艦娘と提督   作:ためきち

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9話

 大淀からの報告を聞いて若干イラッとしつつもホントにそんな漫画に出てくるようなタイプの人達が居るんだなと驚いてもいた。まあ、目の前にはゲームのキャラが居るんだけどね。

と、報告し終わったら大淀にごくろうさまと湯飲みにお茶を注いであげつつちらりと時計を見れば14時半。

はぁー……演習やってね……いつもなら朝起きてPC点けて立ち上がるの待ちつつ出勤の準備してという流れで午前演習終わらせてたけど今日はいつもと違う特殊な朝だったからね。忘れてた。

 

 

「そういえば、艦これはその机の上にあるパソコンでやればいいのかな?」

 

「あ、はい! その通りですよ、提督!」

 

 

 五月雨ちゃんにありがとうとお礼を言って秘書艦と提督の机まで行き設置されているデスクトップPCを立ち上げて艦これのページを開く。

めっちゃくちゃ回線速度速いんですけど。有線無敵かよ。こんなんじゃ無線のノートPCに戻れない体になってしまう……

あれこういうのってハードディスクのが重要だっけ? まあいいか。

それより重要なのは俺が机に備え付けられている椅子に座ろうとした時の事だ。

 

 

「あ、提督。座るのちょっとだけ待ってもらえますか? ごほん。提督が鎮守府に着任しました! これより艦隊の指揮に入ります!」

 

 

 と、五月雨ちゃんが新規ボイスを披露してくれたのだ。しかも、指揮開始ボイス。最高かよ。

これで五月雨ちゃん新規ボイスが来ない難民も救われるな。

少なくとも俺は救われた。ありがとう艦これ。ありがとう五月雨ちゃん。

 

 感動しつつもマウスを動かし任務のボタンを押せばそこには水着の大淀。

体をずらしてソファの方を見れば美味しそうにカステラを食べる大淀。

これはどっちが本体なんだろうか。普通に考えれば本物は画面の向こう側に居る方だよな。

それともこの子は任務娘という別な子だったりするのだろうか。それはないか。

 

 まあ、あれよ。何を以て本物と判断するのかという問答はきっとこの子達の中で既に決着がついてるだろうし俺がわざわざ蒸し返すのも悪いって話よね。

つまり、俺が出来る事は心を無にして任務にチェックを付け、遠征出して、単艦放置アニキ達から勝利を貰って午前演習が終わったら単艦放置にするだけさ。

他にもデイリーはあるけど今日は演習遠征だけでいいよね? 多分、この後も予定あるだろうし寝る前にやればいい。無ければ今やってしまうか。

 

 

「さて、と。演習も終わったし遠征も出した。この後の予定は何かあったりするのかい?」

 

「この後の予定は、一九○○に提督の歓迎会を行う予定になっています」

 

 

 まだ15時だし結構時間はあるじゃん。じゃあ、さくっとデイリー済ませてしまうか。速度重視で1-1と2-2でさくっとな。

と、マウスを操作していると大淀が画面を覗き込んできた。水着のお姉さんといつもの服のお姉さんが並んでいる。

 

 

「提督。今週はまだろ号任務が終わっておりません」

 

「……そんな任務もありましたね」

 

「えぇ、ありますよ。ちなみに今週は一度もチェックを付けていないので未だ撃破数は0のままです。大丈夫ですよ提督。2-2へ25回程出撃すれば終わります。時間にして1時間かかるかどうかです」

 

「やっぱり補給艦50隻撃破は長いと思うんだ。補給艦が10隻ぐらい出てくる海域が欲しい」

 

「提督! 頑張りましょう!」

 

「あ号任務はいつも月曜日に終わらせてるじゃないか。そんな感じでろ号もすぐに終わるさ」

 

「提督。今は夏の大規模作戦目前よ。高速修復材がいくらあっても欲しい時期。めんどうなのは分かるけど行くべきだと思うわ」

 

「……そうだな。レイテで資材が吹き飛び、艦これ2期に移行で通常海域突破しなおしくらってうちの鎮守府には今バケツが800個しかないんだもんな。絶対足らなくなるのは目に見えてるか……」

 

 

 レイテは必死だったぁ。まあ、必死だったのは前編だけだったけども。

前編は純正西村艦隊でどうしても攻略したかったから仕事中でもゲージ削りしてたレベル。

いや、だってそもそもあの海域難し過ぎただろってね。ボスマス出すだけで虫の息だったもの。

で、あの地獄を乗り越えて資材回復に勤しんでたら2ヶ月後ぐらいには後編始まってんだもんね。資材回復追いつきませんでしたわ。

そのせいで最終的にはバレンタインチョコ砕いちゃったんだよなぁ……はぁ……つらたん。

結局資材回復が追いつかなかったうちの鎮守府は前段は甲だったけど後段からは乙で楽々クリアーしたんだよね。

だからうちにはデストロイヤーが居ない。欲しかった……デストロイヤー欲しかったぞコノヤロー!

甲と乙の差が酷過ぎると俺は常々思っている。乙を上げろって事じゃなくて甲を下げてくれって話よ。

 

 

「提督はいつも全海域の攻略に成功しても掘りで失敗するものね」

 

「おっと、その言葉は俺に大ダメージだぞ?」

 

「駆逐艦で4すろっとって凄いですよね! 私も改二になったら4すろっとにならないかなぁ」

 

「そうだな。うちにはタシュケント居ないからな。五月雨ちゃんがそうなってくれたら提督的に超嬉しい」

 

 

 そう。うちはタシュケントおりゃん状態なのだよ。

久々に掘り失敗してあの時は物凄くへこんだ。へこみにへこんだ。それはもうへこへこだった。

イベント中に何度資材が3桁に突入した事か……グロ画像過ぎてため息しか出なかったよ。うん。

 

結局ろ号をやり終わったら次はい号だ2-5だと任務だけでなくEX海域もやるはめになった。

まあ、多分言われなかったらやらなかった。こうね。やろうやろうとは思ってるんだよ?

でも、こう出撃すると資材が減るって思うとなかなかね。やってみたらすんなり終わったりするんだけどね。

 

 

「心なしかろ号をやる前よりもバケツが減った気がするんだが」

 

「確かにバケツちょっと減っちゃったけどその他の資材が増えたと思いましょ?」

 

「バケツ増やしたかったんだけどなぁ……しゃーなし。いつかはやるもんだしな。長距離演習航海で地道に増やすか」

 

 

 帰ってきた遠征組を速攻で再出発させる。

これたまにミスって補給せずに出発させちゃうのよね。あれ軽く焦って謝る。誰にって補給せずに遠征しに行った子達にね。うおーんごめんよ。いつもより沢山食べるんだよ? よし。じゃあ、もっかい遠征行ってきてね。って感じで。

 

 そしてそれをよくやる第2艦隊の旗艦は霞。俺会ったら絶対怒られる気がする。

そんな霞に絶対に会うであろうイベントの時刻まで残り2時間。

2時間どうやって暇をつぶすか……金剛の所に行って茶しばくにしても晩御飯前にお腹たぽたぽにするのもなぁ……明石は、なんか話が弾んで2時間で終わりそうな気がしないからダメだな。

あ、丁度いいイベントがあるじゃん。

 

 

「そういえば、まだ俺の部屋を見てないな」

 

「提督のお部屋でしたら執務室から行けますよ? そこのドアを開けたらすぐです!」

 

 

 そう言って五月雨ちゃんはいわゆる画面越しに見ていたときには見えなかった位置に設置されているドアを開けた。

そこには俺が住んでいたアパートの一室が完全再現されていた。

この執務室みたく無駄に広かったりはしない適度な手狭感が妙に嬉しい。

台所に風呂トイレなんかの水回りもそのまんま。てか、執務室のキッチンスペースよりもアパートの台所の方がちゃっちぃってなんかへこむわ……

 

 

「マジか……こいつは凄いな」

 

「一部屋ぐらいは以前までと同じ環境の方が提督も休まるだろうと思ってな。置いてある家具なんかも提督の部屋から持ってきたものだ。妖精さんが自分より大きなものを収納できるのは知っているだろ? それを利用して提督がここに来るのと同時に引越しも済ませてしまったのだよ」

 

「いやーうん。助かるわ。正直自室まで広かったらどうしようかと思ってたところだったんだ」

 

「一応広めの部屋も用意してありますがそちらも確認しておきますか?」

 

「え、まだ俺の部屋があんの? ……そうだな。一応見ておこう」

 

 

 執務室から出て3個ほど扉を通り過ぎた先に提督の私室と書かれたプレートが掲げられた部屋に着いた。

てか、普通に考えて私室が二つってどういうレベルの金持ちになったら起こりうる現象なんだろうか……と考えながら大淀から渡された部屋の鍵使って扉を開けた。

そして、そこはアパートの一室とは大違いの広さの部屋が君臨していた。

 

 あのアパートの一室が一体いくつ並んだら同じ広さになるんだろうってぐらい広い。

窓も同様に広い。うん。これはあれだ。ドラマとかで見るありえないぐらい広いマンションの一室だ。もう広い以外言ってねぇな。

つか、ドラマじゃあるまいしバーカウンターがあるとか普通の部屋じゃありえないと思うんだ。どんだけお洒落さんなんだよ。

 

 そう、それからベランダね。こっちもめちゃんこ広い。ここだけでアパートの一室より広い気がするわ。

あと備え付けのシャレオツなテーブルと椅子や芝生に鉢植えに入った数々の植物……ベランダに芝生ってどんなバグが発生したら生えてくるんだろうか。

 

 

「ひっろー……」

 

「この部屋も提督の私室になりますので是非お使いください」

 

「絶対持て余す自信あるわ。えー……いや、えぇぇぇ……」

 

「あ、提督提督。へんな声出してないでこっち来てみて」

 

「あん?」

 

 

 部屋の中を物色して回っていた俺を陸奥がニコニコと笑いながら手招きする。

ちなみに俺が変な声を出して見ていた部屋は風呂場でした。普通にビビりましたまる。

んで、陸奥が呼んだそこはまだ中を見ていなかったドアでそこを開けて中を見てみればバカみたいに大きいベッドが鎮座していた。

仮に俺が寝転んで両手を広げても端に手が届かないような大きさ。これはいわゆるキングサイズベッドというやつだろうな。

 

 

「ね、このベッド少し大きいと思わない?」

 

「確かに大きいな。これはちょっと少年心をくすぐるサイズだ。お、しかもいい感じの反発力じゃん」

 

「この何人か一緒に寝れそうなぐらい大きいベッド。何のためにあるか分かる?」

 

「えっ……」

 

「……♪」

 

 

 あーはいはいはい。右腕を掴んでくる手と陸奥の目を見て俺は確信した。確信した。確信した。かく! しん! した!

はい。女性経験皆無マンな俺だけど流石に気が付きましたわ。

 

 

「あっいや、ね?」

 

「ふふ。焦ってる提督も可愛いわね。あぁでも、誘っておいてなんだけどまだダメみたいなのよ。明石がもうちょっと待ってくださいって」

 

「へっ? あ、あぁ、別に気にしてないから大丈夫だぞ。うん」

 

「そう? まあ、その時が来たら楽しみにしておいてね?」

 

 

 最後は耳にキスとささやき。エロ過ぎかよ……流石二番艦……

びっくりして飛びのいた俺に投げキッスの追撃までしてくる余裕。大人のお姉さん過ぎて勝てる気がせぬ……

つまり陸奥よりお姉さんな長門はもっと凄い事になるという事にならないだろうか。

まだうちの長門がポンコツかどうか確認できてないからな。

俺はあの「新たな仲間が進水したようだ」って台詞がお姉さん感たっぷりで大好きなんです。大好きです。

つまり長門型は二人ともお姉さん感が凄いという結論に達したわけだな。すごい。

 

 

「まあ、最初はやっぱり五月雨からよね」

 

「……さぁ?」

 

「こういう事は言いたくないんだけど……あまりこじらせるのはよくないわ。あんまりにもこじらせると最初が五月雨じゃなくなるわよ」

 

「分かってはい……えっ? 何? ごめんやっぱ分かってないかも。五月雨が愛想尽かすとかそういう話ではなく?」

 

「それはありえないわ。私が警告してるのはあんまりにも五月雨と進展がないようだと他の子が痺れを切らして提督を襲うわよって話」

 

「ははは。まさかまさか」

 

「うふふ。そのまさかまさかよ。だって常識的に考えてもみて? 私達ゲームのキャラクターがディスプレイの向こう側からこの現実世界に出てこれると思う? あ、拡張現実とかそういうのは抜きね」

 

「まあ……ありえんよな」

 

「つまりそういう事よ。私達次元の壁を軽く突破できるぐらいには愛が重い自信があるわ」

 

 

 ニコニコと笑いながらじっとこちらを見つめる陸奥の目は笑ってなかった。

笑ってるのに笑ってない。我ながら何を言ってんだって感じだけどそれ以外に表現しようがないんだもの。

さっきの三文芝居よりきゅってなったわ。

 

 

「でも、まあ愛の形は人それぞれだから。全員が全員提督を押し倒そうとはしないと思うわ。ん~確か鳳翔とか大鯨なんかは提督の事を何も出来ないダメ人間にしたいって言ってたわね」

 

「待って。それはそれで不穏なワードなんだけど?」

 

「あとは……そうね。鈴谷なんかはこっちに来てから干物化してるから提督に世話させるんだーとか言ってたわよ」

 

「えっ鈴谷が? あのスクールカースト上位ですみたいなキャラクターが?」

 

「えぇ。一日のほとんどを娯楽室で同じようなごろごろ組と一緒にゲームしたりドラマみたりして過ごしてるわ」

 

「まじか……いや、そういう鈴谷も確かに見てみたいな」

 

「そんな感じですぐにでも提督を押し倒したいって子だけじゃないわ。まあ、表面上ではそう言ってるけどこっちの世界に来たからには提督への想いはかなり重いんだけどね」

 

 

 安心させた上でそういう事言うのね……

まあ、話の最初に明石から待ったがかかってるって言ってたし押し倒される云々はすぐに起こることじゃないだろう。うん。

とりあえず、あれやこれやを明石に確認する必要があるな。明日にでもまとまった時間を作って明石のとこに行くかな。

そんな算段をつけていると陸奥が「あぁそういえば」と手をポンと叩きながらとんでもないことを言ってきた。

 

 

「言い忘れてたんだけど提督の後ろにずっと川内が居るの気がついてた?」

 

「はぁ?」

 

 

 そう言われて後ろを見たけど誰もおらんぞよ。

いやしかし、艦娘の超絶不思議パァウァーがあれば不可能ではないのかもしれない。てか、仮に後ろに居るとしていつから居るんだろうか。

関係ないけど昔読んだド○クエの4コマ漫画にこんな話があったなと思い出しながら陸奥の方へ視線を戻す。

 

 

「誰も居ないけど……?」

 

「ホントに?」

 

「……ホントに」

 

「じゃあ、名前呼んでみたら? 居るかどうか分かるかもしれないわよ?」

 

「川内……居るのか?」

 

 

 なんて声を出してから思い出したんだ。

そう。五月雨ちゃん達が初めて俺に会いに来た日のことさ。天龍は言っていた。川内は俺に会うとハッスルするってな。

導き出される結論は……川内が押し倒すサイドの艦娘であるという可能性。

まあ、ここには沢山人が居るんだ。大丈夫だろう。何かあれば陸奥だって助けれくれるはず。助けてくれるよね?

なんて考えながら待つこと1分弱。多分そのぐらい待った。待ったという態でいく。まあ、そのぐらい待てば流石に真後ろに居るはずの人間を呼んで返事の一つもないという事は陸奥が俺をからかったという事に他ならない。

陸奥に文句の一つでも言ってやろうと思った矢先。俺のわき腹の横から腕が生えてきた。

 

 その瞬間俺は「ひゅいっ!」とかいう情けない悲鳴を上げながら前方に逃げた。

が、俺のその行動を見越していたのか陸奥が両手を広げて俺を抱きしめる態勢になっているのに気が付いてつま先で踏ん張って止まってしまった。

ゆえに捕まった。この二の腕辺りまである長い指ぬきグローブは間違えもしない。せんdっ……!

 

 

「いてぇ! 川内、力入れすぎ!」

 

「だって、今提督逃げようとしたでしょ? 私悲しかったんだから」

 

「川内、人間ってのはな、びっくりするとその場から逃げようとしちゃう生き物なんだ。だから、さっきの反応はしょうがない事なんだよ。だから、ちょっと緩めて? 俺こんなに圧迫されるの初めてだからもどしそう……」

 

 

 俺の言葉を聞いて川内がゆるゆると力を抜いていってくれた。

まあ、離したわけじゃないんだけどね。背中にコシコシとおでこをこすりつけてきてるんだ。

なんだっけ。犬だか猫もこうやって自分の匂いをつけてこれは自分の物だって感じでマーキングするんだよね。

うん。そういうのは夕立とか多摩の分野じゃないのかなって思います。

 

 

「だから言ったでしょ? 川内が後ろにいるわよって」

 

「あぁ……ほんとに居たな。で、川内はいつから俺の後ろに潜んでたんだ?」

 

「え? そんなの提督が島に着いた時からだよ? もう駄目だったんだ。提督を見た瞬間体が動いてたもん」

 

「え、そんなに早くから居たんかよ。だったら声かけてくれればよかったのに」

 

「いいんだよ、私は。こうやって提督の背中を取ってるってだけでも興奮するから」

 

「そうか……」

 

「ね? 何も押し倒すだけじゃないのよ」

 

 

 そのようでございますね。

ニコニコと笑う陸奥になんか息が荒くなってきた川内に理解が追い付いていない俺。う~ん。カオス!

てか、よくよく考えてみたら目の前の艦娘も背後の艦娘も両方ともCV一緒じゃん。前門のあ〇ねる後門のあや〇る。すげぇなこの状況。

まあ、元のことわざとは意味が全然違うんだけどね。陸奥の後に川内とか提督的にはご褒美なのです。

 

 あ、ちなみに前門と後門を超えた後に寝室の門もある。具体的には聖剣の担い手と同じ声の眼鏡のお姉さんも居る所がそう。

一体どこから見ていたのかわからないけど怖い。俺の予想だけど割と最初のほうから見てたと思う。怖い。

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