職場ではパワハラ兄家には自称小悪魔な姉、しまいには世界が滅びてるってもう終わってるだろ   作:睡眠欲求

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プロローグ
お呼び出し


俺には昔の記憶がない。最初の記憶は、きれいな紫色の髪に破滅的な深紅の眼をした少女に

 

「これから君の名前は、柊 緋色よ」

 

そう何の脈絡もなく、言われたところからだ。

 

これが、5年前の出来事だ。

 

 

 

 

「起きてください、ヒーちゃん」

 

まだ肌寒い朝、聞きなれた声にたたき起こされた。

薄目を開けると、見慣れた紫色の髪が見える。

 

「何だよ、シノア。まだ、32時だろ。寝る時間だ」

 

「一日は、24時間ですよ。いい加減起きてください、暮人兄さんに怒られますよ」

 

「うわぁー・・・それは、嫌だな」

 

「まったくお姉ちゃんがいないと何もできない手のかかる弟ですね~」

 

「いやー、俺がいないと食事にありつけない家事スキルがゼロの姉がなんか言ってるな~」

 

「あは~、そんなに死にたいんですか?」

 

その瞬間、脳が危険を察知する。本能が、警鐘を鳴らす。

俺は、ベットから飛び起きて、思いっきり右に避ける。今まで自分がいたであろう布団は彼女の鎌でズタズタになっていた。自分があれを食らったらと思うと、ぞっとする。

 

「何すんだ。殺す気か!!!」

 

「チィ・・・殺し損ねましたか」

 

「え?今舌打ちした?」

 

「あは~、何のことですかね~、それよりも殺気のセリフよく聞き取れなかったんでもう一度行ってくれませんか~」

 

「何でもありません」

 

四鎌童子を構え、笑いかけてくる姉さんに脅されそう返す。

 

 

「よろしい、早く準備してください。お腹が空きました~」

 

「はいはい」

 

そう言って、急いで台所に行き朝食の準備を始める。10分ほどで朝食を作り、出かける準備をする。

 

「姉さん、俺は暮人兄さんの所に行くから、先に食べてていいよ」

 

「ふぁ~い。きをふけて~」

 

言うまでもなく、先に朝食に手を付け食べ始める姉を見ながらここだけは平和だな~と思う。

 

 

 

 

突然発生したウイルスにより大人たちが死に絶え、吸血鬼が地上世界を支配し、人間社会が崩壊してから8年。

 

人口は十分の一に減り、ヨハネの四騎士と呼ばれる異形の生物が街を闊歩する。だが、人類はしぶとい。生き残った人間たちは集まり復興作業を始めていた。しかし、吸血鬼たちは人間を襲い、血を得るために人間を攫う。

そして、その吸血鬼に対抗する組織、日本帝鬼軍が作られ、吸血鬼と戦っている。

その日本帝鬼軍の中で、吸血鬼討伐部隊・月鬼ノ組と呼ばれる組織がある。彼等は鬼呪装備と呼ばれる吸血鬼に対抗できる武器を手に吸血鬼と戦う。

 

多くの犠牲を出しながら・・・

 

 

「あほらし」

 

俺は、家を出て日本帝鬼軍の執務室に向かう。

 

15分ほどで着き、ノックする。

 

「暮人兄さん、緋色です」

 

「入れ」

 

「失礼します」

 

「来たな、緋色」

 

柊 暮人。日本帝鬼軍の中将で、冷酷かつ非道な性格であり、柊に逆らう者や不信感を抱く者には容赦せず、目的のためならば身内であっても拷問や殺害、裏切りなども躊躇しない男。シノアは「バケモノ」と呼んでいた。

 

「相変わらず、秘書付きですか?いいご身分ですね」

 

後ろには、金髪の美人が立っていた。三宮 葵・・・日本帝鬼軍人で、グレンと同年齢で暮人の秘書を務める名門・三宮出身の女性だ。暮人同様に冷酷な性格で、暮人の為なら人間を殺すことも厭わない。妹がいるらしいが、あまり関わっていないらしい。

 

「不満なら、お前にもつけてやろうか?」

 

「冗談でしょ?他人をそばに置くなんて正気の沙汰じゃない」

 

「ククククク、そうだな、お前はそういうやつだ。それに、お前にはシノアがいるもんな」

 

「・・・いいから話を進めなよ」

 

後ろの三宮が睨んでいるが気にしない。

 

「緋色、任務だ・・・吸血鬼を皆殺しにして来い」

 

そう言い、俺に資料を投げてくる。

 

「先日任務に出た月鬼ノ組の奴らが全滅した。調査に出たやつらの報告だと、貴族が一匹、吸血鬼を集めているという話だ。ことが大きくなる前に片したい。しかしこのまま、貴重な戦力を削るのは得策ではない・・・だから、お前が殺してこい」

 

「ただの13歳のガキに頼むことですか?」

 

「お前が、ただのガキならほかの人間は大体ゴミだな」

 

「え~こんなか弱い子供じゃぁないですかー」

 

「緋色・・・」

 

「・・・分かりましたよ。行けばいいんでしょ、行けば」

 

「これは、お前にとっても悪い話じゃない。この作戦が、成功すればお前を昇進させてやる」

 

「あんまり、興味ないんですけど」

 

「お前の地位が高くなれば、シノアに面倒事が行かなくなるぞ」

 

「・・・クソ野郎」

 

「良い報告を期待している」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っというわけで、吸血鬼狩りに行くことになった」

 

 

「いや~、大将は流石だぜ。こんなに面倒事に巻き込まれるなんて」

 

連司は、そのガタイのいい体を震わせ大きく笑った・・・。

 

「笑い事じゃあない」

 

俺は少し不機嫌そうに、言い返す。

 

「そういうなって、ガハハハハハ」

 

「緋色の場合は、柊暮人とに目をつけられたのが失敗」

 

ウェーブのかかった黒髪、整った顔立ち、無口無表情と、どっかの馬鹿中佐の部下を彷彿とさせる詩織が珍しくしゃべった。

 

「それこそ、俺の知ったことじゃない」

 

「まあ、いいじゃないか。ここにいる奴らは、そんな君なのは知っているうえでここにいるんだ。素直に使いつぶしたまえ」

 

腰に刀を差した男が近づいてきた。彼は黒い長髪のを白のリボンでポニーテールにしている。顔立ちは整っているが、寝不足の象徴であるクマがすべてを台無しにしている。

 

「京時か・・・」

 

「久しぶりだね、リーダー」

 

「・・・これで全員揃ったわけだ。本当にいいんだな?今回の任務も、死ぬ確率はかなり高いぞ」

 

「「「愚問(だ)」」」

 

「ハァ~、じゃあ行くぞ。吸血鬼狩りだ」

 

 

 

 

 

 

 

チュンチュンという鳥の鳴き声に耳をすませながら目をつむる。世界は滅び、ビルは朽ち果て草木も枯れ、まさに世界の終わりを彷彿とする世界でも鳥の鳴き声は聞こえる。なんだか、目を閉じたままでいれば世界は滅びてなんかいないんじゃないのかと思えるほど平和に感じる。今俺たちがいるのは表参道地下鉄の入り口付近。今から任務を行う予定の場所だ。

 

 

 

「さて、この中に貴族とクズ吸血鬼がいるわけだ。いつも通りにやるぞ」

 

「了解」

 

ウェーブのかかった黒髪を揺らして返答する。

 

「起きて、斬音鬼」

 

詩織は、フルートのような形状の鬼呪装備を構える。

 

『音無』

 

瞬間、世界から音が消える。それを合図に、全員それぞれの武器を手に取る。

 

『起きろ、天見童子』

 

俺は、刀を抜刀し鬼を呼ぶ。瞬間、体の中から力があふれ出し表現できない高揚感に襲われた。

鬼呪装備、それは直接鬼を封印している武具であり、鬼との契約により入手できる。破滅前の世界では、何千人も人体実験しなければならないような禁呪の研究とされていたが、柊真昼・・・俺を拾ったあの女が完成させ、現在は実用化に成功している。通常の人間の7倍以上の能力が得られ、その中の最上位である黒鬼装備であれば更なる力が得られるが、扱いが難しく所持者は少ない。

 

そして、俺の鬼呪装備はさらに特殊だ。恐らくだが、7倍とは言わず、15倍近く力が増す。その代り体にかかる負担は尋常じゃない。最も特徴的なのが、こいつは使用者に未来を見せる。これは、戦場では便利だ。例えば・・・

 

未来視で導き出した最適解で、奇襲をかける。詩織の能力で音を消したせいで、奴らには直前まで俺らの存在に築けない。

 

通路の角から、俺は飛び出し吸血鬼の首をはねた。驚き硬直する、吸血鬼との距離を一瞬のうちに詰め、同じように切り捨て、背後から迫ってくると分かっている(・・・・・・)吸血鬼に向かって剣を突き出した。宙を舞う鮮血を見ながら、目の端で連司が身の丈ほどの大剣で吸血鬼を切り飛ばしているのを見て、さらに先の未来を見る。

 

通路の先から、増援。

 

詩織に、アイコンタクトで能力を解除するように指示した。

 

世界に音が戻る。

 

「詩織、前方の通路に半分ぐらいの出力で音撃!!!」

 

「了解」

 

詩織は、フルート型の鬼呪装備を構えると思いっきり吹いた。

 

振動、衝撃波が通路を駆け抜ける。吹き飛ばされていく吸血鬼を見ながら、背後から近付いて来ると分かっている貴族に向かって刀を水平に振った。

 

案の定、猛スピードで突っ込んできた貴族は、絶対に反応できないと高をくくっていたせいか俺の攻撃をかわし損ねた。腕一本。結果を先に見た俺からすれば驚くことはない。しかし、目の前の貴族からすれば違うらしい。

 

「おのれ人間風情が!」

 

くだらないことを叫んでいる吸血鬼に俺は一瞬で距離を詰める。

 

閃光の如き、鋭さを持った刺突。対抗するように貴族もまた、剣を真っ向から振り下ろして繰り出す。

 

刀と剣。激突する両者の刃。

 

次の瞬間、衝撃が飛び散り、火花が激しく噴き出す。互いに弾かれ、僅かに後退する。

 

 

 

「何!?」

 

腰を落として踏み止まる吸血鬼。

 

吸血鬼の目は、驚愕と共に見開かれる。

 

「いないッ!?」

 

目の前にいない俺に、吸血鬼は声を上げる。

 

一瞬、コンマ一秒にも満たない僅かな間、吸血鬼が視線を外した瞬間、俺は相手の視界から消え去ったのだ。もちろんからくりがある。俺の装備の影響で、身体能力が上がっているのもそうだが一番は未来視だ。いったいどこを通れば視界に入らないかがわかる。

 

次の瞬間、無意識に俺の殺気が迸る。殆ど反射的に振り返り、剣を横なぎに振るう吸血鬼。振り向き様に繰り出したの一閃が、背後から迫っていた俺の刀を、真っ向から受け止めた。

 

飛び散る火花。

 

同時に、俺は吸血鬼と、極至近距離で睨み合う。だが、そこで動きを止めない。

 

「フッ・・・っと・・・」

 

 

俺は、そのまま相手の剣を支点代わりにして大きく宙返りをすると、その背後へと降り立つ。着地と同時に体を思いっきりひねり旋回、刀を叩き込む。

 

対して吸血鬼も、振り向き様に剣を振るう。

 

再び巻き起こる衝撃波が周囲に撒き散らされ、一帯を薙ぎ払う。

 

「うへ~、これも防ぐのか~。流石は貴族だー」

 

 

ここまでくると、ちょっと冷や汗が出てくる。

 

 

鍔競り合いの状態から、吸血鬼は笑みを向けてに告げる。

 

 

「中々、やるようだがこれで終わりだ!!!」

 

次の瞬間、両者は弾かれるように後退。俺は、再び剣を構えて対峙した。

 

「剣よ、私の血を吸え」

 

瞬間、吸血鬼は眼前に瞬間的に移動してきた。

 

だが、やはり『視えている』。

 

俺は、ぎりぎりで刀を割り込ませ吹き飛ばされる。追撃に来る相手の顔を見て笑ってしまう。

 

『憑依しろ』

 

相手の剣を一瞬受け止めると、相手の表情が固まる。

 

「京時・・・」

 

瞬間鮮血が舞う。

 

京時が敵の背後を切り付けたのだ。

 

隙だらけの吸血鬼の体に俺は、刀を突きさす・・・

 

 

「俺らの勝ちだよ・・・吸血鬼」

 

「おの・・・れ」

 

鬼呪の呪いで、朽ち果てていくのを見ながら、任務達成を俺は確信した。

 

 

 

 

 

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