艦娘と提督   作:ためきち

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23話

 鎮守府の裏手にある山の麓を切り拓いて作られた端が見えないぐらい広い畑。

今も誠意拡張中らしいその畑のそばに建てられた平屋の縁側で待っていた秋月の所へ近づいていく。

約束の時間はとうに過ぎているというのにニコニコと笑っている姿に俺は涙を禁じ得ない。

 

 にしても、秋月はしっかりと汚れてもいい服装に着替えてるんだな。

オーバーオールか。夕張がよく来てるつなぎとは違う良さがあるよね。

 

 

「秋月、すまん遅くなった」

 

「大丈夫です! 司令がお忙しいのはわかっていますから!」

 

「今日遅くなったのは提督が忙しかったからとかじゃないわ。ダッサいジャージから着替えるのに手間取ったからよ」

 

「……そこまでダサかったか?」

 

「そこまでよ。あなたあんまり服装に頓着が無いんだから自分の感覚を信じるのはやめなさい」

 

「そっかー……じゃあ、次に軍装以外を着る機会があったら近くに居る艦娘に見繕ってもらおうかな」

 

「こほん。私もあまり暇じゃないんだけど提督がどうしてもって言うなら服を選んであげてもいいわよ? どうしてもって言うなら」

 

「あっ! なら、私も! 私もAdmiralさんの服選んであげたいです!」

 

「あ、秋月は、そういった事には疎くて……すいません司令。お力にはなれそうにありません……」

 

「気にしなくていいよ。どうせそういう機会の方が少ないからな」

 

「機会は作るものよ。楽しみに待ってなさい!」

 

 

 無駄に上機嫌なビスマルクを横に秋月から軍手を貰い、秋月達のサツマイモ畑まで案内してもらう。

畑弄りをしてる子達で区画を分けて色んな野菜を育ててるらしい。

特に駆逐艦の子達は結構暇してるせいか畑で何かを育ててる子が多いとか。

 

 まあ、ね。この島の娯楽少ないから。

引きこもり体質の俺とかそういう艦娘達はいいけど、アクティブな子達には酷だと思う。

長良達なんかはよく暇つぶしに島の外周をぐるぐる走ってる。

そのせいなのかいつの間にか獣道ならぬ艦娘道が出来たらしくて、そのうち舗装をちゃんとして散歩コースにするって言ってたわ。

その散歩コースでデートしましょう! とか言われたけど歩きだよね? 走るとか言われても無理だからね。散歩だからね? って言ってはおいたけどあの笑顔分かってくれていたのだろうか……

 

 畑を横断していると結構な人数の駆逐艦が畑弄りをしていた。

パッと見てほとんどの畑は何を育ててるとかはわからないけど、目の前のこれだけは流石の俺もわかった。

暁が自慢してきた無駄に巨大なブロッコリー。暁の顔よりでけぇんだけど?

ブロッコリーの前でしゃがんでいた暁の隣にしゃがんでブロッコリーをまじまじと観察してみる。

 

 

「いや、凄いには凄いんだけどこれ、こんなにでかくなっても食べれるのか……?」

 

「えっ……んー……妖精さんはいけるって言ってるし食べれるんじゃない……?」

 

「なんか、ほら、こういうでかい奴ってでかくなるのに栄養使い過ぎて味が微妙って聞かない? おばけかぼちゃとかそうだった気がするんだけど」

 

「暁としてはそれはそれでありかなって。ブロッコリーって凝縮された森みたいな味で好きじゃないし……」

 

「えぇ……じゃあ、なんで育ててるんだよ」

 

「これは別に暁が食べたくて育ててるわけじゃなくて、戦艦とか空母の人たちが沢山食べるから育てて欲しいって鳳翔さんから頼まれたからなんだもん!」

 

「あぁ、なるほど。確かにあいつら食うもんな」

 

「これだけ大きければ味はともかく食べ応えはありそうね」

 

 

 この島の食糧は基本的には本土から送られてくるものでまかなっている。

が、送られてくる量と食べる量がどっこいどっこいなのが現状。つまり、常に食糧難なのである。

まあ、この子らは食べなくても生きていけるけど食と言う娯楽まで奪うのはかわいそうなのでそこの所は何も言わないでいる。

 

 だから、作られたのがこの畑。今の所は日本もこの子達を邪険にするつもりはないのか食糧は滞りなく届いてはいるけど、いつ届かなくなるかわからない。ので、困る前に作る。

それに食糧貰い過ぎて文句言われるかもしれないしね。本土の人たちに働かないで食う飯は美味いかと聞かれる日も遠くはない。

実際、畑を作るってのは文句よりも暇が潰せていいと好評だったりもする。

 

 

「まあ、嫌いな物を無理に食べろとは言わないけど、折角育てたんだし一口ぐらいは自分が作ったブロッコリー食べてみろよ? 食べてダメだったら近くの戦艦とか捕まえて口に中に放り込んでやればいいから」

 

「うぅ……わかった」

 

「よし。ていうか、今日は暁一人なのか?」

 

「んーん。響が水汲みで雷と電は別の畑を見に行ってるわ」

 

「ほーそっちは何育ててるんだ?」

 

「そっちはニンジンよ! ニンジンも凄くおっきくなってて味も良いし食べ応えバッチリって赤城さんに褒められたの!」

 

「赤城が褒めるなら問題なさそうだな。凄いじゃないか暁」

 

「そうでしょそうでしょ!」

 

 

 そう暁を褒めながら頭を撫でてあげれば相変わらずじゃんじゃんばりばり星が飛び出してくる。

そして、その星を妖精さん達が回収して地面に埋め始めた。

……それ肥料にもなるんですか?

 

 

「えっ……なぁ、その星って肥料にもなるのか?」

 

「うん、そうだけど? 司令官知らなかったの?」

 

「その星、キラキラって言わば弾薬や燃料に回さなかったエネルギーの塊みたいなものよ。ある意味で栄養たっぷりなんじゃないかしら」

 

「秋月達の畑でも妖精さん達がせっせと埋めてたのでそういうものなんだと思ってました」

 

「でも、これ時間経過で消えちゃうだろ? 埋めた所で消えてなくなっちゃうんじゃないか?」

 

「ふふふ、実はですねAdmiralさん! その星は消えているのではなくその場にしみ込んでいるんです! 建物にしみ込めばその建物を補強するし、こうやって土に埋めれば栄養満点の誰もが羨む土壌に変えちゃうの!」

 

「ほー」

 

「へー……」

 

「ふーん」

 

「そうなんですね! 勉強になりました!」

 

「えぇぇぇ! 秋月ちゃん以外反応薄くない!? Admiralさんの疑問に答えたプリンツは凄いなって盛り上がる所じゃないの!?」

 

「いや、十分驚いてる。驚いてるんだけど、またすげぇ事になってんなって一周回って落ち着いてしまっただけ」

 

「暁ちゃんとビスマルク姉様は!?」

 

「なんか前に響が言ってたような……言ってなかったような気が……」

 

「私はそういう情報あんまり興味ないもの」

 

「がーん……」

 

 

 ショックを受けるプリンツを慰める秋月。CV一緒だから脳がバグるんだけど。

慣れたつもりでいても結構バグる。特に駆逐艦なんかは後ろから話しかけられた時誰だかわからない時がある。

ゲームの時の決まったセリフじゃなくてその時々の状況に合わせた言葉だからだろうか。

満潮と霞に各々違うタイミングで「ねぇ、ちょっと」って言われた時は普通に間違えた。当然いじけられた。

だって、どっちもイラつきながら言うから声のトーン一緒だったんだもん……

 

 

「おや、司令官。こんな所でどうしたんだい?」

 

「お、響。いや、これから秋月の所でサツマイモ掘る予定なんだけど通り道で暁にブロッコリーを自慢されてな。見学してたんだ」

 

「へぇー。で、どうだい? いいサイズに育ってると思うんだけど」

 

「あぁ、よくここまで大きく育てたな」

 

「毎日、暁がポロポロと星を落としながら水やりや草むしりをしてたからね。おっきいの育てて司令官に褒めてもらうんだーって言ってたよ」

 

「あ、あぁっぁあぁ! ひ、響!」

 

「響、声真似上手いな」

 

「ありがとう司令官。で、暁。なんだい?」

 

「なんだい? じゃない! それ言わないでよ! 恥ずかしい!」

 

「暁も声真似上手いな」

 

「あたりまえでしょ! 声、一緒! んもー!」

 

 

 知ってます。なんなら定期的に鳳翔さんが君らの真似して甘えてくるもん。

耳まで真っ赤の鳳翔さんとかまぢ尊い……って言いながら隼鷹と酒飲んだりもする。

ついでに鳳翔さんに対抗して龍驤がにゃしぃって言ってきた時は思はず隼鷹とゲンドウポーズで続きを促してしまった。

だって、もっと聞きたかったんだもの。

 

 

「てか、褒めろ褒めろと言ってきたくせに普段の世話してる時の様子をバラされると恥ずかしいってどういうこと?」

 

「うぅ……だって、なんか普段から浮かれてるみたいで恥ずかしいし……」

 

「いいじゃん。暁のそういう子供っぽい所も暁のいい所じゃないか」

 

「むぅ……褒められてる気がしない」

 

 

 ふてくされてるのに撫でるとさっきより大量の星が出てくる不思議。素直じゃない所も愛い愛い。

しかし、これ大丈夫? 燃料不足になって動けなくなりましたとか言わないよね?

そうやって暁を撫でているとちょいちょいと袖を引かれる。

袖を引っ張った犯人の方を見てみると、帽子で顔半分隠しながら期待のまなざしを送ってくる響が居た。

上目遣い少女に勝てるおっさんなし。響の事もおーしおしおしと撫でまわしてあげた。

 

 二人をひとしきり撫でて俺も満足。二人も満足。ビスマルクが不機嫌と言う状態になったけどヨシ!

うちのビスマルクはホントゲームのビスマルクと比べて子供度が増し増しになってるとつくづく思うわ。

不機嫌なビスマルクは割とよくある事なので適当に頭をぐりぐりと撫でてあげてご機嫌取り。

これで機嫌が良くなるんだからビスマルクは暁といい勝負してるよ。

 

 二人と別れてからしばらく歩いてようやく秋月のサツマイモ畑に到着した。

なんかようやくって言うと長い道のりだったみたいな風に聞こえるけど実際は遠いとかそんなことない。

俺が歩くと艦娘に当たるってレベル。暁たちと別れた後も作物の隙間から次々に艦娘が現れてはこっちのも見てけ見てけと袖を掴んでは引きずり込むの繰り返し。

正直な話、途中で照月が「おっそいんだけどー!」って怒鳴りに来なかったらたどり着いたのが何日後だったかもわからない。

 

 ここまでの道のりで薄々感じてはいた。

そして、この畑を見て確信した。この島の作物は例外なくでかい。野菜も果物も一回りはでかかった。

当然、サツマイモもでかい。

葉っぱが既にでかい。これ、傘に出来るわ。

そんな畑の様子を眺めていると「やっと来たか」と腰に手を当てた初月が近づいてきた。

 

 

「遅くなって悪かった。一人か? 涼月は?」

 

「お前たちがあまりにも遅いからかぼちゃの方を見に行ってる」

 

「後で涼月に謝るわ。……それにしても、こいつら葉っぱから既にでかいな……これ、どんなバケモンが埋まってんだ?」

 

「前に掘ったやつは僕の腹周りぐらいの太さのやつだったな」

 

「マジか。そんなにでかいと俺の力じゃ掘り起こせなくないか?」

 

「実の所、お前に労働力的な部分はあまり期待していない」

 

「え、じゃあ、俺の意味は?」

 

「お前が最近運動不足だと聞いたからな。いきなり沢山動いても疲れるばっかりで嫌だろうから芋掘りで楽しみながら体を動かしてもらおうと思ってな」

 

「司令は疲れたらいくらでも休んでいいですからね!」

 

「提督はーえっと、あそこら辺なら小さ目で掘りやすいと思うんでじゃんじゃん掘っちゃってください!」

 

「お、おう。わかった。俺も俺なりに頑張ってみるわ」

 

「ま、困ったら私が手伝ってあげるわ。この子達ぐらいの大きさなら余裕よ」

 

「私も頑張っちゃいますよー!」

 

「おう。困ったときは任せるわ」

 

 

 小さ目で掘りやすい。俺はさっき間違いなくそう聞いたと思う。

サツマイモって茎を追って土を掘っていってサツマイモ本体が見えたらその周りの土を軽くどかして折れないように引っこ抜く。

サツマイモが想定されてるサイズならそれでぼこぼこ掘れる。幼稚園児だって泥だらけになりながら出来る作業。

 

 なんだけど、やっぱサイズおかしいわ! 

さっき照月は絶対ここら辺は小さいです! って元気いっぱいに言っていたはず。

が、それはやっぱり艦娘基準だった。普通にでかい。俺の腕の二倍ぐらい太いやつがゴロゴロ出てくる。

長さだってそれに見合ったサイズなもんでっから、まだ30分も経ってないのにもう俺の腕はパンパンさ。

 

 ちょっと離れた所でバンバン引っこ抜いていってる秋月達がおじさんにはちょっと信じられません。

まあ、横で俺が引っこ抜ききれなかったサツマイモを一息に抜いていく戦艦とか重巡とかも居るんだけどね……。

 

 

「ちょっと、もう疲れたの?」

 

「運動不足のおじさんなんだ。ちょっとは手加減してくれ……」

 

「ダメよ。せめてこの一列ぐらい頑張りなさい。そしたら休んでいいから」

 

「あーえっと、Admiralさん。そしたら、私がスコップで掘り起こすのでAdmiralさんはサツマイモを引っこ抜く作業だけお願いします!」

 

「悪いな。助かるよプリンツ」

 

「うぇへへ~いいんですよ、Admiralさん!」

 

「……私も手伝うわよ?」

 

「ありがとう、ビスマルク」

 

「あの、提督」

 

 

 涼月もお手伝いしましょうか? と、二人とは別方向からかけられた声の方を見てみれば、他の姉妹とお揃いのオーバーオールを着た涼月がおずおずと手を挙げていた。

君達はホントに何を着ても様になるからおじさん羨ましいわ。

 

 

「あぁ、涼月おかえり。今日は遅くなってごめんな」

 

「いえ。お気になさらないでください。涼月もかぼちゃ畑の方へ行っていて遅れたのでお相子です」

 

「そう言ってもらえると助かるよ」

 

「はい。それで涼月は何をお手伝いすればいいですか? 提督の汗、拭きましょうか?」

 

「え、いや、いいよいいよ。汗ならこの首に巻いたやつでどうにかするから。そうだな……って俺よりも姉妹の手伝いをした方がいいんじゃないのか?」

 

「このぐらいの広さなら姉さん達は苦も無く作業を終わらせられます。それよりも、提督が疲労で倒れてしまわないかの方が涼月は心配です」

 

「あなた、基本的に執務室に籠りっぱなしだから体力が無い人だって認識されてるみたいね。もっと外に出て運動して、体力あるんだぞってアピールしていかないとこういった子はどんどん過保護に世話を焼いてくるわよ」

 

「そうだな……そろそろアレを実施すべき時なのかもしれない。武蔵ブートキャンプ……」

 

 

 前々から武蔵には腹や尻を触られては「相棒はもっと運動をしよう。なに、この武蔵に任せておけ」って言われてるしね。

有酸素運動で脂肪を燃やし、無酸素運動で筋肉をつける。

そう言いながらタバタ式トレーニングをさせられて死にそうになったのもつい最近。

その後、マウンテンクライマーとかプランクとか追加でさせられそうになって逃げた。

あいつ手加減ってものを知らない。しかし、ついにその手加減知らずに助けを乞う日が来ようとはな……

 

 

「まあ、あなた少しお腹も摘まめるようになってきたしちょうどいい機会でしょ」

 

「な、なんでそのことを……」

 

「秘書艦だもの」

 

「えぇ……いいなぁ。やっぱり、ビスマルク姉様ばっかりズルい! 私も秘書艦やりたい!」

 

「おじさんの腹周り情報からその結論に至る理由がわからないよ」

 

「涼月も秘書艦やってみたいです。秘書艦になったら提督のお世話をすることが出来る上にお冬さんにも会えますし」

 

「お冬さんには会えないよ。その子はまだ実装されていないんだ」

 

「えっ?」

 

「Admiralさんのお腹周りが気になるから秘書艦がやりたいんじゃなくてそれ以外の情報も欲しいから秘書艦やりたいんです!」

 

「いやよ。私、まだ秘書艦やってたいしプリンツには譲らないわ」

 

「……お冬さんが居ない?」

 

「涼月のそれはネタでやってんのかマジなのか分かりにくいな……」

 

「あー! 居たぁ! 司令官ってば暁たちには会っていったのになんで私達の方には来てくれないのよ!」

 

「おっと、騒がしくなってきたぞ」

 

 

 普段は俺と誰かが作業なりなんなりをしている時は挨拶してくるぐらいでそれ以上の接触をしてこない彼女達。

多分、木曾と天龍がローストビーフ丼をカッ喰らいながら教えてくれた淑女協定とか乙女協定とかそういうアレコレのおかげだと思う。

それのおかげで俺が対応しきれるだけの艦娘達しか俺に接触してこない感じになっている。

ちなみに詳しい内容は教えてくれなかった。けど、お詫びにとローストビーフを1枚ずつくれたのでその話は追及しなかった。美味しかった。

 

 でだ。そうは言っても彼女達にだって我慢の限界みたいなものがしっかりとある。

いくら協定だなんだと言ったって目の前にぶら下がってるニンジンをいつまでも無視はできない。

すると今回みたいに秋月達と作業してるにもかかわらず、雷が突撃してきた来た。そしたら電だって突撃して来るし、なんなら暁と響も一緒。

そうなるともう遅い。今回はいいのかって感じになるらしく、畑のそこら中に居た子達がわらわらと集まり始めていた。

 

 

「ねぇ、司令官。見て、この秋ナス。おっきいでしょ?」

 

「睦月型会心の出来にゃしぃ!」

 

「ほらほら、兄貴! このニンジンだってでかいぞ! 甘みもすっごいンだからな! どこのやつよりもうめぇぞ!」

 

「お兄ちゃん。ほら、こっちの方が大きいよ」

 

「分かった。分かったからナスとニンジンを顔に押し付けるな」

 

「提督、提督! 見て見て! このサツマイモ! 照月よりおっきいよ!」

 

 

 群がってくる駆逐艦の奥から照月が大物が採れたと自慢をしにこちらに向かってきていた。

いや、それもうサツマイモじゃないでしょ……なんだよ、それ。流石に常識の範疇に留まれよ。

そんな感じの否定的な言葉が出そうになったけど、照月のはじける笑顔を前に呑み込んだ。

 

 つーか、推定50kgはあるであろうサツマイモを持ってそんな軽々しく駆け寄ってくるんじゃあないよ。

なんかの弾みで俺に飛んで来たら死んでしまう。事はないか。こんだけ周りに艦娘が居たら飛んできたサツマイモが粉々か。

そしてそんな、超巨大なサツマイモっぽい何かが俺の目の前に無事到着したわけだけど……

 

 

「ほら、これ凄いでしょ!」

 

「ホントにサツマイモか、これ。サツマイモっぽい別の生き物なんじゃ?」

 

「えーでも、妖精さんがサツマイモで間違いないって言ってるよ?」

 

「妖精さんはそういうの分かるのか?」

 

「ほらほら、首取れそうなぐらい頷いてるしサツマイモだって!」

 

「そっかー……これがサツマイモ……マジでやべぇな」

 

「お、居た居た。ほら、司令。俺達の作ったたまねぎも見れくれよ! でかいだろ!」

 

「嵐! 司令は今お忙しいんだから……」

 

「今日はみんなで自慢大会みたいになってんだしいいじゃん」

 

「うわっなんだこのオニオーンみたいなたまねぎ。こっちもこっちででかすぎんだろ……」

 

「だろー? こいつ、前に間宮さんに渡してオニオンスープにしてもらったんだけどめちゃくちゃ美味くてさ。でかくて味もいい。これはもう俺の勝ちだよな?」

 

「はぁ? このニンジンだってでかいし味もいいンですけど? 嵐だってこの前美味い美味い言いながら食べてただろ?」

 

「あぁ、あの時は確かにそのニンジンが最強だと思ってた。でも、それはこのたまねぎを食べる前の話だからな。江風もこれを食べたら分かるぞ」

 

「ふふン、いいねいいね! この江風さん達に勝負を挑むと!? いいよ! 受けてやるよ! 晩飯で勝負だな!」

 

「あぁ、いいぜ。司令も良かったら食ってくれよな」

 

「あぁ、楽しみにしておくよ」

 

 

 そんな約束をしている最中も「これも見てこれも見て」と駆逐艦が雪崩のように押し寄せてくる。

正直、捌ききれません。もうとりあえず、持ってくる物全部にいいね押しました。

 

 ただし、雪風にドン引きされながら時津風が持ってきたモグラだけにはいいねしませんでした。

この島にもモグラって居るんだなって感動したけど畑的には害獣だし今のタイミングはちょっと違うんじゃないかなって。三番目に強いとか力説されてもダメです。逆にいったい何匹居るのか気になるだろ。

 

 サツマイモ掘りどころじゃなくなってすまんと視線を向けてみれば、大量のサツマイモを背に休憩中の秋月型とビスマルクとプリンツが視界に入ってきた。

山じゃん。山の様なサツマイモ。略して山芋。種類変わっちまったな……

まあ、あんだけよく掘ったよ。ホント、俺は戦力として数えられてなかったんだなって実感させられるわ。

うん。筋トレ……絶対しよ。

 


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