不慣れな所は申し訳ないであります」

 

「そうか……まあ、きっとそのうちイベント海域でめんどくさいギミックとか増えて二人みたいな直接的な戦闘能力が低くても編成に入れてないとボスマス行けませんみたいなのが来るからその時は頼んだぞ」

 

「その時は提督殿のお役に立てるよう粉骨砕身の思いで頑張るであります」

 

「秋津洲はほどほどに頑張るかも。でも、安心して! そのうち二式大艇ちゃんが変形して提督のお役立ちかも!」

 

「それ、絵師様のネタやんけ……」

 

 

 そんな感じで3人でわいわいがやがやと話しているとそいつは現れた。

ここに来た時に大量のお茶請けを置いていった事からも分かるが、こいつも俺を太らせ隊の一人。

今日ここに居るのは最悪な話だけど海外のお偉いさんから「この艦、うちの国に派遣できないかな」って声がかからなかった組のうちから三人だけ引っ張ってきた。

さっきの会話からも分かるように人選については旗艦以下数名にしか通達してないので彼女たちを傷つけることはないと信じたい。

 

 んで、最後の一人は補給艦から抜擢。

艦娘名簿を渡すときに改造してないんで補給艦の役割しか果たせませんってゴリ押しした。

まあ、実際の所、練度は99だしなんなら艦載機載せて戦う事も出来る。補給艦とは?

本人曰く「こっちでは何着ててもいいんでカモフラージュが楽でいいですね!」って言ってた。

 

 

「はーい。お昼ご飯できましたよー! 今日は皿うどんです!」

 

「待ってましたかもー!」

 

「自分が配膳の手伝いをするであります」

 

「じゃあ、このお皿を提督へお願いしますね?」

 

「え、あ、はいであります」

 

 

 大鯨から渡された皿を見てあきつ丸が一瞬固まるのが見えた。

ははーん。またか? またなのか? 厨房組はホント加減を知らない。というか、加減してくれない……

太っちゃうよ。このままだとホントに太っちゃう。それでなくてもちょっと腹回りに摘まめる肉が増えてきて恐怖してるんだ。

一応、トレーニングルームで運動はしてるけど消費した量よりも摂取する量が多かったらダイエットにはならないんだぞ。わかってんのかこのやろう!

って、一度聞いたことあるけどいい笑顔で「分かってます」って言われましたまる。

 

 

 

「あきつ丸ちょっと食べてくれないか? どう見たって俺が食いきれる量じゃない」

 

「えー、提督の為を思って沢山作ったのに―! 沢山食べないと大きくなれませんよ?」

 

「大鯨。俺はもういい大人だからこれ以上成長の見込みはないんだ」

 

「いえ、縦じゃなくて横に」

 

「はっきり言いやがったよ!」

 

「はは、提督殿。少しなら自分がお手伝いするでありますよ。自分としてはもう少し引き締まった体になってもらいたいでありますからな。腕とかもう少し太い方がいいであります」

 

「いやいやいやいや、もう少し丸い方が可愛くて抱き心地もいいという欲張りセットですよ?」

 

「いやいやいやいや、陸軍としては海軍の意見に反対であります」

 

「あきつ丸さんも海軍じゃないですか!」

 

「おっと……では、海の男ならもう少し引き締まっていた方が恰好がつくというものでありますよ」

 

「太っていても恰好はつきます!」

 

 

 頑張れあきつ丸、負けるなあきつ丸。俺のお昼ごはんの量は君にかかっている。

俺が食い終わるまでは大鯨と戦っていてもらいたい。

でも、俺は皿うどんの麺はパリパリよりもシナシナになってる方が好きなんだ。だって、パリパリだと刺さって痛いもん……

だから、横でバリバリと麺を食べてる秋津洲がちょっと凄いなって思うわ。

まあ、皿うどんは優秀なので何も麺がシナシナになるまで何もせずに待つなんて事はしなくていい。

この麺に負けず劣らず大量に載せられた具を食べればいいのです。うずらにきくらげ、エビも美味。

普通に野菜炒めとして成立してるから最高。

 

 

「秋津洲、ちょっと具食べるか? 流石に腹いっぱいになってきた。なんなら麺も取っていっていいぞ」

 

「食べるかも! 大鯨の皿うどん美味しくて好きかも!」

 

「おう。いっぱい食べて大きく育てよ」

 

「秋津洲はもう十分大きいかも!」

 

「でも、この前夕立の隣に立った時に身長気にしてなかったか?」

 

「あ、あれはしょうがないかも。改二になるまでは秋津洲より小さかったのに改二になった途端にあんなにおっきくなるのは反則かも……」

 

「秋津洲も改二が来ればいいけどな。ただまあ、来るにしても後何年待たなきゃいけないのか……」

 

「かも……」

 

『提督ッ! 少々よろしいでしょうかッ!』

 

 

 和気あいあいと食事をしていた所に切羽詰まった様子の赤城から入電が入り全員が口を閉じて背筋を伸ばし、何を言われても対処できるように赤城の入電に耳を傾けた。

ついでに赤城からもたらされるである情報を艦娘全員に共有できるように繋ぐ。

同じ場所に居るはずの長門から連絡が入らない所を見るに相当切羽詰まっているのかもしれない。

 

 

『提督のお昼ごはんが皿うどんって耳に入って来たんですけど私の分はあるんですか!!!!』

 

「はい、解散。みんな仕事中に悪かったな」

 

『え、提督さんのお昼ごはん皿うどんなの? いいなぁ。龍鳳が作ってるんでしょ? 絶対美味しいじゃん。こっちもこっちで自衛隊の人達が作ってくれた料理食べてるけど……味はまあまあだけどいつもより量がね……』

 

『お、なになに。瑞鶴ってば多聞丸ネタで私と勝負するの?』

 

『いや、しませんけど?』

 

『五航戦』

 

『何よ、いきなり……てか、無表情で目の前に立たないでくれない? カメラ全部こっち見たんだけど?』

 

 

 あ、ホントだ。ちらりとテレビを見てみれば、瑞鶴に対して見事なメンチを切っている加賀が映し出されていた。

確かに無表情な加賀があんな距離まで迫ってきてたらビビるわ。

いや、加賀だって常に無表情ってわけじゃないんです。ただ、大半の時間が無表情ってだけで……

 

 

『私、提督の所に行って皿うどんを食べてくるのでここは任せましたよ』

 

『はぁ? ダメに決まっ、あ、ちょ、ホントに行く気!? 提督さん! あのバカ止めて!』

 

『加賀さん。私も同行します』

 

『赤城さん』

 

「いや、どっちも来ちゃだめだから。持ち場から離れないの。加賀も戻って」

 

『え、いや、だから私の目の前に無表情で立つなって言ってんでしょ!? もがっ……』

 

『しかし、提督! もう、お腹と背中がくっついちゃいそうないんですけど!? おなかペコペコのペコちゃんなんですけど!?』

 

「確かにそこの人ら昼飯も食べないでずっと話してるもんな。どうしたもんか……どうしても無理?」

 

『いかに提督の頼みとはいえこれ以上は無理です』

 

「しゃーないか。赤城は昼休憩って事で。近くの自衛隊の人に言ってから出てくんだぞ」

 

『流石提督! 愛してます!』

 

「はいはい。で、長門と妙高は悪いんだけどもうちょい我慢してくれ」

 

『我々なら問題ない。こいつらは監視してないと何をしでかすかわからないからな。提督に不利になりそうな事が出てきたら握りつぶしておくから安心してくれ』

 

「ありがとう。頼んだぞ」

 

 

 赤城の行動は早かった。

近くに居た自衛隊の人をちょいちょいと呼んで小声で用件を伝えて堂々と部屋から出て行った。

そして、次の瞬間には部屋の隅にある滑り台から現れた。ちなみにローションで濡れ濡れにはなってなかったのを見て心の中で落胆しました。

 

 俺の隣に座った赤城は「失礼します」と言って俺の皿を自分の前へ移動させてそのまま俺の食べかけを食べ始めた。

俺も腹いっぱいでさっきから箸が進んでなかったら別に食べられるのはいいんだけど足りんのかな。

そう思いながらしんなりし始めた麺をずるずると啜る赤城を見ていたら左手で口元を隠しながら赤城が話しかけてきた。

 

 

「提督、そんなに見られていると流石に恥ずかしいんですが……」

 

「あ、悪い。それ、俺の食べかけで量が減ってたけど足りるか? 足りないよな? 大鯨。悪いんだけどなんか追加で作ってやってくれないか?」

 

「あ、はーい。任せてください! とは言っても今回はそんなに材料持ってきてないので晩御飯がちょっと減っちゃいますけどいいですか?」

 

「しゃーないさ。頼んだよ」

 

「はい! じゃあ、赤城さん待っててくださいね!」

 

「あの、すみません提督。わがまま言っちゃって」

 

「後でちょっとしたお願い聞いてあげるって言ったでしょ。それの前倒し。それにどちみちそれ食べきれなかったし、おんなじ勢いで晩御飯も出てきたら俺の分も食べなきゃいけない秋津洲の腹が破裂してたな」

 

「え、秋津洲もそんなに食べる方じゃないから無理かも……あきつ丸が食べるかも」

 

「はは、自分の方が食べないでありますよ。つまりは助かりました赤城殿」

 

「そういう訳だ。沢山食ってけ。それが俺たちを救うんだ」

 

「……わかりました。一航戦赤城、沢山食べます!」

 

 

 そう言った赤城は大食艦の名に恥じぬ食いっぷりを披露してくれた。ジブリかな?

元々減っていた俺の昼飯をさらえた赤城は次にあきつ丸の皿を指さして「いいですか?」と一応頬を赤らめて恥じらいながらおかわりを要求した。

あきつ丸も「構いませんとも」とほほ笑んでその要求に応える。

 

 そんな感じで大鯨が持ってきた追加の料理からお茶請けまで全て食べつくした赤城は「満足しました」とお茶を飲んで人心地ついていた。

あんだけ食って腹が少しも出てないのはおかしくない? ウマ娘でももう少し腹出るぞ。

あ、あれか。食べたそばから資材に変換してるって話か。それ、俺のゲームの資材に足せないかな。もうイベント始まるし資材増えるのめっちゃ嬉しいんだけど?

 

 

「よくこんだけ入ったな。見てるだけで腹いっぱいだわ」

 

「まだいけますけどね。腹八分目ってやつですよ、提督。美味しい、まだもうちょっと食べたいなって思うぐらいが一番料理を楽しめると私は思います」

 

「確かに」

 

「それじゃあ、ごはん食べて元気いっぱいになったのでそろそろ戻ります」

 

「わかった。悪いけど後半日頼んだぞ」

 

「はい! とは言ってもほとんど長門さんが対処しますけどね。私は本当に最後の最後に手を出すぐらいなんで」

 

「そうな……長門で全て済めばいいな」

 

 

 だって長門以外口より先に手が出るから。

正直、あの会議室のメンバーだってなるべく口より先に手が出ない組を上からピックアップしただけだもん。

ビスマルクだって多分俺が止めてなかったら冗談じゃなくて殴ってたと思う。

 

 じゃあ、大淀は? ってなるけどあの子、頭脳派に見えて実の所手が先に出るらしい。明石が言ってた。流石ロケラン担いでラスダンに突撃するだけの事はあるよね。

まあ、明石が言うに普段はそんな子じゃないのも確か。でも、今回は議題が最悪。相性が悪すぎる。

なんとなくわかってたけど大淀の中心は俺なので俺をバカにするとかそういう話になったらまずキレるらしい。

ばんなそかなって感じだけど自衛隊で似たようなことしたっていう情報を複数の艦娘から聞いたので間違いない。

まあ、そんな感じだから長門にはホント苦労をかけてる……お願いとは別にまた頭撫でたろ。

 

 そんな感じで赤城が帰った後も結局ハラハラしながらテレビを見ていた。

俺の指示には絶対に従うってわかってるけどそれにも限度って物がある。

あの子達の中にある絶対に越えちゃいけない線を越えないでくれとお祈った。困ったときの神頼み。頼みますアクア様。

 

 そして、そんな願いが届いたのか特に問題もなく時間が過ぎていき、各国のお偉いさんの顔色だけが悪くなっていった。何せ何一つ艦娘への希望が通らないから。

長門は各国からの要求の全てを断り続けた。

金や食事、男の都合などのありとあらゆる条件を提示されたが全て拒否。

長門はただ「そこに提督が居ないのであればなんの意味もない」と断る。

ならば提督も一緒にと言う国も居たけどそれも代理提督さんが拒否。なんか難しい言葉を並べて断ってた。

俺がもしあの場に居たらただ圧力に負けて「は、はひぃ」とか言ってたかもしれない。

海外……行きたくないなぁ。言葉通じないし飛行機怖いし船酔うし……いいことないじゃん。

 

 まあ、そんな中、余裕そうに長門達を観察してるお偉いさんも居るけど多分あれだ。

さっきイムヤから連絡があった潜水艦の関係者かもしれないな。もう制圧しちゃったけど。

事前に申し込んだ人しか入れないのは何も鎮守府内だけじゃない。この鎮守府がある島の周辺もその対象。

言っておいたのに約束破る方が悪いんだよなぁ。あとは、なんかネズミを捕まえたって摩耶様が言ってたしそっちかもしれない。

 

 そして、踊ってばかりで全く進まなかった会議も終わり。ようやっとお偉いさん方が帰る時間が近づいてきた。

 

 

「さて、あとはあのお偉いさん方を送り届けたら今日の任務もおしまいだな」

 

「自分としてはもう少し提督殿とぐだぐだとしゃべるだけのこの状況が続いてもいいとよかったでありますが」

 

「こういう日もたまにはありだな。なんかシステム作って無作為に選んだ艦娘を執務室に呼ぶみたいな感じの作るか」

 

「それはいいでありますな。押しの弱い艦娘はあまり提督殿と交流が進んでいないようでありますし」

 

「だな。今日は疲れてるだろうし明日以降話し合ってみるか」

 

「かも。たまにじゃなくて毎日でもいいかも。みんな提督とは毎日お話ししたいかも」

 

「それも検討してみよう。ただ、会話のレパートリーがな……持つかな……」

 

 

 会話デッキ少ないんよ、俺……ちなみに大鯨は晩御飯の準備に行ったので今は席を外している。

さっきトイレに立った時にちらっと見たけど赤城があれだけ食べたはずなのにまだまだ大量の食材が用意されていた。

そんなに持ってきていないとは……艦娘の胃袋基準でそんなにだったのかな……そろそろ艦娘の皆には人間基準を身に付けて行ってもらいたい所存。

 

 そうこうしているうちに今日は来てくださってありがとうございました的な挨拶がモニターに映し出されていた。

艦娘達の表情を見てる感じありがとう感皆無なんだけどね。笑っちゃうわ。

んで、船に乗って帰ろうとするお偉いさん方に待ったをかける長門。

サプライズって大切だからね。お偉いさん一人一人に紙を手渡ししていく。

 

 紙を渡されて一拍。中身を読んだお偉いさんが「なんだこれは!! 意味の分からないものを渡すな!!」と叫びだす。

長門がその叫びにため息をついてから「すまないが連れてきてくれ」と後ろに居た陸奥に声をかける。

連れてこられたのはロープで縛られた沢山の特殊工作員ぽい人たち。

ゲームでは良く見るけどホントにこういう人たちって居るんだなって報告を聞いた時にちょっとテンション上がりました。

 

 ちなみにこの工作員の人らの裏は既に取れてて国とのつながりもバッチリ。

なんなら青葉の写真を上げるサイトにリンクが張られていてそこから各国とのつながりや今日の潜入についてのやり取りなんかの動画がアップされてるサイトにいける。

明石のお茶目なのか一昔前のアクセスカウンターが設置されてるんだけど今めっちゃ凄い勢いでカウンターが回ってるわ。ちゃんとキリ番ゾロ目の時は演出が入るらしい。

 

 こんなの合成だとか言ってる人が居るけど、ところがどっこい合成じゃありません。現実です。これが現実。

いやねー。つーか、これ普通に不正アクセスじゃね? って言ったんだけど、明石に「艦娘って人間じゃないんで人間の法律じゃ裁けないんですよね。というよりもそもそもどこの国の国籍もないから今の所地球じゃ私達は裁けません」って言われました。

国の人に確認取っても沈黙からの目を逸らされるというね。

ねえ、それって艦娘は提督の所有物なんだからお前の責任! とか言って俺のせいにならないよね? 大丈夫? 信じてるよ?

 

 ちなみに今日のニュースは様々な切り抜き動画が貼られて、どの艦娘の切り抜きも人気だったけど一番人気だったのは瑞鶴が加賀にアイアンクロ―されて飛龍と蒼龍が爆笑してそれを眺めてる動画だったらしい。

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