職場ではパワハラ兄家には自称小悪魔な姉、しまいには世界が滅びてるってもう終わってるだろ   作:睡眠欲求

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グレンと緋色

「関西方面の吸血鬼たちが、不穏な動きを見せていることについて報告します」

 

柊家と分家の人間の身が出席できる会議。知っている奴から、知らないやつまで勢ぞろいのこの会議だが、あまり建設的な会議ではない・・。柊天利に会わなくてはいけないのが非常に嫌なのだ。何というかこの男を前にすると神経が逆立つのだ。・・・この男というか、この男に憑依している何かに体が反応する・・・。できれば一刻も早く抜け出したい。

 

「クッソ長え会議は終わったか?」

 

グダグダと長い会議が続いている中、グレンが目を覚まし強烈なパンチをかました。空気が一気に悪くなり、報告中の深夜兄さんもこれには苦笑いだ、気持ちは分かるけどさ。

 

しかし、深夜兄さんや暮人兄さんのようにグレンの発言を流してくれる人間は数少ない。

 

案の定、柊天利が反応した。

 

「その態度はなんだ?一之瀬家の分際で」

 

日本帝鬼軍の元帥であるこの男は分家のグレンを快く思っていない。体が半分、黙示録のウイルスに侵され、左腕を失っているがその破棄は衰えておらず依然威圧的な雰囲気を纏っている。

 

「俺行くわ、情報はあとでまとめてくれよ」

 

グレンが天利と少し過激な口論をした後、会議室から出ていこうと扉に歩き出した。

何一人で帰ろうとしてるんだ、俺も帰りたいよ。どうにかして向けられないかな。

 

「グレン、あんま態度悪いと流石にフォローしきれないんだけど・・・」

 

困り顔の深夜兄さんが、グレンに無駄だと分かっていながら声を掛ける。

 

「分家の一之瀬家はお呼びじゃないだろ」

 

自虐的な表情を浮かべながら、扉に手を掛けるグレン。それを追撃するように、名前は思い出せない・・・たぶん兄弟であろう男が口汚く罵った。

 

「ならさっさと消えろ、クズ」

 

あまりにあふれ出る小物臭に吹き出してしまいそうになる。

 

「父上、自分も帰っていいですか?この会議での議題については頭に入れてありますし、現在問題となっている問題を片付けておきたいですし、任務もあるので」

 

「・・・いいだろう」

 

許可が出たところで、席を立とうとする俺にさっきの男が文句をつけた。

 

「待てよ!お前、最年少だか何だか知らないが調子に乗っているんじゃねえぞ」

 

意味の分からない因縁をつけられたようだ。こういうのをはねのけるための暮人兄さんなわけだが・・・。

 

「やめろ、征志郎。この俺が許可を出したのだ」

 

思わぬところからフォローが飛んできたものだ。父上の一声で、兄その1は黙り込んでしまった。

 

「じゃあ、自分はこれで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待ってよ、グレン」

 

「あん?緋色?会議はどうした」

 

「抜けてきた」

 

「お前・・・いいのか?」

 

「問題ない。なんか知らない男に止められたけど、父上のお許しが出たからな」

 

「知らない男?」

 

怪訝そうに眉を顰めるグレンに一応答えておく。

 

「柊家は数が多いからな。必要のない人間の名前を覚える気はないんだ。何か、凄い小物臭漂う男だったけど」

 

「プッハハハハハハハハ、それ征志郎だろ。お前から見てもそう見えるのか?」

 

「誰が見てもそうじゃないの?ああ、外の人間からすればそうじゃないか」

 

心底愉快そうにお腹を抱えて笑うグレン。

 

「しっかし、お前バカだろ?わざわざ会議抜けてくるなんて、しかも分家の俺といると来た」

 

「あのバカみたいな会議にいる必要はないし、一応君の監視が任務だし」

 

「あー、同感だ、クソつまんなかった。世界滅びた後も内部で政治やら派閥争いやら・・馬鹿らしい」

 

死んだ目をしているグレンを見ていると不意に足音が聞こえてきた。

 

「馬鹿グレン、見つけたぁああああ!!」

 

「あれは・・・」

 

大きい声を出しながら百夜はグレンの方にダダダダダッと走っていき飛び蹴りをかました。

 

「俺に鬼呪装備渡さないで10日失踪するってどう言うことだぁぁぁ!!」

 

だがその蹴りも軽々とグレンに止められた。そんな百夜を見てグレンは面白いように笑う。

 

「はは、相変わらずおまえ・・・わかりやすいなぁ。くだらん政治の後だとちょっと面白いぞ」

 

嬉しそうに顔をゆがめたグレン。どれだけ、百夜を気に入っているか分かる。

 

「俺は面白くねぇよ!!いい加減俺に吸血鬼殺せる武器よこせっ!!」

 

そして百夜を見てグレンは一旦足をはなして

 

「お前そんなに吸血鬼に復讐したいのか?」

 

と問いかけた。

 

「したいねっ!俺はそのためだけに生きてんだよ!」

 

そう言った百夜をグレンは考え事をしているのかボーとした顔でみつめる。そして決意したように言う。

 

「よし、なら明日鬼と契約するか。で前線に出してやる」

 

さすがの百夜もこんなにすんなりオッケーをもらえるとは思わなかったのか面食らった顔をしている。

 

「ああそうしよう。訓練間に合ってなくてももういいや」

 

その言葉にグレンはそれでいいと言うようにとてつもなく怖い笑顔でニコッと笑った。そして百夜に言う。

 

「死んだらお前の責任な?」

 

そんな言葉に百夜は顔を輝かせながら

 

「おおお問題ないね!!それだよそういう展開をずっと待ってたんだよ!!」

 

と言っている。グレンは口角を上げる。

 

「やっぱ馬鹿だなおまえ・・・あっところでさ優・・・

 

上官蹴ろうとするんじゃねぇぇぇぇ!!!」

 

頭にグレンの踵落としがゴンっと鈍い音を立ててヒットした。そのまま意識をうしなった百夜をほっといてグレンは歩いていく。

 

「うわー。暴力とか最低ですね~。人格を疑いますよ~」

 

「あ?」

 

「怖~い」

 

若干切れかかっているグレンにこれ以上煽るのは得策じゃないなと判断し、真面目な会話にシフトする。

 

「あーやっぱ馬鹿どもの相手すんのは疲れたわ」

 

「それにしてはうれしそうだね?」

 

「そうか?・・・そうかもな、疲れるがでもまあちょっと面白くなってきたな」

 

「明日にでも儀式を始めるの?」

 

「出来ればだがな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試験管の中に入っている深紅の液体が月明かりに照らされ妖しく光る。吸血鬼を狩るにあたり、消滅させる前に採取した血液を試験管に入れ保存して置き外に出ない間の渇きをしのぐ。これが、この数年吸血衝動に耐えるためにやってきたことの一つだ。

ただ、最近は日に日に必要な日の量が増え続けており、試験管の本数が明らかに足りない。

渇きは増すばかりで、痛みも増すばかりだ。

 

そろそろ限界が来ている。まるで麻薬の禁断症状のように、手が震える。渇きで眠ることさえできない。渇き、痛み、そして・・・。

 

このままだと遅かれ早かれ、俺は人間の血を欲しくなる。完全な吸血鬼に堕ちる。

 

鬼の浸食と吸血鬼の衝動のダブルパンチで心が折れそうだ。正直、もう耐えられる気がしない。・・・次の任務で大量の血を入手できれば、話は変わってきそうではあるが・・・。

 

「賭けだな」

 

俺は月明かりを見上げながら、自虐的に笑うことしかできなかった。今日もあまり寝れそうにない。俺はちゃんと明日も隠し通せるだろうか・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日グレンと共に教室に向かう。

 

「どうした?緋色。死にそうな顔をしてるぞ」

 

「最近、兄さんにこき使われてばっかり何で家に帰れてないだよ」

 

全くブラック企業も真っ青だ。まあ、びっくりするほど待遇は良いわけだが。

 

「それで?」

 

「問題は帰れないことよりも、姉さんに会えないことなんですよね~」

 

「シスコンだな」

 

「シスコンで構わない。シノア成分が足りないんだ!!!」

 

「悪い、変態の間違いだったな」

 

「女侍らせているグレンがそれ言うの?」

 

 

そんな中身のない会話を続けているとい、目的の教室が近付いてきた。まだ少し離れているはずなのにかなりうるさい。喧騒がここまで聞こえてくる。

 

「おいなんだ相変わらずクソうるせぇなここは」

 

と言いながら入っていく。小百合さんはグレンが来たことが嬉しかったのか照れたような嬉しいような顔でグレンを出迎えている

 

隣の優達はまだ喧嘩をしているがすぐにグレンに気づき優がグレンに声を掛ける

 

「おいグレン!てめぇいい加減俺に鬼呪装備よこせよ!俺は吸血鬼どもに復讐するためだけに生きてんだぞ!なのになんでこんなとこでクズどもと一緒に・・・「騒ぐな馬鹿俺が喋る」

 

資料で見た顔だ・・・名前は君月だったか。君月は百夜の言葉を遮り次は俺だ、とグレンに向かって話し掛ける。

 

「なぜクラスを放置して10日以上も失踪したのでしょう?もう我々には鬼呪装備契約のための実力はあると思いますが」

 

その言葉にグレンはバカにしたような笑みを浮かべ、薄く笑う。

 

「へぇ、おまえらクズどもに鬼と契約できるだけの実力があるって?」

 

「あるに決まってんだろ!!君月のクソにはないとしても俺にはある!!」

 

「黙れよ!」

 

また喧嘩が始まっていた。

 

「久しぶりシノア」

 

「三日ぶりですね~ヒーちゃん」

 

ちょっと頬が緩む。ああ、本当にシノアというときだけは自分がまだ人間だと思える。まだ頑張ろうと思える。

 

「最近は、家にも帰ってきませんが何かあったんですか?」

 

「まあ、色々立て込んでて」

 

「ッ・・・柊少将ですか!?」

 

君月が驚愕した様子で詰め寄ってくる。

 

「そうだけど」

 

「緋色がどうかしたのかよ?」

 

「ああ?お前知らないのか?柊少将はたった一小隊であまたの吸血鬼から街を奪還してきた生ける伝説だぞ!」

 

確かに吸血鬼の貴族三人から巣鴨を取り返したあたりからそんな風に言われ始めた。まあ、俺が吸血鬼の恩恵を受けた後に取り返した場所だから称賛されるべきことではないが・・・。

 

会話中に未来視が発動する・・・そんな俺の嫌な予知は的中する。勢いよく振り返る。やはりというかグレンが自分の剣を抜いている所だった。

 

「死んだ奴は修練足りてなかった自分を恨め」

 

と、グレンは言ったあとそのまま剣を床に突き刺した。

 

その瞬間黒い霧のようなものが教室全体を包む。周りのほとんどがすぐにドサドサと倒れていく。

 

「があ?なんだこれ」

 

「し、心臓が締め付けられ・・・」

 

それぞれ百夜と君月が言う。早乙女はほとんどなにも感じて無いのか、「みんなどうしたの?」っと困惑の表情を浮かべている。

 

俺は、結界を張りシノアと自分を覆う。

そんな中やっとグレンがはい終了と剣をしまう。

 

「よーしじゃあ今意識があるやつ、見込みがあるこのまま訓練続けてきゃ鬼呪装備契約の儀に移れる可能性がある。あと立ってられた奴お前らは優秀だ。すぐに俺の剣と同ランクー『黒鬼』のシリーズに挑戦させてやる。で立っているのは・・・優・・・君月、与一・・・お前らは気絶しろよ」

 

ははっとシノアは笑う。

 

「ヒーちゃんが過保護なものでして」

 

「はッ、流石は柊家様か?あの一瞬で二人分の結界を作るとはな」

 

「あのグレン様、無茶苦茶な試験はいつものことですが与一くんを『黒鬼』シリーズに挑戦させるのはどうかと思います」

 

と小百合先生がグレンに言う。その言葉にグレンは心底うっとおしそうに答える。

 

「俺の決定に文句あんのか?」

 

「文句は無いですが・・・しかし、与一君は心が安定していても鬼を受け入れられるだけの強さは・・・」

 

「強さがなきゃ死ぬ。ここはそういう世界だ、おままごとやってんじゃねぇぞ」

 

シノアがグレンの言葉に対して答える。

 

「ですが鬼は弱い人間を嫌います。与一さんはきっと鬼に・・・「うるせぇなぁ」

 

シノアの言葉を遮りグレンは早乙女の方を向く。

 

「おい与一おまえ吸血鬼に殺された姉貴の復讐したいんだろ?なら命かけるよな?」

 

早乙女は少しためらいを見せる。そんな早乙女に百夜は声を掛ける。

 

「与一、俺はやめた方がいいと思うぞ。でも与一にはここに来た理由があるはずだ。だから無理強いはしない」

 

そして早乙女は何秒か考えたあと大声でグレンに吠える。

 

「グレン中佐!!僕やります!!もっと強い力が欲しいから!!もう大切な人を失わないですむだけの力が欲しいから!!」

 

 

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