職場ではパワハラ兄家には自称小悪魔な姉、しまいには世界が滅びてるってもう終わってるだろ 作:睡眠欲求
交差点に着くとそこには吸血鬼に剣を向けられている絶体絶命のグレンの姿があった。
「まずい!グレン中佐が!」
「全員すぐに薬を飲んでください!中佐を救出して離脱します!」
シノアの言葉を聞きすぐに用意してあった薬を口の中に放り込んでタイマーを起動させる。
優が先行し、全速力でグレンの元へ向かう。
だが、一歩遅くグレンの前にいるミカエラは剣をグレンの胸へ剣を突き刺した。
瞬間、グレンの胸からほとばしる鮮血を見て優の中の何かが切れかける。
「なッ!てめぇ!!!グレンになにしてんだぁぁぁ!!!!」
優が阿修羅丸を抜き、ミカエラの心臓に狙いを定める。ミカエラはグレンを刺したまま面倒くさそうに振り返る。
しかし、次の瞬間にはその瞳が驚愕に見開かれる。
ミカエラは固まったまま抵抗も反撃もせず、胸を優の刀で貫かれる。
「え?ミカ?」
奇しくもミカエラと同じく呆然とした表情を浮かべる優。その優を現実に引き戻そうとグレンが叫んだ。
「何してる!早く呪詛を流して殺せ!」
グレンが優に叫ぶが、優は何もせず無反応だった。
「チッ!」
グレンは胸に刺さった剣を掴み、自分の刀を手に取ってミカエラに斬り掛かる。
ミカエラは寸前で剣を躱し、空中を飛んで攻撃を躱す。グレンは、怪我した胸を押さえながら優を殴る。
「ふざけんな!!!てめぇなんで、殺さなかった!?今のはいけただろ!?」
「い、いや………」
優が何かを言おうとすると、グレンは口を押さえ膝を着き、吐血する。
「バカ優!どうして鬼呪を発動しなかった!」
「優君、どうしたの!?」
普段から吸血鬼を殺すと言ってる優らしくなく、全員が聞く。
「………ミカが…俺の家族があそこに…」
いまだ信じられない優はミカエラに問いかけた
「お前、ミカ…なのか?」
ミカエラは優に返答はせずに俯き立ち上がった。
「あれ百夜 優一郎君でしょー?いやーまさかの運命の再会。涙が出ちゃいそう〜。で…どうするんです?たぶん優ちゃん、人間どもに利用されてますよ?」
フェリドが隣にいるミカエラに問いかける。
「当然、救う」
「醜い人間どもの手から?」
「ああ」
「でも、彼も人間ですよ。人間は決して僕らの仲間にはならない」
フェリドが、そう言ったあとわざとらしくポンと手を叩いた。
「そうだ。じゃあクルルが君にしたように僕が優ちゃん達を吸血鬼にしてあげま」
フェリドがしゃべり終わるのを待たずにミカエラは素早く動き首元を掴む。
「僕の家族に手を出したら、殺すぞ」
「アハ~、冗談ですよ〜珍しく熱くなっちゃって。ま、じゃあ手を貸してあげましょうか。他の人間は僕が止めてあげるから、君は君の大切なお姫様達を奪ってきなよ」
ミカエラは持っていた剣を握りしめると鍔から茨が生え腕に絡みつくと同時に持っている剣の刀身がまるで血を吸っているが如く赤くなっていった。
そしてフェリドも剣を抜き、刀身を撫でる。
「では、やりますか。優ちゃん以外の人間どもを皆殺しにしましょう~」
「私をお呼びと聞きましたが?…第七位始祖様」
クローリーは、金髪と青い髪の二人の女吸血鬼を連れて、フェリドに近づく。
「ああ、クローリー君かぁ。待ってたよ〜。君たちがいたらもうゲームセットだねぇー、彼らを殺す必要もない。よし、家畜にしよう。殺さず生捕る。吸血鬼殲滅部隊家畜化計画〜」
「悪くないねぇ」
「終わりだ………!」
グレンが立ち上がり叫ぶ。
「総員離脱態勢!新宿は放棄する!」
「ち、ちょっと待ってくれよ!向こうにミカが!俺の家族がいるんだ!だから撤退は!」
「いい加減にしろ、優。状況も分からねえのか?ガキの我が儘に付き合ってる暇はない!」
グレンは優を怒鳴りつけ撤退を部隊に促す。
「お前の身勝手で、殺せた貴族クラスの吸血鬼を殺せなかった。その上、お前の我儘で全員の命を危険に晒す気か?」
そう言うと、優は悔しそうに俯く。
「撤退だ!陣形を崩さず、第二防衛ラインまで撤退!」
グレンの指示に従い、全員が撤退を開始する。
だが、吸血鬼はそれを見逃そうとせず、追い掛けて来ており、フェリドは優達の進行方向をふさいでくる。
「逃がさないよ〜ん」
「お、お前……お前!!!」
優はフェリドと面識があるのか刀を抜いて、斬り掛かる。
「くそっ!」
それを見てグレンが悪態を吐きながら刀を抜き、後を追う。優の攻撃をすべて躱し、フェリドは笑う。
「速〜い。けどまだ若い」
グレンが横から攻撃を仕掛けるが、それすらも尋常ではない速さでよけてフェリドはグレンの後ろに現れる。
「そして、ライオンも手負いじゃ剣線が鈍るねぇ」
「ッ!」
フェリドの輪増し蹴りがグレンを捉えた。
「グレン様!」
「グレン中佐!」
各方面で悲鳴が上がり、シノアたちは助けに行こうと走り出そうとするが、クローリーと二人の女吸血鬼が立ち塞がる。
「今度は逃がさないよ」
「いや、逃がしてもらう」
「ッ!!!!」
轟音と共に土煙とクローリーの腕が宙に舞った。
「…やあ、久しぶりだね。元気そうで何よりだよ」
クローリーが冷や汗をかき見つめる先には、瞳に怒りを募らせた緋色が立っていた。
「おせーぞ!!!何してたんだ!!!」
「悪いな、足止めを食らってた。挽回はここでする」
緋色は刀の鍔に指を当て、腰を落として返答した。
空気が凍る。凄まじい殺気の中で吸血鬼たちは本能的に、目の前にいるのがただの人間ではないことを察した。そして殺される前に殺すため、何人もの吸血鬼が緋色に剣を片手に向かっていく。
「『憑依しろ………天見童子』」
緋色は刀をゆっくりと刀身を鞘に収めていく。そして鯉口と鍔が重なった瞬間、『死』を告げた。
「―――終わりの時だ。吸血鬼」
カチンッと、鍔の鳴る音。
瞬間、周囲にいた吸血鬼の身体に無数の斬撃が切り刻まれ
—————吸血鬼たちは鬼呪の呪いで灰と化した。
「なッ!?‥‥…」
「流石ですね‥…」
「しびれるねぇ~、最強戦力様の一撃は」
「‥‥…」
「ヒュー、やる~」
緋色の参戦で戦場の流れが傾いた。